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牧野 広志 JUL 22,2019

下町。Vol.20

平成のジャンヌダルクと祇園祭。


しかし暑い、急にじわじわと蒸し暑く雨も降ってきた。

昨年の今頃は先斗町 鴨川の床で鱧とビールで喉を潤わしていた時期でもある。

花街先斗町と言えば・・

そう、

女将さんの「もうお店暖簾下ろすしな」

と、自分の耳を疑ったあの日から早半年が過ぎた。

あれから・・・

日々地域と密着した場所にいると、薄々女将さんの動きにはなんとなく気がついていた、、、

そりゃそうだ、先斗町「山とみ」の暖簾を下ろしてからも女将さんは毎日の様にコーヒーを飲みに来てくれていたのだ。

どうやら、ひと段落つき新しいお店をはじめそうな気配が・・・

梅雨入りと共に始まった祇園祭。

京都に住む価値の半分は祇園祭だと、ある人が言っていた。
確かにその言葉は過言では無いと言って良いだろう。

祭りのスタートはそりゃ華やかであり、隠れた歴史と隠れた行事ごとの数々で一カ月間は埋め尽くされているのだ、

世に言う祇園祭とは違い、本当の祇園祭は7月から一カ月間続くのです。

馬も歩けば行列も歩く、

何の騒ぎか、通行止めと交通規制、うんうんこれでこそ京都の街は間違い無く祭りの滑走路に入ったのだ。

さて、鉾建て山建ても始まり、あちこち挨拶回りで大忙しな皆々様、

そんな千年以上にも及ぶ恒例行事の中、あの女将さんが帰ってきた。

戦いのリングに立つかの様にカウンターの前に戻ってきたのです。

それは梅雨入りする少し前に直接頂いた一枚の挨拶状。

そこには、

先斗町で五十五年の歴史の思いが重みある一言と、そしてお詫びが綴られていた。

令和元年 六月吉日。と、

平成のジャンヌダルクと呼ばれた女将さんが、令和元年の祇園祭に店を開ける。

「山とみ」が半年と言う時を終え先斗町から柳馬場通六角下る、錦市場の近くに、

「祇園祭の頃にはお目にかかれるのを楽しみに。」と、書かれていた。

嬉しい、正直嬉しい。

毎日コーヒーを飲みに来てくれ、可愛がってくれた女将さんが再びお店に立つなんて、

嬉しいに決まっている。

この一通のご挨拶状には、開店の日時も達筆に書かれていた、、、。

コンチキン♪と鐘の音、

鉾町にご挨拶回りに行ったり、ちょっと様子を見に行ったり、お呼ばれされたり、 目に映る光景は長い年月の日常でありこれぞ ”ザ・京都” なのでしょう。

そうこうしているうちに、新生「山とみ」さんのオープンが近づいてきた、

リニューアルオープンは七月十一日、

その前日の七月十日、鉾建ての日に試食会と言う名のレセプションが執り行なわれた、

時刻は夕方前に2時間ほど、

お声が掛かった私は、普通に皆さんこの2時間の間にご挨拶に来たり、軽く食べたり飲んだりと良くあるレセプションだと勝手に思い込んでいた、、

すると私の携帯が鳴る・・・

「今どの辺りにいますか?分かりにくいのでお迎え行きましょうか」と、同じくお声の掛かった局長から、、、

「ん?」

「大丈夫です。もう着きますよ。」とレセプションスタート時間から遅れる事5分過ぎ、、、

お店のドアをガラガラガラと開けると・・・

皆さんお待ちです、、、

お席はこちらですと。

あー、、やってもーたー・・・。

そう、レセプションは試食会であり、顧客3000人と言われる「山とみ」、その女将さんが選んだ20人程のみで行われた食事会なのだ、、、遅刻、、ヤバい、、、

・・・恐縮です。

恐縮さを思いっきり笑顔で跳ね除け先ずはお飲み物から、

そして順番にお料理が各自に運ばれてくる、

ここでタイミングを見計らって女将さんに「お母さんおめでとうございます。」と声をかけると、
「まぁ、ありがとう。」と、なんとあの懐かしのニコリが戻って来ている。

いやぁ、良かった。本当に良かった。

このニコリ笑顔と一言で私の食欲に火が付いてしまった様です、、

鱧に鯛に環八 刺身から、

串かつ、茄子と生麩の田楽、

山とみと言えばやはり おでん、

鰻と鱧の焼き物、

蒟蒻と山芋の素麺、

京料理をゆっくりと頂く。

これで隣に舞妓はん芸妓さんでもいようものなら・・・

なんせ元お茶屋の「山とみ」さんなのでそんな日も近いだろう。

お店の雰囲気もなんだか前と変わらない感じをコンパクトに仕上げている、

柳馬場通にいるのに先斗町にいる錯覚を起こしてしまう店作りと細い路地、、、

こりゃまた通ってしまいそうだ・・・

そうこうしているうちに山鉾も建てあがり、
さっそくいろいろと見に回る。

長刀鉾町さんに行き、二階に上がり、鉾に乗せて頂く。

くじ取らずの先頭 長刀鉾から見る景色は生き神様が見る景色。

お稚児さんの見る風景を令和元年に目と心と身体の感覚に焼き付ける、二度と来ない令和元年、

なんとも贅沢な時間。

粽を頂き頭を深く下げ長刀鉾さんを後にする。

宵々々山から宵々山、宵山、山鉾巡行へと続く祇園祭前祭。

2時間待ち3時間待ちと言われる「膳處漢ぽっちり」毎年祇園祭前祭限定「しみだれ豚まん」を差し入れで頂き、嬉しくかぶりつく。

毎年恒例の美味しさ。

鉾町の皆々様は毎日が行事ごと。

河原町はあっちもこっちも嬉しい行事ごとの数々、
寺町錦のURで松井文さんの写真展、久しぶりに逢った文さんはキリッと大人になっていた。

ドリーがアウェイでコーヒーを淹れる、
近所の筆者はすぐに顔を出しに行く始末(笑)。

私達近くの地域もいろいろな行事ごとが続く、、

当然、その中にはいろんな企業等々のビジネスもある、

それがなければ成り立たないのも事実であろうかとも思う、

伝統をきちんと守った上でのビジネスモデルを作ってくれればそれはそれでありがたい話しである、

伝統と文化を食い物にする事だけは避けて欲しいと願うばかりである。

そして沈黙を守る。

そうこうしているうちに、

山鉾巡行も無事終わり、清められた街には神輿が出る。

これぞ祇園祭の醍醐味であろう、

いよいよ滑走路から飛んだ街が更に急上昇をする。

ホイットー♪ ホイットー♪ 三若、四若、錦、の掛け声と共に街全体が一体化する日、

神幸祭で神輿を担ぐ者達の熱い思いは熱気となって伝わってくる。

特別な夏、

京都のしきたりと奥深さは誰も教えてくれない。自分で経験し覚えるしかないのだ。

令和元年の祇園祭に平成のジャンヌダルクと呼ばれた「山とみ」の女将さんが帰ってきた。

次のこの時代に女将さんは何と呼ばれるのだろう。

令和の◯◯

楽しみです。

そして、週が明ければ祇園祭後祭が始まる。

特別な夏はまだまだ続く。

PROFILE

牧野 広志 TRAVELING COFFEE 店主

1966年生まれ。
94年渡仏、90年代をパリ ルーアン リヨンで暮らす。
2002年 帰国後、京都の新しい情報発信空間の提案者として文化と地域に密着中。

-TRAVELING COFFEE -
昭和2年築の木屋町 元・立誠小学校 職員室で営業していたTRAVELING COFFEE が耐震補強工事の為に高瀬川沿いに建てられた仮設の立誠図書館内で営業。
図書館の選書はブックディレクター「BACH」幅允孝氏。
珈琲はブレンド2種類に加え、シングルオリジンは京都府内の焙煎所を毎月選び焙煎家と話し合い常にオリジナルを4種類程オーダーメイド。

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