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FASHION NOV 03,2021

アーバンリサーチ バイヤー佐藤祐輔のココだけの話。
Vol.3 前編
〜江口洋品店・江口時計店 店主 江口大介さんに聞く! ぶっちゃけ、時計の魅力ってなんですか?〜

僕は時計を買う時は江口時計店でと決めている。なぜなら、江口さんほど時計を愛している人を僕は知らないから。アーバンリサーチのイベントではもちろんプライベートでもお世話になっている江口さんに、今日は普段あまり聞かないようなことを聞きに行った。


※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行っております。

訪れたのは、吉祥寺にある江口洋品店・時計店。江口さんはいつも通り気さくな笑顔で迎え入れてくれた。

佐藤 「こんにちは。お久しぶり…ではないですね」

江口 「そうですね。2ヶ月に1回くらいは会ってますから(笑)」

佐藤 「ですよね。公私共にいつもお世話になっています」

江口 「こちらこそ。『贅沢品展(※)』をはじめ、いつも佐藤さんにはユニークな提案をしてもらっていて楽しませてもらっています。ああいうことは僕では到底思い付かないし、実行もできないので」

※ 「江口洋品店・時計店」オーナー江口氏とアーバンリサーチ バイヤーが、一から企画や商品構成を考える人気企画展

佐藤 「『贅沢品展』。紅白歌合戦みたいに毎年恒例になっていますが、去年は新型コロナの関係もあって開催できずに残念でした…。今年はぜひやりましょう!」

江口 「そうですね!」

なぜ、洋服から時計に転向を!?

佐藤 「そういえば、これ意外と聞いたことなかったんですが、江口さんが時計店をはじめたきっかけってなんだったんですか? 元々は洋服店からスタートしていますよね」

江口 「元々僕は古着好きでいろんなものを蒐集してきたのですが、それをビジネスとして展開しはじめたのが20代前半。18年くらい前ですね。もちろんその中には時計っていう選択肢もありました。当時の先輩に買えと言われるまま、マルイのローンを組んでオメガのスピードマスターを買ったのを覚えています(笑)。機械好きの父親の影響もあってもちろん時計に興味はあったんだけど、若い頃はまだ洋服の方が優先順位が高かった。ようやく本格的に時計に興味が向きはじめたのは、30歳を過ぎたあたりから。僕は元々シルバー職人だったんですが、ある時思い切って自宅に揃えたシルバー製作用の道具を全部売っぱらって、時計を修理する道具に買い替えたんです。それで初めて自分で時計をバラしたのが、カルティエのマストタンクでした」

佐藤 「なるほど。だから今でもマストタンクが江口時計店の主力なんですね」

江口 「自分で時計をバラしてみて難しさを感じたんですが、これだけ難しいってことは、一般的な人たちは時計が壊れた時にもっと困るんだろうなって思ったんです。ならば、と思って作ったのが江口時計店。商品を売るだけでなく、リペアのサービスもできるプラットホームを作りたいって思ったのが始まりです」

佐藤 「それがいつ頃ですか?」

江口 「時計店として始まったのは約6年前ですね。2016年の1月」

佐藤 「今は時計のほうがメインですよね」

江口 「そうですね。服と時計を同時にっていうのはなかなか難しいんです。買い付け先が全然違うんですよ。古着はタイとかに集まるんですが、時計はマイアミとかラスベガスとか、アートバーゼルとかが開催される時に集まることが多い。今は時計中心です」

なんでカルティエだったんですか?

佐藤 「江口時計店といえばカルティエというイメージがあります。さっき、初めてバラした時計がカルティエのタンクだったって言ってましたが、なんでタンクだったんですか? 当時はどちらかというとダイバーズ系やパイロット系のスポーツウオッチが主流で、ドレスウオッチはまだそれほど人気じゃなかった気が…」

江口 「単純に、ロレックスをバラす勇気がなかったんです(笑)。当時僕もジャンク品のロレックスを一本持っていたんです。それでもやっぱり機械式時計には手が出せなかった。なのでまずクオーツからと思ってタンクにしたんです。電池交換くらいなら自分でできるかなと思って」

佐藤 「なるほど、そんな経緯があったんですね」

江口 「初めて自分でケースを開けたときの感動は今も覚えています。なんかもう、すごい未知の世界に足を踏み入れた感じがしてワクワクしましたよね」

佐藤 「スムーズにいったんですか?」

江口 「もちろん全然ダメでした。バラすことはできても組み上げられないんですよ。何本も時計をダメにしました」

佐藤 「でもその失敗があるから、今があるんですよね」

江口 「たくさん勉強させてもらいました(笑)。あと、僕がタンクを選んだのは、単純にデザインが大好きだったからかな。ロレックスやオメガをはじめとする他の時計は、いわゆる時計メーカーとして機械に特化した商品開発をずっとしていて、そこにデザイナーの付加価値がついてるものが多いんですが、当時からカルティエのタンクは純粋に外見の良さで評価されていた。そこに僕は可能性を感じていたんです」

佐藤 「へー面白い。先見の明があったってことですね。実際今、タンクはどんどん価値が上がっていますよね」

江口 「そうですね。だいぶ値段が上がりました」

佐藤 「ちなみになんで吉祥寺でやろうと思ったんですか? 地元でしたっけ?」

江口 「いや、それも成り行きというか。古着をビジネスにしはじめた頃、僕は大泉学園っていうところに住んでたんですが、一緒に創業した友人は千歳烏山に住んでいたんです。そんな二人がアクセスしやすくて、しかも僕ら酒好きだったので、美味しい酒が飲める街でって考えたら、吉祥寺だった。そんな感じです(笑)」

佐藤 「でも遊ぶところも飲むところもあって、ファッションもある。いい街ですよね」

江口 「それでいて適度にコンパクト。バランスいいんですよね」

酸いも甘いも噛み分けた江口さんが次に狙っている時計とは!?

佐藤 「逆に、今狙っている時計はありますか? これからアツくなるんじゃないかって睨んでいるものとか」

江口 「あります。といっても特定の個体ではありません。注目しているのは1950年代〜60年代の時計。もしその年代のもので気になるものがあったら、メーカーがわからなくてもとにかく買ったほうがいいと僕は思います。この時代のモノづくりにかける情熱ってやっぱりすごいんです。パーツひとつひとつにこだわりがあって、今では再現できないものが多い。純粋にモノとして価値があると思います」

佐藤 「なるほど」

江口 「個体があるうちに買っておいたほうがいいと思いますね。変な話、例えそれが千円の時計でも中に使われているパーツが1万円っていうこともありえます」

佐藤 「面白いですね」

江口 「70年代にクオーツの時計が台頭してくるんですが、その少し前くらいの機械式時計も狙い目。クオーツに人気が集まったせいで、その時代の機械式時計っていうもの自体、数が少ないんですよ。今後、もっと価値が上がってくるんじゃないかな」

佐藤 「そうかー、いや本当に面白いですね。奥が深い。今後は僕もそういう目線で時計を見てみることにします」

江口 「外観とかじゃなくモノづくりの話なんでちょっとマニアックかもしれませんが、そういったプロダクト目線を持って見てみたり、歴史の流れをみて考えてみたりすることで、時計はもっともっと面白くなるんです」

最近手に入れてアガった時計を教えてください

佐藤 「江口さんが、最近個人的に購入したものを教えてもらえますか?」

江口 「ずっと前から欲しかったタグホイヤーのカレラとロレックスのGMT。この2本はすごくいい買い物だったなと思ってます」

佐藤 「カレラ! いいですね」

江口 「実は大好きなんですよ、カレラシリーズ。タグホイヤーってミリタリーとかではなくモータースポーツに特化しているブランド。僕はクルマも大好きなので、そこにはすごく惹かれるんです。デイトナも人気ですが、僕は個人的にタグホイヤーがクロノグラフ時計の中で一番かっこいいと思っています」

佐藤 「ポイントはどのあたりですか?」

江口 「数あるクロノグラフ時計の中で、カレラだけベゼルレスですごくシンプル。ほんとストップウォッチと同じ形状なんですよ」

佐藤 「ほんとだ」

江口 「ムーブメントもすごく重要なポイントなんですが、それを話しだすとちょっとマニアックになるので割愛します(笑)。でも単純にスマートでデザインが格好いいんですよね」

佐藤 「サイズもいいですね。ちょっと小ぶりでスマート」

江口 「そうそう。これは球数も少なくて、ずっと探していてようやく手に入ったものです。“2つ目”のこの感じ、たまんないです。本質をついているプロダクトだと思います」

佐藤 「そしてロレックスのGMT」

江口 「これは僕の師匠から話をいただいて購入したものなんです。ロレックスってやっぱり偽物も少なくなくて、真贋をジャッジするのが難しいんですよね。だから信頼できる人のアドバイスはできるだけ耳を傾けて、いい出会いがあれば買うようにしている。これはそのひとつです。00年代のGMTマスターですね」

佐藤 「江口さんでGMTって、あまりイメージないですもんね」

江口 「でもやっぱり素晴らしい時計です。希少性という意味でも、もちろん純粋にプロダクトとしても。ちなみにこれはマットダイヤルといって、反射しない文字盤のファーストモデルなんです。ロゴも通常のものとはちょっと違っていて、Eの真ん中の棒が長いんですよね」

佐藤 「あ、ほんとだ。真ん中の横の棒ですよね。確かに長い」

江口 「通称、ロングEといいます。GMTだけに採用されているロゴですね」

佐藤 「ヘ〜」

江口 「他にもビッグロゴとかフロッグフットとか色々あります。そういうのを知るとまた面白いんですよ」

佐藤 「めちゃくちゃ面白い」

江口 「実はこれ、文字盤だけ買って、後から同年代のデッドストックのブレスレットをつけたんです」

佐藤 「そういうのもアリなんですね」

江口 「アリというか、みなさん気づいていないだけで、市販されているヴィンテージのロレックスには、結構そういうものも多いんですよ。うちで販売するときはそういうところもきちんと説明しますが、何も聞かされず完全オリジナルだと思って購入している人は少なくないんじゃないかな」

もし1本だけ選ぶとしたら!?

佐藤 「もし、江口さんが最後の1本に残すとしたら、どれにしますか? 墓場まで持っていく時計というか」

江口 「なんでしょうね。難しいな。でもやっぱりカルティエのタンクなのかな。でもまだ手に入れていない時計もたくさんあるし…今は決められないかも」

佐藤 「この先も買い続けて行った結果、江口さんの“あがりの1本”が何になるのか、すごく気になりますね」

江口 「ものすごくレアなものになるのか、逆に原点回帰してシンプルなものになるのか。もしかしたら結局Gショックだったこともあり得ます。だって最も実用的な時計ってなんですか?って聞かれたら、間違いなくGショックって言いますからね。今はまだ全然わからないですね」

Today’s coordinate

Point
そろそろ冬の気配。だいぶ気温も寒くなってきたので、WRANGLER × URBAN RESEARCH iDのシャツジャケットのインナーにCOSEIのGREENのニットをレイヤード。パンツにはSEVEN BY SEVEN別注のREWORK DENIMを合わせてデニム・オン・デニムスタイルにしました。REWORKデニムは一本一本個体差が出ていて、選ぶ人の個性や趣向が出るから非常に面白いアイテムですね。足元は、コーディネートのちょっと’70sなムードに合わせてアーバンリサーチエクスクルーシブのCLARKSを選んでいます。全体的にはカジュアルですが、GREENのニットやGUEPARDの眼鏡で少しシックなバランスにしているのが僕のこだわりです。

TOPS: Wrangler × URBAN RESEARCH iD
INNER: COSEI
PANTS: 7×7 × URBAN RESEARCH
SHOES: Clarks × URBAN RESEARCH
EYEGLASS: GUEPARD

中編 〜江口洋品店・江口時計店 江口大介さんに教えてもらった、吉祥寺の行きつけ2店!〜 に続く!

Composition & Text: Jun Namekata
構成・文:行方淳

Photographer: Kanta Matsubayashi
写真:松林寛太

Information

贅沢品展 Vol.4
大人気企画展が待望の開催決定! 一点物のヴィンテージアイテムを展示販売

【開催期間 / 店舗】
2021年11月3日(水・祝)〜11月7日(日)
アーバンリサーチ ルクア イーレ店

2021年11月12日(金)〜11月15日(月)
アーバンリサーチ ルミネ新宿店

2021年11月19日(金)〜11月23日(火・祝)
アーバンリサーチ アミュプラザ博多店

2021年11月27日(土)〜11月30日(火)
アーバンリサーチ 表参道ヒルズ店

Instagram
佐藤祐輔(URBAN RESEARCH バイヤー) @ yskjohn

URBAN RESEARCH Men’s Official account @ urbanresearch_men

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