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橘川 麻実 OCT 06,2021

みちくさ着物道
【#20】着物はサステナブルだけど、○○○しい


こんにちは!

気がついたらこのコラムが連載20回目を迎えておりました~!読んでいただいている皆さま、ありがとうございます。

さて、もはや目にしない日がないぐらいの「サステナブル」という言葉ですが、着物界隈では「着物こそ、昔からサステナブルだった」という声に溢れております。

かいつまんで説明しますと、着物は一反の細長い生地からパターンを切り出し、それを仕立てるのですが、縫ってあるものを解くと、また同じ“反物”の状態に戻せるのです。

着方は違えども、形はほぼ同じ(喜多川歌麿「青楼六家選」「扇屋花扇」より)

「洋服だってそうじゃん」と思われるかもしれないですが、洋服は切り取った残りが出るのと、その残りを取っておかないといけないので、戻すのはあまり現実的ではないですよね。

着物の場合は、汚れたパーツをひっくり返して見えないようにしたり、お下がりにするときにその人のサイズに合うように仕立て直したりなど、フレキシブルに布を使い回すのが戦後ぐらいまでは、当たり前だったのです。

がしかし令和の今、私たちがフレキシブルに着物を生かすためには外せないことがあります。

それは……縫えること。

いや、私だって縫えないことはないですよ、でもそれは半衿をつけるとか、ぞうきんを縫うとかパンツの裾上げレベルで、洋服も遠い昔に家庭科でパジャマを縫った記憶…ぐらいなもの。

縫えないことには、フレキシブルもサステナブルもあったものじゃありません。

そこで“サステナブルな私”を目指すため、とあるところへ行ってまいりました!

初めての和裁教室へ

訪れたのは東京の下町、曳舟にある「仕立て直や」さん。

金髪の和裁士さん

こちらを主宰する坂田直さんは、和裁士として活躍しながら、キセカエというショップをしたり、イベントなどもされているアグレッシブな方。

ROBE JAPONICAさんのインスタグラムより

まさかの、KISS柄の着物も仕立てちゃうという、自由なマインドの持ち主です。

そんな坂田さんのところへ持っていったのは、以前お友だちから「よかったら着て」といただいたウールの着物。

可愛いのですが、裄(腕に対する着物の袖の長さ)が短いので、直せたらいいな~と思っていたのです(他にもそういう着物はいっぱいあるが、初回から絹を縫える自信がなかったというのもある)。

袖の裏側をめくるとあまり折り込みがなかったので、2センチぐらいしか伸ばせないかな~と思っていたのですが、先生いわく「身頃側からも出せるよ」とのこと。

という訳で、さっそく和裁開始です!

いきなりの壁、壁

まずは和裁道具の説明から。

初めて触れるものがたくさん!

左の本のようなものは「へら台」といって、ヘラで印がつけられるように厚みのある紙でできたマットのようなもの。その隣の赤い木にピンチがついているのは「くけ台」で、ピンチ自体は「懸吊機(けんちょうき)」というのだそう。アイロンは「こて」と言い、ものさしは「尺」と呼ぶのだとか。

そして「和裁は鯨尺で測るので」と見せてくれた相対表がこちら。

おっと……私の苦手な数字…。

袖を伸ばすには一旦、外して縫い直すのですが、そのためには計測が必要です。「仕上がりが68cmになるということは179分だから…」という説明が右耳から左耳へサーッと抜けていってしまう私。

この日は、他にも生徒さんがいたのですが「ここが何寸ってことは、ここから〇〇〇の長さを引いて…」という声が聞こえてきます。

もしや、和裁って計算いっぱいする…?と不安に思ったのが壁その1。

それでも言われたとおりの位置に印をつけ終わり、いよいよ縫ってみようとなったところでもうひとつ、大きなことに気がついたのです…。

私って、左利きじゃん。壁その2。

「どちらでやってもいいですよ~」と慣れた口調の先生に思わず「右でやります!」と元気よく答えた私(その後、どんな苦労が待っているかも知らずに…)。

初めての和裁をする私

さっそく、くけ台に布をセットして縫い始めます。

くけ台はL字になっており、棒の上に座って自重で固定しながら縫う姿は、和裁してる~!という気分になれて楽しい。がしかし、右手で針を進めることが既に難しすぎて、亀の歩み(いや、亀よりだいぶ遅い)。

そんなわけで、2時間の教室でまさかの片腕分の15センチ、いや39分(ぶ)すら縫えずタイムオーバー。そこで家でもやってみることに。

くけ台がないので猫がいつも座っている椅子に、紐と洗濯ばさみをつけてみました

とにかく手が“生まれたての小鹿”状態で、まったく思うように動かないのですが、これはひたすらやるしかないのだろうと腹をくくり、4回ぐらいやり直して、なんとか両袖の習ったところまで完了させました。

正直なところ、袖なんて1回で直せるんじゃないかと甘い考えを持っていたのですが、完成まではまだまだ時間がかかりそう。せっかくなのでその道のりをコラムで書きながら、頑張ろうと思います。

というわけで、今回のタイトル「着物はサステナブルだけど、」のあとに続く言葉は「むずかしい(でも楽しい)」でした。

ではまた!

PROFILE

橘川 麻実 Writer & Editor

ライター歴20年。ストリートファッション誌にてキャリアをスタートし、ファッションの第一線…ではなく第三線ぐらいに地味に生息。足を使った情報収集がモットーです。

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