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落合のダッチワイフ DEC 31,2021

Hey!凡な日々 Vol.62
グループLINEへの殺意


俺はノイローゼになりかけている。比喩としての「ノイローゼだわあ」とかではなく、本当に神経が擦り減っていくのを日々感じながら、混沌とした感情を胸に抱きつつ表ではニコニコと笑ったりしているのである。元凶はグループLINEにある。
例えばバンドだったり会社のプロジェクトに関するグループLINEで、スケジュールを仕切ったり、全体の進捗状況を確認しながら押し進めていく役割を担っている人達は、一体どのようにしてメンバーや同僚達への「殺したい」という気持ちを抑えているのだろうか。
俺は本当に頭がおかしくなりそう、というかもうおかしくなっているのである。

自ら提案する人間の不在

三人以上で活動をしている場合「日程を合わせる」ということが最初の課題となってくる。人数が増えれば増えるほど当然日程が合いにくくなってくる。例えば俺とBという人間の予定が合ったとしても、Cが「俺無理だわ~」と言えばそれでもう終わり。日程が合わなければ元も子もない訳であり、俺が考えたネタや企画も撮影不能ということになってしまう。そうなってはいけないということで「◯日は?」「◯日の午後は空いてるけどみんなはどうだろ??」とメッセージを送ってみると「むりだわ~」とか「ちょっと確認してみる」という返信が帰ってくる。「おけおけ」と俺はメッセージを送りながら「こいつらはなにを目的として活動しているのだろうか?」とその時考えてしまう。

「おけおけ」への考察

「おけおけ」は実際「そっか」とか「おっけい」とかで済む。この「おけおけ」というのは、「はいはい」に近い。人に怒られている時に「はい」ではなくわざわざ「はいはい」と言うのは「聞き流してますけども?」という反抗的な感情を抱いていることを微かにほのめかすためである。二回目の「はい」は、一回目の「はい」が持つ本来の意味を肯定しつつも、その純度を下げるという効果を持っている。
この俺の「おけおけ」はかなりレベルが高い。「おっけい」だけであれば「皆の予定が合わないことを了解しました。受け入れました。」という意味になる。しかし俺は予定が合わないということを受け入れてはならない。それでは実現不可能であることを認めてしまうことになるからである。
「おけおけ」の一回目の「おけ」は「実現不可能であることを受け入れました。」という意味であり、二回目の「おけ」は「実現不可能であることは受け入れたのだが、最終的にはそうは思っていません。」という意味を表している。ニュアンスを言語化したことで少し難しくなってしまったが、普通に考えて「おっけい」と「おけおけ」ではどちらが怒ってなさそうか、ライトなリアクションであるかを考えてもらえればお分かりいただけるかと思う。
ただ俺が「おけおけ」と言った後、どうして誰もその他の日程を自ら提案して来ないのだろうか。このまま俺がなにもしなかったら全てが終わってしまうような気がする。全てが終わってもよいとどこかで思っているから、俺以外誰も主体的に動かないのである。「なにも考えてない」とか「どうにかなる」という思考も「終わってもよい」と考えているのとさほど変わらない。
ただメンバーや同僚がそのように考えているということを認めたくないので、実際に終わりが来てしまう前に、また自ら「じゃあ◯日は?」とLINEしてしまっているのである。
ここまでで述べたようなことをメンバーに直接伝えた時に、「でも落合君も自分で仕切りたいんでしょ?他の人に進行されるの嫌がるじゃん。」と言われ、確かにそうだな~とは思いつつ、このようなことを直接的に言われてしまうような関係性を築き上げてしまったことが、果たして正しかったのかどうかその帰り道はよく考えた。
正しいはずだ。俺はそのやり方しか知らないし。

「既読スルー恐怖症」

最も気が狂いそうになるのは「既読スルー」である。これは多くのリーダーが頭を悩ませているのではないかと思う。
「既読スルー」をされたことで、自分の言い方が悪かったのではないかと不安になり、補足的な文章を送るもまたもや既読スルー。段々画面いっぱいに自分が打った文字が綴られた緑が広がってきて、スベッてるような気がしてくる。
少し時間を空けてから「どんなかんじ?」みたいな聞き方をしてやっと「いける。」的な短い返信がくる。そいつが俺への返信をしていない間に、そいつがTwitterで誰かの糞くだらないツイートに「いいね」をしているのも確認済みだし、なんなら普通にツイートしている奴だっている。
具体的なことを言うのが面倒だから奴らは「あとで返そう」と考えて既読スルーをするのではないかと思い、「YES/NO」だけで返せるような質問をするように心掛けた時期もあったが、それにも返信が来ないことが多々。
連中の返信ができなかった大抵の理由が「バタバタしてた」である。「バタバタしている最中にどうして既読を付けてしまったのか?」ということが気になって仕方がないが揉めたくないので「はいよ~~」と返す。そのうち段々と俺は「既読スルー」に怯えだすようになっていた。極力必要不可欠なこと以外ではグループLINEを動かさないようにしているし、最近ではもう無視をされないように自分が既読スルーをしたり、自ら最速で「じゃあね」と切り上げたり、ハナから「返信不要」と既読スルーをこちらから提示・命令することで、本来の意味を持つ「既読スルーを」回避することに成功している。
それでもどうしても「既読スルー」をされてしまうことがあり、そんな時は頭が真っ白になって殺意や哀しみで心が一杯になってしまう。「一人でやってろよ」と言われているような気がしてならないのである。
ここまで書いていて思ったのは、俺は「グループLINEそのものとの相性が悪い」ということだ。このコラムを読んで「落合さんが100%正しい。」と言い切れる人が果たしてどれくらいいるのだろうか。
ここまでの文章を自分で読み返してみると「普段の発言や言動」「不安定なメンタル」「他メンバーへの精神的依存」等々が、活字から滲み出ているのが見えた。
俺は「プールサイド」というお笑いコンビを組んでいる。相方の他に、映像編集や撮影を全てやってくれる男(実質三人目のプールサイド)がいて、三人でいつもああでもない、こうでもないと会議をしては、コント映像を作っている。
俺はこのチームで自分のことをリーダーだと思っているし、まあリーダーなのだけど、他の二人をどう動かすかということをずっと考えてきた。
最近気が付いたのは、俺は二人に完全にコントロールされているということである。
多分俺はもう一人の俺とコンビを組んだら、LINEに関してはストレスフリーでいられるような気がする。ネタに関することだったら、何十時間でもメッセージのやり取りもできるし、返信も速攻する。だけど、どちらかがいずれしんどくなって自殺するとは思う。
俺はそれを無意識下で理解していて、おおらかな二人を選んだのだと思う。彼らは既読スルーも余裕でしてくるけど、俺が怒り狂う0.5歩手前のタイミングで必ず返信をしてくる。常に最速で返信をしていたら、彼等の生活は間違いなく俺の手によって破壊される。それを分かっているから二人は自分のペースで返信をしつつ、ギリギリのところでメッセージを飛ばしてくるのである。

「既読スルー」とは一体なにか

最近、バイト中にこっそりスマホを見る機会が増えた。社員さんに何度も注意をされているが止めることができない。僕はずっと返信がきたかどうかを確認しているのである。
異常だなと思う。肉体以外の部分がLINEのトーク画面に留まっているということが異常なのである。
「既読スルー」という概念はLINE側から見た場合にのみ発生するのではないだろうか。トーク画面の中にいて(そこに実存はしていないが精神的に)、そこからの見地で見た場合のみ「既読スルー」というものは成立する。
「返信がこない」時のトーク画面というのは時間が止まってしまっている。既読だけを付けて消えて行った彼/彼女達の帰りを俺はトーク画面の中でただひたすらに待っている。待ちくたびれている。俺の肉体はバイト先にあり、早くレジに入らなくてはいけないのにも関わらず、ロッカールームの隅に隠れスマホを握りしめているのは、魂がLINEのトーク画面内にあるからである。彼/彼女達がどこに行ってしまったのかというと、それは俺の肉体がある世界、つまりバイト先と同じ世界線にいる。俺がそれを全く想像できていないのは、何度も言うが停滞したLINEのトーク画面の中に魂を置いてきているからである。この時、俺は自分をLINEそのものだと思っているに違いない。既読スルーをした人達や実際に俺がいる世界の時間は常に流動的であり、だからこそ、その二つ(現実とLINEのトーク画面)は食い違ってしまうのである。
実際に目の前にいる人物に「既読スルー」をされても腹が立たないのはそのためである。

PROFILE

「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
プールサイドというコンビ名で活動中。
毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。

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