「ずっと変わらない好きなものを」——宮原英里が、Picchi Niaに込めた思い
流行に乗ることよりも、自分の「好き」を信じていたい。アーバンリサーチから新しく誕生するハウスブランド「Picchi Nia(ピッチニア)」は、そんな女性のためのブランドだ。コンセプトは『ずっと変わらない好きなものを、自分らしく』。ヴィンテージやアンティークが持つ時間の深みを、現代のヘルシーでアクティブな空気感のなかで纏う。年齢に縛られることなく、着るたびに自然と元気になれる。いつ手に取っても「やっぱりこれが好き」と思える一着。Picchi Niaが目指すのは、そういう服だ。
繊細なレースと白を基調としたブラウス・ワンピース24型とデニム2型を引っ提げ、5月22日にURBAN RESEARCH KYOTOにてローンチ。ディレクターを務めるのは、自身のブランドPICHI(ピイチ)を手がけるクリエイター、宮原英里だ。
ブランド名に込めた「進化」

ブランド名「Picchi Nia」は、自身のブランド「PICHI」に「RICH(リッチ)」を掛け合わせた「Picchi」に、女性らしい響きを添える「nia」をつなげた造語なのだという。
「PICHIはもともと、覚えてもらいやすくて呼びやすい、親しみやすい名前にしたくてつけたんです。Picchi Niaは、niaがつくことで女性らしい雰囲気も出るかなと思って。同じ根っこから生まれながら、少しアップデートされたイメージです」
PICHIは、『背伸びをしない自分らしい服』をコンセプトに宮原自身と同じママ層をターゲットにした日常使いのカジュアルウェアを中心としたブランド。ガシガシ洗えて、子どもを追いかけながらでも気軽に着こなせる洋服が多いのに対して、Picchi Niaはもう少し丁寧に扱いたくなる、上質な一着を提案する。同じ作り手の手から生まれながらも、アウトプットのイメージが異なる2ブランドの特徴を表している。
「好きだけど、今は着れない」でもずっと好きだった、ブラウスという出発点。

「ちょっとでも汚れてしまったらどうしようって考えてしまって着られなかったり、赤ちゃんがいるときはフリルが引っかかりそうで躊躇したり……。気がつけば、手入れのしやすさや丈夫さ、体型カバーができるといった利便性をついつい優先して服を選ぶようになってしまうこともありました。それでも、可愛いと思って気持ちが上がるものって、ずっと変わらずブラウスだったんです」
結婚、出産、子育てとライフスタイルが変わるなかで積み重なっていった、着飾ることへのハードル。40代に入った今、そのハードルをもう一度ゆっくり崩していきたいという宮原の気持ちが、このブランドの出発点にある。
アーバンリサーチからこの話が来たのは、約1年前のことだった。「びっくりというか、正直すごく戸惑いました。すでに自分のブランドをやっていたので、簡単に引き受けられる話じゃなかった」と宮原は振り返る。それでも引き受けたのは、PICHIではなかなか実現できないもの作りへの挑戦が見えたからだ。
「私自身が大好きなレースをふんだんに使ったブラウスは、価格帯的にも自分のブランドではなかなか作れなかったんです。そういう視点で貴重な機会だなと思えるようになって。制作期間中もサンプルが上がるたびに「可愛い!」と心がときめく瞬間が何度もありました」
24型のブラウスが生まれた理由

「古着屋さんのレースのコーナーって、年代もののブラウスがいろんな形でバーっとまとまってかかってることが多いんです。その中から自分の好きな形やデザインを探すワクワク感が昔からずっと好きでした。レースと一言で言っても、素材もシルエットも細部も様々で、好きなポイントをあれも可愛い、これも可愛いと集めていったら、あっという間に24型になっていました」
自分自身が体験してきたお気に入りを探すワクワク感を、そのまま店頭で再現してほしかったという。「ブラウスって、普通のカットソーより手に取ってじっくり見たくなるアイテムだと思うんですよね。近くで見て、このレースはどうなってるんだろう、どんなディテールがあるんだろうって。だからこそ、たくさん並んでいればいるほど、楽しいって感じてもらえるんじゃないかなと思って」

素材はコットンなどの天然素材を中心に用いており、着るほどに風合いが育っていく。レースを使ったものだけでなく、さりげない刺繍が入ったものやシルエットにこだわった装飾の少ないものまで多彩だ。特に印象深かったのが、一番最初にサンプルが上がってきたミニワンピースなのだそう。レースは使っていないが、袖にパフのような膨らみがあり、さりげなく刺繍が施されている。「スタンダードにデニムに合わせても可愛いし、ワンピースとして着ても可愛い。1型目だからこそより思い入れのある一着です」
可愛いをかっこよく、ブラウスとデニムという永遠の定番

Picchi Niaのスタイルを語るうえで欠かせないキーワードが、「可愛らしいアイテムをかっこよく着こなす」という二面性だ。「ブラウスって、着る人によって印象がかなり変わるアイテムだと思うんです。20歳のころはとにかく可愛く着たいと思っていたし、今はもう少し大人っぽく合わせたい。かっこいいの中にどこか可愛いものが入ってるバランスが好きだなって。その両方の気分に合わせられるのがブラウスの面白さだと思っています」
宮原自身が好む着こなしはブラウスにデニムという王道スタイル。若いころはカゴバッグやコンバースを合わせていたけれど、今はバッグや靴を少し上質なものに変えることで、可愛らしさの中に大人の凛とした雰囲気が生まれる。そのさじ加減こそが、Picchi Niaが目指すムードだ。

コレクションにはデニムもラインナップ。バギーとストレートの2型で、バギーはハイウエスト設計で股上が深く、クロップ丈のトップスと合わせても安心感がある。ストレートは2色展開でセルビッチ仕様。裾を折り返しても絵になるディテールで、季節もトップスも問わない定番として育てていきたいアイテムだ。
透け感のあるレースのワンピースにはあえてペチコートをつけず、下からデニムをのぞかせる着こなしも想定しているのだそう。ブラウスにもワンピースにもデニムが呼応する、というのがPicchi Niaらしいスタイリングの核となっている。

「みやえり」から「宮原英里」へ
SNSでは「みやえり」という愛称で親しまれ、日常のリアルな自分を発信し続けてきた宮原英里。等身大の姿を見せることを大切にしており、「流行りに乗るよりも、本当に自分がいいなと思ったものを発信したい。嘘をつかずに伝えようというのは意識しています」と語る。
ただ、Picchi Niaのローンチにあたっては、「宮原英里」というフルネームで表に出ることを選んだ。「Picchi Niaに興味を持ってくれた方が、”みやえり”としての私を見てイメージが崩れてしまわないかという不安がありました。でも、自分がいいと思ったもの、好きなものに自信を持っていれば間違いないのかなって思って、あえて本名を出していこうと思ったんです」

カジュアルで気軽なPICHIと、上質で丁寧なPicchi Nia。前に出る名前は違えど、どちらも宮原英里が大切にしてきた“好き”から生まれたブランドだ。「もう少し大人のムードも発信していきたい。年を重ねたからこそそう思えるようになったのかなって。30歳の頃だったらきっとそうは思わなかっただろうし、今だからっていうのもあったのかなと思います」
可愛いよりもかっこよく見られたい。ビジュアルへのこだわり


ビジュアル制作でカメラマンに伝えたのはシンプルなひと言だった。「ブラウスだからもちろんすごく可愛いんですけど、それをかっこよく撮ってほしい」。海を背景にフィルムで撮影されたビジュアルは、ガーリーでもファンシーでもなく、凛とした女性の佇まいを映し出している。
モノクロのビジュアルは特にお気に入りだという。「初めてご覧になる方も、あのビジュアルを見たら『可愛い』よりも『かっこいい』って言ってもらえる方が多いんじゃないかなって。でも、よく見るとレースのディテールや女性らしさがある。そのバランスが、自分のイメージ通りに仕上がりました」
ファーストコレクションの制作にあたって、ミューズとなった女の子がいたのだそう。ブラウスにデニム、そして頭にバンダナを巻いたその姿に魅力を感じたことが、コレクション全体のイメージの核になった。そこからローンチイベントのノベルティとして、ネイビーとピンクの2色のバンダナを制作。頭にも腰にも巻ける、Picchi Niaのスタイルを体現する一品として仕上がった。

何十年後かのヴィンテージマーケットに並んでいてほしい

デザイナーの宮原自身が高校生のころから大好きだったレースのブラウス。当時は自由に使えるお金が少なく、なかなか買えなかったが、大人になってから出会った古着のワンピースは、幾多の引越しや断捨離を潜り抜けて、今もクローゼットに残り続けているそう。
「Picchi Niaのお洋服も、そうやってみなさんのクローゼットに残り続ける服になってくれたら嬉しいです。何十年後かに、どこかのヴィンテージマーケットのブラウスコーナーにかかっていてもおかしくないような。そうあれたら嬉しいですね」
ターゲットは年齢を問わない。「30歳で子育て中のママだったら、今は着ないけど10年後に着たいって思ってもらえるかもしれない。特別な日の一着でも、日常の気持ちが上がる一着でも。袖を通したとき、『この服を着てどこかに行きたい』って思ってもらえるようなアイテムになれたらと思っています」
1年越しでようやく形になったコレクション。ヴィンテージショップの棚を思わせるラックに白いブラウスがずらりと並ぶその光景は、そのまま宮原英里の「好き」の歴史とも言えるだろう。
Picchi Nia Instagram @ picchinia_ur
文=市谷未希子