アーバンママの(どうでもいい)ご飯の話 Vol.4
緑じゃないサグチキンカレー

生まれて初めて、スパイスからカレーを作ったのは、2002年、21歳のときだ。
ある日、なぜか突然インド料理というものを作りたくなったわたしは、当時少なかったレシピ本のなかから「ラジさんちのインドカレー なにしろカレーばっかりの本」という本を買い、初めてルーを使わずにカレーを作った。
その本の発売をいま見たら、ちょうど2002年と書いてあった(いまでも使っている)。
まだ大学生で、笹塚の六畳一間ちょっとのワンルームに住んでいた。下の階には謎のDJが住んでいて100m先まで爆音でワールドミュージックが鳴り響いていたし、隣の部屋はアングラ系の文章を書く「Quick Japan」とかで名前を見たことがあるライターさんだった。
その部屋でわたしは、ラジさんのカレーをたくさん作った。


ラジさんのカレーは作り方もスパイスの種類もすごくシンプルだった。いまみたいに簡単にスパイスが買えなかった、というかそもそも買う手段を知らなかっただけかもしれないけど、少しのスパイスでカレーが出来上がるというのは本当に魔法みたいだった。
その頃からわたしはほとんどルーを使ったカレーを作ったことはない。
必要なスパイスは、ホールのクミン、パウダーのターメリックとチリパウダー、塩、以上。味に奥行きを出すためにパウダーのコリアンダーを使うといいというのは後半で覚えた。
とはいえ、ここ数年、呑み友達であり絶対的な味覚のセンスを超信用している原優子さんのインド料理教室に通っていて、そこでスパイスの多重構造や奥深さを学んだ。インド料理に興味をもつ読者の方には超おすすめなのでチェックしていただきたいのだけど、ここではわたしのどうでもいいカレーの話を引き続きさせていただきます。


とにかく、わたしのカレーの作り方はだいたい、こんな感じ。
↓レシピ
1 鍋に油(多め)を引き、ホールのクミンを炒める。
2 クミンのいいにおい、アジアのおじさんの香ばしいにおいが立ち込めたら、チューブのにんにくと生姜をそれぞれ小さじ1程度いれて炒める(チューブ最高)。
3 適当(本当に適当)に粗みじんした玉ねぎ1個を入れて強めの中火で炒める。あまり動かさずに焼き付けるように炒めると色がつくのが早い。本当はきれいな茶色まで炒めるべきだけど、わたしはめんどくさいので、だいたいこんがりしたらOKにしている。
4 トマト1個のざく切りを入れて、1分ほど潰すように炒める。
5 ターメリックを小指の爪ぐらい、チリパウダー小さじ1/2、塩小さじ1/2、を入れてよくよく炒める。
6 具材を入れて(場合によっては水も少し入れて)火が通るまで煮込んで完成。ここでパクチーどばって入れたり、ココナッツミルクを入れたりすることもある。


じゃあここで、大事な「具」の話をさせて。
まず、インドカレーを思い浮かべてみてください。ねえ、だいたい入っている具材って1種類じゃないですか? チキンカレーなら鶏肉だけとか。たまに野菜カレーで数種類はいっているものもあるけど基本的に具材は少なめ、くー、なんて親切設計なんだよ。これ食材をミックスしないという思想だったり、宗教的なものだったり、あるいは経済的な理由だったりするのかなと考えるのだけど、いまここで結論を書けなくてごめんなさい。
とはいえわたしの場合、自分が作るものには新しさを求めないので、いつも作るのはだいたいオクラのカレーか、サグチキンカレーの2択。はい! やっと出てきた、今日のテーマはサグチキンカレーです。サグチキンカレーは、ほうれん草のペーストでチキンを煮込んだ緑色のカレーです。


ここでとっても大事な話があって、わたしは緑色がとにかく好きなんです。
緑色の壁をしたレストランはだいたい信頼できると思っているし、身につけるものはワンピースもスカートもニットも緑色が多い。いまこの原稿を書いているテーブルに敷いてある布も緑色だ。
でも、サグチキンカレーの緑だけ、なんだか、苦手。
「は??」って感じですよね。なんだろう、わたしはカレーには緑色を求めていないらしい。
でも、ほうれん草と鶏肉の組み合わせがカレーに抜群に合うことは知っている。だからわたしは、適当カレーの作り方【行程6】の段階で、1cmぐらいにざく切りしたほうれん草とぶつ切りの鶏肉を入れて煮込んでいる。
これがわたしのサグチキンカレーだ。ペーストにする手間も省けるから、すごく楽に作れるというのもポイントが高い。コリアンダーパウダーが手元にあったらぜひ足してほしい。
あ、いま思ったけどオクラのカレーも緑だ。オクラの場合は半分ぐらいに切って煮込むだけ。こういう単純なものがとにかく好きだし、緑の呪縛もすごい。


そういえば少し前に友人のコナリさんとサヤカさんと、近所のイタリア料理屋にいった。そこはイタリア全州の料理を期間ごとにひとつの州にしぼって提供してくれるというマニアックなレストランで、その時はカンパーニア州の料理だった。
我々はウサギだとか羊だとかを端から食べ、料理に合わせた白ワインを飲みながら、ドラゴンボールで誰と付き合いたいかという話をしていた。
わたしの場合はピッコロ一択だ。もちろん緑だから。
いつか緑色のピッコロとビールでも飲みながら、緑色じゃないサグチキンカレー食べたいな♡


四谷三丁目の会員制スナックのママです。好きなお酒は濃いめのウーロンハイ、最近は具の多すぎる豚汁をよく作ります、豚汁にはさつま芋をいれる派です。