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吉本 悠佑 NOV 19,2019

世界は作ったもん勝ち~ポップアップの可能性~


こんにちは、ヨシモトです。
フリーランスになった今「本業は何?」と僕に聞かれても、全てが本業で“虚業”は存在しないはずなのですが、今年から始めた「ポップアップイケ麺バー」というお仕事が幸いにも盛況を頂いております。「ポップアップ」という言葉が流行り出している波と、「イケ麺バー」という唯一無二?(おそらく)の言い出しっぺ感が、なんだかうまく僕を奔走させてくれています。

※大阪梅田のイベントスペースを借りて、初の出仕事を成功させました。

ホーム京都では今年は6回目を数え、11月には初の大阪梅田大会を実現させ、来月12月には初の東京浅草大会を控えています。自分でやると言った以上、あとはやりきるのみ。
まだ至らぬ点・不安な点ばかりで眠れない日もありますが、打ち上げた花火は毎回僕の満足いくような形で咲いてくれているので、とても嬉しい限りです。支えてくれている方々には日々是感謝。

そんな神出鬼没な「ポップアップイケ麺バー」の原点となるような話の中でも、今回は『ポップアップ』という手法にフォーカスして、僕なりにお話ししてみたいと思います。
※「ポップアップ」(pop up)・・・本来は英語で「突然現れる」という意味で、期間限定のショップやレストランなどの手法を指す。

出会いはやっぱり飲み屋(笑)

※僕が「ホーム」と呼んでいる東山の飲み屋。ここでほぼ毎月、ポップアップイケ麺バーという名の僕の手作り麺とアテを出す店をやっております。普段のマスターのママを差し置いて、メインに映りたがる僕(笑)

食の世界に入ってからいつも聞かれるのが『いつかは店を出したいの?』という質問。そもそも僕は、いつもいろんなことにアンチテーゼを投げかけてしまう性格なのかもしれないけど、正直、この質問もやっぱり僕にとっては『ああ、また来たか・・・』と思ってしまうのです。
「飲食の仕事をしている→将来自分の店を持つ」というレール。僕は昔っからとにかく「脱線坊や」だったので、「店を持つの?」を『店を持て!』という強迫のように捉えてしまい、えー、そういう道しかないの~!?と思ってげんなりしてしまうのです。でも飲食の世界に入ったばかりの頃はとにかく毎日が必死で、特にやってみたいような「世界観」にも出逢えてなかったので、「えぇまあ、将来はそうなるのかな」とか口を濁していた。心の中では、なんか違うんだけどな、と思いながら。
そんな時、昨年の夏にいまの東山の家に引っ越してきて、たまたま入った近所の飲み屋でマスターの女性と話していたら、「私東京に旦那がいて毎月一週間くらい店空けるんだよね。よかったら好きに使っていいよ」と言われた。最初はヘラヘラと「そんなんも楽しいっすね~」ぐらいのことを言っていたけど、秋・冬と経つにつれてなんだかやっぱり気になってきた。僕の方から「あの件、もし覚えて頂いていたら年を越したらちゃんと返事します」と律儀なメールをマスターに送ったら『いつでもどうぞ』と温かい返事が来た。
人の心って実は、聞いたその瞬間にもう決まっているのかもしれない。
僕は今年の始めから京都東山で時々だけ現れる“マスター”として動き出した。
それが僕の「ポップアップ」という手法への原点だった。

人は旅をしたい生き物?

※昨年、ニューヨークから来日していたアイスクリームシェフのニックの手伝いをした。彼なんかは経営していたイタリアンレストランを譲渡し、「魅せるアイスクリーム店」を各地のフードマーケットでやってヒット。腕にはアイスクリームのタトゥーが。愛を感じるし、彼の世界観を僕は心から尊敬する。

僕はミシュラン星付きのレストランとかに全然興味がないのですが、聞いたところによると、ヨーロッパのほうでは予約3年待ちみたいなそういったレストランのシェフが急に辞めると言い出して、旅に出ながら各地でポップアップレストランをする。そんな動きがあるそうな。
これは僕の想像だけど、そりゃあのれんを構えるのは素晴らしいことだし、僕はまだそれをやっていない身でとやかく言うつもりはないけど、毎日、同じ場所で同じことをするのは、やっぱり飽きたりしないのかな?と思ってしまう。無論、お皿の上では飽きないような創意工夫を日々日々するだろうけど、人ってやっぱり旅に出たくならないのかな?と、旅人気質としては思ってしまう。
タモリさんだってギネスに載るほど「笑っていいとも」を続けていたし、それはそれで素晴らしいことで、最初はタモリさんも楽しくやっていたのかもしれないけど、タモリさんが「二泊三日より長い旅をしたことない」みたいなことを言っているみたいな記事を読んだときは「長旅ができないなんてちょっと可哀そうかも」と勝手に心配になってしまった。
ちなみに前述のミシュランシェフは、各地でいろんなものを食べ、発見し、また新しいインスピレーションを感じたりするらしい。僕も今年はイランで出逢ったカレー粉にインスパイアされて、イラン風冷製カレーうどんを作りました(笑)
ミシュランのシェフも、タモリさんも、やっぱり旅に出たかったのかも。

ポップアップって古くて新しい手法

※京都東山でたまに借りているお店。小さなスペースが逆に気に入っている。麺は自宅で作り持って行く。徒歩30秒の距離がいい。近くに商店街もあり、食材はそこで買う。お店のおばちゃんらと会話が弾むのも、また楽しい。

「ポップアップ」などと横文字にすると、さも新しいように聞こえるけど、その手法は別に新しくないと思っている。例えば百貨店の催事。これってれっきとした「ポップアップイベント」であって、北海道のハッカ屋さんが高島屋の催事とかで期間限定で店を出す、消費者は物珍しさもあって、そのハッカ油を買う。ということ。(ちなみに僕は鼻炎持ちなのでハッカ油は大好き。吸うとクシャミが止まる。蚊に刺されたらムヒ代わりにもなる。)
僕も最初はあまり考えずに勢いで京都東山にて「たまに現れるマスター」として立つことを始めたが、これもれっきとしたポップアップ(突然現れる)であると思っている。ここで、飲食店って不思議だなと思うのが、同じ箱でもマスターが変われば空気が変わる。空気が変われば客層も変わる。
そしてマスターが僕であれば、その期間その場所はある意味で僕のものになるので、お料理も置く酒も営業時間も値段も全部自分が責任持って決められる。(雇われ店長と違うのはこの点で、同じメニュー・同じ価格・同じ営業時間で任されるならそれは「雇われ店長」であるが、僕は裁量持ってしかもその利益は自分のものになるので「ポップアップ亭主」のような存在になれる)
こうしてトライアンドエラーを繰り返しながらも自分の世界観を創り上げられるのはとてもとても貴重な体験である。そして今後、僕がどこに行ってもその世界観をすぐにバチンと創造できるようなことができたら、それは僕の能力になると思う。

掛け算の妙

※今年2月の初めての京都ポップアップ。初めて使うキッチンで勝手もわからず緊張もしていたのに、「どんなもんや」とわいのわいのと沢山の人に来て頂き、お店を埋めることができました。本当にありがとう。僕が有名になったらファン感謝デーで琵琶湖で船上パーティーしようね!(笑)

飲食業って「業界地図」的に言えば『国内は頭打ち』『プレイヤー多数のレッドオーシャン』などと酷評され、成長性はなく、しのぎを削りあってるようなことを言われ続けている。でもミクロに目をやれば、田舎のおっさんはいつまでも行きつけのスナックのママに会いに呑みに行っているし、それはホリエモンも『AI時代でもなくならない職業』として言っている。
僕は蕎麦や饂飩を作るけど、別になか卯を意識したことはないし、別になか卯に行きたい人は行けばいいと思う。
おうどんが300円で食べれる時代に、1000円で出すなんて強気、と思われるかもしれないが、僕が長崎の五島列島や北海道のそば畑まで行ってホンモノを見てきた経験は何物にも代えがたいと思っているし、僕がオネェ語を駆使しながら語り出したら、チャージ料もなくゲイバーに来たような錯覚に陥らせることもできるし、僕が見つけたおいしいお酒や焼酎にもそれぞれに語れるストーリーがあったりすると、そんなことはなか卯の店長は絶対にしてくれない。
そこは、おうどんやおそばを本気で出すゲイバーとも言えるし、おいしい麺屋の亭主がたまたまオネェであったとも言えるし、もはやそんなことはどうでもよく、面白い亭主がやってる飲み屋が東山にたまに現れるらしいから追っかけてみよう、ということになるかもしれない。
そんなことを言いくるめて表現するなれば、それが「ポップアップイケ麺バー」なのです。

おうどん×おそば×ゲイ×元エリートサラリーマン×ドイツ×英語×旅人・・・
今までの僕の人生をいろんな組み合わせで掛け算すればするほど、その答えが奇天烈となり、面白い結果になるんだなということを、最近つくづく思う。

僕が考えるこれからの日本の未来

日本のマクロに目をやると、人口減少。少子高齢化。空き家の増加。そしてSNSの台頭。人と人との距離は軽薄化し、LINEでは会話ができても、生身の人間と会話できない人種が増えてきてはいないか、と僕は危惧してしまう。
でもそんな若者が増えているとしても、彼らは人が嫌いになったわけではないと思う。ただ、人と直接話すことに慣れていないだけ。
そんな希薄な時代で、一方では、様々な『垣根』がどんどん無くなってきている気がする。若者はシェアハウスをしてみたり(僕もしているが)、自動車を保有せずカーシェアサービスを利用し、ウーバーイーツのようなサービスも、以前までは自分の店で自前の出前バイクを持っていたけど、そんなものは持たなくても、バイクや自転車で宅配してくれる人を『シェア』してお客さんに届けることができるようになった。
そうしたら僕としては、飲食店もシェアしたらいいんじゃない?って思う。東京のゴールデン街なんかでは「日替わり店長」のようなバーもあるとかテレビでやっていたが、まさにそれ。
冒頭に僕は「いつかは店を持つの?」と聞かれることへの悶々としたアンチテーゼを提起したけど、僕の考えていたことは、だんだんと時代の流れによって普通になっていくのかもしれない。
日本料亭という文化的でコンサバティブな世界も、立派な庭園の維持費やらなんやらで経営が行き詰まり倒産。なんてことになったら元も子もない。亭主が月替わりの「日本庭園付きポップアップ料亭(週の賃料〇〇万円で亭主募集中!)」なんてお店も、50年後には登場しているのかも?
いろんなことって、無くなってしまえばそこで全てが終わりますが、みんなでシェアしてみんなでメンテナンスして後世に残していく。そんなことが例えば「ポップアップ」という手法で実現するかもしれません。

大丈夫。たとえ箱が変わっても、空気を読むんじゃなく、自分が空気を飲み込めば、そこは自分の世界になる。

※令和元年5月1日。お店で僕の直筆「令和」樽酒で鏡割り。心機一転、お客さんと共にいいスタートが切れた一瞬だった。
PROFILE

吉本 悠佑 POP-UPイケ麺バー主宰

京都在住『料理しない料理人』 Pop-Upイケ麺Barで自身手打ちの蕎麦や饂飩を出す、枝魯枝魯“若女将”、ライター業、金継ぎワークショップなどをマルチにこなす。旅した国は世界40か国近く。大学卒業後、大手人材会社、大手広告代理店での営業経験や、ドイツ在住経験も。gayデス。

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