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落合のダッチワイフ DEC 15,2021

Hey!凡な日々 Vol.61
俺はもう諦めた


破綻していく計画

二十一時頃バイト先から帰宅。手を洗ってイソジンでうがい。プールサイドの撮影があるから三十分後には家を出なくてはならない。冷蔵庫からおかずを取り出し電子レンジで温めているうちに、スーツへと着替える。鏡を見ながらネクタイを締めているとキッチンの方から「チン!」という音。全て計算通りである。俺はこのように先々のことを具体的に計画するのが好きで、想定通りに事が進むと実に喜ばしい気分になる。これから相方の家まで自転車を漕ぐ訳だが、どこをどう曲がってどの自販機で何を買うかまでも決まっている。自分で事細かに設定したタスクをこなしていくのが好きなのである。
ブレーカーが落ちたのは二つ目のおかずを温めている時のこと。焦る必要はない、落ちたのなら上げるだけ。再び電気が付く。ご飯を食べる時間は十五分取っていたのだが、十分で食べ切る。五分浮いたことが嬉しい。
十分で食べ終わることは事前に分かっていて、そこで敢えて十五分取った自分を褒めたい。己の喜ばせ方をよく分かっている。

家を出て、想定通りの道筋を辿り秦家に到着。スムーズに撮影が終わり三時に解散。バイトは昼からなので、帰宅してからもまだ時間に余裕がある。自転車を漕ぎながら「家に付いたらまず手を洗ってイソジンでうがい、風呂を沸かしている間にスーツを脱いでパンツ一丁のまま釈迦さんのゲーム実況を見る、風呂を出たあとはコラムを書き、六時に布団に入る。十時半に起床してバイト前にコラムを納品する。」という計画を練った。
パンツ一丁になるところまでは予定通りだった。釈迦さんの動画を見ることができない。スマホがWi-Fi接続されていないことに気が付く。ギガの制限を超えているので、Wi-Fi接続をしていないと俺のスマホはただのガラクタ同然なのである。
ルーターを見てみるとアクティブランプが点灯していない。LANケーブルを抜き差ししたり、全てのボタンをとにかく長押ししてみたりするもアクティブランプは消えたまま。
数時間前にブレーカーが落ちたことを思い出した。原因を突き止めたのにも関わらず、回線の問題が解決されていないことに苛立つ。追い打ちをかけるように「お風呂が沸きました」という無機質な女性の声が聞こえて「そりゃそうだろ!」とマジで大きな声を出して言った。

思い付く限りの無駄とも言える行為(LANケーブルの抜き差し、ボタンの長押し等々)を永遠することで、今、目の前で起きている問題が、如何に自力で解決することができない問題なのかということを自身の頭に叩き込む。つまり「これ以上なにをやっても本当に時間の無駄にしかならないよ」ということが分かるまでにも時間が掛かる訳で、それにもまた苛立ってくるのである。計画がどんどん崩れていく。
サポートセンターは朝の九時から営業しているらしい。一刻も早くインターネットと繋がりたい。でなければ活動に支障が出てしまう。朝イチでサポートセンターに電話を掛けるのであれば、八時四十五分には起床していたい。自分で予定していた起床時間が大幅に早まってしまった。となると、睡眠時間もきちんと確保したい俺は、「就寝」の時間を繰り上げするしかなく、これからコラムを書くために取っていた枠を削ることにした。
結果的に、釈迦さんの動画は見れない、風呂はぬるい、コラムは書けない、起床時間は早まる、という最悪の連鎖が起きてしまった。俺は自分が立てた計画が崩れていくと信じられない程の怒りを感じてしまう。苛立ちで寝つきが悪くなり、目が覚めると朝の九時三十分。

なにがインターネットじゃい

予定より四十五分遅れて起床している自分にブチ切れながらサポートセンターに電話を掛ける。「こちらでは対応致しかねます」が三回続き、十時に本丸へと辿り着く。原因はルーターが初期化してしまったことにあるようで、プロバイダがうんたらかんたらでもう一度Wi-Fi接続をするためには、とどのつまりIDとパスワードが必要ということだった。普段から俺はパスワードを覚えておくことが困難で、例えばGmailなんかは毎回ログインする度にパスワードを再発行している。ログインとは「ID」と「パスワードをお忘れの方はこちら」を経てはじめてできるものだと考えている。
プロバイダのパスワードを忘れたことを伝えると「暗号化されているため私共もお客様にお教えすることはできません。」と言われる。「がしかし、再発行して頂ければ」と続き、いつものように新たなパスワードを得ればそれで解決かと思いきや、「再発行されたパスワードは簡易書留にて送付させていただきます。」とのこと。まさかの郵送で、最終的にはアナログなところに行き着く我々人間の阿呆っぽさに心から落胆した。

逆行せず

おかげさまで、ここ数日俺はインターネットから完全に隔離された生活を送っている。「ネット断捨離」などというバカみたいな言葉があるが、まず最初に言いたのは「インターネットは必要」ということである。ゲームもできない、映画も見れない、作ったネタも共有できない、コラムも納品できない、ラジオ投稿もできない、なにもかもが最悪なのである。
「インターネットから距離を置くことで、生活が豊かになった」とか言う人は、ただ単にこれまで生活を軽視していたに過ぎない。うるさいそうゆうの。普通にAmazonとか使って、生活を豊かにしろよ、と思う。
俺が今日なにをしたかと言えば、無音のリビングの中コーヒーを飲みながら、ファミマで買ったエクレア、チョコレートケーキ、ミルクレープを食べたということだけである。その時にふと、大きな流れに逆らおうとするのは諦めようと思った。
人生には、それはそれは図太い流れのようなものがあって、予定を立てるというのはその流れに逆行するような行為なのではないだろうか。
これまで俺は自分の思い通りに事を運ぶことにこだわってきたのだけれども、そうじゃなくて、浮き輪に捕まってぷかぷか浮かびながら、流れに身を任せてみるのもありなんじゃないかと思った。これまでの二十八年間の人生を振り返ると、どうもがいても無理だったことが数えきれない程あった。抵抗せずに楽しむ方法がきっとあるはずだ。

PROFILE

「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
プールサイドというコンビ名で活動中。
毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。

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