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落合のダッチワイフ DEC 31,2020

Hey!凡な日々 Vol.40
章分けなどいらない日々


2020年が終わる訳だが、今年はとんでもない年だったように思える。
身内が死にかけ、母親の生活はぶち壊れ、死にかけていた身内が十年以上にも渡り我々落合家を裏切っていたことが死にかけている最中に発覚したりと、何もかもが滅茶苦茶であった。コロナはもうどうだっていい。
先日母親から「殺す」というLINEがとんできた時は思わず笑ってしまった。母親がぶっ殺したいと思っている相手は、その死にかけていた身内(現在、重い障害は残ったものの一命は取り留めた)なのだが、そのぶっ殺したいという気持ちも重々分かりつつ、やはり母親から「殺す」という二文字が飛んでくると、ひく。お母さんって「殺す」とか言わない人だから。

実家に帰った七月、車で駅前まで迎えに来てくれた母親は俺の顔を見るなり泣いた。落合家の地獄は五月の中旬から始まっていて、俺はすぐに帰りたかったのだが緊急事態宣言やらなんやらで中々帰省することができなかった。後部座席から泣いている母親を見て、一人の女性が泣いている、と思った。
その後お金のことで母親と怒鳴り合いになり、売り言葉に買い言葉、最終的に「俺の人生に迷惑をかけるな」と言ってしまい、母親はまた泣いた。俺が言いたかったのは、どんなに息子に迷惑を掛けないと言っても、それが本当のことだとしても、目の前であなたがもし死にかけていたら、俺は命を捨てでもあなたを助けるので、そうならないようにお互いちゃんとましょう。ということが言いたかっただけだ。
例えばこのできごとを2019年の俺が私小説にしたとしたら、「俺は本当は母に~ということが言いたかっただけだ。」と書いて、その後主人公に傘を持たせず外出させ突然の豪雨を降らせたり(これはしないけど)、鬱々とした思いを胸に秘めさせながらネガティブな磁場にまみれた生活を送らせたりしたのだろうけど、そういうのは今年に入ってからうんざりしている。
現実にしろ(小説にしろ)、俺は昨日母親に電話を掛け、「七月に言ったあの言葉なんだけどさ、本当の意味はね、」と訂正した(させた)。電話を掛け、本来の意味を伝えれば済む話だ。自らネガティブな状況に進んでいくことを俺は許さない。

今年の夏か秋に「とうそう」という小説を書いた。僕は出来上がったものを毎回山口君という友達に読んでもらっている。初めて書いた小説の時からそうしている。彼は危なっかしいと思える程真っすぐ過ぎる男で、故に俺は信頼している。カッコいいから好きだ。
この「とうそう」という小説を読んでもらった時、山口君は「嘘をついてないか?」というようなことを俺に言った。その通りで俺はあの小説の中でたくさんの嘘を付いている。それは、物語とか脚色とかそういうことではなく、もっと根本の部分でのことだ。それがどうゆうことなのかということを理論的に説明しようとすることを、最近辞めた。理論的な正しさとか、数式のようなものを俺は必要としていない。
最近俺は言葉でものを考えることを辞めた。もっと胸の奥底で蠢いている大きな「流れ」のようなものを受け止めるように意識している。自分が感じたことを論理的に自分に説明した時、なにか重要な部分、血肉の通った部分が削ぎ落とされているような気がしてならない。きっと言葉そのものになにかを省略するような性質?があるのではないかと思う。一つ一つの言葉が連なった結果、全体として一つの肉堺のようなものを作ることができれば、俺が思う「省略」の部分を解決できるような気がする。それにはどうしたらいいかというと、本気で書く、ということに尽きる。だから「小説のこの部分のこの表現が」ということはあり得ないと最近は思う。文脈とは何かを今一度考える必要がある。

最近山口君の書いた小説を読んだ。本気で書いたんだなと分かった。俺は山口君の小説を読んだ次の日、バイト先でこれまでずっと嫌だと思っていたことを、嫌だと言えることができた。山口君の小説を読んでいなかったらそれはできなかったことで、つまり山口君の小説は俺の次元を動かしたということになる。俺が思う素晴らしい小説とはこのようなことではないのか、と帰り道に駅へと歩きながら深く感動した記憶がある。

話が逸れたかのように思えるが、実際には逸れていない。書きながら、これまで別々に考えてきたと思っていたことが繋がっていく。基本的にこのコラムは何も考えずに書き出すことが殆どで、最終的にまとまっていくのをこれまで不思議に思っていたのだが、書くということ自体がそのような行為なのではないかと思うようになった。
2019年は365日、毎日日記を書いた。面白かったのは、一年に一度しかないような考え方の大きな変化のようなものが2019年は三回あった。あらかじめ考えていることを書く(インプットとかアウトプット等のくだらない脳の話)より書きながら考える方が、途中思いもつかぬ発見があって、自身がより発展するのではないかという手ごたえを感じた。
それと同時に、変化した後では変化する前の状態と全く同じようになることはできないので、その間になにかしらの形にしておかないと勿体ないように思えた。だからこのコラムにはとても感謝している。

俺は病院内の売店で働いている。今日、レジで突っ立っていたら院内からコードブルーの放送が流れ、医者や看護師達が一斉にどこかにめがけて店の前を駆け抜けていった。途中、走っている医者が白衣のポケットから携帯電話を落とし、その後ろを走っていた看護師が拾った。彼女はニコっと笑って携帯電話を医者に差し出し、周囲の看護師達は真剣な顔をして二人を抜き去って行った。走っている人達は、今急いでいることにどれくらい集中しているのかが気になった。
母親は現在ETCカードを使用することができない。先月実家に帰った際、高速に乗って二人でアテもなくドライブをすることになった。高速から降りる直前、一般料金のゲートを使うのは数年振りだと彼女は言っていて、だからなんなんだ、と俺は思っていた。係の人に料金を渡し運転席の窓が締め切る直前に彼女は独り言のように、独り言にしては大きな声で「今日ETCカード持ってくんの忘れちゃったからなあ~~」と言った。俺はその二秒後くらいにはもうブチ切れていて、「今のはなに?」「発言の意図は?」「係の人にどう思われたくて言ったの?」と母親を質問攻めにした。彼女は「外車に乗ってるのにETCじゃないなんて恥ずかしいでしょ。」と答えた。俺は時速80キロで走る車の後部座席のドアを開けそのまま飛び降りて自殺してやろうかと思った。それくらいに悔しかったのである。彼女の価値観は世間一般の評価(社会とか常識)と直結している、というかイコールに等しい。だからこそ彼女は母子家庭であることを恥ずかしいと思い、「母子家庭だから」と思われないように滅茶苦茶働いてくれたというのも俺は分かっている。が根本から間違っているのは母子家庭は恥ずかしいことではないということだ(社会一般常識的な価値観から見ても)。むしろ俺は母子家庭であることを誇りに思っているくらいで、「ここまで二人三脚でやってきた最強のウチら★」みたいな感じでいたのに、それが母親には全く伝わっていない。悲しい。何度感謝の意を述べても彼女は「こんな親でごめんね。」とかほざきやがるのである。本当は自分が立派な親であることを彼女は分かっているのではないかと俺は思う。どうして自らダメな親でいたがったり、現状を誇ったりすることができないのか、全く理解ができない。
いつまでも世間から情けないとされている(被害妄想)自分でいないと、気が済まない理由は、甘えでしかないと俺は思う。先日車の中で「死にたくなる時がある」と言われたが、勝手にするように、ということと、金銭的にも精神的にも手助けしてくれている人達の思いを舐めるなという話をした。その類の当人だけが気持ちのよい話は一切受け付けない。その直後ロイホでめっちゃ笑顔でパフェ食ってたから、彼女は死なない。
その他にも家電量販店で「PS5の抽選申し込んで転売しようかなあ~」と俺に言ってきて、死ぬ程ブチ切れたら、「いや本気じゃないよ。そもそも転売の仕方分からないもん」と言うので、「そうゆう問題じゃないだろ」「でも犯罪じゃないんだよね?」「あんたは法の中での善悪でしか物事を図れないのか」「いや犯罪かどうかを聞いてるんだけど」「良いことか悪いことかは自分で決めろよ。」と不毛な議論になり、最終的に母親がドラッグストアの駐車場で「こんな人生転売もしたくなるわ!!!」と怒鳴り、俺はこんな悲しいことがあっていいのか、としばらく閉口してしまった。

昨日も「また信じたのに騙された。」と泣きながら電話がきて(実際に一度自分を裏切った人間をまた信じた結果同じ目にあったのだが)俺は「マーニャ(古くからの呼称)のそうゆうところが好きだし、誇らしいけど、単純に馬鹿だとは思う。」と言った。これは本当にそうで、俺が俺の好きな所を挙げるとしたら、彼女のダメな部分であるというところに最近気が付いた。
2021年は、今やるべきこととしてやっていることの強度を増すということだけで、基本的には変わりはない。早く俺を好きでいてくれている人達にお金を配りたい。
ここまで読んで、落合家は地獄ではないか、と思った人もいるかもしれないが、俺は先月母と真昼間から誰もいない遊園地に行って、ジェットコースターと観覧車に乗った。めっちゃ笑った。ヤバイ状況の中でもそうゆうことってあるよなと、今日、携帯電話を医者に渡した時の看護師の笑顔を見て、思った。

PROFILE

「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
プールサイドというコンビ名で活動中。
毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。

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