~On The Road~ 車の生活 Vol.23
どうやって生活しているのか? 【仕事編⑧DJで食えるんですか?】

家に住むことを辞め、
車で生活するDJ河合桂馬のVanlifeダイアリー。
(第23話) 【仕事編⑧DJで食えるんですか?】
前回の投稿場所の那覇空港から、羽田→庄内→羽田→横浜→羽田→庄内→原宿→茅ヶ崎と移動し、今夜は渋谷のVISIONでDJなので、現在は中目黒にいます。
独立1年目

2015年4月、勤め人を辞め、人生で初めてフリーランスとなりました。
しかし、定期的なDJの仕事のあてもなく会社を辞めたので、初めのうちは仕事がない恐怖との戦いでした。
まずは、フリーランスになったという挨拶を今までお世話になったかたがたにしていると、イベントなどで親交のあったPR会社の社長のかたから、
「平日の空いてる日で良いから、PRの仕事手伝ってよ!独立したての時は、少しでも安定した収入があると、気持ちも安定するもんだよ。」
とお誘いいただき、業務委託契約を結び、アパレルブランドのPRのお仕事をやらせていただきました。
週一回ペースで会社に出勤し、自分のスケジュールに合わせて仕事させていただけたことが非常にありがたく、安定してお金をもらえることへのありがたみをしみじみと感じました。
独立1年目を終える頃にはDJの仕事もだんだんと忙しくなってきたので、PRの仕事は1年間で契約を終了とさせていただきました。
フリーランス1年目の不安定な時期を支えてもらい、とても感謝しております。
DJで食えるんですか?

初対面のかたに職業はDJですと伝えると、
「DJだけで食えるんですか?」
と切り返してくる人がたまにいます。
さてこの質問、ミュージシャン、フォトグラファー、作家、陶芸家、画家、芸人、映画監督などなど、、、アーティストや表現者と呼ばれるジャンルの仕事をしている人は、
必ず聞かれる質問だと思います。
でも、冷静に考えるとこの質問っておかしいですよね!?
友人知人や、今までお世話になっているかた、普段仕事の取引があるかたからこの質問をされるのであれば、生活を心配して聞いてくれていることが理解できるので何も疑問はありませんが、
初対面の人からこんなこと聞かれるのってだいぶおかしいんですよ。
例えば、サラリーマン同士の初対面の儀式、
「名刺交換」で例えてみましょう。
Aさん「初めまして、海山商事のAと申します」
Bさん「頂戴致します。犬猫出版のBと申します」
Aさん「頂戴致します。この度は弊社とのお取り引きありがとうございます」
Bさん「いえいえ、こちらこそありがとうございます」
Aさん「Bさんは犬猫出版の総務部ご担当なんですね」
Bさん「はい、そうです」
Aさん「名刺を拝見すると係長職でいらっしゃいますが、御社の係長クラスの給料だけで食っていけるんですか?」
Bさん「。。。。。」
という感じです。
おかしいですよね!?
でも、アーティストと呼ばれる人には、初対面にも関わらず平気でこの質問をぶつけてくるのです。
現在は企業に勤めていませんし、独立1年目にお世話になったPR会社との業務委託契約を辞めてから一度もアルバイトをすることもなく、おかげさまでDJで食えています。
初対面の人からの
「DJだけで食えるんですか?」
という質問のジャブに対して、
「はい。ちなみに、一部上場企業でも倒産やリストラをしているこの時代に、あなたのような名もない零細企業の平社員で、キャリアもなく手に職もなく、この先一生食えるんですか?」
と、クロスカウンターを喰らわせてやりたい気持ちをぐっとこらえて、
「はい、おかげさまで」
と、笑顔で大人の対応を心がけております。
ギャラはいくら?

「一回のギャラっていくらぐらいなんですか?」
これもたまに聞かれる質問です。
仕事を頼みたい人や、仲の良い人に聞かれるのならいいのですが、
仕事を依頼する気がないのに聞いてきたり、初対面にもかかわらずいきなり聞かれることもまれにありますが、この質問もやはりおかしいです。
それでは、はじめて食事をしに行ったフレンチレストランで、食後にシェフがテーブルまで挨拶に来てくれたシチュエーションで例えてみましょう。
シェフ「本日はありがとうございます。お料理はお口にあいましたか?!」
客「はい、こちらのレストランは初めて伺ったのですが、どの料理も非常に美味しくて、妻も大感激でした。」
シェフ「嬉しいお言葉ありがとうございます」
客「実はここから家が近いので、通わせて頂きたいと思います」
シェフ「そうでしたか、ぜひまたいらして下さい」
客「ちなみに、今回のフルコースの粗利額はおいくらなんですか?」
シェフ「。。。。。」
という感じです。
おかしいですよね?!
例えば、サラリーマン同士の名刺交換の際に
「ちなみに月給はおいくらですか?」
と聞きますか?
ヘッドハンティングしてくれるなら言いますよ!
と思いませんか?
実際のところ、1回のギャラはイベントによりけりで、DJプレイ時間や、持ち込み機材の有無などでも変わるので、なんとも答え難い質問なのです。
ノーギャラ

「ギャラは交通費程度になってしまうのですが、、、」
会社を辞めて独立してからは、このような依頼はほとんどなくなりましたが、以前はまれにこういったDJ出演の依頼がありました。
この依頼もおかしいですよね?!
例えば、とあるイベントでお弁当を電話で手配するシチュエーションで考えてみましょう。
イベントスタッフ
「弊社主催のイベントを開催するので、お弁当をお願いしたいのですが」
弁当屋「ありがとうございます。お届けの日時と場所はどちらになりますか?」
イベントスタッフ
「来月の11日に、代々木上原の弊社までお届け頂きたいのですが」
弁当屋「承知しました。お弁当の種類と個数はいかがなさいますか?!」
イベントスタッフ
「唐揚げ弁当を50個、塩サバ弁当を50個、幕の内弁当を50個お願いしたいのですが、実にお恥ずかしい話しなのですが、今回のイベントの予算があまりなく、配達のガソリン代と駐車場代をお支払いしますので、なんとかご手配いただけないでしょうか?」
弁当屋「。。。。。」
おかしいですよね?!
これを簡単に言うと、
「弁当タダで150個持ってこい!」
ということです。
これをDJに置き換えると、
交通費程度のギャラということは、移動コストは負担しますが、あなたのDJプレイにはお金を払う価値がありませんと言われていることになります。
酒の席で相手がミュージシャンだとわかった途端、
「1曲歌ってよー!」
と言ってしまう人がいますが、
居酒屋で、
「獺祭を1杯試飲させてもらえますか?」
と頼む人は聞いたことがありません。
モノが介在しない仕事は、タダで気軽に頼まれてしまうのです。
日本には、チップという文化がないので、モノのやりとりが発生しない、サービスに対してお金を払うという感覚が薄いのではないかと考えています。
まぁ、結局何が言いたいかというと、
色々な困難もありますが、おかげさまで今のところDJで食えております。
日頃支えてくださっている皆様に感謝です。
ありがとうございます。
文・写真:河合桂馬
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