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落合のダッチワイフ MAY 31,2021

Hey!凡な日々 Vol.48
狙撃手


フットサルに行った時のことを忘れることができない。シャンプーの香りがした。時差で。あの時差が大事だ。ダイレクトではなく風に混じって飛んでくるのがナイスなのではないか。体育の後の教室の匂い。
会場に着くと、目の前に二十人くらいの女子がいた。受付を待っているらしい。その行列の横を通って自転車を止めると、皆が僕をチラリと見た。ような気がした。今、何人が僕を「彼、いい感じじゃない?」と思っただろうか。そう思われなくてもいいと思うことができたなら、僕の全身からドス黒いなにかが放たれていたであろう。モテたいという願望が無くなれば、僕は絶対に風呂に入らないし歯も磨かない自信がある。このコラムも書かない。

集団の「1」が強い

友人達と合流し受付を済ませた。僕達は一番左のコートに案内された。隣のコートは女子20人、いやもっといたかもしれないが、集団としての「1」が強すぎて具体的に人数を把握することができなかった。そして更にその隣のコートには男子27人がいた。この女子20人くらいと男子27人は同じグループだと思われた。何故ならプレーが始まる前に男女混ざって大きな円を囲んでいたのを見たからである。僕が5人抜きをしている最中の4人目を抜く手前くらいの時に確かにこの目で見たのだ。
皆、大学生だろうか。若い。羨ましいと初めて思ってしまった。
それにしてもなんでしょうこの感じ、女子は女子、男子は男子と別れた途端に男子が醸し出す「「男子は男子でやろうぜ!!!」と我々は思っていますから!!」みたいな微妙なあの空気感は一体なんなんでしょう。どうしてそんなに大きな声で友達に「おい!!!」と言う必要があるのでしょう。「おい!!!」と言った直後に隣のコートを0コンマでチラっと見るのはどうしてなのでしょう?なぜ今突然、後ろから友人に覆いかぶさる必要があったのでしょう?どうして声量と反比例して中身のない会話をお互いにしているのでしょう?答えは簡単です。全神経が女子にいっているからなのです。いるからだっ!!

痛みの「kiss」

多分男子達はあの時、右半身をクリスティアーノ・ロナウドにシュートされていたとしても全く気付かなかったはずである。なぜなら女子のいる左コートに痛覚を含めた全ての神経が集中してしまっているからだ。その証拠にあの時僕は、右の鎖骨を偶然通りかかった7キロ先のスナイパーに狙撃されていたらしいのである。家に帰ってから鎖骨が痛み出したので傷の部分を自撮りし共にプレーをしていた友人に送ると「狙撃の可能性アリ」と返事がきたので、「は?なんで分かんの?」「見てたから。」「なにを?」「お前が狙撃されたとこ」「いつ?」「キックインしてる時」「はよ言えや。」みたいなやり取りをしながら急いで病院に行きそのまま緊急手術をしてなんとか一命を取り留めたのである。ちなみに銃弾には「kiss」と彫られていたらしい。それは知らんわ。と友人が言っていた。

お前ラジオで読まれたことあんの?

僕の肺のキャパは、僕を含めた地下芸人がこぞって出演している下北の会場くらいしかなかった。ちょっとドリブルしただけで肺が空気でパンパンになって、鉄を直に咥えているのではないかというくらい血の味がした。早く売れたい。周りもそんなんばっかだから7分毎に休憩していた。だから7分毎に喫煙をしながら女子がフットサルをする姿を眺めていた。14人位が一斉に右往左往している。皆が前髪を抑えながら走っている。あれは高校の時、体育で僕が好きになるタイプの女子が必ずと言っていい程していたムーブである。その場にいた友達が「どうしてフットサルしにきてんだろ。」と言った。確かになと思った。これは体育ではない。僕を含めたこの場にいる全員が自ら金を払ってフットサルに参加している。僕は友人とフットサルをしたくて2250円を支払った。前髪の乱れが気になるのであれば、スポーツ以外のことをすればいいのに。とかなんとか考えている内に、先程まで明確に引かれていたはずの男子と女子の境界線がぼんやりとしてきていることに気が付いた。小さな円がいくつも出来ている。男子5、女子5。その内の一人の男子の声が異様にでかい。そしてそれと比例するように面白くない。面白くないことを大きな声で言うと、女子が笑う。「ちょっと54番マジうざいんだけど!!」と女子が言う、「いやいやマジだから。マジ!ってか、待って、ちょっと待って、一回待って、え!??待って!一回待つ?待たん?どする?待って!!何この空気?え!??二人中学から一緒なの?やばくない?」みたいな会話を永遠としている。

「ラジオで読まれたことある?」
「大喜利勝負しよか?」
「答える前にお題言ってもらっていい?」
「いや毎回答える前にお題は言うんだよ。」
「写真で一言いける?」
「え?今の本当に面白いと思って笑った?」
「どこが?」
「上手いのと面白いのは違うだろ!」
「それただ訳が分からないだけじゃん。俺の文脈ありきのボケをフリにしてるだけじゃん」
「めっちゃアウェイじゃんここ。」
「お笑いって皆で作るものだよ?」
「単純な笑いの量だけじゃなくてさ、フリップの出し方とかも加味されてる?」
「54番自分が答える前にフリップで先答え見えちゃってるから」
「俺のレベル高すぎたか。伝わらないわ。」
「え、どこ行くの?」

お笑いのプロとアマの違いは、爆笑をどれくらいの確率・頻度で取れるか、そのアベレージの高さにある。十人十色のストライクゾーンにどれだけ正確に球を投げることができるかにかかっている。俺は自分が投げたい球しか投げない。それは数ある球種の中から選んだ訳ではない。それしか投げることができないのである。これから54番が俺の変化球を学ぼうとすることはできても、俺は54番のストレートを学ぶことはできない。もっと正確にいうと学ぼうとすることができない。理由はああなりたくないから。難しい話だ。彼女達からすれば僕は54番より「面白くない」ということになるだろう。ここら辺のことって、売れている芸人達はどうやって解決、というか折り合いを付けているのだろうか。俺は自分のことを「面白い」と思ってくれている人と同じくらい、「面白くない」と思っている人のことが気になる。というか無視してはいけないような気もするし、無視した方がいいような気もする。正直分からない。フットサルの話をしていたのに、野球で例えるのはどうかなとは思っている。

この前友達と電話をしていた時、「落合君はどんなんで一番爆笑するの?」と聞かれ「友達の冗談」と自然に答えていた。声に出して初めて確かにそうだなと思った。これは割となんかの答えだと思う。友達の冗談が一番おもろい。

PROFILE

「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
プールサイドというコンビ名で活動中。
毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。

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