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NEWS DEC 27,2025

NEATの根源に触れることのできるカジュアルセットアップ

日本でも指折りのパンツ専業ブランドとして名を馳せるNEATも、11年目へと突入した。今では全国各地に卸先を拡大させ、お隣、韓国には直営店も構える。今年で4回目を迎えたパリでの展示会も評判は上々だ。そんなNEATとURBS(URBAN RESEARCH BUYERS SELECT)でバイヤーを務める阿部浩とはブランド設立時からよく知った仲。別注による復刻シリーズは常に話題をさらってきた。そして先日、また楽しみなアイテムが発表され巷を賑わせている。そのキモを一言で言うなら、“原点回帰”。キーパーソン3名の鼎談から、その真相と深層に迫る。


NEATを陰ながら支えた業界屈指のパタンナー

クラシックやトラッドに流れる威厳、ドレスらしいエレガントさは損なわず、ニューバランスなどのスニーカーとマッチし自転車にも乗れるスラックス。NEATデザイナー、西野大士氏が当初思い描いたスラックスの理想を聞くと、なかなかにしてハードルが高い。その無理難題をカタチにしたのがパタンナーの高畠海氏だ。

「海さんとの出会いはたしか2014年。過去に在籍していたブルックスブラザーズの同僚に紹介してもらったのがきっかけです。海さんも古いものが大好きで、言葉を交わすうち、引き出しの多さやセンスの良さは徐々に伝わってきました。そしてNEATのパターンを引いてもらうわけですが、海さんも本職がありますからね。そんな中、僕のわがままによく付き合ってくれたと思います」

高畠氏はアパレル全般のお直しを手がける専門家で、国内の主要ブランドをはじめ多くの企業が信頼を寄せる職人。ときには、トップメゾンの国内イベントにも駆り出されるなど世界も相手に活躍する実力派である。彼も当時を思い出しながら、「面白い人がいるな」と西野氏の第一印象を語る。

「そのときはまだメガネブランドのAYAMEのPRでしたよね。最初は自分の穿きたいパンツを作りたいとのお話でした。しかも自費で(笑)。アメリカの老舗のスラックスとイタリアの気鋭ブランドのパンツを持ってきて、これとこれを合わせたものを作りたいと。それこそ、ウチのカフェ(nucafe)の片隅で、ああでもないこうでもないと話しながら何度も試着を重ねていましたね」

阿部もまた、NEATの受注会やイベントを通して高畠氏の実力を目の当たりにしてきた一人だ。

「当時、NEATの受注会ではブランドがスタートして間もないにも関わらず数え切れないほどのオーダーが入りました。そのオーダーを海さんに対応してもらっていたのですが、評判もすこぶる良かった。僕もNEATのパンツはすべて、海さんに裾上げやらお直しやらをお願いしていますからね」

唯一無二とも言われるシルエットの秘密

別注HD Corduroy Wide-OLD
price:¥38,500 (tax incl.)
color:BLACK
size:44 / 46 / 48 / 50

そんなNEATを全国区にした要因のひとつはシルエットだろう。スタンダード、フレア、ストレートと、現在は多様なシルエットがコレクションを賑わせているが、その源流を辿るとファーストシーズンに発表したワイドとテーパードに行き着く。今回の別注では、往時のシルエットの復刻を試みているが、そこには阿部が抱えてきたひとつの想いがあった。

「以前、鼎談をさせていただいた際にも話しましたが、NEATを初めて穿かせてもらったときの衝撃はいまだ覚えています。特に印象深かったのがシルエット。スラックス自体はよく穿いていた方でしたけど、これまで見たことがない一本でした。振り返ってみると、自分が持っているNEATの中でよく穿いているのが旧型。新しいのがどうこうというわけではないですが、その引力の源というか、ブランドの根っこの部分に再び触れてみたい想いもあって今回話をさせていただきました」

阿部がイメージする過去のワイドシルエットこそ、高畠氏が手掛けたもの。しかも、一般的なアプローチとは異なる手段でパターンを引いていたという。

「普通のパタンナーさんや学校の先生、紳士服のテーラーをやってきた人からすると『何を考えてるんだ』と言われかねないぐらいセオリーを崩して作っているんです。西野氏からこのタック分量は絶対確保したいという要望をもらっていましたから、あえてそうせざるを得なかった、そうすることでしか作れなかったと言っていいでしょう」

作りのイレギュラーさについて、さらに高畠氏は言葉を紡ぐ。

「見る人が見ればわかると思いますが、普通、紳士服のスラックスというのは、クリースラインの延長線上にタックを取ったりします。ただ、どうしても深いタックを取りたい、サイドシーム側にも生地を残したい、インタックにしたいという要望を叶えるべく、タックのラインを途中からずらしているんですよ。なので、穿いたときに少し 膨らみが出るんです」

「それを自然に見せたいとなると、今度は後ろの内側のラインが合わなくなってくるからいせ込まなければいけない。テーラー屋さんは、アイロンのクセ取りという作業でウールをギュッと縮めてフォローするんですけど、それを工場さんでやってもらわないといけないですから、その辺の分量をどれぐらいにするか、果たしてそれを工場で再現してもらえるかどうかを考えながらパターンを引いていたのでやっぱり難しかったですよね」

話を聞けば聞くほど、王道の作りとは明らかに一線を画していることが分かる。ただ、そのハードルも西野氏とのタッグだからこそ乗り越えられたのかも知れないと回想する。

「西野さんが服作りの細かいところまでを知っていたら、僕もここまで自由な発想でやらせてもらえてなかったかもしれませんし、こだわりがぶつかってカタチにならなかったかもしれません。ある程度任せてもらえたからこそ、ちょっと時間はかかりましたし、悩みもしましたけど具象化できたと思います」

それに対して西野氏も賛同。そして、当時の製作の苦労を思い返しながら、NEAT黎明期の一本を“偶然の産物”と表現する。

「僕はPR畑にいましたからモノ作りにはそこまで踏み込んでこなかった。もう海さんには要望しか言っていません。それより、作ってくれる工場がなかなか見つからない事態にヤキモキしました。僕らのようなスタートアップで小ロットのブランドを受け入れてくれる所はなかなかありませんでしたから。ただ、それも目処が立ち、時代はスラックス=ドレスといった概念が払拭され始め徐々にスラックスに寛容になっていった。そんな中出来上がったので、まさに偶然の産物としか言いようがありませんね」

深めのインタックが物語る独自性

さらに、NEATを語るうえで欠かせないのがこれまでも話の節々で登場した深めのインタックだ。それについても阿部は当時の印象を語る。

「穿いたときのこのクリースのラインが僕は衝撃的だったんですよ。もうクリースが立ってくるというか。タックを深めにとると、どうしても平面的になる印象があって。ただ、それがまったくないのが驚きでした」

当初、高畠氏は西野氏から「Tシャツを外に出して着てもタックパンツと分かるぐらいの深さにしたい」との要望を受けていた。それを踏まえパタンナーとしての私見を述べる。

「腰回りも裾もただただ太い、だったら余裕なんです。しかし、裾はある程度細くしなきゃいけない。で、タックが深いってことは布が外側にいっぱいあるということ。ウエスト周りから裾に向けて線を引くと当然斜めになる。そうなるとヒップのラインも斜めになるからヒップがきれいに収まらないというか、メンズのシルエットとして美しくないんですよ」

「とはいえ、フロント、前立てのラインはまっすぐにしたい。たまにジーパンでもスラックスでも斜めになってるものがありますけど、そうすると生地がどうしても伸びちゃうんで、全然きれいじゃないんです。そこからタック分量を計算していってのギリギリのラインがこのバランスなんですよね」

話を聞くにつれ、NEATが唯一無二であることがよくわかる。しかも、異なるモデルならまだしも、サイズのひとつひとつにおいてもマスターパターンを作っていたというのだから驚きだ。西野氏は恐縮気味に口を開く。

「最初、3サイズだったんですけど、全部引き直してもらっているんです。そんなことをやってるブランドって今はいないですよ。基本的にはマスターパターンを作り、ピッチを決めてからのグレーディングなんです。それが全サイズ、マスターパターンを作ってしまった。それはなぜかというと、パターンの数値に規則性がないからです。なので、CADに入れる時に結構苦労しました」

ジャケットもまたNEATらしさが光る

そんなNEATの原点を顧みることができる一本を、今季もインラインで採用しているグランテックスで仕上げ、さらにジャケットやキャップと合わせて展開する。そのジャケットもまた、NEATらしさ全開の一着で、西野氏も仕上がりに自信をのぞかせる。

別注HD Corduroy Paul JKT
price:¥88,000 (tax incl.)
color:BLACK
size:44 / 46 / 48 / 50

「僕らNEAT HOUSEではオーダーのジャケットをやっているのですが、その既製品というイメージです。僕らのジャケットの特徴は前身がハの字に広がるところ。ダブルでもボタンをしていなければほぼ重ならないんですよ。前が開く前下がりで、背中とジャケットの間がふんわりと空いてくるので、なんとなくカーディガンを羽織っている感覚で着てもらえると思います」

高畠さんも実際に袖を通しながら構造を確認。後ろの襟腰の位置やフロントラインの合わせを実際に試し「面白いですね」と笑顔を浮かべた。さらにディテール部分におけるこだわりを西野氏は続ける。

「襟もダブルだとピークドラペルが主流だと思うんですけど、僕、あのとんがったやつが嫌いなんですよね(笑)。なので、フィッシュマウスという襟にしています。いわゆるNEATのトップス版。カジュアルでも履けるスラックスならぬ、カジュアルでも着られるジャケットといったイメージですね。スラックスだけでなく、ジャケットやキャップからも僕らの根底に流れる想いや考えが伝われば嬉しいです」

素材使いや多様なシルエットの数々。歩みを止めないNEATの姿は我々を楽しませてやまない。ともすると、新しい部分にばかり目がいき、ついブランドの本質を見失いがちになる。ただ、ブレない芯があるからこそ、常に前を向いていられるし、チャレンジもできる。今回の別注を見るにつけ、それを改めて実感した次第。

別注HD Corduroy Paul JKT
price:¥88,000 (tax incl.)
color:BLACK
size:44 / 46 / 48 / 50
別注HD Corduroy Wide-OLD
price:¥38,500 (tax incl.)
color:BLACK
size:44 / 46 / 48 / 50
別注HD Corduroy NEAT CAP
price:¥9,900 (tax incl.)
color:BLACK
size:One

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