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落合のダッチワイフ JAN 31,2021

Hey!凡な日々 Vol.42
電車の遅延を解決する案


電車の遅延にどうしても苛立ってしまう。手が震える程の怒りを感じる理由は、電車が時間通りにやってこなかったからではない。
駅員の淡々としたあまりにも聞き取りやすぎるアナウンスにまず腹が立つのである。無感情から発せられる言葉の中に、唯一感じ取れる温度の奥底に横たわる主張とは「俺のせいではない」という駅員の意志だ。実際には「俺のせいではない」と思いながら言っている訳ではないだろうが、「俺のせい」だとしたら、もっと抑揚をつけて喋ったり、つい感情が溢れてしまって言葉が途切れてしまったりするものではないだろうか。しかし別にそれを駅員に求めたりはしない。当然のことだ。声に出すからクレーマーなのである。
淡々としたトーンで語られたアナウンス通りに遅れてやってきた電車の顔を皆さんはご覧になったことはあるだろうか。こいつもまた「俺のせいではない」といった顔で、「自分は自分の仕事を全うするだけなんで、ちす。」といった真顔で、ホームで長い間待たされた人々と目を合わせないようにしながら、キ―――!!!なんて大きな音を立てながらふてぶてしく停車しやがるのである。全くはらだたしい。俺は、電車が遅れても仕方がないとも思うが、遅れて当然だとは思ったことが一度もない。

文句ばかり言っていても仕方がない。イキり顔で問題箇所を指摘するだけしておいて、「ですが私、大した解答は持ち合わせていません」では会社によくいるタイプの無能な上司と同じになってしまう。どうしたものかとキッチンでスマホをイジりながら煙草を吸って遅延が起きない方法を考えていると、芥川賞のニュースが目に入った。選考委員にもっと若い人間を入れるべきだと思った。今年の選考委員の平均年齢は58歳。例えば現代的な若者が主人公となった小説を読んだとき、彼、彼女達はきっと「新しい時代の香り」だとか言うんだろけど(現に言っていたし)、27歳の俺が呼んでも当然新しくもなんともないと感じる。それは俺が「新しい時代」というものを感じ取ろうとしなくとも身体で受け取っているからである。それは自分がそういった時代の渦中にいるからかとも思うが、そこに年齢は関係がないようにも思う。
しかし「SNS」というテーマであれば別だ。単純に年齢層が上がっていくにつれSNSを使用している人数が減っていくはずである。
「SNS」に関して否定的な文章を書くと恐らく古いとされ(選考委員が理解できる、もしくは知っているため)、肯定的な文章、さらにSNSのリアルタイムな感じを小説的な表現に置き換えていけば(知らない人に伝えるため)「新しい時代の香り」とされるのではないかと最近はつい勘ぐってしまう。それは「新しい」のはなく、「知らなかった」だけなのではないかと俺は思う。「新しい小説」みたいなものに重きを置くのであれば、選考委員の年齢にバランスを取るというのは当然のことだ。反対に27歳の俺が知らないことを上の世代の人達は知っている訳なのも確かだなあ~~、これが問題箇所を指摘して、自分なりの解答を用意するってことなんだなあ~と思いながら、煙草の火を消した時に俺はとんでもないことを思いついたのである。遅延を全て解消する方法である。

遅延を解決する案

俺は急いで山手線の路線図を検索した。自分のアイデアが素晴らしすぎてそれが実現可能か否か頭の中ですぐさま試したくなったのである。
路線図を見て俺は笑ってしまった。ピザでも取ってやろうかなと思うくらいだった。何故ならすでに路線図には俺が考えていたことがまんま記載されていたからである。
勿体ぶっても仕方がない。俺が思いついた案、10年後の山手線の未来予想図は以下である。

山手線メリーゴーランド化計画

タイトルを読んだだけで、ダッシュでピザのチラシを冷蔵庫まで取りに行った方もおられるのではないだろうか。
そう、つまり山手線一周分の長さの電車を作ってしまえばいいということである。
これによってまず常に電車が来ている状態になる。あの腹正しい電車の顔を見なくてよいのだ。ホームで電車を待っていたとしても、目の前で電車が常に走っているというのはなんかよい。電車が「来る/来ない」というのは問題ではなくなる。止まっていないだけでもう来ている。
「飛び込み自殺」も減る。何故なら飛び込む隙間がないからである。

例えば新宿で乗車したとする。目的地は池袋である。遅刻ギリギリ、このままでは大事な打合わせに間に合わないといった場合、これまでの山手線であれば、私達は「はやくつけ~~」と願うことしかできない。願っても早くは着かない。なぜなら電車は遅延するくせに一定の速度を順守しているからである。ではこのメリーゴーランド式の山手線だったらどうだろうか。答えは簡単。電車の中で池袋に向かって歩けばいいのである。懸命にあるけば電車が高田馬場に停車したあたりで、我々は目白辺りに到着しているかもしれない。あら不思議。

逆のパターンもある。状況は上と同じ。電車が発進した瞬間にスマホが鳴る。営業先からである。メールを開くと「すいません!打合せの場所池袋とお伝えしていたのですが、正しくは渋谷でした。誠に申し訳ございませんでした。」と書いてある。従来の山手線に乗っていた場合、「は?ざけんなよ。クソ。こんな会社こっちから願い下げだ!」と心の中で憤りながら「かしこまりました。間に合いそうです。」なんて返事をして、その頃には高田馬場に着いてしまっている。急いで降りて、このままだと間に合わないと考えた挙句高田馬場から渋谷までタクシーを飛ばす。金の無駄。到着したら到着したで「先程はなんかすいません。それにしてもよく間に合いましたね」なんて言われてしまい「はい!自分ダッシュ得意なんで!!」とへりくだり、打合せ中に眠ってしまい激怒され、会社をクビになる、なんてことがあるかもしれない。だが、このメリーゴーランド式の山手線だったらどうだろうか。
電車が発進した瞬間に営業先からメール、「かしこまりました!!!!全然大丈夫です!!!」と元気に返事ができた理由は、電車の中で新宿から渋谷に向かって歩けばいいからである。最初に乗った車両が池袋についた頃、渋谷に着いているのである。
ああ、なんて素晴らしいのだろう。

これを書いたのは数日前で、読み返して一つだけ気になる点があった。それは電車が進む進行方向とは逆に向かって車両の中を歩いた場合、本当に逆走することができるのかどうかである。私の頭の中だと、何度想像しても一生その場で停滞することになってしまうのだが、実際のところはどうなのだろうか。科学とかなんか物理?に詳しい人教えてください。

PROFILE

「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
プールサイドというコンビ名で活動中。
毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。

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