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落合のダッチワイフ SEP 30,2021

Hey!凡な日々 Vol.56
虹色の「悪夢」


俺は月に一度、必ず同じ悪夢を見る。
「うわあああ!!!!」という自分の叫び声で目が覚める。そして風呂場に行きシャワーで腕を洗い流す。腕にまとわりついた「悪」を水で注ぎ流すための一種の儀式のようなものだ。
これからここに書く「悪夢」の話は全て現実で起きたことである。僕は現実で体験したことを、夢で何度も再体験している。
だったら現実の方で起きたことを書けばいいのではないかと思われる方もいらっしゃるでしょうが、内容が些かお下品なもので、ストレートに書くと「URBAN RESEARCH MEDIA」の看板に泥を塗ってしまうような気がするのです。いや、泥に似たもっと不潔なものをゴリラのように投げつけてしまうことになるのです。
「夢」であれば、読まれて不快な気持ちになった方がいたとしても「あ~夢の話か~。」と現実逃避することができますし、僕も「夢の話をします」と言ってはじめるので「どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか」という境界線を曖昧にしたまま書くことができます。今のうちに書いておきますが、僕はとある部分に関してこれから大きな嘘を付きます。
ずっと書きたかったことなのですが、その術を見つけるのに大分長い時間がかかってしまいました。
これは「URBAN RESEARCH MEDIA」の検閲とのバトルでもあります。

AM 2:00

腹痛で目が覚める。晩御飯に七色のペロペロキャンディを大量に舐めすぎたせいかもしれない、と思う。重い体を引きずるようにしながらメリーゴーランドに向かう。メリーゴーランドと言っても部屋が狭いので、正確にはここで言う「メリーゴーランド」とは「メリーゴーランドにいる馬一頭(以下メリーゴーランド)」のことだ。僕はこのメリーゴーランドをかなり気に入っている。というのも前に住んでいた家が「ユニットメリーゴーランドバス」で、風呂とメリーゴーランドが一緒になっていたのである。僕はメリーゴーランドに跨りながら考え事をする癖があるのだが、隣に風呂があるとなんとなく落ち着かない感じがして嫌だったのである。そもそも「ユニットメリーゴーランドバス」を考えた人はどうかしている。どうしたら「メリーゴーランドと風呂を一緒にしよう」なんて発想に辿り着くのだろうか。悪ふざけにも程がある。このメリーゴーランドの馬が普通のメリーゴーランドと違うのは、馬の背中の部分が空洞になっているということだ。確か不動産の人が「この空洞の先はなんちゃらワンダーランドに繋がっています」みたいなことを言っていた気がする。
僕はメリーゴーランドに跨りながら、虹を出した。

AM 2:20

全て英字で書かれた新聞のデザインが施されているお洒落な包装紙のようなもので、虹を拭きとりなんちゃらワンダーランド行きへの空洞に落とす。全て英字で書かれた新聞のデザインが施されているお洒落な包装紙に虹が付かなくなるまで、僕はその行為を何度も繰り返していた。
メリーゴーランドには北欧プリントされたレバーが付いていて、虹を出したあとはそのレバーを引かなければならない。その理由を不動産の人に聞いた時に「人として当然のことじゃないですか?」と半笑いで言われてしまい、咄嗟に「ですよね~」みたいなことを言っている間に、白馬に乗った不動産の人の背中が遥か遠くにいて、結局のところレバーを引く意図はなにも分かっていない。
北欧プリントされたレバーを引いたら、どうしてか虹が逆流してきた。

AM 3:00

【虹詰まり 自分で】とスマホで検索をかけていた。そこで自分以外にも過去に虹詰まりで悩んでいた人が大勢いることを知る。そしてその人達が同じ悩みを抱えた人たちに向けて、解決策をインターネットにアップロードしている。解決策を載せているということは、今自分が直面している危機的状況を乗り越えたということの証明でもあり、それがなによりも心強かった。「みんながいる」と心から思った。
具体的な解決策はこうだ。まずメリーゴーランドの空洞に溜まっている虹を550mlのペットボトルですくう。そして虹がなくなったら食品用ラップを馬の背中に被せ、空洞の中を真空状態にする。そして一気にレバーを引くことで虹詰まりが解決するらしいのだ。

AM 3:45

70ℓの袋が虹でパンパンになっている。メルヘン。食品用ラップをピッチピチに張り、僕は北欧プリントされたレバーに手を掛けていた。この時すでに右腕は虹にまみれていた。
これが失敗したら僕はもうなんか全部ダメになるとなんとなく思った。
メリーゴーランドに跨ってから、すでに2時間弱が経過している。知らなかったのだが、人間は虹と何時間も向き合ってはいけないらしかったのだ。自尊心が揺らいでいるのが分かる。「俺は何をしているんだろう?」と少しでも俯瞰したらそれまで。45分間ペットボトルで虹をすくい上げている27歳フリーターの俺って一体、ダメだ!!!現状を言語化するな!!集中、集中、全集中!!北欧プリントされたレバーを引く呼吸!!!

虹が噴水のように溢れかえった。

それはそれは見事なもので、俺はこの時マジで「お笑いとかもう全部辞めよう」と思った。そして意気揚々と解決策をベラベラと喋っていた、動画の中のアイツを憎んだ。圧倒的な孤独感が一畳に満たないメリーゴーランドの中を、否、メリーゴーランドのように渦巻いていた。

AM 4:30

そこら中に散らばった虹を雑巾で拭き終わり風呂に入る。
母親に連絡しようか悩んだ。でも今マーニャ(母親の呼称)の声を聞いたら俺は泣いてしまいそうだし、なんか勢いで「銀行員と嘘つきながら芸人やっていてすいません。」みたいなことまで口走ってしまいそうだったから辞めた。
虹の匂いがする。足元には70ℓの虹。虹って捕まえられたんだ。数え方「ℓ」だったんだ。
そんなことを思いながら俺は寝た。

AM 7:00

俺はもうこの時おかしくなってしまっていたのだと思う。目覚めると共にメリーゴーランドに直行し北欧プリントされたレバーを思いっきり引いていた。虹が更に溢れだした。
もう一度シャワーを浴びて、虹を踏まないようにしながら玄関へと向かいコンビニに行って、甘いパンを買った。帰宅し、虹を踏まないようにしながらリビングへ戻り、パンを齧りながらマジで泣いた。号泣とかじゃなくて、す~~~と涙が頬を伝う感じで泣いた。

AM 8:00

「大家さんに連絡しなさい。」と母からLINEが来た。連絡とっちゃった。
もうこの時は自分の意志とかがないから、言われた通りにした。
そしたら1時間後に「虹詰まりの修理専門」のお兄さん達がやってきた。同い年くらいの髭面の渋いお兄さんが、片手にルイージマンションでルイージがもっている「お化けを吸う掃除機」みたいのを持っていて、本当にお化けを吸う感じで虹を吸い取っていた。
1万5000円もした。

ここで目が覚める。俺はまた腕にまとわりついた虹をシャワーで洗い流す。

PROFILE

「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
プールサイドというコンビ名で活動中。
毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。

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