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FASHION JUL 28,2021

“買談”新書 kearny編
今夏は、気持ちもスウィングするカーニーのアイウェアを纏いたい!

厳密にいえばメガネやサングラスは“掛ける”モノだ。ただ、洋服を着るように“纏いたくなる”アイウェアがある。メガネ業界のみならずファッション業界でも注目を集めるカーニーだ。背景にヴィンテージの影が見え隠れするが、どこか新しい。その不思議な感覚の正体を求め、 URBSのメンズバイヤー、阿部 浩とウィメンズブランドPRの松沢 葵が、つい先日オープンした旗艦店、『ソスト』にいるデザイナー、熊谷 富士喜(くまがい・ふじき)氏のもとを訪れた。


※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで取材を行っております。

メガネのその先にあるアイウェアとしての存在感

かぐれで取り扱いをスタートし、今やURBSでもアイウェアの主力として君臨するkearny(カーニー)。その付き合いは今年で7年目を数える。バイヤーの阿部に話題を向けると、こんな答えが返ってきた。

URBS メンズバイヤー 阿部 浩(以下、阿部) 「カーニーさんて、アイテムのひとつひとつにストーリーがある。それがすごく素敵だなって思います。だから毎シーズン楽しみなんですよ。改まって話をするのはちょっと気恥ずかしいですけど(笑)」

「告白されているみたいで照れますね(笑)」と笑みを浮かべる熊谷氏だが、モノ作りへと突き動かす衝動について聞いたところメガネ業界への物足りなさが前提にあったという。

カーニー デザイナー 熊谷 富士喜氏(以下、熊谷) 「以前から、ファッションメガネに関して日本はすごく遅れていると思っていたんです。グラッシーズからアイウェアになったのって、ほんとここ最近。作り始める前までは、自分が掛けたいアイウェアがほとんどありませんでしたから。だったら自分で作ろうと思い立ちました。僕らが好きな洋服とちゃんとコネクトするアイウェアってなんだろうというのは、今も意識するところではありますし、ちょっとでも業界の裾野を広げたいとは常日頃から思っていますね」

そして2013年、カーニーを設立。自身が好きな音楽や年代といったフィルターを通してアイテムを作り始める。

熊谷 「まずは、セルロイドという素材に惹かれたのがひとつ。もうひとつは音楽ですね。特に1950年代のアメリカの音楽に魅力を感じるのですが、当時はコンタクトレンズもないですからメガネをかけて演奏しているアーティストがすごく多いんです。例えばビル・エヴァンスは、クラシックメガネの代名詞であるアメリカンオプティカルのそれを掛け演奏していました。僕のアイテムにはそんなヒト、コト、モノから着想を得て作ることが多いんです。日頃から単発的にアイデアを脳内にアーカイブ化していますが、その点と点が、あるキーワードによって線となった時、とても嬉しい気持ちになりますね。もうそれで何杯でもお酒が飲める(笑)」

「展示会で聞くアイテムに関する背景の話やそれにまつわるストーリーがことさら楽しい」と阿部。

阿部 「流行りのものをただ普通に売って、普通に買ってというだけでは、なんだか面白みに欠けるなと正直思うんですよ。熊谷さんと話をすると、メガネの話はもちろん、それに付随するストーリーやエピソードがすごく面白い。それがアイテムの魅力になっているんですよね」

今も胸に秘める、モノ作りの背中を押した師匠の言葉

熊谷氏は、某アパレル会社に入社した後、古着屋へ転職。そこで洋服やメガネのバイイングを一から学びながら、満を持して独立するのだが、そこから徐々にヴィンテージメガネの沼にハマっていくことになる。

熊谷 「独立してからひとりで洋服やメガネのバイイングで海外へ行くようになりましたが、とても楽しかったですね。モノに関しては国内より現地の方が圧倒的に多い。もう毎日いろんなヴィンテージメガネと出会えるんですよ。最初は古着屋なので古着をメインに買い付けをし、その合間にメガネの美術館や専門店へ行っていました。でも最後は、洋服そっちのけでほぼメガネだけ見るようになっちゃいましたね(笑)。その時は、まだ作ろうとは思っていなくて、ただ、古いメガネを掘り下げるという作業をしているだけでした。もうオタクの所業ですね(笑)」

そんな折、「師匠」と敬愛するサンフランシスコ在住のディーラーとの出会いが自身の歩みを大きく変えることになる。

熊谷 「僕がよく足を運んでいたのは、サンフランシスコにあるカーニーストリートという場所。同地を拠点として、シアトルにLAにと飛び回っていました。そこに仲良くさせてもらっていたディーラーが住んでいて、ヴィンテージメガネのことをたくさん教わりましたね。もちろんそれ以外のことも(笑)。人生で一番大きな出会いだったと思います。その方が不意に言ったんですよ。「もうあんまり古いものを追うのはやめろ」って。過去をただ追っているだけではいけない、日本の物作りは素晴らしいのだからそこへ目を向けてモノを作りなさいと。それで、日本へ戻ってすぐに鯖江や千葉のメガネのファクトリーへ足を運んだのですが驚きましたね。すごい技術だなと。ただ、技術はあるけれどやはり道具の域は出ていない。ならば、自分でやってみようと改めて考えたんです」

そんなブランド設立までの紆余曲折があるからこそ、アイテムのひとつひとつに深みが出ているのでは、と阿部は想像する。

阿部 「昔のモノをよく知っている、モノ作りの現場をよく知っているからこそのアイテムですよね。深堀りしてアイテムを作っているので、やはり説得力が違います。膨大な知識と経験をドリップしながら独自に仕上げているので、カーニーのアイテムは単なる懐古主義で終わってはいないんです」

女性目線から見たカーニーとは?

ヴィンテージやアンティークは、単なる“古いもの”とひとえに括れないところがある。時を経てもなお形を成している事実、味わいを増す姿、見え隠れする時代背景や愛用者たちのエピソード。ロマンを求める男性にとってはなんともグッとくる要素だが、ある種自身の好きに対してとことん正直で、古さと新しさの線引きにドライな一面を持つ女性にとってカーニーはどのように映るのか。松沢は話す。

URBS ウィメンズブランドPR 松沢 葵(以下、松沢) 「最近になって、ウィメンズの間でも再びメガネがファッションの一部と化してきました。毎日、違うサングラスやメガネを掛けているファッション系のインスタグラマーはとても多いですから。だから、アイウェアはもう女性の中ではアクセサリーなんですよね。そう考えると、女性にとっては似合うか似合わないかがとっても大事。カーニーさんの場合は、ウィメンズの間でもクラシックがひとつのトレンドキーになっているからかもしれませんが、デザイン的にスーッと入ってくるんですよね。手に取りやすいといいますか。そのうえ、背景に潜むエピソードを聞くとより好きになっちゃうと思います」

確かに女性からの注目度は高くなっている印象はあると熊谷氏。そして、昔からウィメンズファッションとメガネは相性がいいという。

熊谷 「フランスではキャットアイ型や適度に尖らせたフレームのメガネを今でも掛けている女性は多いです。男性だとウェリントン型といった丸みのあるモデルへの支持は高い。アジア人に似合うと言われているのでどうしてもそちらに寄ってしまうのはあると思いますけど、欧米の女性はもっと自由にメガネを掛けている印象で、同性として日本の女性も共感しやすいのではないでしょうか」

URBSが目をつけた今季のカーニー

そして今季、URBSでは、ずっと作り続けられている定番モデルや、1955年にちなんだヒト、コトなどをテーマにした“1955”コレクションなど5つのモデルをラインナップ。御多分に漏れず、どのモデルも熊谷氏のこだわりが凝縮されている。

熊谷 「“1955”コレクションは、1955年に関係する人間の名をモデル名につけたコレクション。例えば左下のチャーリーというモデルは、1955年に亡くなったサックス奏者、チャーリー・パーカーにちなんで名付けられています。実際、彼は八角のメガネを掛けて演奏しているんです。しかも、リムが二重になっていて接着剤などを一切使わずに作られている。いつもお世話になっている工場さんが2017年にこの手法で特許をとり、一緒にやろうと言ってくれたことから完成しました。ちょうどその時は、どんどん最新の素材が出てきている中、僕自身セルロイドへのこだわりについて迷いが生じていた時期。でもこのおかげで、古い素材と最新の技術をクロスオーバーさせれば新しいものが作れるのではないかと一気に前向きな気持ちになれましたね」

そして、阿部、松沢の両名も個人的に購入したというモデルがこちら。「休日は必ずと言っていいほどサングラスを掛ける」という阿部は、冒険的なこちらのアイテムを選んだ。

阿部 「サングラスはよく掛けますがどちらかというと選びは保守派。セルフレームのウェリントンタイプが大半を占めますね。でも、今やクラウンパントもだいぶ浸透してきましたし、夏にハマりそうということでこちらを選びました。サングラスながらもどこか落ち着いた印象は、モノトーンスタイルとも相まって大人っぽく見えますね」

kearny Dearie
※アーバンリサーチ オンラインストアでは10月販売開始予定

目が悪く3歳頃からメガネを掛けていたが、最近になってファッション的視点で度なしのメガネを買いだしたという松沢は、ペールトーンのクリアフレームを。

松沢 「最近ウィメンズの間でも黒ブチは定番になっていますけど、周りと一緒もどうかと思うので個人的にも好きな淡い色を選びました。薄めのカラーレンズもナチュラルなので総柄のワンピースともケンカしなさそう。クリーンなカチッとした白シャツに黒のパンツ、ローファーなどと合わせ、ハズし役として取り入れるのもいいですね」

単純に流行りを追うのではなく、アイテムへ込めた想いやこだわりが魅力となって見るものを魅了する。カーニーのアイテムは、その本質を改めて教えてくれる。今季はぜひともカーニーのアイテムを手に取り、掛けてみてほしい。きっと心が躍る、喜ぶ感覚を味わえるはずだから。

今年の6月にオープンしたばかりのこちら。熊谷氏も影響を受けたと語るフランスのとあるアイウェアショップをイメージソースに左官仕上げで作られ、その様は温もりとモダンさが溢れるギャラリーのよう。アーチ状になった入り口は、ローマ時代から続くヨーロッパの伝統的なファサードデザインを左官で仕上げるという和洋折衷方式。なにより、アイテムを特殊なショーケースに収納し、外からではおおよそどんなお店か想像がつかない作りも面白い。現在は、ブランドのフルコレクションのほか、気鋭アーティストのKANSAI NOGUCHIの陶器やウチダユウヤの木工作品も展示・販売している。

sost. (ソスト)
東京都渋谷区神宮前5-23-3
営業時間:12:00〜19:00
定休日:毎週水曜日
HP:https://sost.store/

Special contents

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photo/Takuro Shizen
edit & text/Kikuchi Ryo

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