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NEWS OCT 09,2026

SHARE THE LOCAL 播州
知らなかった地元を、仕事を通してもう一度知る。

兵庫県の南西部に広がる「播州」。古くからものづくりが盛んなこの土地には、200年以上の歴史を持つ「播州織」をはじめ、器や食、日本酒など、土地に根差したさまざまな文化が息づいています。今回、アーバンリサーチが地域共創を目指して取り組む「JAPAN MADE PROJECT」の一環として、そんな播州にフォーカスした「SHARE THE LOCAL 播州」が始動しました。


企画のきっかけとなったのは、播州出身のアーバンリサーチスタッフ・杉本のひとつの提案。実は杉本自身、播州で生まれ育ちながらも、播州織は決して身近な存在ではなかったといいます。産地を巡り、作り手と言葉を交わし、ものづくりの現場を見る。そこで改めて見えてきたのは、これまで知らなかった地元の姿と、ジャンルを越えて人と人がつながる、播州という土地の面白さでした。今回は企画に携わった杉本と大崎に、播州を巡って感じたこと、作り手とのものづくり、そして「SHARE THE LOCAL」を通して伝えたいことについて聞きました。

地元を離れずして、地元を“再発見”する。

播州の南側、加古郡で生まれ育ち、現在もそこを拠点にしている杉本。田んぼや畑が残りながら、神戸や大阪にもアクセスしやすい、都会と田舎が混ざったような場所だといいます。「播州」という言葉には馴染みがあった一方、播州織そのものは、意外にも身近な存在ではありませんでした。

杉本 「播州」と聞いても、私自身は播州弁とか、自分が住んでいる土地の言葉というイメージが強かったんです。播州織というもの自体は知っていましたけど、住んでいるエリアも産地とは違うので、実際の現場を見たこともなかったですし、「これが播州織なんだ」とはっきり分かる商品にも、ほとんど出会えていなかったと思います。

そんな杉本が地元のものづくりに目を向けるようになったのは、ファッションの仕事を通してサステナビリティへの関心を深めたことがきっかけでした。

杉本 広島・岡山のデニム産地や尾州、海外ではタイやインドネシアなど、いろいろな生産現場へ行くようになって。地域のものづくりや、そこで働いている人たちを知るうちに、「じゃあ、自分が住んでいる地域には何があるんだろう?」と考えるようになりました。そこで改めて播州織に目が向いたんです。これまで知らなかったのが、ちょっと恥ずかしいくらいで(笑)。でも、ほかの土地を知ったからこそ、自分の土地について考えることができたのは良かったと思っています。

遠くの土地のものづくりを知ることで、改めて自分の足元に目を向ける。杉本にとって播州織との出会いは、生まれ育った地元をもう一度知る、“再発見”の始まりでもありました。

「作った人のことまで伝える」。そこから始まった播州の企画。

杉本が「SHARE THE LOCAL」のテーマとして播州を提案した背景には、もともとこの取り組みそのものへの強い興味がありました。

杉本 私、「SHARE THE LOCAL」という企画自体がもともと好きだったんです。イベント前にバイヤーからスタッフ向けの説明会があるんですが、商品のことだけじゃなくて、「どんな人が作っているのか」というところまで、すごく熱量を持って話してくれる。それがずっと印象に残っていました。私は販売の仕事をしているので、そういう背景を知った上で、お客様に自分の言葉で伝えることにも面白さを感じていて。だったら、自分自身がまだよく知らない播州について、仕事を通して知って、それをお客様に伝えてみたいと思ったんです。

その思いをさらに強くしたのが、杉本自身の家族の経験でした。父親は神戸・長田で、靴づくりに使われるアルミ製の「靴型」を手掛ける数少ない職人でしたが、後継者がいないまま引退。各地の産地を訪ねても、同じような問題に直面したといいます。

杉本 産地へ行くと、「この職人さんがいなくなったら作れなくなる」とか、「この機械が壊れても、もう替えの部品がない」といった話を聞くことがあって。父のこともそうですけど、地域の伝統産業がなくなっていくかもしれないという現実を、だんだん身近に感じるようになりました。私自身が職人になることはできないですけど、「伝えていく」ということならできるんじゃないかと思ったんです。自分が知って、それを店頭でお客様に伝えて、興味を持ってもらう。大きなことではないかもしれないですけど、まずはそこからなのかなと思っています。

“縁の下の力持ち”を、表舞台へ。

播州織の特徴のひとつが、糸を先に染めてから織り上げる「先染め」。実際に産地へ足を運んだことで、杉本さんが感じる播州織の魅力も、それまでとは大きく変わりました。

杉本 tamaki niimeさんの工房を見学させていただき、先染めされたコーン(糸)が並んだ棚を見た時は純粋にテンションが上がりました(笑)。先染めだからこそできる表現力の高さもすごく魅力的で。プリントとは違って、糸から色を組み合わせることでグラデーションのような表情も作れる。実際に現場で見たからこそ、「こんなことまでできるんだ」と感じました。

一方で、播州織は生地としてさまざまなブランドやメーカーへ供給されるため、完成した洋服からその名前が見えにくい存在でもあります。

杉本 ファッション産業を支える“縁の下の力持ち”という役割はすごく大事だと思います。でも、それだけで終わってしまうのは、やっぱりもったいない。服として完成した時に、その生地がどこで作られたのか、誰が携わっているのかって、なかなか知る方法がないですよね。私自身もそうでした。だから、生地や縫製の背景まで伝える立場が必要なんじゃないかなと思っています。播州織そのものの魅力や価値を、もっと知ってもらいたいですね。

大崎 今回、THE INDUSTRY WORKSさんとの別注、tamaki niimeさんの別注では、ブランドのネームがちゃんと見えるようにしています。アーバンリサーチの名前を前に出したいというより、「このブランドが作っている」「これは播州織なんだ」ということを知ってもらいたかったんです。

現地へ行ったから生まれた、別注のかたち。

今回の「SHARE THE LOCAL 播州」では、既存の商品をセレクトするだけでなく、産地の作り手との別注商品も制作しました。

大崎 THE INDUSTRY WORKSさんもtamaki niimeさんも、まず実際に訪問して、そのブランドがどういうものづくりをしているのかを知るところから始めました。その上で、「私たちだったら何を作りたいだろう」と考えていったんです。THE INDUSTRY WORKSさんはチェック柄がひとつの強みだったので、そこは絶対に生かしたいと思っていました。先方が持っている生地の良さと、私たちのデザインを掛け合わせて、一緒に商品へ落とし込んでいった感じですね。

tamaki niimeとのデニムジャケットは、さらに偶発的な会話から生まれました。

大崎 tamaki niimeさんがちょうどデニムに力を入れられていて、私たちも「デニムをやってみたい」という気持ちがあったので、そこで話が合ったんです。実際に話している中で、緯糸(よこいと)の入れ方がおもしろいという話になって、「だったら裏側に色を出したら面白いよね」と。その場でどんどん話が広がっていきました。最終的には10色、それぞれ1着ずつという仕様になったんですけど、現地で直接話したからこそ生まれた作品だったと思います。

最初に完成形を決めるのではなく、まず会いに行き、相手を知る。今回の別注には、そんな産地とのコミュニケーションそのものが映し出されています。

織物も、器も、おかきも、日本酒も。全部がつながっていた。

今回、播州を巡る中で出会ったのは播州織だけではありません。グルテンフリーのおかきを手掛けるTAKAMI OKAKI、希少な「ジャカードカラミ織」を扱うniki、山田錦に由来する素材を器づくりに取り入れる東条秋津窯、そして地域の日本酒を醸す神結酒造。ジャンルの異なる作り手を訪ねているはずが、話を聞いていくと、思いがけないところで人と人とのつながりが見えてきました。

大崎 ある方のところで別の作り手さんの名前を出すと、「知ってますよ」って普通に返ってくるんです。そこから紹介していただいたり、その場で電話してくださったり。実際、東条秋津窯さんと神結酒造さんもつながりがあって、一緒にイベントをされていたり、本当に仲が良かったりする。そういう関係性は、現地に行って初めて分かったことでした。皆さん、口ではそんなに言わないんですけど、地域をすごく大事にされているんですよね。自分たちのものづくりを通して、自然に地域のことも伝えようとしている。それは、織物でも食でも器でも、共通しているように感じました。

杉本 織物があって、食があって、お酒があって、そのお酒を飲む器もある。ひとつひとつは全然違うものなんですけど、播州という地域の中で見ていくと、それぞれがつながっているんですよね。地域の特性を生かして作られているものが、人だけじゃなくて“物”でもつながっている。それは今回、実際にいろいろな場所を巡ったからこそ感じられたことだと思います。

播州の“いいもの”を集めるだけではなく、その背後にある人と人との関係まで一緒に届ける。そんなところにも、「SHARE THE LOCAL 播州」ならではの面白さがあります。

地域のものづくりを、次の世代へ伝えるために。

産地と都市、作り手と使い手。その間にアーバンリサーチが入ることで、どんなことができるのでしょう。

大崎 若い人たちに知ってもらうための入口を作ることは、私たちだからできることのひとつだと思っています。作り手の方と話していても、最近は若い方が直接工房まで来て、「これが欲しい」と買ってくださることが増えているという話を聞くんです。まず実際に良いものに触れて、「こういうものが日本にあるんだ」と知ってもらう。そこから興味を持って、今度は自分で産地へ行ってみる人が出てくるかもしれない。それがすごく大事だと思っています。今回だけで終わるのではなくて、来年も、その先も関係を続けていきたいです。もっと信頼関係ができて、いつか作り手の方から「実はこういうものを作ってみたかった」と言ってもらえるくらいになったら、すごくいいですよね。

杉本 私は、地域に根付いているものを、アーバンリサーチという名前を通して違う土地へ持っていくことには、やっぱり責任があると思っています。でも、実際に現地へ行って、作り手の方と話せば話すほど、「もっとこの人たちのことを知ってほしい」と思うようになりました。ただ商品を取り扱うのではなくて、なぜこれを扱わせていただくのか、その意味まで自分たちが理解して、責任を持って伝えていくことが大事なんだと思います。

播州を知ることが、自分の街を知るきっかけになれば。

「SHARE THE LOCAL 播州」を通して届けたいものは、商品だけではありません。

杉本 まずは「播州」という地域を知ってもらえたら嬉しいです。これまで店頭でもいろいろな地域を扱ってきましたけど、地域の名前が出るだけで、そこに住んでいる方だったり、行ってみたいと思っている方だったりが、ちょっとテンションが上がる瞬間があるんです。でも「播州」って、私が「播州出身です」と言っても、まだそこまで大きな反応がある地域ではなくて。だから今回をきっかけに、まず播州を知ってもらいたい。それと同時に、「播州にこんなものがあるんだったら、自分が住んでいる地域には何があるんだろう?」って考えてもらえたら嬉しいです。私自身がそうだったので、誰かが自分の地域を知るきっかけになる言葉のひとつになればいいなと思っています。

大崎 私は、日本のものづくりって「大事にしないといけないものなんだ」と感じてもらえたらと思っています。もちろん今はいろいろな価格のものがあって、気軽に買える選択肢もたくさんあります。でも、産地へ行って作り手の方と話すと、やっぱり「良いものは良い」と改めて思うんです。どうやって作られているのか、誰が作っているのかを知れば、ものの見方も少し変わると思うんですよね。「ちゃんと日本で作られているものを選んでみよう」と思う人が少しでも増える。今回の企画が、そんなふうにものを選ぶ時の考え方が変わるきっかけになったら嬉しいです。

遠くの土地を知ったことで、杉本が自分の故郷に目を向けたように。一着の服、一枚の生地、一つの器や一杯のお酒。その向こう側には、土地があり、作り手がいて、受け継がれてきたものづくりがあります。「SHARE THE LOCAL 播州」をきっかけに播州を知ることが、いつか自分の暮らす街や、日本各地に残るものづくりへと目を向けるきっかけになる。そんな小さな循環が、地域の未来へとつながっていくのかもしれません。

Text/Nao Takamatsu

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