【だれも知らない京都】京都ラビリンス、ラビリントス

鳴くよウグイス平安京。西暦が3桁の時代から今日に至るまで京都を目指す人は絶えない。ただし京に恋い焦がれる人々の話をよく聞けば、その愛の言葉は面白いほどに人それぞれだ。不思議で、謎めいていて、まるで迷宮のような京都。その深みへとへいざ入洛。
京都は謎めいた街である。
謎と言っても「なぜか2時間サスペンスドラマの舞台になることが多い」、とかそういうんじゃないんですけどね。
みなさんの周りでも「京都好き」を公言する人は多いのではないのでしょうか。
でも、時々その土産話なんかを聞きながら、「ふとそれは同じ京都の話かしら?」って思うんですよね。
例えば「古い都」としての価値を最も良いものとしてあげる人がます。
彼らの言う「京都」は大まかに古の都としての1000年を超える歴史、寺社、老舗の味、伝統工芸などなど。
「新しい文化がいち早く入ってくる」ことを最も良いものとする人もいます。
例えばコーヒーなどの新しい文化の定着力、外国人観光客の数、世界の流行が東京をすっ飛ばして京都に入ってくることなどなど。
どちらもそれが「京都の京都らしい魅力」と言ってはばかりません。
もしも京都未経験の人がいて、両方から「京都とは」を聞かされたのなら、ちょっとした迷宮のようなイメージになってしまうのではないでしょうか。
「そんなに相反するような魅力を並び立てて、私を惑わすおつもりですか」と。
またそのハイブリッドを愛する人たちもいます。季節ごとにお気に入りのお寺さんに仏像を拝みに行ってその足で京都の人気クラブのイベントに顔を出したり、大文字(五山送り火)などの風流を愛で、ビルの1階の小さな店で肩よせあいながら煙に巻かれてホルモンを愉しんだり。
「京都通」とも呼ばれる人にもなればそんな迷宮ダンジョンをむしろ愛し、勇者のように攻略している方々もおられます。

そうそう、「中の人」も少々謎めいています。
「おもてなし」をうたい、世界に誇るサービス文化と、よく聞く「いけず」と言われる少々排他的な雰囲気。
はたまた「京の味」に絶対的な誇りを持ちつつ、コーヒーとパンとラーメンをこよなく愛したり。
雅な保守さと華やかな革新さ。
開いているのに閉じている。
その相反するキーワードが並び立つっていうだけでも、ほらね謎めいているでしょう。
そういった様々なキーワードが、限りなく透明な薄いフィルターみたいに幾重にも重なっていて、それが京都の謎をさらに深めている気がします。
どんなに恋い焦がれて京都詣でをしてみても「京都の外」にいる限りは「本当の京の中」を覗くのはひと苦労。
しかもそのフィルターは実際の京都文化に加えて「京都が好き」という人の思いの数だけあるもんだから…。
めくれどもめくれども。
なかなかその奥にあるものにはたどり着けない。そんな気もします。
まあそんな文字通り「奥深い」のまた京都の魅力。
京都の恋する人たちは、その特別な雰囲気にひれ伏すしかないわけです。
だけどほんの少しでも、その「深いところにある奥」を覗きたいじゃないですか。
「外」からめくれぬなら、「中」からめくってしまおう、京都さん。
そんな太閤秀吉みたいに嘯きながら。
そのフィルターを中から大胆にめくってくれる
<京都案内人>に会いに行きました。
京都駅から数分の、「忘れてはいけないけれど、進んでいかなければいけない地区」や、京都中華に粉もんグルメまで、いつもよりはほんの少し深めに京都という巨大なダンジョンに潜って来たいと思います。

そうそう。
深い京都の予習をしたい人は
<京都案内人>の綴るこちらのコラムをお先にどうぞ。
味わい深き京都の世界へ、いざ。
▽下町。
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<京都案内人>
牧野 広志TRAVELING COFFEE 店主
1966年生まれ。
94年渡仏、90年代をパリ ルーアン リヨンで暮らす。
2002年 帰国後、京都の新しい情報発信空間の提案者として文化と地域に密着中。
-TRAVELING COFFEE –
昭和2年築の木屋町 元・立誠小学校 職員室で営業していたTRAVELING COFFEE が耐震補強工事の為に高瀬川沿いに建てられた仮設の立誠図書館内で営業。
図書館の選書はブックディレクター「BACH」幅允孝氏。
珈琲はブレンド2種類に加え、シングルオリジンは京都府内の焙煎所を毎月選び焙煎家と話し合い常にオリジナルを4種類程オーダーメイド。
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