DOORS THE ART OF FERMENTATION

vol.2 秋田と山形

Hakkou avec Kissinue キシダの発酵トラベル

A MAP OF JOUNEY

地図
1日目
青森空港 → 酸ヶ湯温泉 → 柴田慶信商店 → 諸井醸造 → 夕食(しょっつる鍋、ハタハタ寿司、とんぶり、舞茸天ぷら、地酒etc.) → 秋田市内泊
2日目
旬菜みそ茶屋くらを(夢の朝食) → 雄勝野きむらや → 昼食(そば) → 工房ストロー → 篠原商店(納豆汁) → 夕食(山形牛などおいしいものいろいろ) → 肘折温泉泊
3日目
酒田醗酵 → 昼食(酒田ラーメン) → 刺し勇 → 山形空港

「ものづくりと発酵食」をテーマにした秋田・山形の旅は、青森の酸ヶ湯温泉から始まった。
八甲田山系の火山を起源とするこの名湯は、温泉好きの岸田さんにとって東北に降り立ったからには、寄らねばならない場所だからだ。
白濁した強力な酸性の湯は、たしかに一度入ったら忘れられないほど個性的。
身を清めて日常をさっぱり脱ぎ捨てた一行は、いざ男鹿半島へと向かった。

秋田は発酵大国・日本のなかでも独特の食文化が育まれてきた地域といえるが、その最たる例がしょっつるだろう。
「塩汁」が訛ったとされるこの調味料は、ナンプラーなどと同様に魚を原材料にした、いわゆる魚醤。岸田さんはしょっつる含め、数種類の魚醤を常備するほどのフリークらしい。

「秋田の県魚であるハタハタはしょっつるの原料としてもおなじみですが、私が商品化する以前、ハタハタのしょっつるは市場になかったんです」と「諸井醸造」の諸井秀樹さん。

それを聞いて「オリジネーターということですか!? よくぞ思いついてくださいました」と感激。

そもそもしょっつるは、高価な醤油の代替品として漁師の家で作る保存食だった。だからこそ安価な魚を使うのが基本で、ひと昔前はイワシなどの青魚を主に原料にしていたそう。

ハタハタも今でこそ高級魚扱いされているが、かつては食べ切れないほど獲れたのだ。
研究熱心で世界の魚醤事情にも精通している諸井さんは、ハタハタ以外にも、イカやエビなどのさまざまな魚醤を商品化していて、特別に味比べをさせてもらうことに。

「塩漬けにして発酵させるシンプルな工程だからこそ、原料本来のうま味が出てくるのが、比べるとよくわかりますね。いろんな味のお醤油と並列で、魚醤もあるべきだと思います。こんなにおいしいもの、隠し味だけではもったいないです」(岸田さん)

  1. 1/ヒバ千人風呂が有名な酸ヶ湯温泉。

  2. 2/県内外から若い人が来て修行を積んでいる「柴田慶信商店」。すべての工程ができるようになるには12年かかるそう。

  3. 3/2代目の柴田昌正さん。肥料を与えた杉は成長が早いが、木目が荒い。現在は天然秋田杉の伐採が中止されているため、同じ奥羽山脈の岩手や青森の天然杉を主に使用。

  4. 4/居酒屋を出るときに、自分のサインを発見。

  5. 5/なれずしの一種、ハタハタ寿司。

  6. 6/「諸井醸造」の諸井秀樹さんが手にしているのは、2001年に作ったビンテージしょっつる(非売品)。試飲して「さらにクセが取れて、甘みが濃くなっている気がします」

雄勝野きむらや

  • 1/代表の木村吉伸さん。 2/燻煙中の大根。ナラ、桜、ケヤキなどの広葉樹を焚き木に使うと、甘くて香ばしい風味に。 3/漬け込みに使うのは、米ぬか、塩、ザラメのみ。 4/ほかにもさまざまな漬け物を製造。左手前の漬け物は、いぶり人参。

いぶりがっこはいまや全国区といえるが、もともとは燻さざるを得ない理由があった。
「この辺は盆地で雪深く、風があまり吹きません。だから漬け物用の大根を囲炉裏のある家の中に干していたら、自然と燻されてしまったんです」
と「雄勝野きむらや」の木村吉伸さん。家庭から囲炉裏は消えたものの、独特の風味を懐かしむ人が多く、やがて特産品に。現在は地大根の最盛期となる9~11月に、専用の燻煙小屋で仕込みが行われる。
訪れたのはその最盛期で、作業場は社員総出でお祭りのように活気に満ちていた。
「今年は大根の生育が良いのですが、収穫したらすぐに火入れをしなければいけないため、てんやわんやです(笑)」

  • 秋田県湯沢市下院内字常盤町91
  • 0183-52-3650
  • 9:00~16:30
  • 日曜・祝日・月2回土曜

その晩、秋田市内の居酒屋でしょっつる鍋やハタハタ寿司などをつつきながら、理想の朝ごはんの話になった。

「漬けものが数種類あって、納豆と白ごはんと味噌汁があれば、もう最高」と岸田さんは話していたのだが、翌朝、横手の「羽場こうじ店」が営む食堂「旬菜みそ茶屋 くらを」で図らずも実現することに。

塩と麴と米を3:5:8の割合で漬け床にしたキュウリやカブの三五八漬け、ナタのような分厚い刃物で切れ目を入れた大根を甘酒で漬けるナタ漬け、ナスや錦糸瓜の味噌漬けなど、漬けものだけで10種類以上もある。

麴がふんだんに使われるこの地域の伝統的な食文化を知ってほしいと、女将の鈴木百合子さんが特別に用意してくれた朝ごはんなのだが、その“前菜”としていただいたのが生の米麴。ぽりぽりとかじって白湯で流し込むと、やさしい甘さが口に広がった。

「お米そのものの甘みなのですが、麴にすることで舌が感じやすくなるんです。みなさんが普段食べている食事のなかにも、この甘さが必ずあるはずですよ」と鈴木さん。

至福の朝食をいただきながら、岸田さんは「おいしいなあ。味がもう風景ですね。寒い地域なので全体的にもっと塩辛い味を想像していたんですけど、無駄な力がかかっていなくて、すっと入ってくる。それほど話し合わなくてもコミュニケーションできる感じというか。こういう味の人と一緒にいたいです(笑)」と大満足。

鈴木さん自身も、この食文化は横手の風景そのものだと日々実感しているそうで、味から風景を感じ取ってもらえたことを喜んでいた。

さらに南下して山形へ。山形の人がよく食べる発酵食品といえば、これまた岸田さんが大好きな納豆だ。

麴や塩などを混ぜて発酵させる庄内地方の「塩納豆」や置賜地方の「雪割納豆」など、地域ごとに独自の納豆文化があるのだが、県内全域で親しまれているソウルフードが納豆汁だ。

すり鉢でペースト状にした納豆を、具だくさんの味噌汁に溶かし入れた、とろみとフレーバーがたまらない冬の味覚。

「篠原商店」の篠原永治さんいわく、地元の小学校の給食でも納豆汁は人気なのだとか。納豆の製造工程も非常にシンプルで、水で戻した大豆を圧力釜で蒸し、納豆菌を散布。発酵室に一定の時間入れて、熟成させたらできあがりだ。

「これまで見学させてもらったところはどこも、昔ながらのやり方に戻っているように見えました。戻ることで先に進める感覚っていうのかな。音楽をやっていても感じるんですけど、新しいことをやろうとするのは結局のところ、今までなかったものではなくて、当たり前にあったけれどもなくなってしまったようなものを、表現し直しているだけやと思うんです。一番良かった形にもう一回戻ってみるのと似た感覚が、それぞれにあるような気がしました。それも昔を見直したほうがいいというより、良いものを選んだら自然とそうなった、みたいな」

  1. 7/平成15(2003)年まで酒造りをしていた建物が「旬菜みそ茶屋くらを」に。写真の内蔵「宝暦蔵」は江戸後期に建造され、国の有形文化財に登録されている。

  2. 8/夢のような朝食を振る舞ってくれた女将の鈴木百合子さんと。

  3. 9/“百姓” としてどんな仕事もこなす、「工房ストロー」高橋伸一さん宅の庭。

  4. 10/十数種類の藁を使い分けて、さまざまな道具を作る高橋伸一さん。横に積み重なっているワイン用のボトルケースを製作中。

  5. 11/「酒田醗酵」の工場にて。発酵中のどぶろくを撹拌する道具。

  6. 12/「篠原商店」でお土産に納豆をたっぷりいただいてご満悦。

  7. 13/山形牛のすき焼き。

  8. 14/2日目は山奥にある昔ながらの湯治場、肘折温泉に宿泊。

  9. 15・16/明治時代に手彫された「松屋」の「洞窟乃湯」。洞窟を40mほど歩くと、源泉かけ流しの湯が現れる。

  10. 17/燻煙小屋の前で。大根を燻す時間は気候によって異なり、3~5日ほど。火加減を調整しながら、写真のようにムラなくキツネ色に干しあげていく。長年の経験と技があってこそ。

  11. 18/いぶりがっこを絶賛仕込み中。

酒田醗酵

  • 1/創業者の高橋昭夫さんと。以前はせいろで米を蒸していたが、写真の巨大な釜を使うようになり、味も作業も格段に向上したそう。 2/アルコール度数を計測する道具。 3・4/やわらかいもろみがたっぷり入ったどぶろく。「発酵途中のワインやウイスキーにも似た爽やかさがありますね」

地酒専門店の経営を息子に託し、半ば趣味でどぶろく造りを始めたという高橋昭夫さん。酒田市はどぶろく特区なのだが、数少ない一般免許(その他の醸造酒)を取得して本格的などぶろくを製造している。
「どぶろくは等級から外れたお米で仕込むことが多いのですが、うちは酒造好適米という酒造りのためのお米と、鳥海山の伏流水を使っています。設備にもこだわりすぎて、辞めるに辞められません(笑)」
冬場の仕込みは、3人体制でつきっきり。1本できるまで2週間ほどを要する。材料を吟味して丁寧に醸したどぶろくは、何もかもが歴然と違っている。山形産フルーツやヨーグルトをブレンドしたどぶろくや、甘酒も人気。

  • 山形県飽海郡遊佐町大字藤崎字茂り松2番1174
  • 0234-43-1172
  • *見学は要問い合わせ

最終日に訪れたのは、どぶろくを製造している「酒田醗酵」。温度管理の技術が発達して、年間を通して酒造りができる四季醸造が可能になった現在も、ここでは毎年11月から2月に仕込む、伝統的な寒造りを続けている。

気温が下がると、醸造には関係ない空気中の雑菌や微生物が繁殖しにくくなり、良質できれいなお酒ができあがるのだ。

「どぶろくは言ってみれば、生まれたままのお酒です。これを絞ると酒粕と清酒になり、清酒は濾過することで色や香りを調整できるのですが、どぶろくは一切濾さないので、ごまかすことができないんです」と代表の高橋昭夫さん。
そのため原材料にこだわり、日本酒の仕込みと同等の設備で、とても贅沢などぶろくを製造している。

「どぶろく観が変わりますね。すっきりとして、エネルギッシュな味わいで驚きました」と岸田さん。
しかし高橋さんいわく、ここまでの味にするには長い歳月がかかったようだ。

「今年で12回目の仕込みになりますが、正直言うと自分で納得のいくどぶろくができたのは2年前なんです。その頃、どぶろくのブームはもう頭打ちかなと思っていたのですが、味の世界は正直なもので、最近また伸びてきましたね」

海沿いや山間部、広大な平野など音楽の仕事ではあまり訪れないような土地を巡り、感じたのはお米のパワー。

「米の力と人の力を非常に感じる旅でした。自分たちの土地にこだわりを持っている方が多かったのも、印象的でしたね。その土地ならではのおいしいものをたくさんいただいて、舌が新しいバージョンにアップデートされました。味の先進国ですよ、ここは」

  1. 19/「酒田醗酵」のどぶろく。

  2. 20/肘折温泉の朝市で購入した「笹巻き」。もち米を笹の葉に包んで煮たもので、右に置かれているきな粉や納豆などを絡めて食べる。笹の葉には防腐や乾燥の役割が。

  3. 21/同じく朝市で購入した唐辛子。

  4. 22/この地域に伝承する「肘折こけし」。

  5. 23/自家製麵率日本一で、魚介ベースのスープが特徴の「酒田のラーメン」

  6. 24/燻される前の白首の地大根。身が締まって固いところが、いぶりがっこの歯ごたえに最適。ひと束10㎏もなる編み込んだ大根を、天井に吊り下げる。

  7. 25・26/肘折温泉の名物、朝市。新鮮な野菜や山菜、手作りの郷土料理が道端に並ぶ。

  8. 25/雨上がりの空にかかる虹!

柴田慶信商店

  • 1/板の両端の合わせ面を薄く削り、きれいな円状にするのも熟練の技を要する。 2/しっかり乾かして曲げを定着させる。 3/接着部分を山桜の皮で綴じて完成。この綴じ方は工房によってさまざま。 4/食べ終わると逆さに収納できる「つくし弁当箱」

江戸時代に下級武士の副業として発展した大館曲げわっぱ。創業者の柴田慶信さんは独学で技術を習得。現在はそんな父の背中を見て育った、息子の昌正さんが工房を守る。
「子どもの頃、朝早くから工房にこもっている父をごはんのときに呼びに行くんですけど、にこにこしながら仕事をしていました。自分は三男ですが、この仕事を継ぐと当時から言っていましたね」
最大の特徴は水を吸わせた板に熱を加えて行う、曲げ加工。薄いほど曲げやすいが厚いほうが丈夫なので、厚みを持たせたまましなやかに曲げるのが腕の見せどころだ。ウレタン樹脂塗装を施さないのもこだわりで、白木の風合いをダイレクトに感じることが。

  • 秋田県大館市御成町2-15-28
  • 0186-42-6123
  • 9:00~17:00
  • 土曜・日曜・祝日

諸井醸造

  • 1/じっくりと発酵が進むタンクからは、芳醇な香りが。 2/魚醤の試飲中。 3/上に浮いてくるもろみは通常、廃棄してしまう部分だが、アンチョビペーストのようで実は絶品。 4/諸井さんはエビ、タイ、マグロ、イカなどでも魚醤を製造。それぞれに風味が違って、魚醤の奥深さを感じられる。

昭和5(1930)年に醤油の醸造所として創業。大学で醸造学を学んだ3代目の諸井秀樹さんは、いつの間にか「幻の魚」と呼ばれるようになっていた、ハタハタとしょっつるの食文化がなくなってしまうことに危機感を覚えて、試行錯誤の末に商品化。
「ハタハタは淡白な白身魚なので、魚醤にしても癖がなく、まろやかで上品な味わいです。煮物や炒め物など何にでも使えますが、私のおすすめはおにぎり。しょっつるを手水にして握ると、最高ですよ」
しょっつるの仕込み中は、時折かき混ぜて空気を入れるくらいで、温度や環境に気をつけて見守るしかない。通常の熟成期間は約3年。長いほどまろやかさが増してくる。

  • 秋田県男鹿市船川港船川化世沢176
  • 0185-24-3597
  • 第2・4土曜・日曜・祝日

旬菜みそ茶屋くらを

  • 1/麴の魅力を伝える料理教室もしている鈴木百合子さん。 2/三五八漬け(右)、大根のナタ漬け(左)など多彩な漬け物。 3/三五八で味付けしたトマトサラダ(奥)。貴重なみそたまり(手前)は卵かけごはんに。 4/造り酒屋を改装した空間。

雪深い冬が良質な水をもたらし、おいしいお米が育まれる横手。かつてこの辺りには集落ごとに麴屋があったそうで、大正7(1918)年に創業した「羽場こうじ店」もそのひとつ。そんな老舗の麴屋が手がける食堂で、旬の食材と麴をふんだんに使った、この地域で日常的に食べられてきた料理を楽しむことが。
「畑で収穫したものをすぐに食べられるような地域ですが、麴は素材のよさを引き出してくれます。伝統的な料理だけではなく、今の暮らしに合うかたちで、しかもきちんと体に伝わるものとして麴を残していきたいと思ってます」
と女将の鈴木百合子さん。食の豊かさを、体と心の両方で実感できるはずだ。

  • 秋田県横手市増田町増田字中町64
  • 0182-45-3710
  • 10:00~17:00 (ランチ11:30~15:00)
  • 水曜・木曜

工房ストロー

  • 1/工房にあった円座を見つけて「これ、家にありました。懐かしい!」。岸田さんが手にしているのは、昔ながらの蛍かごをアレンジしたもの。 2/用の美が感じられる“卵つと”や鍋しき。 3/一定の太さになるよう、藁を少しずつ足しながら編んでいく。 4/履きものだけでもさまざまな種類が。

前職の公務員時代、伝承野菜や藁細工などの地域資源を発信する仕事に携わり、いずれも後継者がいなかったため「ならば自分が」と4年前に就農した高橋伸一さん。200種類以上の農作物の栽培や、家畜の飼育の合間を縫って、藁細工を製作している。
「履きものや米俵、ミノなど昔の農家は1年分の道具を冬に作っていました。衣食住すべてに藁は使われていたんです。」
ほとんどは別の素材に置き換えられてしまったが、高橋さんは技術を継承しつつ、現在の暮らしに合うものを提案。
「藁細工が100あるなら、まだ5くらいしか習得できていません。すべては無理ですけど、半分くらいは何とかしたい。時間との戦いですね」

篠原商店

  • 1/2代目の篠原永治さんと息子の伸治さん。 2/大豆は前日に浸水させておき、翌朝に蒸す。出荷するまで5日ほどかかる。 3/手杓子で経木に蒸した豆を入れる。経木に包むと適度に乾燥して、豆がしまる。 4/体の芯から温まる納豆汁。あらかじめペースト状にした「納豆汁の素」もある。

戦後間もない昭和23(1948)年から納豆を製造している「篠原商店」にお邪魔すると、山形の郷土料理、納豆汁を振る舞ってくれた。
「山で採ったキノコ類やワラビなどの山菜、芋がら(里芋の茎を干したもの)など、山形県内でも最上地方の納豆汁は特に具だくさんですね」
と社長の篠原永治さん。地元産大豆「タチユタカ」を経木に包んで発酵させた納豆は、大粒でふっくらと柔らかい。
「工程はシンプルですが、納豆菌は目に見えないので、できるまでわかりません。今は機械で温度管理ができるので失敗することはまずないですが、同じ原料でも容器や環境によって固さや味が変わる納豆は、面白い食べものですよ」

刺し勇

  • 1/小野寺勇一さんとお母さんと。 2/縦、横、斜めと一方向に刺していき、最終的に模様が全面に浮かび上がる。 3/カラフルな糸を使うと、印象もかなり変わる。 4/箸袋がほしくて始めた刺し子。庄内刺し子の図柄を箸袋でコンプリートしたいと思っているものの、まだ4割くらいだそう。

刺し子は布が高価だった時代に、衣服の補強や保温のために刺繡を施した生活の知恵。津軽の「こぎん刺し」、南部の「菱刺し」と並ぶ日本三大刺し子のひとつである「庄内刺し子」に小野寺勇一さんが出会ったのは、11年ほど前。
「こんなにいいものをおばあちゃんたちしか作らないのは、もったいないと思ったんです」
針目の集合体で模様を作るため、小さくても映えるのが庄内刺し子。自然風景をモチーフにした模様が多く、さまざまな願いが込められている。
「めっこい(かわいい)なあと思って刺すと、針目が揃ってきれいになるし、面倒だと思ったら針目が乱れてしまう。だけど基本的には、失敗したときでさえ楽しいですね」

  • 山形県鶴岡市外内島
  • 090-9424-4528