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落合のダッチワイフ AUG 15,2021

Hey!凡な日々 Vol.53
遅刻論2021


Twitterで子供の象、小象が、鳥を追いかけ回している動画を見た。微笑ましいみたいな感じで物凄いスピードで拡散されているようだが、僕は動画に映っていた小象が憎たらしくて仕方がなかった。小さな憎。僕は無垢な暴力を見るとイライラするのかもしれない。鳥が可哀想であった。ビジュアルがキュートなだけ(それ以外のことをこの動画だけでは知ることは不可能)の小象が純粋無垢に鳥を追いかけ回しているその様子が大衆から可愛いとされている訳だが、繰り返しこの動画を見ているうちに、この小象自身も大衆から評価が分かっている、分かりながら鳥を追いかけ回しているように見えてきた。大体子供ってのはそうである。大体のことが分かっている。自分がセーフティな場所にいることをよく知っている。
昔たまたまYouTubeで、海外の小学生二人が前方を歩いているお爺さんのふくらはぎに石を投げたり、木でつついたりしている動画を見たことがある。小学生二人の行動はどんどんエスカレートしていくのだが、最終的にお爺さんが片方の小学生の膝に鋭すぎるトーキックを放っていた。俺はなんかあの動画が好きだ。正しいかは分からないけども、当然だとは思う。なんの話だ。

遅刻論2021

最近バイト先で遅刻が止まらない。元から僕は遅刻がかなり多い方なのだが、ここまで立て続けに、五連勤中三回も定時に間に合わないというのは人生初のことだ。五連勤目の遅刻に関しては、前日も大遅刻をかましていて店長に大激怒されたばかりだったので、逆にウケた。あり得な過ぎてウケたのである。お昼の十二時出勤ということも「あり得ない」を支えてくれている重要な要素の一つである。

出勤日五日目のこと。まず自然と目が覚めた。気持ちのいい、生物として最も適切な目覚め方であった。ということは同時に鼓膜を突き破るようなあの不自然な、反自然環境音的なアラームで目が覚めた訳ではないということになり、その時点で僕は悟ったのである。
悟ってから時計を見るまでにどれだけの時間がかかったであろうか。恐るおそる時計を見ると「11:47」。映像が目に焼き付いている。何度目の遅刻だろうか。身体の力が抜けてしまった。人間追い込まれるとなにかにすがりたくなるのか、僕は「出勤は十二時からなのでまだ遅れていない。まだ皆怒っていない」という訳の分からない理論を自らに提唱し、ゆっくりと立ち上がってはキッチンに向かい煙草に火を付けた。時計を見ると「11:56」あと四分で皆が怒りだす。頭が冷静になってきたところで作戦を練ることにした。

作戦 スマホの電源を切る

まず最初にこのままバックレるのはどうかと考えた。これは即効でナシだと判断することができた。自分がマイナスな環境に追い込まれてしまった時、悲観的になりよりネガティブな選択をする人間を僕は馬鹿だと思っている。自ら不幸になろうとする人間は誰からも相手にされないと決まっているのだ。
次に考えられるのは怒られない方法である。遅刻が怒られるのは、遅刻の唯一の処方箋が「恐怖」でしかないからである。店長は僕にとって滅茶苦茶怖い先輩だ。僕はまずスマホの電源を急いで切った。あと数分後には店から鬼のような電話がかかってくることが容易に予想できたからである。電話が繋がらないことによって、店のスタッフ達は「ああ、アイツ終わったな」「こりゃ起きないわ」「いつになるやら」と思う訳である。そして彼、彼女達が抱く僕の出勤時間の予測が「早くても十四時」もしくは「それ以降」となる。そうなると皆各々が僕が十四時にやってくるスタンスになる。僕が煙草を吸ったり服を選んだりしている間に、「十四時にやってくることがあり得なすぎるあまり、それを強引にでもあり得ることにしてしまわないと危うく落合を殺してしまうかもしれない」とスタッフ達は考え始める訳である。
では俺は実際に何時に出勤するか。十二時五十分である。「早っ!!!」と思った方がいらっしゃったのではないだろうか。これが僕の遅刻マジックである。

作戦 本当と嘘の塩梅

次に考えなければいけないのは、「遅刻の理由」である。これはバランスというか普段からどれだけ嘘を散らしておくか、その塩梅にかかっている。普段の行いが物を言うのだ。
僕は「7対2対1」を推奨する。7は「本当の理由(ほとんどが寝坊)」、2は「嘘(スマホが充電できてなかったとか)」、1は「訳の分からないことを言う(「なんか起きてたんですけど、いやなんだろな?なんつ~か」的)」である。
「本当の理由」は実際に本当のことである必要がない。遅刻された側が「こいつ真っ向から来やがった。怒られる覚悟ができているのだな。」と思ってくれればそれでいい。故に寝坊が当てはまる。
「嘘」は、もっと明確に表現するとしたら「具体的なこと」を言えばいいのである。具体的なことを言う時は、本当にやばい時に限る。これは諸刃の剣で、相手のその日の体調やコンディション、これまでに築いた信頼感、など不確定要素にかなり依存する形となる。
「詳細がこと細かくてリアリティがある」もしくは「言い訳ばかりしやがって」になってしまうのである。そのために普段は7の割合で本当風の理由を言って真っすぐに怒られる必要があるのだ。その7がフリとなって、「普段真っすぐなやつが、こんなにもディティールを詰めて話してくるということは本当なのだろう」と真実味が帯びてくる訳である。リスクも高いが状況がハマった時は許される可能性が高い。遅刻をしやすい人は「私はもう遅刻をしないぞ!!」と意気込み、それでもまた遅刻をしてしまうので、状況が一向によくならない。そうではない。

「自分は遅刻をする性質にある。遅刻とは現象のようなものだ。また病気のようなものでもあって、これとどう付き合っていくのかが大切なことである。」

そういう風な心掛けで遅刻をし続けて欲しい。僕は遅刻をしてしまうことを受け入れているというか、「どうして遅刻をするんだ!!!」と怒る店長と全く同じ気持ちでいる。「どうして俺は遅刻をするんだ!!!」なのである。

とにかく僕はこの日のために普段から「本当風の理由」ってのは多めに散らしていたのだけど、その前に二回「嘘」と「訳の分からないことを言う」をやってしまっているので、今回は「本当風の理由」を採用することにした。大幅に遅刻をしてしまっている時は、変に奇を衒ったりせず「本当風の理由」をお勧めする。とんでもないことが起きている時程、真っすぐな目をしている方が、「実直」さや「ダイナミック感」が演出され許されやすくなるのである。

予定通り12時50分前後に到着し、店長に死ぬ程しばかれた。

PROFILE

「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
プールサイドというコンビ名で活動中。
毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。

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