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FASHION OCT 15,2021

<SDR通信Plus⑦>2020年開催 第三回「グリーンダウン」プロダクトデザインコンペティション 合同インタビュー


株式会社アーバンリサーチは、現在SDGs(持続可能な開発目標)に関連する取り組みを積極的に推進しております。その取り組み内容の紹介の場として始まった社内報<SDR通信>。
本来ならお見せすることのない社内報ですが、その中から皆様に広く知っていただきたい内容を、メディアサイト独自の目線を加えた記事<SDR通信Plus>として不定期連載しています。

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株式会社アーバンリサーチ(以下、UR社)は、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みの一つとして、2015年より「Green Down Project(以下、GDP)」の一員として参加し、羽毛製品の回収とリサイクルされた羽毛での商品企画に積極的に取り組んでおります。
その啓蒙活動の一環として、学生の皆さまを対象に2018年より開始した「グリーンダウン」プロダクトデザインコンペティション。
第三回目となる2020年のコンペティションにおいて、300件以上のエントリーの中から、池上 葵さん(京都女子大学)、陳 韶英さん(上田安子服飾専門学校)、名蔵 愛美さん(大阪文化服装学院)の作品が選出され、そのデザインを商品化し発売しております。
この度の商品化にあたり、受賞者である学生3名様とUR社のデザイナー下間 祥子、本プロジェクト進行役 宮 啓明に、繰り返し行われた打ち合わせの感想やデザインに込められた想いなど、合同インタビューという形でお話を伺いました。

※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで行っております。

WEAR部門 最優秀賞受賞
スクエアユーティリティーダウン

<コンセプト>
リバーシブルで着られる、正方形ダウン。
環境について考えていたとき、1年間の廃棄衣料の量を知りました。そこで、廃棄の面と、1つのものを長く大切に着てもらうということに着目し、デザインしました。
廃棄の面: 形を正方形にし、製作工程で裁断クズを出さないようにしました。スナップボタンとドローコードで立体的な形に変化し、何通りもの着方を楽しんでいただけます。
長く着てもらうという面: 洗濯や重力による羽の偏りを少しでもなくし、長持ちさせるよう、ステッチを格子柄にしました。お家で肩掛けや膝掛けとして使っていたものを、さっと形を変えてお出かけもできるワンマイルウェアとして使っていただけます。

池上 葵
京都女子大学在学の22歳。趣味はYouTube鑑賞で、最近は大食い動画と、ファミリー動画で癒されています。
食欲の秋なので、私も美味しいものをたくさん食べたいと思います!

GOODS部門 最優秀賞受賞
FUROSHIKIダウンバッグ

<コンセプト>
コロナウイルスの影響で、室内より、室外で過ごしたい人が多いのではないかと考えました。特に冬の時期、冷たい金属パイプ椅子や地面などに座りたくないときや、ダウン素材の保温性を利用しお弁当入れとしても、こちらのアイテムが役立ちます。バックルと長さ調整可能のテープがついているため、普通のふろしきより多くの用途で使用できると思います。

陳 韶英
台湾出身。現在上田安子服飾専門学校ファッションクラフトデザイン学科バッグコース在籍中。
趣味は旅行、神社巡り。コロナ禍で外出を控える中、TRPG、ボードゲームにハマり中。日本の伝統工芸と職人精神を尊敬していて、自分でもいつか長く愛されるようなモノづくりをすることが目標。

特別賞受賞
グリーンダウンサコッシュ

<コンセプト>
ダウンジャケットの温かさから、そのポケットだけでも十分活躍するのではないかと考えました。ポケットを主役にすることでダウン部分の艶感やフォルムがデザインの一部になっているところがポイントです。
ハンドウォーマーやポケットとしての利便性を高めるために、中にカイロポケットもつけました。

名蔵 愛美
現在、大阪文化服装学院在学中の19歳。服づくりはもちろん、3Dモデリングや編み物など幅広く勉強中。
趣味は旅行だがコロナ禍でなかなか行けないため、最近は陶芸やアクリル画、お菓子作りなど自宅でできる趣味に没頭している。

下間 祥子
SBU部に所属し、THE GOODLAND MARKETを担当。ファッションでも環境問題や社会課題に取り組み、解決できる、変えていけると信じ、日々模索中。
大阪 南船場のDOORS HOUSEの屋上にある畑で、農業を通し「都会と自然をつなぐ」ことを目指して奮闘中。

宮 啓明
「アーバンリサーチ」にて販売員や販売促進担当を経て2021年4月より、経営企画部サステナビリティ推進課に配属。
今を生きる人も未来を生きる人もワクワクするような社会を目指し、自分にできることを模索しながら走り回る日々。最近始めた趣味はお猪口集め。

— もともとGDPの取り組みはご存知でしたか? 応募されたきっかけについても教えてください。

池上 葵さん(以下、池上) 以前、学校で開催されたイベントで「服の寿命って何歳?」という内容でアーバンリサーチの方のお話を聞く機会があり、GDPについてはその時知りました。コンペは、学校の先生に勧められたことが応募のきっかけです。

陳 韶英さん(以下、陳) 私も、先生に「こういうプロジェクトがあるよ」と紹介してもらったのがきっかけです。デザインの授業中にGDPの映像をみて、全員応募することになりました。

名蔵 愛美さん(以下、名蔵) 実は、去年同じ学校の先輩がこのコンペティションで受賞しているんです。GDPのことはその先輩が受賞する前から知っていて、アーバンリサーチの店舗で回収ボックスを見て、サステナブルな取り組みだと知りました。その後にウェブページで先輩のインタビュー記事を見て、私もコンペに応募しようと思ったんです。

UR社一同 店舗でボックスを見てくれていたんですね。嬉しい! 一番いい流れですね。

— 受賞と聞いて、皆さんどう思われましたか?

池上 驚きが一番大きかったです。メールで知らせていただいたんですけど、「ほんまかな〜?」と、そんな感じでした(笑)。

 私も驚きました。バイトの途中でメールの通知がきていて、詳細が確認できなかったので「何のことだろう」と思っていたら、大変なことになっていました(笑)。

名蔵 驚いて、そして次に嬉しくて、しばらく実感がわかなかったです。去年の傾向やトレンドよりも、自分自身が欲しいと思えるものをデザインしたので、そのデザインが受賞したと聞いて、とにかくすごく嬉しかったです。

— 皆さんの作品を選んだポイントについて教えてください。

宮 啓明(以下、UR 宮) 3名それぞれのコンセプトを読ませていただいたときに、ちゃんとGDPのことを自分で調べて学んで、それをプロダクトに活かしているなというのが応募用紙から伝わってきました。それが大きかったと思います。
あとは、それぞれデザインが魅力的で、今らしい工夫がされていたところも、3名の作品を選んだポイントです。

下間 祥子(以下、UR 下間) 宮が伝えたポイントは大前提にあります。あとは、3名の作品はどれも、普通量産ではあまり作らないタイプで、シンプルにみえてディテールが細かかったり、すごく難しいデザインでした。普通に商品企画をしていたらなかなか挑戦できないことを「一緒にトライできる」というポイントも、選んだ理由の一つだったと思います。
私自身、商品企画をするときは、コスト感やトレンド、ご購入いただくお客様のターゲット層などをリアルに考えながらモノづくりをしているのですが、「自由な発想」というのはやっぱり皆さんの方が絶対的に持っていると思うんです。そういった、皆さんのアイディア力と、UR社の商品企画力を合わせてみたいと思いました。そういう点では、今年は正直かなりチャレンジでしたね。

— デザインのポイントや製品化にあたり苦労した点などを教えてください。
池上さんからお願いします。

池上 グリーンダウンを使用する以外の箇所でも環境に配慮した部分があるといいなと思い、裁断クズが出ないような四角のパターンでできるものを考えました。あと、いろいろな着方で楽しむことができれば、長く大切に着てもらえるのではないかと思いこのようなデザインにしました。

UR 下間 これはかなりおしゃれアイテムですよね! めっちゃ私好みで、実は狙っています(笑)。

UR 宮 好きそう! 持っていそうですね。
これは打ち合わせの時も、フィッティングしながら、皆でああだこうだ言いながらやりましたよね。

UR 下間 本当にいろいろな着方ができるので試行錯誤しながら考えましたね。
この商品は、裁断クズをなるべく少なくしたいという思いを汲んで、反物の生地幅に合わせて製品の幅を調整していたり、本当にロスが少ない商品だと思います。あと、リバーシブルにするために、表地と相性が良く、かつ環境にも配慮している素材を見つけるのにすごく苦労しました。
今回生産を依頼した工場のNANGA*1さんからは、付属の指示が細かかったこともあり「こんなアウターはあまり作ったことがない」と言われたり…(笑)。 最終アップするまで正直すごく不安でしたが、素敵に仕上げてくださいました。きっとNANGAさんとしてもチャレンジだったんじゃないかと思います。

*1 NANGA・・・滋賀県のダウンメーカー。羽毛の安全性と質にこだわり、熟練した縫製職人によって主にシュラフ(寝袋)やジャケット・パンツ等登山アパレルを国内生産しています。

THE GOODLAND MARKET スクエアユーティリティダウン ¥25,300 (税込)

— 陳さんは?

 バッグのデザインに何か+αしたいと思った時に、風呂敷が思い浮かびました。多用途に使える風呂敷のように、バッグ以外の使い方があれば、そのバッグ自体が長持ちすると思ったんです。

UR 下間 パーツが目立たないように小さめのものを希望されていたりと、細かなところに拘りを持って、丁寧に商品のことを考えていたのが印象的でした。 シンプルなデザインですが、陳さんの拘りを大事にしつつ、ちゃんとイメージに合うものを手配できるよう頑張りました。

一同 サークルのステッチがかわいい!

 「このデザインは縫いづらいかな…」と少し不安でしたが、打ち合わせの時に「大丈夫」と言われてホッとしました。ただ、つくり手目線でデザイン性だけに囚われるのではなく、使う人の気持ちになって考えることを忘れないように気をつけて細かな部分も拘りました。

UR 下間 すごく基本的なことですが「使う人の気持ちになって考える」、それってやっぱり大事なことですよね。

THE GOODLAND MARKET FUROSHIKダウンバッグ ¥13,200 (税込)

— 名蔵さんは?

名蔵 グリーンダウンを夏にも使えたら面白いなと思ったので、1年中使えるバッグをデザインしました。実用性を考えて、ダウンポケットに手を入れやすいようなサイズにしたり、中にカイロなどを入れられるミニポケットを付けたところがポイントです。

UR 下間 名蔵さんも他の2人同様、ダウンの入れ具合や形など、細かいところのイメージをしっかり持たれていたので「名蔵さんのイメージを絶対に形にしたい」と思いました。 ただ、バッグを生産する工場では通常ダウンを縫製することはあまりないので、このバッグに関しては縫製をしてもらえる工場を見つけるのに苦労しましたね。私自身、普段は洋服メインの商品企画をしているので、今回はバッグの企画について勉強させてもらっていた感じでした。

名蔵 単純に「バッグとダウンを組み合わせたらかわいいな」という思いから始まったのですが、縫製の大変さは知りませんでした。

UR 下間 これは今回の企画ならではですよね。正直、普段だったらいろんな観点から考えて、企画を変更していたかもしれないです(笑)。だからこそ、こうやって形になっているものを見ると感慨深く、感動する部分がありますね。

UR Lab. グリーンダウンサコッシュ ¥6,600 (税込)

— 普段SDGsやサステナブルなど、意識して取り組んでいることがあれば教えてください。

池上 いま、卒論として廃棄衣料を使って、裂き織りの作品を作っています。あと、以前は破棄衣料をリメイクしたものを黒染めして販売したり、裁断クズをもう一度糸から布にして作品を作ったり、いろいろな活動を学校の研究所でやっていました。

 この前、学校の大きな展示会がありました。和服のリサイクル・再利用は難しいんですが、私は和装の帯や組み紐を使ってバッグを部分的にリメイクしたものを作りました。

名蔵 私は最近ブランドを立ち上げたんです。そこで使う素材はなるべくリサイクルされたものを使ったり、無駄がでないような裁断をして商品を作っています。今は個人でやっているだけなんですけど、今後はイベントの参加や、ウェブサイトを作って発信していけたらいいなと思っています。

UR社一同 すごい!(感心)

UR 下間 皆さん本当にすごいですね! 学校でもサステナブルな活動をしているところが年々増えていて、学生の皆さんのサステナブルやSDGsへの関心の高さに本当に感心します。

— 最後にUR社の二人より、今回のコンペティションの感想とともに、学生様へ一言お願いします。

UR 下間 今回のコンペティションを通して、学校だけでは知れないことや、感じられることがたくさんあったと思うので、これから社会に出ていく上でいい経験になったのではと思います。そういう経験をしていない学生の方々よりも、自分は一歩進んだくらいの自信を持っていただけたらなと思います。
また、このコンペというものが、自分の将来を考える一つのきっかけになっていたらいいなと思っています。これからの時代は、環境や社会の課題に対してしっかりと向き合っていくことがすごく大事ですし、ファッション業界もそういった方向性にシフトしています。課題解決に向き合いながら、お客様のためにどういう商品を作るのか、どういう仕事をしていくのか、考えながら活躍していってくれると嬉しいなと思います。

UR 宮 受賞発表されてからもう半年以上ですかね。皆さんには何回も打ち合わせに足を運んでもらい、ようやくここまできたわけですが、まずはこの取り組みにご協力いただき、本当にありがとうございました! なにより、取り組みに興味を持ち、参加してくれたことが嬉しく、さらに一緒にモノづくりができたことを嬉しく思っています。
下間の言うように、正直、世の中には課題がいっぱいあって、僕たちだけでは解決できないことも多くあります。この先、皆さんが仕事としてファッション業界を選んだ時に、このプロジェクトを通して、僕たちと同じ想いを抱き、それを信念として守っていきたい、と中心になって活躍されるような人になってくれたら嬉しいです。一緒にファッション業界の未来を変えていきましょう!

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