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LIFE STYLE&BEAUTY JAN 29,2021

手のひらサイズの窓辺の風景。<ハコミドリ>周防苑子さんのアトリエへ


ギフトブランド<musve URBAN RESEARCH>で新しくお取り扱いさせていただく<ハコミドリ>は廃ガラスとグリーンを組み合わせた、太陽に似合うプロダクトです。

それはまるで窓から見える風景を小さく切り取ったようでもあり、そして小さな箱庭のようであり。世代も年代も超えて花を愛する人にぴったりの贈り物でもあります。

その素敵な作品はどんな風に生まれたのか。
作家の周防苑子さんに会いに、琵琶湖のほとりにある彼女のアトリエを訪ねました。

※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで取材を行っております。

“ハコミドリ”を始めるまで。

URBAN RESEARCH MEDIA 編集部(以下、URM) まずは周防さんの生い立ちから<ハコミドリ>を始めるまでのヒストリーについてお聞きしたいと思います。周防さんは小さい頃、どんなタイプの子どもでしたか?

周防苑子さん(以下、周防) すごくジブリが大好きな子で、特に風の谷のナウシカに完全に感化をされて過ごしていました。今では活発にいろんなことをしているほうだと思うのですが、小さい時は本当に静かな子どもだったんです。友達が来ても「今日は一人でナウシカ見るから」って遊ばないくらい(笑)。あとは小さな石を収集したり葉っぱを水に浸して実験してみたり。運動も苦手でお部屋の中でビーズや石や葉っぱで遊んでいました。

URM ご実家は生花店を営んでいらっしゃったとか。

周防 子どもの頃にたくさんのお花の種類を知ったことは今思えばラッキーだったんですが、“幼少期あるある”で親の仕事に反発してしまっていました。みんなの家はサラリーマンなのに、うちは特殊なのがちょっと恥ずかしかったんですよね。家族仲はいいけど長くお店に行かないことが続きました。特に学生時代はお花に興味ないよ、みたいな感じでした。
自分が大人しいタイプだったので、両親が商売人で社交的なところも恥ずかしかったのかも。それと当時人気の職業は“お花屋さんかケーキ屋さん”で、クラスにはケーキ屋さんの息子もいて私と二人とても羨ましいって言われてばかり。“実際は冷たいお水を触るし、虫も出てくるから大変なのに”って思っていたんですが幼い頃はそういうことがうまく伝えられず、ただモヤモヤしてコンプレックスにつながっていました。

URM そのままお花とは関わらずに東京で就職されたんですよね。

周防 東京時代はめちゃくちゃ忙しかったんです。メディアの業界にいたこともあって、業界的には普通の速度だったんだけど自分には目まぐるしすぎました。
特に新しいものがところてん方式で出てくるのが衝撃でしたね。
あんなに頑張って作ったものが1日でリリースが終わっちゃう。そのスピードについていけなくて疲弊してしまったんです。
そんな時に昔の自分は何かを作ったりするのが好きだったなと思い出して。

URM その後お花に関わる<ハコミドリ>を始めたのはなぜですか?

周防 東京での仕事は大変だったけどもちろん楽しいこともいっぱいありました。中でもアクセサリー関連のお仕事はとても貴重な体験でした。お花モチーフのアクセサリーを作っている作家さんのお仕事だったんですが、部署内で手が器用だったこともあって石(スワロフスキー)などの制作作業のお手伝いもさせていただきました。
プレスリリース用の撮影時に、お花屋さんに協力をお願いしたんですが、 花屋といえば実家=“田舎のお花屋さん”の印象が強かったので、東京の洗練された“フローリスト”さんにびっくり。そこで初めて、お花ってこんなにも変化するんだって驚いたんです。そこで生花の奥深さを学んだことと、その後滋賀へUターン後に生花(いけばな)を習ったことが良い転換期になりました。それと東京時代にとても素敵な作家さんからステンドグラスを習うきっかけがあり、この技法と草木花々を組み合わせて製作している人が他にいないことと、もし製作で行き詰っても植物の造形に助けてもらえるのではという思いがあって<ハコミドリ>に踏み切りました。

廃ガラスとの出会い

URM 周防さんの作品はドライにした植物と廃ガラスを組み合わせたプロダクトが特徴です。廃ガラスとの出会いや、ガラスの特性について教えてください。

周防 ガラスって腐敗しないんです。古くなって埃をかぶっても磨けばまた透明になる。年数も強度に関しても半永久的な魅力があって、素材として注目しました。それに光も通すし向こうの風景も通す。植物の葉脈など細やかなことも見えるのも魅力。

それに単純にガラスという素材自体大好きなんです。昔から吹きガラスやステンドグラスの作品を収集していて。木や鉄などいろんな素材があるけれどやっぱりガラスが一番好き。光を通してキラキラして綺麗だなぁって。それは幼少期から感じていて、今も心からそう思う部分です。

廃ガラスに出会ったのは親戚のおじさんのガラス工場です。そこには2トンくらい入るゴミ箱が置いてあるんですが、もう使われないガラスでパンパンなんです。中をのぞいた時にめっちゃ綺麗! 欲しい!と言ったら譲ってもらえて。ガラスって処分する時は建具(窓や扉などの仕切り)から外して捨てるんですが、建具ごと保管しておいてもらって自分でガラスを外して使ったり。あとは解体の現場に行って引き取ったりもしています。

ブランドを始めて6年なのですが、カラーガラスだけなかなか手に入らなかったんです。でも私の活動を知ったガラス会社の方から連絡があって、そこはギャラリーやホテルに使うカラーガラスの廃材があるから見にこないかって誘っていただいて。先々月くらいに初めて行かせていただいて譲っていただきました。綺麗だし状態も良くてテンションが上がって最近はカラーガラスを使った製作も始めています。

ガラスって美しさと素材としての強さも魅力ですがデッドストックがたくさんあるのもいいんです。それと型板ガラス(柄のあるガラス)は現在は生産を中止してしまっているので、いま世の中にあるもので終わりなんです。小さくカットして使うといい風合いが出るし、新たに作られることがないっていうのもロマンがあるなあと。

実家がお花屋さんで親戚がガラス屋さんというと運命だねって言われるんですが、廃材を見つけて勿体無いという気持ちがあって始まったものだから、もし親戚が木材屋さんだったなら木の要素が入っていたんだと思います。
だから<ハコミドリ>を始めたのは必然であり偶然なんです。

URM <ハコミドリ>では様々な種類のプロダクトを手掛けていらっしゃいますが、一つの作品でおおよそどのくらいの時間がかかるのですか?

周防 プロダクトは部分部分で形成するので正確な時間は難しいのですが…お花に関しては時期にもよりますが約1ヶ月くらいでドライとして完成します。押し花もそのくらい。

特別に一連の作業を見せていただきました。ガラスをカットし、銅テープを巻きつける。

その後溶接し、最後に植物を組み合わせて完成。

ガラス部分は1日に同じ作業、例えば洗浄やカットの日などと作業を分けているのですが、小さいものを1個だけ作るとしたら20〜30分程度でしょうか。<ハコミドリ>はずっと一人で作っていたのですが、最近は信頼できる内職さん二人がいらっしゃって一部工程はお任せするようにしています。ですが最後に植物とガラスをジョイントするのとその後の撮影は絶対に自分でしています。植物のいい塩梅とかガラスの採光加減を表現する。それは絶対にこれからも自分でやりたいことです。

URM アイデアはどういう時に思いつくのですか?

周防 自分でも色々閃くタイプだと思っていますが、お客様からの声を反映している部分も大きいですね。今はコロナの影響でできませんが以前は年に1回は大きな個展を開いていて、そこでお客様と直接会ってお話する機会があったんです。それはすごく楽しいし製作のモチベーションにもなっていました。それに加えてその場でお客様からのご意見を聞くことも多いんです。SNSのライブ配信で、作って欲しいものを尋ねてみたら60件以上ものご意見をいただいたり。お客様もすごくアイデアマンで具体的に欲しいものがある方が多いんです。アクセサリーやスマホケースなどいろんな要望が来ました。

インスタライブでは作っている様子をアップしたりする他、翌日オンラインショップに出すものをご紹介したりもしています。春のコロナ禍ではそうやってお客様とやりとりをしていました。今もそれは続けているのですがサボテンのドライや珍しい植物などを公開すると好評だし私も作っていて楽しいんです。

サボテンのドライフラワー

URM ちなみにお仕事の日やオフの日はどんなタイムスケジュールで生活をされているんですか?

周防 仕入れに行く日だけは早朝から行動するのですが、製作の日やオフの日は朝8時半くらいに起きて白湯を飲むところからスタートします。家からアトリエまで車で10分くらいなのですが、途中にあるコンビニやスーパーで食料などを買って、その日の仕事内容を考えながら頭の中を仕事モードにシフトします。基本は“ガラスカットの日” “焼き付けの日” “撮影の日”などに分かれていて、それぞれラジオを聴きながら午後2時くらいまで無心でずっと作業をしています。ある程度のノルマをこなしたらお昼を食べ、アマゾンプライムを見たり散歩をしたりして、その後余力があれば夕方も作業します。

ただ“ひらめいた”ら作らざるを得ないというか。思い立ったらすぐ作れる環境があるので…リリースや製作に忙しい時でも何か思いついてすぐ製作し、そしてSNSにアップまでしてしまうので、それを見た方から問い合わせが来て“あーっ”ってなることはよくあります(笑)。
普段のルーティーンを午前と夕方に分けているのは、例えば朝にひらめいてその作業にかかりきりになっても、夕方本来の作業を取り返せるようにということもあります(笑)。

URM 固定の休日は決めていらっしゃるんですか?

周防 休日は決めてないんです。時間にゆとりがあって遠方まで出かけられる月もあれば、納期の関係でほとんど休みがない時も。その差が大きいですね。

URM 休日はどんな風に過ごされていますか?

周防 出かけられるときは作家の友人に会いに行くことが多いです。そうでない日は掃除をしたり、録りためたテレビ番組を見たり。インドアなので趣味も漫画を読んだり(笑)。
最近は布や木を扱う作家さんの作品に触れて癒されることが多いですね。ガラスって硬いし冬は冷たく夏は生ぬるいので、木や布に触れると“柔らか〜い”ってなります(笑)。だからつい柔らかいものを作っている作家さんに会いに行っちゃう。陶芸も面白いですよね。土がグニュっといろんな形になるのが新鮮。そういうものを触らせてもらったり教えてもらって楽しむ。それがリフレッシュになります。

“花のある暮らし”

URM <ハコミドリ>は贈り物としても人気があり、今回はアーバンリサーチ社のギフト専門ブランド<musve>でもお取り扱いさせていただくことになりました。周防さんの中で“ギフト”に関する思い出はどんなものがありますか?

周防 アーバンリサーチさんって大阪が本社なんですよね。私は出身も関西だし今もアトリエが滋賀にあるのですごく親近感があったんです。
洋服も購入させていただいたことがある思い入れのあるブランドさんだったのでお取引させていただくことに決めました。

贈り物の思い出は…やっぱりお客様からいただいた差し入れやギフト、お手紙が一番の思い出ですね。個展をするたびに差し入れや贈り物をいただく機会が増えて、そういうのって芸能人や超有名作家さんにしか起こらないと思っていたので(笑)、自分の人生でそんなことがあるなんて!と。
コロナのこともあり、今はまだ直接会えないお客様から“また渡したいものを作った”ってDMをいただいたりして、今からワクワクしています。手作りものの他に、私が好きそうな作家さんのものを贈ってくださる方もいるんですが、それを見て改めて“私が作ったものを誰かに贈る人もいるんだなあ”と振り返ることができました。ラッピングについて考えたりするいいきっかけにもなりました。

URM <ハコミドリ>は男性から女性だけでなく女性から女性、男性から男性と幅広いギフト層があると聞きました。

周防 そうですね。女性はもちろん男性のお客様も多いんです。あと女性でもボーイッシュな方も多いですね。いつも生花を贈るという方が変わり種として選んでくださったりもします。私の作るものが手のひらサイズのお花ということもあってカジュアルに贈りやすいのかな、と感じています。あとラッピングを派手派手なリボンではなく黒い箱に麻紐という渋い感じにしているのも男性やボーイッシュな顧客さんが多い理由かもしれません。
お花ギフトってキラキラした印象がありますが、そういう華美なところではなくて造形としてお花が好きっていう人もいるんじゃないかとずっと思っていました。
実家の生花店での経験ですが、花を贈られて喜ぶ人がほとんどですが、中にはやっぱり困った顔をする人もいたんです。家に花瓶がないという方とか。幼少期から“全員がピンクの華美な花束が嬉しいわけではない”と感じていたので、多様性というか“THE 花束”ではないアイデアに踏み出せたんだと思います。
あの頃苦笑いをしてピンクの花束を受け取っていた人も、ハコミドリなら手にとってくれるかもしれないと。

URM ギフトシーンも含め、昨年はコロナ禍でライフスタイルに様々な影響がありました。周防さんも変化した部分はありましたか?

周防 個展やワークショップなどの催事は無くなりましたし、正直どうしようかなと悩みましたが、ネット通販やネット配信を通してこの1年顧客様に応援していただいたんです。あとこのアトリエ&カフェは琵琶湖沿いのだだっ広い場所に構えているので遠方から車で来ていただいたお客様もいます。お客様もこういう場所を求めていらっしゃるんだなあと感じました。
それと今までは東京や大阪で個展をやっていたんですが、コロナ禍になってネット販売に切り替えるうちに離島の方や東北、四国などに発送することがあって、今までは東京の個展に来られなかった人たちがリピーターになってくださっているのを実感したんです。個展時期は忙しくて商品のリリースも制限されるし、個展期間中にそういった人に会えることもなかった。だから今回そういう方々がいてくださることにとても励まされました。
大変な時代ではありますが、そういう“いいこと”を捉えることができたことが変化でもあり希望でもありました。

それと入学式やお葬式などの中止や縮小もあって実家の生花店も影響を受けたのですが、その中でも“オンライン入学式だけどお花だけは贈りたい” “お葬式には出られないけれどお花だけは贈りたい”という方が来てくださったそうなんです。きっと“花は気持ちを伝える手段”ということに、改めて気づいてくださったのではないかと思うんです。自粛期間に植物の造形や生命力に何かの活力を見出し、お花や植物の面白さを再認識された方も多いのではないでしょうか。そういう人たちが継続して作家さんやお花を使った取り組みをしている人を応援してくれたらいいな、と思います。

URM 最後に、<ハコミドリ>のオススメの置き場を教えてください。

周防 顧客さんたちも色々な場所に飾ってそれを SNSでアップしてくださるんですが、びっくりしたのは複数の方が<ハコミドリ>を飾るための棚をDIYなどで用意してくださって、そこに置いてくださっているんです。
みなさん創造力豊かだな、と思いつついっそ棚とセットで販売しようかしらって思ったりしました(笑)。本来は直射日光は生花にもドライにもあまりいいものじゃないんですが、やはり自然光との相性がとてもいいので気をつけつつ窓辺などに飾っていただけたらと思います。

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Infomation

VOID A PART

周防さんのアトリエ&ショップ。
現在リニューアル中で、2021年3月よりロースタリーカフェをオープン予定。

住所:彦根市柳川町218-1
OPEN HOUR:未定
WEB SITE:http://voidapart.com/

ハコミドリ インスタグラム @ hacomidori

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