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落合のダッチワイフ JUL 30,2020

Hey!凡な日々 Vol.31
~キングオブコント一回戦敗退について~


ここ最近の「地獄」について

お久しぶりでございます。皆さま、如何お過ごしでしょうか。
聞いてはみたものの皆さまがどうお過ごしかなんてことには、一切の興味がありません。
ないというよりかは、沸く余裕が私にはないのであります。
というのもこのコラムが止まってから、ウイルス、裏切り、親族の病気、人間関係のねじれ、金欠、裏切り、ウイルス②、金欠②、裏切り②、自信喪失、等々が起きてしまい、物凄いスピードで七月末まで駆け抜けたからであります。
始めはウイルス。私は病院の売店で働いていますので、言わずもがなそれなりのことがあり、当初は恐怖におののく日々を送っていたのですが、人間は阿呆でありまして、「慣れ」てきてしまうものです。またこれは人類全体に差し迫っている危機でもあり、私は少し無邪気でそして学がないことから、「赤信号皆で渡れば」的なマインドを奮って、恐怖に打ち勝ってきたのであります。
がしかし、5月くらいに親族(とは言っても血は繋がっていない)の病気がありまして、そこから派生するように、裏切り、絶縁、落合家全体の金欠、等々が勃発しまくったのです。
母親からは定期的に「私は幸せか?」という電話が泣きながらかかってくる始末で、私は「おうおう。」というばかり。
要するに赤信号を一人で渡っているような気分だったのです。

俺の、俺の俺の話を聞け~~。五千文字だけでもいぃい~~~

先の話に戻るが、「私は幸せか?」という母からの問いが苦手である。こういう類の質問をする人間を私は許すことが出来ない。
例え彼女が不幸だったとしても、それはそれで生きて行かなくはならないし、何よりも彼女が幸か不幸かは私が決めることではない。彼女は自分が不幸でないと気が済まないのである。確かに彼女は「地獄」のような時間を今現在過ごしていることに違いはないが、その2LDKの「地獄」を「地獄」なりに、例えば家具を動かしたり雑誌の配置を変えるなどして、住みよい場所にしようとしているのである。その証拠に「あなたは不幸ではない!」と断言してやると、つまらなそうにするのである。
彼女は折角地獄にいるのだからと、それで元を取ろうとしている。貰えるのはお涙くらいだが、そのお涙で満たされるのである。誠に汚い考え方だなと辟易とする。
自らの手でそこから抜け出さなくてはならない。
とは言っても、私にはコラムがある。書くことがない時、私の不幸は輝き始める。
元を取ってやろうかと思う。お涙は一切いらない。心中するつもりもない。
がしかし、知って欲しいというのが正直なところである。

キングオブコント一回戦敗退

ここ数ヶ月で最も不幸だったこと。それはキングオブコントの一回戦で落ちたことである。
「そんなことはテメェで招いたことであって、不幸でもなんでもねえじゃねえか!」という声がハッキリ聞こえたが、それは違う。何故なら、今その声を呑み込んでしまったら、私がとても悲しい気分になってしまうからである。
というのも、一回戦を落選してからまだ数日しか経っていない。傷が癒えていない。生傷。そんな中、コラムを書いているのだ。皆に問いたい。

「ねえ、読み手、私は幸せかな?」

キングオブコントというのは毎年行われている日本一面白いコント師を決めるお笑いの大会である。優勝したアカツキには賞金1000万円、知名度グングン、テレビ出まくり、モテモテ、知らない親戚が増えました~等々、素晴らしいことがたくさんある訳なのだ。特に私が欲しかったのは1000万円と知名度グングンの二つであった。
大会は、一回戦、二回戦、準々決勝、準決勝、決勝とあり、決勝のみがテレビで放送される。
私は一回戦でコケたのである。
これはつまりどういうことかと言うと、ズブの素人同然、またはそれ以下、日本一面白くない(キングオブコントで)可能性アリ、ということなのである。
二回戦まで行けば、日本一面白くない可能性はない。何故なら一回戦で落ちた連中がいるからである。一回戦で落ちた連中とは私のことである。

検出、出来ません

私は自分が日本一面白くないとは思わない。むしろ俺は日本一面白いのではないかとさえ思っている節が無くはない。がしかし、それは私が勝手に思っていることであって、世間の人々はそうは思わない。
出来るなら世間の人々にも、そう思って欲しい。
面白いと思わせたいのであれば、おもろいネタを作りまして、大きな大会に出るなどして、客の腹爆発させるまで笑かして、優勝して、世間様に納得して頂ければよいのである。
キングオブコントに出るということは(私にとって)、自分が面白いと思っていることがどれだけ大勢の人に通用するか、自分の現在地はどこであるのか、ある意味腕試しのようなものだったのだ。
その結果私は、圏外、GPSで検出出来ないような場所、荒れ果てた誰もいない荒野でただ一人立ち尽くしていたのであった。コンビなのに何故一人かと言うと、私がネタを作っているからである。ネタがある程度面白ければ、プレイヤーがどうであれある程度の所までは行けると思っている。相方は演じるということに関して経験がある。信頼している。ますます自責の念に駆られてしまうのだ。
「目的地周辺になりました。ナビゲートを終了致します。」
私達の目的地は決勝の舞台、赤坂であった。
私が相方を連れてきた場所は、人っ子一人いない土が湿った荒野。
ドライバーに責任があって当然である。

孤高の侍芸人

「夜空に浮かぶ満月。男の右手にはA4サイズの一回戦落ちのネタが書かれた台本。男は猫背になりながら月の光を頼りにその台本を熱心に読み直している。
(ここはもっと大きなリアクションで)と赤で書かれたインクが滲む。何故滲む。泣いてなどいない。雨だ。男は一人、荒野に立っている。」

え?なんか落合さんかっけえじゃん!孤高じゃね?侍じゃん!
と、思われてしまうそうだがそれは違う。
ここ最近侍をテーマにした「ゴーストオブツシマ」というゲームに熱中しているからと言って、自ら進んで孤高になったりはしない。
己の意志で孤高になったのと、孤高になってしまったのでは、犬と猫程の違いがある。

世界の人口が私一人になってしまった場合、どうやってお笑いをやればいいのだろうかと考えることがある。鏡に向かって一発ギャグを連続でやって、アハハハハハと自分の腹を爆発させることが出来るのだろうか。それはそれで滑稽で面白いかもしれないが、滑稽だと感じるのは私以外の人間から見た視点を私が持っているからである。
つまりお笑いには第三者が欠かせないのだ。世界で私以外の人間が一人現れたとして、そいつにネタを見せた時、そいつが笑うかどうかで、私が面白いか否かの答えが私の意志とは別に出てしまうのである。
私の目的はそいつを笑わせることで違いない。一人で培ってきた私が思う「面白いこと」をそいつにぶつけて、そいつがうんともすんとも言わなかった場合、私は「彼が間違っている」という理由で自らを説得し、そいつとは絶縁、また一人鏡に向かってギャグ、ギャグ、ギャグという日々を送り、自分の命が尽き果てる寸前に「俺は世界一面白い。」と思えるのだろうか。
それよりかは、そいつが面白いと思うことを徹底的に研究し笑いを取った方が、「俺は世界一面白い」ことになるではないだろうか。
お笑いは、その日その場所で一番笑いを取った奴が正義。とても分かりやすい。
令和二年は、私以外にいた「そいつ」の数が多いだけで、やるべきことは大して変わらない。
まず何よりも、いつ何時でも笑いを取れるということがプロの基本なのではないかと私は考える訳である。
つまり何が言いたいかというと、私は「大人」であり、笑ってもらうための工夫を凝らし、その中に出来るだけ自分のエキスのようなものを入れ、一回戦で落ちたのである。
真っ向から負けてしまったのだった。

優勝しました!!!

キングオブコント当日、緊張していたせいか、予定よりも30分早く到着してしまっていた私は、小雨の中渋谷で煙草を吸っていた。
スクランブル交差点や巨大な電光掲示板を眺めながら、俺は伝説の始まりを感じていたのであった。
相方が到着し、エントリー会場に行って「1543」と番号が書かれたシールを貰う。多分1543だった。いごしみ、いごしみ。ここでもまた俺は伝説の始まりを感じていたのであった。
気が大きくなった俺はシールをズボンのポケットの上辺りに貼ろうとして、相方に止められた。俺はバンドマンがライブの時に付けてる感じを真似したかったのである。ほいで、家に帰ってから玄関や冷蔵庫に貼りたかったのである。がしかし、シールをズボンに貼っていることで審査員に「生意気だな。」と思われたり、「笑い以外の場所でアピってんじゃねえよ!」と思われたりしまうことで、洗練された私のネタが少しでも濁ってしまうかもしれないと思うと、素直に胸の上辺りに貼ることが出来た。

十五分後に出番ですと言われ、深夜の牛丼屋色の蛍光灯の下私達は廊下に立っていた。その廊下は舞台と直結していて、三つ前の芸人が飛び出して行った。
私はまずバイト先のことを思い出していた。キングオブコントの一回戦はギリギリまで日程が決まらないことから、七月の休日希望の出し方に私は頭を悩ませていた。というのも私の店のルールでは休日希望は1人三日間までと決まっていて、私の一回戦出場日は23、24、25日のどれかとなっていたからである。そして二回戦が29、30、31日のどれか。二回戦進出のことを考えると、というか考えずに出場するなんてのはもっての外で、つまりは計六日分の休日希望を出さなくてはならないということになってしまったのである。
店長は快く話を聞いてくれ、六日間の休日を私にくれた。祝日を皆潰して、私のために出勤してくれたのである。
「優勝してきてよ!」
という店長の言葉が胸に染みた。

その後母親のことを思い出した。私は現在フリーターだが、母は私を銀行員だと思っている。自分でもギャグかと思う。母親には土日にお笑いの活動をしていると言ってあり、キングオブコントに出場することは伝えてあった。
以前電話をした際「優勝したら仕事を辞めてもいいか?」と聞くと、「いいよ。」と言ってくれた。これにはかなり驚いた。キングオブコントって凄いなと思った。
当日「頑張ってね。」と母からLINEが入っており、私はまた伝説の始まりを感じていたのである。
ここ最近相次いでいる落合家の地獄具合を見る限り、俺が優勝することは明らかであった。
シンデレラストーリーの幕開けを感じたし、優勝後泣きながら母親に電話をして
「母ちゃん、俺やったよ!やったんだ!!ありがとう!」
みたいなことを言っているのが、テレビで流れ、これまでの地獄を全て回収するかの如く、俺は売れに売れていく。優勝後テレビ出演が止まらず、中々バイトに行けていない。二週間振りに出勤し、店長に来月で辞めますと告げる。
「優勝おめでとう。」
店長はそう言ってくれた。
客としてくる看護師のほとんどが、掌を返したように、これまでの野犬を睨みつけるような視線とは打って変わって、うっとりしたような瞳、頬を赤らめる感じで「あ、あの。テレビ見ました。」なんてレジで話しかけてきて、私は「あ、そうですか。」なんて豪快にスカし、「サイン書いてもらってもいいですか?」「まあ。他のお客さんに迷惑にならければいいですけど。」「ああ、でも色紙がない。」「ここで良ければ。」と言って、白衣にでっかく「落合のダッチワイフ」とサインをし、「ありがとうございます。」なんてやり取りをしたのである。
その後その看護師は、私が売れた瞬間に声を掛けてくるような人の価値を直線的にしか捉えられない人間だから、分かりやすい典型的な医者と結婚し、即離婚。金欠に陥った看護師は引っ越しを決め、段ボールに荷物を詰めている最中、押入れの奥から「落合のダッチワイフ」と書かれた白衣が出てくる。彼女はメルカリにサイン入り白衣を出品し、彼女の懐には二億。そんなことを考えている内に舞台に立っているではないか。そんなにウケていないではないか。これはどうゆうことやねん。

名前だけでも覚えて帰ってください

それからのことは言わずもがなである。
大会当日の二十一時に結果が発表され、合格者の欄に名前が無い。何度も見た。私のスマートフォンが対応していないだけで、他の機種であれば我々のコンビ名が載っているのではないかと思い、友人に確認してもらったがそこにも名前がない。
それからは煙草を吸いながらジッとスマホの画面を見つめるなどして、アハ体験的な感じで名前が浮き出てくるのではないかとしばし。
ああ、うう、ああああ、などと布団の中でうめき声を上げながら、腐るな、腐らずに、悔しがれ、悔しいと思え、解決するな、すぐに精神的に乗り越えようとするな!でも腐るな!なんてことを思いながら、枕に顔を鎮め、そのまま朝。
バイト先に行って、真っ青な顔で皆に謝罪。
本当に申し訳ないことをしたと、私に関わる大勢の人に思った。
謝罪の意が浮かぶなんてことは負けるまで予想もしていなかったので、とても驚いた。
私を応援したり、信じてくれている人に恥をかかせてしまったと思う。
私が彼、彼女に対して行った発言・言動は実体のない空虚なものとなってしまった。
詐欺師同然である。ショックだった。
それでもなお、皆がもう一度チャンスをくれそうな態度を示してくれたから、俺は余程魅力的な詐欺師なのだなと思った。

俺は正しい。やり方を間違っただけだ。
来年は必ず。
コンビ名はプールサイドです。
精進致しますので、宜しくお願い致します。

PROFILE

「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
プールサイドというコンビ名で活動中。
毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。

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