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CULTURE TRIP JUN 26,2019

【400年と少し前から新しい、長崎】長崎LOVERS!4 あたたかな手から生まれる長崎。<陶彩 花と風>

かつて長崎奉行所があった、今は博物館となっている場所に、「指先を通して長崎を描く」二人がいる。ろくろを回す夫と、それに絵付けをする妻。二人の作品は地元民の日常にも溶け込む、それはそれは「長崎らしい」もの。


以前、アーバンリサーチの「JAPAN MADE PROJECT」でひとめぼれというか、見た瞬間目が離せなくなった茶碗や小皿があった。

伝統的な筆使いで生き生きと描かれた昔の子供たちの絵。ただよく見れば彼らはサーフィンやスケボー、バスケを勤しんでいるではないか。
かつては長崎の御用窯でしか描くことを許されなかったと言う伝統柄の唐子と、バスケやサーフィンという今時のカルチャーという組み合わせがたまらなくユニークで、ついつい手にとって長い時間魅入ってしまった。

これらを作ったのは、ご夫婦で陶芸を営む「陶彩 花と風」。

夫が土をこね、形作り、焼き上げる。
妻がそれに美しい絵を描く。

もともと同級生だったというお二人。

妻の廣田友理さんは長崎の高校のデザイン美術科を卒業後、京都の伝統工芸専門学校で学ぶ。学校では金属工芸に魅力を感じ、卒業後はアクセサリー会社で彫金や七宝焼きなどを手がけていた。その後専門学校で夫と知り合ったのをきっかけに陶器の絵付けを学んだそう。花と風の美しい絵付けは彼女が全て手がける。

夫・廣田亮作さんは少々変わった経歴。

なんと最初は「仏師」になりたいと思っていたそうだ。図工が好きでものつくりに憧れがあり、かつては仏師に憧れを抱く。
だが、今の日本では一家に一台仏壇や仏があるようなうちはそうそうない。働くからには食えないといけない。「そうだ、茶碗なら必ずどの家にもある」。といった流れで京都の伝統工芸専門学校卒業後、京都の工房で修行し、陶芸の道に入ることになった。

とはいえ厳しい職人の道。両親には「医療系に行く」と言っていたので、特に母親には泣かれるほどだったとか。

ただ「修行で入ったところが、とても良い工房だった」そうだ。普通なら雑用3年などを経ないと土に触らせてもらうことができない。だがそこは入ったらすぐろくろを経験することができた。
「自転車と一緒で手(からだ)で覚えることができました。京都の工房には10年いたのですが、いい経験になりましたね」

以前は別の商店街に工房を構えていたが、現在は縁があって、かつて長崎奉行所があった場所にある『長崎歴史文化博物館』の中に移ったそうだ。
奉行所を復元した建物もあり、まるで時代劇で見る「奉行所お抱えの窯元」のようにその風景にアトリエが溶け込んでいた。

お二人とも京都での修行が長かかったので、焼き物の特徴としては京焼きの流れを汲んでいるが、有田やドイツの絵の具など良いものはどんどん取り入れて<花と風>独自の作品を生み出している。もともと長崎では、朝鮮半島から陶芸や金物などの職人を招いて、お茶や陶芸の文化が広まったそうだ。

さて<花と風>には伝統的な絵付けを施したもののほか、「長崎」の風景を写し取った商品も多い。

四角い箸置きには長崎の様々な風景が写し取られているし、クジラや瑞島(軍艦島)を摸したユニークなものもある。
「ここではベーシックなものと、チャレンジものの2種類があります。もちろんチャレンジものも売れると思って作ってますけど(笑)」(亮作さん)

クジラなどの箸置きは、石膏の型を一度作るそうだ。この石膏ももちろん手作業。

“チャレンジ”したというクジラモチーフの箸置きは、市内の人にもよく売れたそうだ。ほかにもアクセサリーなど「陶器」と言う枠を飛び越えたものもある。

今回URBAN TUBEでお話を伺った人みなさんそうだけれど、「誰もが知る長崎」に現代的な解釈を加えて、「知っているけど新しい」ものにしているところが本当に素敵だと思った。

観光客にとっては「長崎らしい」ものは魅力だけど、かといって「ほら、長崎といえば昔からこれでしょ」と代わり映えのしないものを見せられても困る。そして(長崎に限らず)地元の人にとってあまりにも「ご当地らしい」と少々使いづらいものになる。

<花と風>の手がける作品は、地元民にとっても照れのこないちょうどいい「長崎らしさ」であり、自分の家でも使えて、かつ県外の人にも薦めたくなる「長崎具合」。もちろん観光客には憧れの長崎文化を感じることのできるバランスも魅力だ。冒頭で紹介したような唐子作品のようにアート的にも楽しめる作品も多い。

「例えば眼鏡橋にしても、今まで県内外両方の人が楽しめるお土産って少なかったんです。両方の人が楽しめるものを、と思って町並みシリーズを作りました。長崎に関する商品を作る時に改めていろいろ調べたのですが、今まで興味がなかったけれど県の花の椿や、市の花の紫陽花があることを知ったり。それをいろんな描き方をして作品と組み合わせていくのが楽しんです」(友理さん)

とても自然体に長崎らしさを体現できるお二人だからこそ、時々地元の人から「こんなのが欲しいなあ」や「おばあちゃんの顔を描いて欲しい」なんてオーダーが入ることも。

茶碗などの絵付けは、「平面の絵を立体に配置」していくものだ。「正面の絵から始まって、どこからどのくらい広げていくか余白の美を考えるのが好きです」

そして<花と風>の商品は、全て「手作業」だ。

「手描きは時間がかかる。転写をやれば?と言われることもあるんですが、でもずっとやってきたものを転写で簡単にしたくはないなって」(友理さん)。

大変な作業料ではあるけれど、だから<花と風>の作品には、それこそ小さな箸置きに至るまで彼らの指先を通した「長崎」を感じることができるのだ。

そんな友理さんに、長崎で好きな風景を聞くとこんな答えが返ってきた。

「子供と夕焼けを見るのが好きなんです。眼鏡橋が遠くに見えて、稲佐山や空や夕日や、いろんな色を毎日見せてくれる。そんな風に長崎を見上げた風景が大好きです」

と、アーティストらしい素敵な言葉をいただき、取材はここで終わったのだが…この後の雑談で「くんち」に触れるとさらなる大盛り上がり。

工房に飾ってあったくんちのハタ。

友理さんは長崎出身だが、実は亮作さんは対馬出身。だがもうすっかりくんちの虜になっている。くんちの話になると、亮作さんの話は止まらなくなった。

「本番(10月7〜9日)前の5日・6日の街の雰囲気が好きです。街全体がしずまりかえってるのですが、でも、静けさの中にそわそわ感がある。
前回踊町になった時に参加したのですが、期間中約80キロ町の中を歩くんですよ。初日は「よし!やるぞ!」、2日目に「まだあるのか…」、3日目に「もういいわ…」となるんですが、終わるとまた次も出たくなるんです」

ちなみに同じ長崎市内でも夫婦で違う町出身の場合、妻は妻の町へ、夫は夫の町で参加することもあるそうで、くんち期間だけ別々に居を構えることもあるそうだとか。

「そのくらいみんな自分の町が大好きなんですよ」
その言葉がとても印象的だった。

陶彩 花と風

〒850-0007 長崎市立山1-1-1 長崎歴史文化博物館2階工房

営業時間 : 10:00〜18:00

TEL : 095-807-6854

Facebook : https://www.facebook.com/hana.to.kaze.pottery

Instagram : https://www.instagram.com/hana.toukiyasan/

アーバンリサーチ アミュプラザ長崎店

〒850-0058 長崎県長崎市尾上町1-1 アミュプラザ長崎 1F

TEL : 095-808-1115

JAPAN MADE PROJECT NAGASAKI : 花と風 × URBAN RESEARCH 一輪差し用花瓶を取り扱い中

PROFILE

松尾 彩Columnist

フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。小学館kufuraにて旅エッセイ「ドアを開けたら、旅が始まる」連載中

木村 巧Photographer

1993年茨城県生まれ。在学中より、写真家青山裕企氏に師事。春からURT編集部へ。

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