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牧野 広志 APR 12,2019

下町。Vol.17

桜吹雪とノーボーダー。


そんな事無いて言ってくれよ。

4月、京都の桜は満開の香りに満ちている。

観光地や有名所はもちろん美しい薄いピンクが霧の様に全体を覆う、

訪れる入洛者の口元からは決まって「綺麗だねぇ」と言う言葉が聞こえてくる、他国の言葉も入り交じり、

さて、ホーム下町にも毎年心和ます花が咲く。

そんな中、、、

春の匂いと共になんだかキナ臭い匂いも、、、

南北 河原町塩小路から河原町七条、
東西 須原通から河原町通、
この小さなブロックこそ下町最強と私が思うブロックである。

河原町通より、西のブロックはほぼほぼ地上げも終わり残すところ数件と言うところまで来ている、、

一日二日目を離すと昨日あったはずの建物が無くなり、建て壊し工事中にはなんだかおかしな看板が立てられる、
「テロ警戒中」。
なんとも物騒な看板である・・・

この様な看板があったとして、おそらく誰も気にかけず通りすがるだろう、

河原町七条と言う京都駅の真横であり、今やホテルなど宿泊施設が山ほどある地域なのに、、、

その通りから一本東に入る、

いよいよこのブロックにも宿泊施設が増えてきた、七条からの入り口にはお洒落な店もできたり、じわじわと北側から攻めて来ている、、、。

ずいぶんと地上げも進み、どんどんネット策で囲まれてきた、

鴨川から西が見えにくい様に建てられたのではないのか?と思う団地にも空室が増え寂しいオーラが出て来ている、

ここ須原通には、崇仁新町ですっかり全国区となった下町フードちょぼ焼きのレジェンド「トッコちゃん」があった。

数年前にお店は閉めてしまったが、その建物だけは残っておりレジェンド感全開で恐ろしいオーラを放っていたのです、

その「トッコちゃん」の建物がついに取り壊されてしまった・・
この須原通から時代が消えていく、、

目がしらを抑えながら ふと斜め前を見ると「アイ子ちゃん」に暖簾が下がっているではないか、、

あれ?ここ毎日通るのに、、、
ちょっと前から「アイ子ちゃん」の暖簾は下がっておらず、勝手に地上げで店じまいしたんだと思い込んでいた、、

いつもの様に店前に車を停め、店内に入る。

私「え、開いてるやん!」

店主「おー、久しぶりやなー。あいてんで!」

私「いつ通っても閉まってるやん」

店主「なんでや、火曜以外は開いてるし!」

私「え、、」

店主「昼から3時まで、一回閉めて4時半から夜まで開けてるしな!火曜が休み覚えといてや」

私「良かったー、店閉めたんかと思ったわ」

店主「まだ閉めへんでー」

いつもの会話が戻ってきた。

かなり嬉しい。

さて、いつものを焼いてもらう。

スジ、油かす、そば入り、玉子は当然半熟仕上げ、

辛ソースをたっぷりかけて。

トンクと一味違う七条内浜スティーロ!
う、うまい!
やっぱりうまい!!

そうこのストロングストリートで唯一「アイ子ちゃん」だけが健在なのだ。

これもあとどんだけ食べれるのか・・・
(食べると言うよりも体内に入れると言う感じ。)

ここでもう一度言おう。

そんな事無いて言ってくれよ。

と、

そう始めに言った一言、

キナ臭い匂い、、

最近、この地上げ地区の空き家の窓が数件割られると言う事が相次いだ、

営業健在である お好み焼き屋の両隣の窓が割られると言う、

すぐさま黄色いテープで現場の建物はぐるりと囲われた、

「特別警戒実施中」と。

「すべてはここからはじまった」
なんとも数十年前を思い起こされる様な出来事、

子供のいたずらか、空き家に誰かの物欲しさからの単純な出来事であれば良いのですが、、、。

過去を持つ地域だけになんだかいろいろと考えてしまう、

と、言ってもそこまで考える世代も減っているのですが・・・

じわじわと南北両方から整備されている土地、

あとはこの数百メートルの中心地区だけ、、

そこにはまだ古い民家が残っている。

その民家の回りは既に更地になり、宿泊施設が増え新しい店ができ、
たくさんの人が通る様になった、、

もし、もしも、もしもだ、過去の歴史を消したいと言う紳士達によって事が起こっているのならば、

いったい誇りと自覚はどこに行ってしまったのか、と、深読みしてしまう人々もいる事は確かである。

この後やってくるであろう出来事に心の準備が必要であろう。と。

そしてあまり過剰に反応しない事も正解なのかもしれない。と。

アナザーキョウト、

ノーボーダー、

桜は散る為に咲く。

散った桜は吹雪の様に舞い道や小川に埋まる、

寿命が短いと言われる老いた桜は新しい若木に植え替えられ再び花を咲かす、

散って花を咲かす。

次の春にはどうなっているのだろうか、

散ったまま終わらないのがこの町の掟。

その原動力は長い歴史の中で形成され生まれたのだ。

次に咲く桜を楽しみに待とう。

そして、今年も桜は満開。

PROFILE

牧野 広志 TRAVELING COFFEE 店主

1966年生まれ。
94年渡仏、90年代をパリ ルーアン リヨンで暮らす。
2002年 帰国後、京都の新しい情報発信空間の提案者として文化と地域に密着中。

-TRAVELING COFFEE -
昭和2年築の木屋町 元・立誠小学校 職員室で営業していたTRAVELING COFFEE が耐震補強工事の為に高瀬川沿いに建てられた仮設の立誠図書館内で営業。
図書館の選書はブックディレクター「BACH」幅允孝氏。
珈琲はブレンド2種類に加え、シングルオリジンは京都府内の焙煎所を毎月選び焙煎家と話し合い常にオリジナルを4種類程オーダーメイド。

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