外部サイトへ移動します
吉本 悠佑 SEP 28,2021

『キッチンカー物語③』~ロゴデザイン編~


『キッチンカー物語①』~原体験~
『キッチンカー物語②』~大人になろうよ~

吾輩はトラックである。名前はまだない。

世の中にある色んな名前って付けてしまえば勝手に歩き出きだす。でもその決定プロセスは意外と知られていない。
だったら書き留めておこう。母子手帳の様に。

NaminGood

まず前例の検証。『イケ麺バー』ネーミングの瞬間を思い出そうとするが、どうも思い出せない……自分でもよくこんな名前降ってきたなと思う
おそらくひとりで蕎麦かうどんを打っている時(=無我の境地)だったと思う。打ちあがった麺を見て「あ~今日もベッピン!あんた、イケメンだね!イケメン…?イケ…麺!?」と。
今回もそんな感じで脳内稲妻が落ちてくるのを待っていたけど、そんなこと頻繁にあるわけ無い。このままでは、雷を、焦がれ空見て、夏終わる。

よし!今回はちゃんとプロセスを踏もう!
とりあえず頭を柔らかくして書きなぐった。

我思う、
►特に深い意味はなくていい
►口に出したくなるものがいい

僕が修行していた京都の割烹屋『枝魯枝魯(ギロギロ)』の大将が「店名なんて『エロエロ』でもなんでもよかった」とよく言っていた。最初は「えぇ~?なにそれ!?」の珍百景レベルでも、馴染んでしまえばこっちのもの。今ではApple社の漢字変換にも出てくるらしい。(アンドロイダーなんでしらんけど!)
そこから独立していった諸先輩のお店だって、『和○輪(わわわ)』さんとか、『ほいっぽ』さんとか、一見意味がわからない。でも口に出したくなる。頭で考える前に口に出す。口に出せば耳に入る。もしかして一見変わった名前というのはこうして頭の中へ二度インプットされていくのかもしれない。それを繰り返して馴染んでいくのかも。

※どうでもいい話かもしれないけど店名といえば…例えば『割烹たなか』に入ったとしよう。「たなか師匠はどの人だろう、こわいのかな」と僕はついつい“たなかさん”を探してしまう。かと思ったら突然「料理長のイトウです」と名乗られたら「えぇ~?たなかさんは何処へ!?」と混乱に陥る。さっきまで純粋に楽しんでいた目の前の料理が、また違ったものに見えてしまう…ってのは僕だけ??

あとねぇ、語弊を恐れずに言ったら、
►適度なダサさ
が個人的にツボ。時に心酔さえしてきた。

「嵐」だってデビューした時は「エェ〜?ARASHI!?」と。キンプリだって。Kinki Kidsだって。光GENJIだって。それでも気付いたら1億総キャーキャー言ってる。やっぱりジャニーさんってすごいプロデューサーだったんだなと思う。
スーパーモンキーズとか、また会いたいもん。皮肉を逆手にとった最高のグループ名だと今でも思っている。今のうるさいコンプラでは付けられないのもまたニクい!(逆にカッコよすぎ系アーティストには青春時代からどうもハマることはなかった…)

というわけで数々の案の中で個人的に気に入った3つを、家のホワイトボードに描いてみた。

うーん、ダサい。(笑)

デザインの力と想像力

ここからはいよいよプロの力を借りよう。
知り合いのデザイナーさんに「屋号とロゴの組み合わせをいくつか作って欲しい」と依頼した。

で、出てきたのがこちら。

Designed by Yuuki Ushijima

3つの屋号案に2つずつ、計6つのロゴ案を出してくれた。もちろんこれは初案。いかようにも変えられる。

この中で2つ、直感的にいいなと思った。
数人の友人にだけ意見を聞いてみた。

——大切な決定ほど人の話を聞かない——

転職とか、結婚とか、留学とか、起業とか。聞いたらブレる。自信がないから人に聞く。そして人の決めた道を歩む。それでは本末転倒。

——マル・バツでなく「添削」の作業——

意見を聞くとしても、それは作文を添削してもらう感覚に近い。初案が評価50点だとしたら、それを60点・70点へと上げていく作業。そういうことに協力的な人にだけ聞く。でも決して100点にはならない。それは世に出してみないとわからない。まさに妊活!(したことないけど!)

当初、『ダシマック』がよかった。カタカナの持つシャープ感やちっちゃい「ッ」のダッシュ感を試してみたかった。

でも、方向性を変えた。

僕の好きなもの。それは「炊きもの」。
揚げ物。焼き物。椀物。いろんな料理があるなかで僕は炊きもんが好き。ほっこりする。

やっぱ自分の好きなものっていつまでも飽きないじゃないですか。
イケメンをいつまで眺めていても飽きないし、炊きもんを毎日食べても飽きない。

「うちのたいたん号がさぁ…」 「来月のたいたんは…」 「たいたん、元気?」 「ほら、あきちゃん、あそこ。『たいたん』ってかいてあるよ。よめるね」 ……ブツブツと口馴染み・耳馴染みを確認してみる。

——まだここにない世界を想像する——

うん。子供にもやさしい。
ハッシュタグ仕様もOK. #taitan

→これにしようっと!

Designed by Yuuki Ushijima

『美学』の時間

基本形は決まった。これだけでも機能としては成り立つケド、ここからは『美学』の時間

——【美学①】縦書き——
「たいたん」は日本語。じゃあ『日本語』って何よ? 『日本語の特徴・魅力』って何よ?
まずは今回採用した『ひらがな』。日本独自のシンプルデザイン。柔らかさ。
そしてもう一つが『縦書き』だと思った。

どこかで聞いた話:日本に今のような横書きスタイルが広がったのは明治時代以降だそうだ。西洋化=アルファベット表記(横書き)に影響されてのこと。今ではSNSもこのコラムも横書き。縦書きに触れる機会は極端に減ったのに日本人なら皆読める。
ある外国人曰く:「日本人は文字を縦にも横にも読み書きできるなんてすごい! 我々はひとつしかできないからサ」…そんなこともふと甦った。当たり前の日常に隠れているcoolさ.

僕なんか赤ちょうちん系のお店が好きで、いわゆる「短冊メニュー」と呼ばれる縦書きで壁にずらっと並べられたお品書きを見上げると、「さぁ今日は何を食べようか」とわくわくする。

→『縦書き』採用へ

——【美学②】丸——
キッチンカーは別名「フードトラック」(※kitchen carは和製英語。英語ではfood truckが正しい)トラックは四角い。販売窓も四角い。看板も四角い。角ばってばかり…
じゃあ『丸』が欲しい。

日本の美学に『○△□』(マル・サンカク・シカク)という世界観がある。興味ある人はググってみてほしい。茶道で学んだ。京都の寺院にもたくさん潜んでいる。

→『丸』を以って角をトル

——【美学③】目線——
今回、かわいい妖怪のように描いてくれたロゴ。僕は勝手に「たいたんちゃん」と呼んでいる。なめずりの赤の差し色もいい。こういうところがデザインの力。その『たいたんちゃん』の目線を修正。

→何を見つめる?それは・・・・

※以下は実際の僕の手描き修正。

そして反映してもらったのがこちら。

Designed by Yuuki Ushijima

発注者の心得~プロとの関わり方~

いまキッチンカー製作を通じ、僕は「発注者」として様々なプロと仕事をさせて頂いている。ロゴデザインもその作業の一つ。
「発注者」というと大げさかもしれないが、日々誰かが発注者であり、そこには必ずプロがいる。じゃあ「発注者」って何よ?

——発注者は自分の美学を持つ——
「なんでもいいです」は絶対にダメ。「かっこいいもの作ってください」もダメ。
美容師さんでもそうじゃないですか? 「おまかせで」って言われるのが一番悩ましい。さっぱりしたいの?キープしたいの?攻めたいの? 気持ちだけでも教えてヨ…と。
発注者は、発注者らしく、美学を。(=気を遣って意見を言わないほうが作り手に失礼)
だから普段からいろんなものに触れ、自分なりの美学を持っておくことって大切。美学は一日にして成らず。

——意図も含めて指示は的確に——
発注者が納得いかないなら「なぜ」「どこが」をまず自分で考える。
なんとなく「もっといいものを」は絶対ダメ。
夕飯を作ってもらった人にも対してもそうじゃないですか? 「なんとなく今日のチャーハン、パンチ効いてないね」は一番腹立つ。じゃあテメ―が作れよ。台所にも立てないくせに…と。
「酒のアテにするからもうちょいパンチが欲しいナ。ちょっと焦がし醤油トカ…」
その伝え方には気を遣わなければならない。(=あなたの「いい」と私の「いい」は違うからね!)

僕自身、様々な失敗を経てこうした『美学』を多少なりとも持てるようになった。それでも答えなんてない。変わっていったっていい。とにかく「美しい」って気持ちを抱ける人間でありたい。
そして自分の『美学』を実現できるかどうかって、やっぱり人と人のコミュニケーションにかかっている。

これからスーツを仕立てる人も、結婚式をあげる人も、家を建てる人も、みんな発注者として自分らしい美しいものを実現して欲しい。その道のプロと一緒に。

こうして最後に微調整を加え、ひとつのロゴが仕上がった。

Designed by Yuuki Ushijima

蛇足を楽しめ!

クリエイティブなことをする時はアソビの部分を設けるといい。意識高いクリエイターほどそこを楽しめる人が多い気がする。
発注をかけた物の制作って狙った作業だったりするけど、採用されるかはおいといて「こんなんもどうかな?」みたいなはみだしっていうか、そこを発注者とプロが一緒に楽しめたら理想。『もし蛇に足があったら?』を本気で描いてみるって、とってもクリエイティブな作業だと思いませんか? ペガサスも蛇足も同じ。創造性の賜物。

いきなり前衛芸術を創れ!って言われても難しいけど、キャンバスの粋を少しづつ超えていけば、気付いたらそれが新しいジャンルになってたりして。

ということで、僕の思い付きのラクガキをうまく仕上げてくれた。
→たいたんちゃんの妹分。[ニッコリVer.]

Designed by Yuuki Ushijima

P.S.~トラックの車種がマツダの「タイタン」に決まりました!車体チームには「サイズと予算が合えばお任せします」とだけ伝えていたのに見事タイタンヒット!なんか勝手にご縁を感じる、ロゴ決定後の嬉しい一報でした~

~つづく~

PROFILE

吉本 悠佑 POP-UPイケ麺バー主宰

京都在住『流しの料理人』 Pop-Upイケ麺バーを主宰し各地で手打ちの蕎麦や饂飩を出す傍ら、ライター、金継ぎなどをマルチにこなす。京都の割烹屋・全国の麺処で修業経験有。旅した国は世界40か国近く。大学卒業後、大手の人材会社・広告代理店での営業経験やドイツ在住経験も。gayデス。

FEATUREおすすめしたい記事

page top