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FASHION JUN 10,2023

TIMEXの超名品「IRONMAN® 8LAP」が待望の復刻! DOORS 20周年で実現した、原点回帰にして“架空の”別注ウォッチ。

20周年を迎えるURBAN RESEARCH DOORS(以下、ドアーズ)が、全米No.1の時計ブランド・TIMEX(タイメックス)とコラボレート。不朽の名品「IRONMAN®️(アイアンマン) 8LAP」を復刻別注しました。これまでもおりにふれ、別注やエクスクルーシブを発表してきた両者ですが、今回の別注にいたるまでには紆余曲折があり、募る思いもひとしお。そんなよもやま話を伺おうと、仕掛け人であるドアーズのバイヤーをはじめ、タイメックスにゆかりある面々を召集。そもそも「アイアンマン」とは? そのあたりから、じっくり話を聞きました。


左から、タイメックス 営業担当の秋山広和さん、プレス担当の秋山 葵さん、モノメディアを中心に活動するライターで、『TIMEX PERFECT BOOK』の執筆も担当した秦 大輔さん、アーバンリサーチ ドアーズ バイヤー・陳内寛之。

プロアスリート向きに開発された、スマートウォッチの始祖?

— ドアーズの20周年を記念して別注したという「アイアンマン」ですが、そもそも、ベースになったモデルはどういった時計なのでしょうか?

秋山 オリジナルは、1986年に登場した「IRONMAN 8LAP(以下、8LAP)」というモデルです。トライアスロン向きに開発されましたが、その革新的なデザインと機能が話題になり、アメリカ本国で発売初年度に40万本も売り上げた記録も残っている国民的スポーツウォッチです。ギネス認定こそされていませんが、世界でもっとも売れたスポーツウォッチなんですよ。

— プロアスリート向きに作られた時計でありながら、ひろく一般に受け入れられたと。

秋山 「アイアンマン」をはじめとするタイメックスの時計は、その昔、ドラッグストアやガソリンスタンドの売店といった場所でも売られていました。それまでの常識にとらわれない発想も、多くのひとに知れ渡った理由ですね。

— カジュアルな日用品として、腕時計を再定義していったわけですね。

秋山 そうです。アメリカではいまもそうして生活に根付いています。生まれたときから親が使っているのを見ていたり、小・中学生が初めて買ってもらう腕時計として愛されていたり、大人になって懐かしんで、また手に取ったり。

 以前、雑誌の企画でニューヨークへ行って、街でタイメックスを着けているひとを取材して回ったことがあるんです。そのときも、「昔、おじいちゃんがしていて」というような声はとても多かったですね。

秋山 Levi’sの「501」とか、CONVERSEの「ALL STAR」みたいな存在なんでしょうね。

陳内 クリントン大統領が大統領宣誓式で着用したのが話題になったり、NASAの宇宙飛行士が訓練中に愛用していたという逸話も有名ですよね。その時計が、ちょうど今回別注したものと同じ配色の90年代モデルだったのがとても印象的でした。

NASAの宇宙飛行士であるキャスリン・コールマンも、アイアンマンを愛用していたひとり。アイアンマンのほか、「データリンク」などの歴代モデルがスペースシャトルや国際宇宙ステーションでのミッションに採用されてきた。

秋山 「8LAP」が登場してから、シリーズとしてさまざまなバリエーションがリリースされてきました。90年代後半から2000年代あたりになると、成型技術の進化によって流線型のものが多く見られるように。プロアスリート向きのスポーツウォッチなので、それこそ、空気抵抗なども加味されて。

— 車みたいですね。

秋山 はい、実際、「8LAP」のデザイナーは、タイメックス社に来る以前ゼネラルモーターズで車のデザインをしたそうです。車も時計も、設計プロセスは似ているということで、応用された技術もかなりあるそうですよ。時代に応じて進化を重ねてきた末に行き着いたのが現在のスマートウォッチだとすると、「アイアンマン」はまさにその始祖と言える時計だと思います。

 インディグロナイトライト(以下、インディグロ)も、まさにそうした技術開発の過程で搭載されるようになった機能ですよね? 「アイアンマン」に初めて搭載されたのは、92年でしたっけ?

秋山 その通りです。インディグロは、タイメックス社が開発した世界初の文字盤全面発光機能のこと。現在も、タイメックス社製の時計の75%以上に搭載しています。最初はアナログの三針ウォッチに搭載され、後年にはデジタルウォッチにも転用できるようになりました。

— プロ仕様なのに日用品として愛されてきたこと、技術の発展に応じて進化してきたスマートウォッチのハシリであること。その両面で、スポーツウォッチの歴史においてかなり特別な存在というわけですね。

「8LAP」復刻別注までの紆余曲折。

秋山(葵) 86年の初代モデル発売以来、さまざまなバリエーションが発売されましたが、なかでも「8LAP」は不動の人気。我々自身でもこれまでに何度か復刻してきた、思い入れのあるモデルです。

— インラインモデルとして、2013年や2022年などに「8LAP」を復刻していますよね。

秋山 そうです。2013年の復刻企画の時点で、初代モデルのデザイナーはもうタイメックス社を去っており、タイメックス社には当時の記録もきちんと残っていなかったんです。なので、私たちはデザイナーに直接コンタクトを取り、独自インタビューをおこないました。初代モデルが生まれた経緯を改めて伺ったり、当時のデッサンを見せてもらったりしながら、日本企画として一から作り上げたわけです。ただ、権利の関係で、「8LAP」の別注を製作することは長く叶わず、陳内さんをはじめ、ドアーズのみなさんをかなりお待たせする結果になりました。

陳内 だから、というわけではないのですが、2019年には「ATLANTIS 100」というモデルを別注しました。

秋山 「アトランティス 100」は、初代アイアンマンが出る1年前に初めてリリースされたモデルということで、兄貴分にあたります。

 たしか、デザイナーも一緒ですよね?

秋山 その通りです。

— なるほど、それで「8LAP」風のカラーリングをまとっているのですね!

陳内 「8LAP」を別注したい思いのあまり、形にした折衷案です(笑) 「8LAP」の初代カラーを、「アトランティス100」の要素は残しながら落とし込みました。

 擬態しているかのごとく、本当によく落とし込まれていますね・・・!

陳内 黒を基調にしたカラーリングのものも展開しました。「なんだかんだ、そっちの方が万人受けするだろう」と思ったのですが、「8LAP」カラーの方が圧倒的に人気で。「アイアンマン」ファンの根強さに、手応えを覚えました。その後、国内未発売モデルをドアーズでエクスクルーシブ展開したりと、「いつかは『8LAP』を」と思いながら、お付き合いしてきました。

秋山 そうしたあいだにも、社内の者が本国のタイメックス社との交渉を続け、ようやく「8LAP」の別注にGOサインが出て。真っ先に、陳内さんに報告へいきました。

陳内 そうして今回、シルバーベゼルを採用した90年代の「8LAP」をベースに、別注を製作することになったんです。

左: “DOORS 20th”別注【IRONMAN® 8LAP 90s】
中央2色: 2019年12月発売【Exclusive ATLANTIS 100】
右: 2021年7月発売【Exclusive IRONMAN® クラシック30】

— 2013年のインライン復刻のときも、同じようにシルバーベゼルのモデルがラインナップされていますよね。初代「8LAP」と同じくらい代表的なカラーリングですが、2022年の復刻のときはラインナップされなかった。それはどうしてですか?

秋山 2022年の復刻のときは、とにかくオリジナルモデルを忠実に再現することに決まったんです。たしかにシルバーベゼルの90年代モデルも「8LAP」の代表格ですが、本当のオリジナルと呼べるのは、やはり86年モデルですから。ただ、シルバーベゼルのモデルの復刻を希望する声が相当数あったのも事実です。

 僕もそのひとりで。2013年のインライン復刻の際にシルバーベゼルのモデルを買い逃していたので、2022年の復刻にラインナップされないと知って少し残念でした・・・。だから、今回ドアーズさんが復刻別注してくれたのは、ファンとしてすごくありがたいなって。

陳内 そういう方が1000人くらいいてくれたらいいんですけど・・・(笑)

「90年代モデルが、もし86年に存在していたら」

秋山 今回の別注企画の話がスタートしたのは、2022年のインライン復刻の企画が動き出した2020年秋頃でしたね。

— 悲願の別注だったということは、その頃までに、陳内さんのなかではかなり明確なデザインイメージなどもできあがっていたのでしょうか?

陳内 2022年のインライン復刻にシルバーベゼルのモデルがなかったので、「なら、うちがやるしかないな」と、即決でした。自分が初代「8LAP」と同じ86年生まれなのもあって、個人的な思い入れも強くて。

— なるほど。即決だったとはいえ、デザインの細部にはかなりこだわられていますよね。

陳内 はい。ディテールは慎重に検討しました。おおまかに話すと、「90年代に発売されたシルバーベゼルモデルが、もし86年にリリースされていたら・・・」という架空の設定をコンセプトに、ディテールやカラーリングを組んでいったかたちです。

秋山 印象的なのは、フェイスのロゴやライン部分に水色が使われていることですよね。

陳内 シルバーベゼルのモデルが86年に登場していたら、きっと、初代モデルに用いられていたのと同じ水色のラインが入っただろうなと。

秋山 当時のデザイナーに独自インタビューをしたり、当時の資料を見返したりしていくなかでとくに面白く感じたのも、その配色でした。

陳内 そもそもオレンジが差し色のはずなのに、さらに水色を足している、という。

秋山 アメリカ的な感覚ですよね。違和感がある配色のはずなのに、時計全体として見ると不思議とまとまりがある。だから、別注として単純に色替えすることは可能ですし、ほんの2本のラインですが、それがモノとして収まりのいいものになるかどうかは、やはりセンスが問われるところだと思います。

 そういう意味では、今回の復刻別注はものすごく完成度が高いですよね。ベルト部分の印字をオレンジにしなかったのも、同じ理由ですか?

陳内 シルバーベゼルの初代モデルのベルトには、グレーで「TIMEX INDIGLO」と印字されていました。でも、86年に発売されていたとしたら、まだインディグロは搭載されていなかったはず。そうすると、初代「8LAP」と同じく「IRONMAN」とグレーで印字するのが自然だろうなと。

左:90年代当時の実際の現物【IRONMAN® 8LAP】
中央:“DOORS 20th”別注【IRONMAN® 8LAP 90s】
右:2013年に復刻された現物【IRONMAN® 8LAP】
裏蓋には「20YEAR ANNIVERSARY URBAN RESEARCH DOORS」と刻印。これも、本国との交渉のすえに実現したデザインだという。あえて目立たない裏蓋に刻印することで、デザイン性を損なわないようにした。
外箱も、今回の別注用にこだわって製作したもの。以前外箱に採用されていたモノグラムデザインをあしらい、20周年ロゴを入れた。外箱まで大事に取っておきたくなる、スペシャルな仕様だ。
右がインラインモデルで左が別注モデル

— “もしも”という空想を発端にしながらも、それをデザインに落とし込むにあたっては、一つひとつ緻密な根拠にのっとってきた。そのバランスがとても面白いですね。

陳内 どんな歴史を通ってきたものを、どんなフィルターを通して表現するか。それは今回の別注にかぎらず、普段から意識していることです。2022年のインライン復刻モデルの、いわば対になるような時計なので、ぜひ並べて眺めてほしいですね。

Tシャツからジャケットまで。幅広いスタイルの“主役”に。

— 「アイアンマン」こそスマートウォッチの始祖である、という話もありましたが、いま“スマート”なものに食傷気味のひとも多いですよね。意識的にSNSから距離を置くひとや、レコードやカセットテープに手を伸ばすひとも。そうした意味でも、今回の復刻別注に、多くのひとが心を動かされそうです。

秋山 お買い上げいただいたら、まず時刻設定ですからね。

— 時刻設定、懐かしい! そんな機会、いまやほとんどありませんもんね(笑)

秋山 遅刻防止のために意図的に5分遅らせるとか、昔はみんなよくやっていましたけど、いまはなにもかもが良くも悪くも均一です。そういう意味で「8LAP」には、ちょっとした工夫や発想を楽しむことができるアソビが、間違いなくあると思います。

— 一方、ファッションピースとしても、いま改めて新鮮に映りますし、その良さを再発見できそうです。

秋山 はい、アクセサリーのひとつとしても、ぜひ楽しんでもらいたいですね。トライアスロン用ということで、初代モデルの発売当初から、自分の好みやステータスを表明する装飾品としても愛されてきましたから。

— 陳内さんは、今季なら、どんなスタイリングを提案したいですか?

陳内 これからの時期なら、半袖のTシャツだったり、とにかくシンプルなスタイルに合わせてもらいたいですね。ベーシックな時計ではありますけど、しっかりインパクトがあるので、「さりげなく」というよりコーディネートの主役として着けてほしいです。

 初代86年モデルのカラーと比べて精悍なイメージなので、スーツスタイルなんかにも合いそうですよね。

陳内 実際、アメリカではそうした合わせ方をしているひとは多いですしね。日本でも、最近はスーツの着方がだいぶカジュアルになってきていると思うので、オンのシーンでも着けてほしい。薄いので、ジャケットやシャツの袖に干渉しませんし。

秋山(葵) いわゆるスポーツウォッチって、ゴツくて重いイメージもありますが、これは着け心地も軽やかで、女性でも着けやすいだろうなと思います。ガーリーなスタイルにも馴染みそうですし、ドレッシーなスタイルのハズしにも。

 ベルトの印字がグレーなのも、女性が着けたときの馴染みのよさにつながっていそうですね。

秋山(葵) オレンジと水色の配色も、やっぱり「アイアンマン」らしくて可愛いです!

— 本日はありがとうございました。陳内さんをはじめ、さまざまなひとの想いや努力が結実した、20周年のタイミングにふさわしい復刻別注だということが窺えました。

陳内 懐かしんで手に取る「アイアンマン」ファンのみなさんにはもちろんですが、初めて手に取る若者世代にも、いまだからこそ新鮮な気分で楽しんでもらえる時計だと思っています。だからこそ、歴史や変遷を含めてきちんと届けられるように、こだわった別注でもある。これをきっかけに、さらにタイメックスや「アイアンマン」に興味を持って深掘りしてもらえるとうれしいです。

TIMEX × URBAN RESEARCH DOORS
20th 別注IRONMAN®️ 8LAP 90s

品番:TW5M57600-DM36
価格:¥ 15,950 (税込)
カラー:SILVER/BLACK

▼予約販売
2023年5月23日(火)〜 ご予約受付中
URBAN RESEARCH ONLINE STORE

▼通常販売
2023年6月23日(金)

【取り扱い店舗】
URBAN RESEARCH DOORS 各店
URBAN RESEARCH Store 各店
URBAN RESEARCH ONLINE STORE

Text/Masahiro Kosaka(CORNELL)

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