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FASHION JUL 10,2020

“伝統をまとう”URBAN RESEARCH ROSSO 浴衣。
その伝統の美を生み出す「注染」の工場を訪ねて。

10年以上の実績があるアーバンリサーチ ロッソの本格浴衣ですが、一体どのようにしてあの美しい柄が生まれるのでしょうか。今回は特別に東京の伝統的な染め工場にて、来年発売予定の浴衣生地染め工程を見学させていただきました。本メディアサイトで着物コラムを連載しているライターさんによる潜入ルポです!


夏が来ると着たくなるのが、「浴衣」。

その名の通り、元は湯上がりに着る服として生まれたと言われていますが、時を経て、今では花火大会やお祭りなど夏のイベントに、和の風情をもたらす服として親しまれています。

近年では技術の発達により、カラフルなプリントの浴衣も多く販売されていますが、大人になるにつれ伝統的な浴衣の美しさに開眼する人も多いのではないでしょうか。

URBAN RESEARCH ROSSOの浴衣の中でも、「注染」という手法で染められた浴衣があります。着物コラムを連載している縁で、私もその工場にて伝統の技術を見せていたけることになりました(歓喜!)。どんな風にあの美しい絵柄が生み出されているのでしょうか。
ちなみに今回取材させていただいた柄は来年発売になるそう。特別にいち早くお見せしちゃいますね!

ROSSO浴衣「薔薇」柄が染められるまで

春の息吹を感じる頃、やってきたのは東京の下町にある染めの工場。

戦後、伊勢からこの地へやってきて70余年。小さなお社に見守られた工場には、伝統工芸士を含む幅広い年齢の職人がせわしなく動き、活気に溢れています。

こちらで行われている「注染染め(ちゅうせんぞめ)」とは、明治後期に生まれた染色法。白生地に型紙を使って糊をおき、糊のついていない部分を染料で染め上げる方法を指します。

今ではかなり貴重となったその技術を、さっそく間近で見せていただくことにしましょう。
この工場では来年販売予定のROSSO浴衣の「薔薇」を意匠とした染めをお願いしているそうです。

1. 精密さと根気がいる「糊置き」

まずは「糊置き(のりおき)」の工程。

型紙を木枠にセッティングし、板場の上に白い反物を敷きます。

木枠を下ろしたら、その上に海藻を原料とした糊をヘラで均一にのせていきます。

糊が置けたら木枠を持ち上げ、反物をピタリと折り返して重ねます。

型紙の大きさは約1mで反物は13mほどあるので、同じ作業を13回繰り返します。

型紙の端の方は、糊が均一になりにくい部分。単純に見えますが、気の緩みが許されない大変な作業です。

2. これぞ熟練の技「染め」

続いては染めの工程へ。

糊置きした生地を別の専用台に乗せ、柄のまわりにまた別の糊を使って土手を築きます。

これは、異なる色の染料が混ざらないようにするために行うのだそう。

土手ができたら、いよいよ染めます。

職人さんが両手に持っている「ヤカン」は、片方に染料、もう片方に薄め液が入っています。これを目の前に貼った見本生地を見ながら、その場で混ぜて色の濃淡を決めているのだとか!

何気なくやっているようで、まさに熟練の技です。

染料を注いだら、足もとにあるコンプレッサーのレバーを踏んで、染料を布の下面に吸い込ませます。

そうすることで生地の裏側まで染まるのですが、コンプレッサーがない時代は、息をフーっと吹きかけて布に染み込ませていたというから驚きです。

3. 洗い、そして干し場へ。

その後、染められた布たちは洗いの工程へ。

流れるプールのような洗い場に、釣り広げられた生地がジャブジャブと移動していきます。徐々にプールの水が透明になってきて、反物の美しい色合いが見えてきます。

きれいに糊を落としたら、脱水して干場へ。長い反物を干すのは2人がかりです。1人がスルスルとはしごを登り、干し棒のところまでいくと、下に布で作ったロープを下げます。ロープの先端は輪っかになっており、そこにもう1人が反物を数枚引っ掛けると、上にいる人がロープを引き上げ干していきます。

13メートルの反物が、まるで鯉のぼりのように風にゆらめく姿は、美しいの一言!

冬は4~5時間、夏は2~3時間で乾きますが、お天気の悪い梅雨時期は工場内の吹き抜けに干すのだそう。

こうして出来上がった反物が縫製を経て浴衣になり、私たちの元に届きます。しばらくは洗濯のときに色が出てしまうそうですが、それも本染めならではのこと。着ていくうちに自分だけの風合いをもたらしてくれる、それもまた魅力のひとつです。

大人の女性が素敵に見える浴衣の着こなし

ところで実際に浴衣を着るとき、大人の女性が素敵に見えるには、どうしたらいいのかお悩みの方も多いはず。例えば帯も文庫結びだとちょっと若いかも…と思うかもしれません。

もし粋に見せたいのなら、男着物の定番でもある「貝の口」や「片ばさみ」といった結び方がおすすめ。花火デートなど少し華やかにしたい場合は、兵児帯を使った「リボン返し」なら、簡単かつ程よい華やかさを出せます。

また、ヘアスタイルや小物使いで大人の魅力を引き立たせるのも有り。あえておくれ毛を出さないコンパクトなまとめ髪にシンプルなイヤークリップをすれば、クールで現代的な雰囲気に。お団子もえりあし付近まで下げると、グッと大人な印象になります。

あなただけの、長く愛せる1枚を見つけて

かつては、ひと夏ごとに着つぶしていたという浴衣ですが、今や貴重な伝統工芸品。お気に入りを選びぬいたら、大切に扱って長く愛用したいものです。ROSSOの浴衣が、そんな1枚になることを願ってやみません。

PROFILE

橘川 麻実Writer & Editor

ライター歴20年。ストリートファッション誌にてキャリアをスタートし、ファッションの第一線…ではなく第三線ぐらいに地味に生息。足を使った情報収集がモットーです。

URBAN RESEARCH MEDIAにて、着物コラム「みちくさ着物道」連載中

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