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落合のダッチワイフ NOV 30,2019

Hey!凡な日々 Vol.22
〜一にモテたい、二にモテたい、三、四に飯飯、五でモテたい〜


喫茶店にいるのです。

皆さん、如何がお過ごしでしょうか?
私はバイトが早く終わったので、喫茶店に来てボーッとしております。
とても優雅な気持ちになっているため、言葉遣いも上品になりますし、皆さんがどのように過ごしているかを気遣える程の余裕があるのです。
先程トイレに行くと先客がいて、私は扉の前で5分程待っていました。中々出て来ないので、また改めて、と思っていると僕の後ろに大学生くらいのお兄さんが並びました。そこまでの尿意ではなかったのですが、どうしてか彼に譲りたくない、彼に先を越されたくないというような、意地のような強い気持ちが芽生えはじめ、結局並び続けることにしました。
それからかれこれ10分が経過したと思います。後ろのお兄さんは、時々空を仰いだり、あちこちに目線を振りまいたりと、とにかく落ち着かない様子でした。今か今かと湧き出る断固なる「尻意(けつい)」から、必死に気を散らしている様を見て、「彼はもう限界である」ということを容易に察することが出来ました。
それから5分後におじさんはトイレから出てきました。列を成す私達を見て、彼は何事もなかったかのような、さも小便でした顔をして、さらぁっ〜と私達の真横を通り過ぎました。一瞥くらい欲しかったものです。
いよいよ自分の番が回ってきた訳ですが、私は元来ちょっぴりお茶目な部分があり、人を驚かすことが好きな性分でありまして、その幼稚な部分、自ら天真爛漫な性格を演じることで人から愛されている訳ですが、今回もまた後ろに並ぶお兄さんにちょっとしたサプライズ、エンターテイメントを提供したいと思いました。
私はトイレに入る直前にお兄さんの方をチラと見て、力一杯に「申し訳ない。」という表情をしました。これは「長くなります。」という私からのメッセージになります。俯きながらトイレに入って行く私の姿を見て、彼は絶望したことでしょう。
そして私は急いで用を足しました。切るべきものも切ってなかったように思います。そして20秒足らずでトイレから出て彼の顔を見るや否や「ドヤ!!!」という顔を浮かべてやりました。その時の彼の「ああ、ああ、ああ」という歓喜に満ち溢れたあの表情、皆様にもお見せしたかったものです。

カワイイ女の子

この喫茶店の店員さんはとても可愛いです。好きです。
採用担当かと思われる普段から感じの良い店長の、エグさのようなものを感じずには入られません。
注文をしている時、一人の店員さんが私の目を見つめました。ただ見つめた訳ではありません。ジーっと見つめるのです。そしてニコッとした訳です。その時に私は恋に落ちた訳ですが、彼女もまた僕に恋をしているに違いはないと確信しました。でなければジーっと見つめ、ニコッとする訳がないのです。
あの表情は真夏の23時から深夜1時30分くらいまで映画を見て、少し疲れる内容の映画だったため互いにグッタリとしてしまって、それでいて室内が蒸し暑かったため、この空気感からの脱却を試みた私が「コンビニでアイスでも買いに行かない?」と言った時に、「え〜どうしよう。」と彼女が僕を焦らしたい時の表情そのものなのであります。結果コンビニには行きます。
とにかく彼女は私に惚れている訳で、私もまた彼女をかけがえのない存在だという風に思っていますので、これはもう待ったなしだなと思ったのですが、念には念をと言いますか、私は何度も鍵が閉まっているか玄関のドアをガチャガチャガチャガチャ確認し住人からクレームが入る程の慎重さを携えている人間なものでして、この度も少しガチャガチャしようかと考えました。確認方法は至って簡単でありまして、私の後ろに並ぶおじさんに彼女がどのような表情をするのかを目視するというものです。結果から言いますと、彼女は年上好きだということになりました。彼女から見て私は年上ですし、勿論私の後ろのおじさんも年上にあたります。彼女は私に惚れ込んでいた訳ではなく、年上全体が好きだったのであります。
トイレの前で突っ立ている最中、厨房で何か作業をしている彼女の表情がふと目に入りました。学校から帰ってきた際、真っ暗なリビングの四隅、ポツンとテレビの光のみが照っていて、ソファーでシャリからはみ出たマグロのようにうな垂れた母親が、画面に映る「激安百貨店特集!」「万引きGメン特集!」「お宝買取特集!!」等を見ている時の表情を思い出しました。彼女も母親も無表情よりも深刻な表情をしていたのであります。
女の子って本当によく分かりません。

消しカス当てゲーム

私は女の子が好きなのですが、女の子は私のことがあまり好きではないようで、というか私の自意識は身体全体にエリア51の本丸近辺のように厳重に張り巡らされているので、一方的に「嫌われている」という被害妄想を自らまくし立てているのに過ぎないようにも思いますが、とにもかくにも女の子と会話が上手くいかないのであります。
女の子に苦手意識を持つようになったのは、高校三年生の夏に起きた出来事がきっかけです。その日の5限の授業は担任の教師がどうのこうので、自習となりました。所謂自由時間です。勤勉であった私は一人自習をしていた訳でして、そして頭が良かったので与えられた問題に対し誤った答えを出すことはなかったのですが、それなのにどうしてか私の机の上に消しカスが溜まっていくのです。正確な回答を導きだす私にとって消しゴムなどは、阿呆が使うものだったので、量を増していく消しカスを見てとても不思議に思いました。
「消しゴムを使っていないのに、机の上には消しカスが、さてどうして」?という問題は、国、数、英、歴史、地理、云々、どれにも当てはまらす、習っていないことは何も考えることが出来ない私にとってとてつもない難問のようなものでした。目の前の問題を解きながら頭を抱えていると、その頭にポツンポツンと何かが降ってくるのであります。最初雨かと思いました。が、「99パーセントがなんちゃらで、天井がある限り雨が滲むことはないし、残りの1パーセントがなんたら」とエジソンあたりがキリッと言っていたのを歴史の授業で学んだことを思い出し、雨以外の何かであるということは分かりました。一応天井を見つめ、教科書に視線を戻した時に頭から消しカスがポロポロ落ちてきた時は、実家の犬を思い出しました。今すぐ家に帰り即座に懐いて欲しかったものです。
私は問題を解く振りをして、消しカスがどこから飛んでくるかに集中しました。
斜め右前でした。視線をやるとクラスの2TOPとされる女子二人がそこにはいました。その2TOPの二人は机を挟むようにして向かい合って座っていました。黒板に背を向けるようにして座っているMさんがニヤニヤとこちらを見ていました。驚いたのは消しカスを投げていたのは私に背を向けて座っているIさん
の方だったことです。ノールックで的確に私の机の上に消しカスを投げるあたり、初めてではないなと判断することが出来ました。
とても傷ついたので仲の良い男友達にそのことを話しました。放課後その男友達と2TOPの笑い声が聞こえてきました。「お前ら落合に消しカス当てたろ!?」と盛り上がっていたのであります。
僕はその時に自分と女の子を呪い、それをきっかけに自意識が過剰に発達したのであります。
発達した自意識は天井知らずで、私のつま先から天辺までを覆い尽くしました。このままではマズイ、つまらぬ偏屈な人間になってしまうと気がついた時には手遅れだったのです。この世の女子全てがあの2TOPのような訳がないことも分かっていたのですが、それを認めた所でモテる訳ではなく、それならば全体、女子全体こっちから願い下げだ!!!と歯を食いしばったのであります。
それからは授業中口に水を含み、口からダラダラと水を垂らし自分の衣服をビチャビチャにすることで男子のみから笑いを取ったりと、わざと女子から嫌われることをして自分を守っていました。

大学に入ると、その異性への怒りを使ってラジオ投稿に勤しんでいました。モテないことと「投稿する」ということに勝手に親和性を感じていたのであります。
別にモテもしないのに、「モテたらラジオ投稿は出来ない」などと勝手に思い込み(モテてもラジオ投稿は出来る)異性との会話を拒んでいたのです。
周りの友人達は大人っぽい恋をし、そこで酸いも甘いも色々学んだのでしょうが、私はその部分がすっぽりと抜けてしまっています。
過剰な自意識が社会に揉まれ緩くなってきた26歳になった今、私はモテたい、女の子と話してみたいと思うようになったのであります。
がしかし、もう全てが手遅れなような気がしてならないのです。何をしたらカッコ良くて、何を言ったら好感を持たれるのか、さっぱりなのです。そういう考え自体が不自然で間違っているという友人達からのご指摘も理解出来るのですが、「では私はこれからどうしたらいい!?」と半ば逆ギレのような形で友人らに詰めると、皆黙ってしまうのであります。

ダサい、僕。

会社は違うのですが、職場が同じということで、奇跡的に仲良くなった女の子がいまして、とある日彼女と一緒に帰る約束をしました。私の退勤時間は21時、彼女の退勤時間は22時30ということで、私は彼女を1時間30分待つことにしました。今になって考えれば、「終わるの落合君の1時間30分後だけどいいの?」という質問は「一緒に帰りたくないんですけど。」という、彼女からのメッセージだったように思います。そんなこともつゆ知らず、私は意気揚々と「全然待てるよ!!」なんて眼球をキラキラさせていたのですから、みっともないっちゃありゃしません。
私は四畳半程の休憩室で彼女を待つことにしました。1時間30分の間にできることは沢山ありました。まず私は、閉店前に自分の店で「銀河鉄道の夜」と液状の制汗剤を買いました。
そして休憩室で身体中にこれでもかと、血液にのめり込む程に制汗剤を塗りたくり、そして部屋の電気を消しました。何故部屋の電気を消したかというと、それは、私は元来ちょっぴりお茶目な部分があり、人を驚かすことが好きな性分でありまして、今回もまたこれから来る彼女にちょっとしたサプライズ、エンターテイメントを提供したいと思ったからであります。供述じみて来ましたが続けます。遅れてやって来た彼女に、「いない」と思わせることが目的で
部屋の明かりを消しました。一度「いない」と思わせることで僕が「いる」ことに価値を持たせようとしたのです。
そして私は椅子に座り、膝を組み、「銀河鉄道の夜」を読み始めました。いないはずの僕がそこにはいて、いてくれた僕が「銀河鉄道の夜」を暗闇で読んでいたら、なんかカッけえに違いないと思ったからです。
そして私は作戦を立てました。建物を出る前の段階から彼女の右側に位置する。そうすることで、自ずと彼女は車道側を歩くことになるので、良き所で何も言わずスッと場所を変わる。また建物を出てすぐに暗闇の坂道があるので、そこでこれもまた何も言わずスッとiPhone6Sのライトを点け彼女の足元を照らす。
この二点で彼女は「落ちる」と私は思ったのであります。

彼女を待っている間「銀河鉄道の夜」を読んでいたのですが、とても不思議な体験をしました。室内で唯一の明かりは自販機が発する真っ白な光のみで、私はそれをあてにして文字を読み進めていたのですが、なんだか自分が今夜空に浮かんでいるような気がしたのであります。四畳半の宇宙の四隅に、自販機の明かりがポツリ。星に見えたのです。

「ああ、いた!!!」彼女は言いました。「そりゃいるよ。」僕は怠そうに言いました。
「何で電気付けないの?」僕は無視をしました。
暗闇の坂道は彼女のiPhoneが照らしました。僕はすっかりあの作戦を忘れていたのです。ああ、忘れた、忘れた、と自分で用意した台本とは自分が違う動きをしてしまったことにパニックになっている間に、彼女の真横を車がビュンビュン通りました。
何故明かりをつけ忘れたかというと、四畳半の宇宙に目が慣れてしまっていたからであります。あの日真っ暗なはずの坂道は1時間30分もの間、闇を見つめ続けた自分の目にとって、明るすぎたのです。

彼女と駅で別れてから、彼女が1度も僕の名前を呼んでいないことに気が付きました。数日後、「俺の名前分かる?」と聞くと、彼女は「忘れちゃった。何だっけ?」と言いました。
一人よがりのその敗北感たるや、帰省して今すぐにでも実家の犬に懐いて欲しくなりました。
それから私は彼女と口を聞かなくなりました。「私のこと避けてない?」と一度聞かれましたが「え〜そんなことないよ!!」と言った自分は阿呆そのものです。
次第に私は女の子を視界に捉えない訓練をしました。私の中で「いない」ことにしてしまおうと思ったのです。
ですがそれも上手くは行きませんでした。
「髪切りました?」「今日残業ですか?」「おはようございます。」「ありがとうございます。」「すいません、前通ります。」と女の子が話しかけてくるからです。

ああ、勘違いしないでくれ。人を見た目で判断しないで欲しい。私はカッコイイけど、ただ外見がカッコイイだけなのだ。僕を相手にしないでくれ。彼女達のたった一言で、最高が最低になったり、最低が生きていて良かったになるのだから。
ああ、モテたい。

PROFILE

「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
プールサイドというコンビ名で活動中。
毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。

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