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吉本 悠佑 DEC 13,2019

イスラム芸術に僕がハマる3つの理由


先日、マレーシアのクアラルンプールに行ってきた。
友人が長年住んでおり、自分のパスポートのスタンプの数を数えたらもう5回目の入国になる。近年では年一のペースで来ている。
いつも友人宅に滞在させてもらうので、特に観光もせずダラダラと彼らのキッズと遊んでいるだけなので、有名なツインタワーにも上ったこともなく、友人宅の高層マンションから見えるあの二本の鉄塔は「蜃気楼か?」と思う程である。
が、今回は珍しく重い腰をあげて市内の「イスラミック・アート・ミュージアム」に行ってきた。
マレーシアは日本人観光客や移住先としても人気の国だが、イスラム教を国教としたムスリム(イスラム教徒)が多数を占める立派な「イスラム世界」。
僕は最近、イスラム世界にハマっており、今年もイランに初めて行ってきた。基本的には“現場主義”な人間なので美術館や博物館などのハコモノにはあまり興味がなく、もっと砂ぼこりや泥まみれの“現場”に行って何かを感じたい側の人間なのですが、今回初めて訪れたそのミュージアムが思った以上に良く、改めてその美しさに触れた。体系的にわかりやすく展示された作品の数々は、宗教的な側面だけでなく、イスラム世界が生活者のあらゆるところに密着していることが垣間見え見ごたえ満載。久々にお気に入りの美術館に出逢え、ホクホクと帰ってこられた。
今回は過去に僕が旅してきた国々の中で見つけた、そんなイスラミックアートの美しさを紹介したい。

イスラム世界へのゲートウェイ・トルコ

思えば初めて訪れた“イスラム世界”はトルコだったし、そういう日本人は多いと思う。親日国として日本でもよく知られているし、トルコ料理は世界3大料理のひとつとしても有名。(うまい!)
40カ国近く旅してきた僕が「あなたの好きな国はどこですか?」と言われたら、トップ3に確実に入る国がこのトルコ。もう何度も足を運んでいる。
名声を誇ったオスマントルコの歴史だけあって、イスタンブールをはじめあちこちにモスクや宮殿など見所満載。イスラム教では基本ご法度なアルコールに関しても俗世的なトルコ人に言わせたら「トルコに来たらぜひ“うち”のワインを飲んでいってくれ!うまいぞ!」と言われるほど酒は巷に溢れている。トルコビールもうまい。「ラキ」というトルコのハードリカーもイケる。僕はこういう俗世的なイスラム国家を「ヘラヘライスラム」と呼んでいて御贔屓にしている。もちろん酒は合法。ご安心を。
観光立国としてよくできたトルコ。イスラム世界へのゲートウェイにとしてはとにかく最適。イスラム初心者は是非。

ウズベキスタン・シルクロードと青の街

いきなりコアなところにいくが、僕が名古屋に住んでた頃に知り合ったウズベキスタン人の友人(名古屋大学留学生)にずっと「ウズベクに来てくれ!」と言われていたので、6年ほど前に行ってきた。
首都タシュケントは近世になって作られた街なので面白みに欠けるが、古都サマルカンドはそれはもう大変に美しかった。知識ゼロで行ったが想像以上。圧巻。
青い空と青いモスクの屋根が境界線をなくす様に重なり合う。その瞬間、ウズベキスタンの国旗の意味が真に解った。日本が「日の丸」の国なら、ウズベキスタンは「青天」の国。それをモスクが表現してくれているから、空が多少くすんでいても青天は常に人々の心に映えている。

コソボ・バルカンの歴史を乗り越えて

ドイツでの生活に少し嫌気が差していた頃、不意に訪れたコソボ。バルカン半島のこの地はかつて、数奇な運命の舞台になった時期もあったが、今ではEUの支援を受け平和そのもの。そんなコソボの小さな古都プリズレンに僕は心を奪われ、二度も行ってしまった。
町の中心に流れる川が、群馬の山麓の温泉宿に流れる川のせせらぎのように耳に流入。夏の晴れた日はとにかく心地がいい。モスクも小粒ながら地元民の憩いの場として愛に溢れている。小道を歩くとムスリムの人々が愛するパンを焼く香り、薪を焚く煙、アツアツのそれを取りに来る子供達。僕だけが発見した小さなこの町は、人々のぬくもりが近くそして温かい。僕の大好きな場所。

モロッコ・目覚めるとそこはイスラム

「そういえばアフリカ大陸に降り立ったことがないな」と思い、昨年末に突然モロッコに一週間ほど飛んだ。
モロッコの楽しさはずばり“宿”。「リヤド」と呼ばれるモロッコの宿泊所は、中庭がある邸宅をリノベーションして宿泊施設にしているようなところ。宿自体がモスクかイスラム民の邸宅のような感覚。細部までその施しが美しい。バックパッカー向けの安宿でもこうした美しいリヤドが多く、寝ても覚めても随所にイスラム世界を感じられるのが日本人には大変珍しく、嬉しい。

イラン・ペルシャ文明の宝庫

今年6月イランに行った。アメリカとの関係性悪化により、過去の“アフガニスタン”のように某国に攻め入られ壊される危険のある国を、僕はこの目で見に行きたかった。大国のカウンターパートを目指すその誇り高き民族の国は、とにかく美しく、深かった。
自国を愛し、家族を大切にし、そして万人をもてなす。言葉は通じなくても彼らの民度の高さは街を歩きさえすれば随所から伝わってくる。
どうか彼らの文化を壊さないで欲しい。

マレーシアで発見した「イスラムと中華の融合」

話は冒頭のイスラミック・アート・ミュージアムに戻るが、特に僕が気に入ったのは「中華とイスラムの融合」のコーナー。

例えばこれは、中国の陶磁器にアラブ文字が施されたもの。青色はイスラムでは神聖な色で、それも影響しているのかもしれない。

これは一見、普通の中国風の掛け軸(書道)に見えるのだが、よく見るとアラビア語で書かれているという巧妙な仕掛け。
中国ではザクロは種が多いことから「子孫繁栄」の象徴としておめでたい果物として描かれることが多く、その“種”の部分にアラブ文字が書かれているという秀逸な作品。一目で気に入り、お土産として買ってしまいました。(※これは僕の家です。書いてある文言は「慈悲深きアッラーよ」などの意味らしい。笑)

イスラミック・アートの魅力を3つにまとめる

さて、僕がここまでイスラミック・アートの魅力にハマったのには、以下の3つの理由があると思う。

①偶像崇拝でないところ
基本的にアッラーは神ではあるが『偶像』としては出てこない。キリスト教におけるイエス様やマリア様、ないしは仏教における仏陀のようなお顔の出てこない宗教、それがイスラム教。僕は仏教徒(真宗大谷派)なので、キリスト教の教会に行っても何をしていいかわからないし、イエス様と目が合ってもどんな神妙な面持ちでいたらいいのかわからずいつも困る。でもアッラー様は目の前に現れてくれないので、特に緊張しなくて済むのがいい。

②読めない宇宙文字(アラブ文字・ペルシャ文字)
イエス様の前における英語の教えがあったりすると”多少読めてしまう”ので、一生懸命に読もうとするけど、結局ちんぷんかんぷんで疲れて終わる。が、イスラムの文字は全く不可解な文字なので、僕を何も考えなくてもよい『コスモワールド』にいざなってくれる。考えることを放棄させてくれるなんて、なんて心地のよいことか!アッラーアクバル!!(アッラーは偉大なり!!)

③イスラムの幾何学模様=自然界そのもの
モスクはもちろんのこと、ドアにも注目して欲しいし、窓枠にもタイルにもテーブルクロスにも注目して欲しい。それは文字ではなくイスラミック・アートに代表される「幾何学模様」。これらは全て自然界から来ているらしい。イスラム教のシンボルである星と月はもちろん、花、幹、水、風、土、空・・・。それらは宗教関係なく万人にとって身近なもの。だからこそ一見、意味不明に見えるものであっても、単純に「ああ、美しい・・・」としか言葉が出てこないんだと思う。
それこそがまさに、イスラム世界の美しさの原点な気がする。僕は。

僕は宗教学者でも芸術家でもなんでもないので、ただ感じるままに生きているだけですが、日本人には馴染みの薄いイスラム教の世界は、現在もその人口比率が増え続けており(彼ら彼女らは本当によく子供を作る!家族を愛する!)、きっとキリスト教徒の数を抜くことも時間の問題だと言われている。
でも、そのアートから察するに、自然界を愛する彼らを僕は本当に民度が高いと思うし、ただ「壁」を作ればいいところを、模様にし、タイルにし、そこを「自然界」に模してしまう手間とセンスは、どんな民族・宗教であれ心に余裕がないとできないことだと思う。

嗚呼、もっと行きたいイスラム世界。
もっと、自然界との融合を図りたい。

PROFILE

吉本 悠佑 POP-UPイケ麺バー主宰

京都在住『流しの料理人』 Pop-Upイケ麺バーを主宰し各地で手打ちの蕎麦や饂飩を出す傍ら、ライター、金継ぎなどをマルチにこなす。京都の割烹屋・全国の麺処で修業経験有。旅した国は世界40か国近く。大学卒業後、大手の人材会社・広告代理店での営業経験やドイツ在住経験も。gayデス。

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