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橘川 麻実 MAR 31,2021

みちくさ着物道
【#17】きもののつたえかた


こんにちは!

ドラマ『俺の家の話』最終回を観終わったあと、このコラムを書いています。泣けましたね。

そうそう、ジュジュが「さくらちゃんが今日も着物です~」って見せるシーン。着物にハマっていなかったらスルーするところですが、それすらも凝視してしまうようになりました(笑)。

さて先日、初めて「作品撮り」なるものをしまして、今回はそのお話。

「作品撮り」とはなんぞや?

「作品撮り」とは、フォトグラファーやスタイリストなどが、商業目的ではなく撮影して作品を作るというもの。雑誌の仕事を長くしてきたので、周りの人たちはよく行なっていたのですが、自分とは関係ないことだと思っていました(なぜならスタイリストも一応していたけど自意識はライターだから。ライターの作品撮りってなんだよ?みたいな気持ちです)。

ところが、こちらで着物コラムを書き始めるとすぐに「文章だけでは着物の楽しさを伝えきれない!ビジュアルも大事!むしろビジュアルの方が大事!?」ということに気づきました。

本題とズレますが、幸田文先生の「きもの」は、文章だけで着物の素晴らしさが伝わる名著です。

それで毎回、何かしら写真を…と自撮りや置き撮りしたりと工夫をしていたのですが、すでに自分が自分の写真に飽きているのと、やっぱり「私じゃなくてもっと可愛い子(言い方に語弊)でステキなビジュアルが作りたいな~」なんて漠然と考えるようになっていきました。

そんなある日、着付け練習に付き合ってくれているかわいこちゃんが、3月いっぱい時間があるというではありませんか。「これは!」とモデルをお願いしたところ、OKとのお返事。わーい!

さらにSNSで「初めての作品撮りしようと思うんです」とつぶやいたところ、すぐに何人かのフォトグラファーさんが手を挙げてくれ、今回はヘア撮影などでご一緒している藤記さん(@ fujikimiho_photo_familyetc)にお願いすることにしました。

いきなり迷う

ところが、いざ撮影をするとなると何をどう決めたらいいのか、いきなりの迷いが生じます。

それこそ撮影自体は数え切れないほどしていますし、自分主体でスタッフさんやスタジオを決めることもありますが、それはすべて仕事でのこと。仕事の場合はテーマ(なんとか特集とか、ブランドのタイアップとか)が決まっているので、そこからスタートすればよいのですが、今回はまっさらな状態。

「いったい私はビジュアルで何を伝えたいのか…」という根本のところで、自分の空っぽさや自信のなさに気づくという始末です。

私なんて…空っぽ…(写真はイメージです)

数日間ほど悶々としていたのですが、その状況を打開してくれたのは意外にもこのコラム。ふと第13回第14回で取材したつるさん(@ tsuru.yukari.n)のことを思い出したのです。

ご紹介した通り、つるさんは伝統産業である大島紬の織工さん。取材のときに彼女が織った生地で仕立てた着物を見せてもらっていたのですが「あの着物で撮ったら可愛くなりそうだし、彼女の大島紬への気持ちを伝えられるかも!」ひらめいたのでした。その勢いのままお願いしてみたら「ぜひ!」とご快諾いただき、着物を貸してくれることになりました。

メインアイテム=テーマが決まったことでやっと脳内がクリアになり、フォトグラファーさんと撮影場所や方法を打ち合わせ。同時にコーディネートを考え、モデルさんに着せる練習なども行いました。

はじめての「作品」できました

そんなわけで、できあがったビジュアルがこちら。

大島紬という伝統織りの着物のインナーをシアーカットソーにした、洋装ミックスコーデです。トレンドのアイテムをと組み合わせることで、着物だけど着物っぽくない雰囲気を狙いました。

また帯は「帯結ばない帯結び」に。こちらもカジュアル着物業界ではもはや知られた存在ですが、知らない人が見たら二度見するインパクトがあります。前にポイントがくるのも写真作品にぴったり。

別バージョンはこちら。本当は同じ着物で2コーデで「着回し特集」っぽくしたかったのですが、時間切れで帯と足元、ヘアだけをチェンジ。1.5パターンになってしまいましたが、それも経験になりました。

着付けは修行中で本当にまだまだなのですが、フォトグラファー、着物、そしてモデルが素晴らしいおかげで、初めてのわりにちゃんと可愛い作品ができたのではないかと思います。

「誰が」つたえるのか

さて、初めての「作品撮り」に取り組んだことで、自分の中で意識の変化がありました。

今回の撮影で「誰が、誰に、何を、どう伝えるのか」を整理してみると、

誰が→私(着付けはまだまだ、でもコーディネートを考えるのは好き)
誰に→アーバンリサーチメディアの読者(着物を着ない人がほとんど、でもおしゃれ好きな人たち)
何を→着物可愛いしこんな着方もあるよ、大島紬って素敵でしょ?など
どう伝える→ザ・着物に見えない可愛いビジュアル

となります。

気づいたのは、その中で主語、つまり“私”がいちばん重要だということ。最初は「私“なんぞ”が」という気持ちに囚われていましたが、途中から「”私”がやるなら」という意識が高まってきたのです。

つまり、例えば大島紬という素晴らしい着物をきちんと伝えるのであれば、腕の良い着付師さんがきれいに着付けしたほうがいいに決まっています。でも私がやるなら、着物も洋服もまぜこぜで、着物に興味がない人が目に留まるものを作らないと意味がない。それができるかは分からないけど、それを目標に自分を信じてやるしかない(大げさですが)。

元来「依頼されたものをきちんとやる」のが得意なタイプなので、自主的発想(クリエーションともいう)を人前で披露することには多くの勇気を必要とします。それでもこの連載のおかげで自主的発想の文章を書くことには少し慣れてきました。それと同じことが「作品撮り」にも言えるのだなと。

必死なところ。撮影自体は和気あいあいとできました。

と、書いているうちにめっちゃ長く&固くなってしまいました。ホントは「可愛いでしょ~!」だけで伝わるといいのですが、これも着付けと同じく今後磨いていきたいと思います。

ではまた!

PROFILE

橘川 麻実 Writer & Editor

ライター歴20年。ストリートファッション誌にてキャリアをスタートし、ファッションの第一線…ではなく第三線ぐらいに地味に生息。足を使った情報収集がモットーです。

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