知ってたらちょっと嬉しい“日本”の何か
第4回「ハードル高めの極上アイス」
新幹線で食べるカチンコチンなアイスクリームが大好きだ。
実家暮らしの頃、福島県に住んでいた私はお盆や年末年始には母方の実家がある東海地方へ向かうことが多かった。福島~(東北新幹線)~東京~(東海道新幹線)~名古屋、と2本の新幹線を乗り継ぐ中、どちらかの新幹線で車内販売のアイスを食べることが恒例行事だった。子供ながらに「新幹線のアイスはいつものアイスよりも格段に美味しい」と主張し、母にアイスをねだっていた。お母さん、ありがとう!(この場を借りて、母に感謝の言葉を)

食べるまで待つ!カチンコチンで憎いヤツ
新幹線の中で食べるアイスは特別だ。とにかくカチカチ。「プラスチックのスプーンが割れるんじゃないか」と心配をしつつ食べるアイスは他にはない。シンプルなバニラの味はとても濃厚。すっかり大人になってしまった今でも、新幹線のアイスは好物のひとつ。

先ほどから当たり前のように「新幹線のアイス」と繰り返しているが、一応、詳細について紹介しておくと「新幹線のアイス」とは名古屋製酪株式会社が製造している「スジャータ スーパープレミアムアイスクリーム」のことだ。
「スジャータ」といや“褐色の恋人”こと、コーヒーのお供であるコーヒーフレッシュの代名詞。ラジオリスナーにとっては「スジャータ、スジャータ♪」と、かつては時を知らせてくれる存在だった(即座に浮かばない方は動画等を検索していただければ)。
そして、商品名の由来にもなっているスジャータは、仏教学では「悟りを開く前の釈迦に乳粥を供養した娘の名前」でおなじみ。私は仏教学科出身ゆえスジャータと聞くと、コーヒーフレッシュよりも先に釈迦と娘が浮かぶ……、実際には釈迦もスジャータも見たことないけど。
いきなり遠い存在になった新幹線のアイス
一部では「♯シンカンセンスゴクカタイアイス」などと呼ばれている新幹線のアイス(なぜそんなに硬いのかはここでは割愛する)。しかし現在は、すべての新幹線で食べれるわけではない。今やちょっとハードルが高くなっている存在なのだ。
というのも、時代の流れと共に多くの新幹線での車内販売は縮小化あるいは廃止され、同時にアイスクリームの販売も…(涙)。この動きは私がよく乗車する東北新幹線でも見られ、新幹線のアイスを食べる機会はガクンと減ったわけである。悲しい。

ちなみに東海道新幹線のぞみ号・ひかり号や、一部の新幹線では現在も車内販売継続中なので、たまに乗車する際には「アイスクリームチャンス」と張り切ってしまいがちに。「大人げない」なんていう外野の声は一切シャットアウトだ!
東京駅ホームにて「…やっと会えたね」
とっても便利なインターネットを眺めていたら「東京駅(の限られた売店)で新幹線のアイスを買うことができる」という情報が(※他にも、名古屋駅ホームの売店や、愛知県内の観光スポット、一部スーパーやネットショッピングでも購入できるらしい)。

本来なら、新幹線の中でしか食べることができないあのアイスを新幹線に乗らずして購入可能とな。普段は愚鈍な私も、こういう時の行動は本当に機敏。すぐに例の売店があるという新幹線ホームへ。そこにはあのアイスが!
「…やっと会えたね」と、一部ではおなじみの懐かしいフレーズを呟いてしまいそうになった。売店の冷凍ケースの中に並ぶ新幹線のアイスを即座に購入、ついでにベルギーチョコレート味もゲット。そして溶けないように脇見もせずにダッシュで帰宅。

お風呂上がりに万全の体制で新幹線のアイスを食べた。確かにまろやかで濃厚で美味しい。アイスは人を幸せにする存在。そして、家でこのアイスを食べる不思議な感覚。しかしやっぱり何かが足りない…。
新幹線のアイスは、新幹線の中で食べるからこそ美味しいのだ。味がどうこうという話ではなく、雰囲気的に。余計に車内の座席で食べる新幹線のアイスが恋しくなった。ということで結論は「旅がしたい!」となる。結局、そこに尽きる。
どうにもこうにも自粛ムードが漂う今、無事に世の中が通常運転に戻り、好きな場所へ楽しく旅ができる日々が戻ってきますように……と、祈りを込めて。
早く、流れゆく車窓を楽しみながらカチカチのアイス食べたいな。
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