外部サイトへ移動します
水野 春奈 DEC 09,2020

知ってたらちょっと嬉しい“日本”の何か
第7回「嗚呼、クラシックホテル」


歴史あるクラシックホテルにキュンキュンして仕方がない。

ほとんどのホテルが大正から昭和初期に創業し、関東大震災や第二次世界大戦をくぐり抜け、当時の姿をほぼ今に残すクラシックホテル。文化財や産業遺産などに指定されている各ホテルの佇まいは洋風や和洋折衷。一歩足を踏み入れれば、あっという間にタイムトリップ。波乱万丈な日本の歴史の波を乗り越えたホテルが今に生きている、という事実。なんと素晴らしいことだろう。

そしてもう一つ。キラキラなシャンデリア、赤絨毯が敷かれた廊下、大理石で作られた階段など、荘厳な空間に身を置くと、自分が映画やテレビの世界に迷い込んでしまった気分になる。そして、誰に頼まれることなく「私、おじい様を殺してしまったの!」と、映画『Wの悲劇』を勝手に再現するのだ。庶民の私を一気に女優に(←偽物です)変える異空間、それがクラシックホテルの魅力であり、魔力である。

日本生まれ、日本育ちのクラシックホテル。今回はクラシックホテルを愛し始めた経緯も含め、新たに出会ってしまった「やりたいこと」について紹介したい。

きっかけは5月のブルーインパルス

仏像をはじめとする寺社仏閣をこよなく愛する私には「古きものを重んじる」という避けられぬ偏りがある。東京上空をブルーインパルスが飛んだ5月、私は赤レンガの東京駅舎目の前でその雄姿を眺めていた。

東京駅上空を飛ぶブルーインパルス。胸アツだった5月のある日

1915(大正4)年に開業した「東京ステーションホテル」は、文化財に指定されている赤レンガ造りの東京駅丸の内駅舎の中にある。東京駅丸の内駅舎といえば東京を代表する風景のひとつであるアレ! そしてドラマ「さすらい刑事旅情編」のオープニングのアレ!
(※ピンと来ない方は動画検索すると「さすらい刑事 旅情編パートⅡ」のオープニング映像がヒットするはず。ちなみにサブタイトルは「殺意のブルートレイン 城下町から失踪した婚約者」である)。

クラシックホテル処女を捨てた夜

気になりまくりだった東京ステーションホテル。そして、“ホテルの朝食が実に充実している”という情報を耳にし「文化財に宿泊しつつ、素敵な朝食も!これぞ真の一石二鳥だ」と本格的に宿泊を計画。「東京駅前を行き交う人たちを上から見下ろせるよ!(上から目線の意味が違う)」と友人を誘い、ついに宿泊が現実に。

チェックインの前に外観を撮影。とにかく「重厚!JUKO!ジュウコウ!」と無駄に連呼したくなるほど、その佇まいに胸の高鳴りは最高潮。高い天井に驚いた客室はクラシカルな雰囲気が漂いまくり♡ お部屋の真下には東京駅丸の内駅前広場、その先には皇居へ繋がる行幸通りがまっすぐと伸びていた。

我らの客室の斜め前には作家・松本清張が愛用していた客室が! 噂ではこの客室で『点と線』の時刻表トリックを着想したとのこと(※諸説あり)。客室近くの廊下には過去に連載された『点と線』第1回の誌面が飾られていた。2時間サスペンス大好物につき興奮は止まらず。思わず昭和のサスペンス女優口調になり、毒を盛っただの、盛られたの、もしくは自分の完全なアリバイを証明したくなる勢いに……。他にも江戸川乱歩や、川端康成、内田百閒などの文豪にも愛されまくりだったという。ここで原稿書いたら、さぞかし最高だろう。

客室備え付けのメモには原稿用紙のマス目が。あっという間に文豪気分

テンション上昇につき、なぜか東京駅の大丸で定価8,800円のシャインマスカットなどを購入。そしてコースディナーを食べ、飲めないカクテルを飲み、いつの間にか寝落ちした最高の夜。翌朝「寝相が…」と報告あり。そして朝食会場の素敵なダイニングルームで“ある物”に出逢うことに……。

はしゃいでる自分の姿を撮影してもらう。この天井の高さ、尊い

出逢ってしまったパスポート

駅舎の屋根裏にあるアトリウムで噂どおり最高な朝食(←最高。白米ラバーなので、釜炊きご飯をめいっぱい食す)を堪能した後に、隣接するホテルのショップを眺めていたら「クラシックホテルパスポート」なるものを発見。スタッフに「これは?」と、つい取材を開始。

「クラシックホテルパスポート」は、東京ステーションホテルも含めて、第二次世界大戦以前創業もしくは建設され文化財や産業遺産などの認定を受けた、現在も営業中の「日本クラシックホテルの会」に属する9つのホテルに宿泊し、有効期限3年の内に各ホテルのスタンプ3個(3泊)で食事券、9個(9泊)で宿泊券がもらえる、頑張ればご褒美がもらえる、パスポートという名のスタンプ帳だ。

9つのクラシックホテルは「日本クラシックホテルの会」のホームページをご参照ください。
http://www.jcha.jp

爪で傷をつけたくないタイプの表紙。丁寧、丁寧に

はい、即購入。
やります! やります! クラシックホテルめぐり。

ナポリタン発祥、マッカーサーや石原裕次郎に所縁があり、サザンオールスターズやクレイジーケンバンドの楽曲に登場する【ホテルニューグランド】や、ドラマ『やすらぎの郷』プレイができるであろう、ドラマのロケ地だった【川奈ホテル】(おそらく耳元で鳴るのは中島みゆきの主題歌)など、私的にいろいろな意味で魅力的なホテルだらけ(もちろん歴史ある建造物、美しいクラシックホテルであることは大前提)。

こうして私の「クラシックホテル修行」が始まった。個性ある9つのクラシックホテル、目標はもちろんコンプリート。3年間で9個集めて、宿泊券をいただき、未来の伴侶と一緒に訪問することを目標にするかと思ったが、期限内に伴侶が見つかる気が全くしないので、即却下。でもコンプリ―トは目指すつもり。いや、やる!

ひょっこり蒲郡クラシックホテルへ。ザッツ重厚!

もうすぐ本格的な冬が到来する。旅ができぬ悲しみを『桃太郎電鉄』をやり込むすることで己を癒すしかない(とはいえ忙しくてあまりできていない)日々。どこでも行けちゃうカードが欲しい。

私がクラシックホテルパスポートをコンプリートする夢はまだまだ遠い。「暇と金、暇と金……」とつぶやきながら、寝落ちする日々はまだまだ続く……。

PROFILE

水野 春奈 Writer & Editor

テレビ情報誌記者を経て、仏教美術を学ぶため京都の大学に社会人入学。長年にわたり、寺社仏閣や歴史にまつわる広告などの編集制作を手掛けつつ、エンタメ関連の執筆も多数。趣味はストイック寺めぐり、新宿三井ビル会社対抗のど自慢大会鑑賞、特技はイントロクイズ。好きな食べ物は白米とタマゴサンド。

FEATUREおすすめしたい記事

page top