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EVENT&WORKSHOP NOV 11,2023

火と暮らし、いのちを食す『The Primitive』イベントレポート | TINY GARDEN 蓼科

秋の空に五感を解き放ち、自らの手で火を起こし、そこに集った人たちと目の前にある鮮明な"いのち”をいただく食体験を共有する。「野性を解き放て」をテーマにこれからの暮らしを考えるプロジェクト「The Primitive」が、昨年に続きTINY GARDEN 蓼科で開催されました。今年は一泊二日のフィールドワークと共に、日頃からTINY GARDEN 蓼科を支えてくれている個性豊かな生産者の方々が集結し、入場無料のマーケットも開催。湖畔に佇む静かなキャンプ場を、見えないところで確かに支えてくれている大小さまざまな“いのち”にスポットを当て、地域内外のお客様とさらに深い自然体験を共有できたらと企画しました。大人も子ども裸足になって大地を踏み、誰もが想定外の非日常を体験した一泊二日のフィールドワーク「The Primitive」。その全容をレポートします。


1. 半径30km圏内の生産者らが集結したマーケット

早くから会場に集ったのはフィールドワークの食材提供者であり、日頃からTINY GARDEN 蓼科を支えてくれている個性豊かな生産者の方々。オーガニックな野菜や自家製酵母のパン、ナチュールワインやクラフトビールといった食材だけでなく、キャンプ場の持続可能な樹木管理をしてくれている木こり集団など、食べたら美味しく話したら愉快な11のお店が集いました。

子どもたちはキャンプ場にある木の実や葉っぱを拾い集めるフィールドゲームをしたり、焚火場を掘ったときに出た赤土を水と練って粘土にして、さつまいもやかぼちゃを包んだ粘土焼きに挑戦したり。爽やかな秋空の下に、地域内外のお客様が自由に集い寛ぎ、顔の見える食卓を豊かに楽しむひとときとなりました。

会場中央に設けた大きな焚火場では、ゲストシェフの旅する料理人・三上奈緒さんらが夜の食体験に向けて仕込み中。キャンプ場の安全管理で伐採した木や枝をやぐらに、3頭の鹿を丸焼きにしています。この鹿はお隣の富士見町で獣害対策によって捕らえられた鹿。日が暮れるまでじっくり焚火の中で焼き上げます。

2. 五感を開放するサウンドバス

フィールドワークの始まりは、サウンドセラピスト HIKOKONAMIさんによるサウンドバス(音浴)と声のワーク。思い思いの場所に寝転んで空を見上げ、心と身体を自然に委ねます。目を閉じると聞こえてくるのは遠くを流れる川のせせらぎ、木々の間を通り抜ける風の音や虫の羽音。自然界の音色と共に楽器が奏でる穏やかで優しい倍音のシャワーを浴びて、徐々に五感を開放していきます。うっとりとした気分で起き上がると、次は自分の内側に耳を傾け自らの声も発していきます。森の中で声が幾層にも重なり響き合い、自と他の境界が曖昧に溶けて交わっていくお客様の姿が印象的でした。

3. 当たり前を手放した、森の火おこし体験

次はサステナブルデザイン・プロデューサー 菊池佳さんによる森の火おこし体験が始まりました。まずは素足になって五感を開放し、火の起源を体験するフィールドゲーム。人が生活するのに火は必要不可欠な存在ですが、46億年の地球の歴史上ではその誕生は最近の出来事であること、長い時間をかけて繁栄した木や植物のおかげで火は誕生した等、知る由もなかった世界に引き込まれます。その後はチームに分かれて原始時代に倣った火おこし体験。当然マッチやライターはなく、レクチャーもないところからスタート。言葉も使わないルールの元、身振り手振りで力を合わせます。小枝や枯れ葉を拾って集めても肝心な熱はどうやって生み出すのか、石を叩いてみたり枝を擦ってみたりと試行錯誤が続きました。その後火打ち棒が支給されるとゴールまであと一歩! どのチームも肩を寄せ合い小さく輪になり、一生懸命に火を求めます。見事炎が上がったときには会場内に大きな歓声が上がりました。非日常の体験が自然の恵みを深く見つめ直し、その尊さを全身で味わうきっかけをくれました。

4. いのちをいただく、顔の見える食卓

陽が沈み辺りが薄暗くなると、薪火は一層鮮やかに暖かく会場を包みます。こんがり焼けた3頭の鹿は丁寧に解体され、骨も含めてまるごと味わいます。半径30km圏内の農家さんが育てた野菜とお米は、鹿の首から採った出汁と共に大きな鉄窯で炊かれて、色鮮やかなパエリアになりました。子どもたちと作った粘土焼きは焚火でじっくり焼かれ、塩をひと振りするだけでおいしい蒸し野菜の一品の出来上がり。それら物語のあるお料理が持ち寄ったお皿に丁寧に盛り付けられ、一つの焚火を囲んでみんなで「いただきます」を唱えました。

「わざわざ遠くから運んでこなくても、おいしい食卓はそこに在るいのちでできる。それがいかに尊く豊かなことかぜひ感じてもらえたら」と三上奈緒さん。半径30km圏内に豊かな自然があり、生産者がいる。木があり、火がある。大小さまざまな“いのち”を感じながらいただくシンプルで奥深いお料理に、それぞれが五感を震わせたひとときとなりました。

翌朝は、雨。小さな屋根付きのスペースにみんなで集まり、大きなパンを切り分けて焚火で炊いた鹿のスープと共にいただきました。「同じ釜の飯を食べると“おなかま”になる」という三上奈緒さんの言葉通り、そこに集ったみんなに温かな一体感が育まれているのを感じます。焚火から延々と湧き上がる煙と、いのちを含んだスープの湯気。二つの白い靄が、昨日までの出来事をそれぞれの内側にそっと包み込んでいくようでした。
TINY GARDEN 蓼科では自然とつながる玄関口を目指し、これからも地域との関係性を深め、楽しく、安心で、学びある場づくりを行っていきます。

▼施設紹介

TINY GARDEN 蓼科 – Camp, Lodge & Cabins –
〒391-0301 長野県茅野市北山8606-1(蓼科湖畔)
車で:中央道「諏訪IC」もしくは「諏訪南IC」より約30分
電車で:JR「茅野駅」よりバスで約30分「蓼科湖」下車後、徒歩4分 / タクシーで約25分

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