外部サイトへ移動します
CULTURE TRIP AUG 07,2019

【循環するチューリッヒ】FREITAGとチューリッヒを巡る旅 #1 デザインとアート

ヨーロッパを代表するの経済都市であり、クリエィティブの中心を担うスイス・チューリッヒ。FREITAG(フライターグ)というプロダクトを通じてURBAN TUBE編集長が10年ぶりにチューリッヒの街を歩いた。さて、スイスにおけるデザインとは。


-6月末、ヨーロッパは異例の暑さにより、その日パリでは40℃を超えたという-

スイス・チューリッヒも例外ではなく、空港の気温掲示では37℃を表示していた。
アジア諸国の夏のような湿気はなくカラッと晴れていたが、強烈な日差しに出迎えられるような形で我々URBAN TUBE編集部一行はチューリッヒ空港に降り立った。

職業柄、様々な国に行くことがあるので、これまで訪れた国は登録して、気温などの違いを見て(〜よりは暑い、〜よりは寒いなど)その日に着る服を選ぶ習慣がある。これをするとなぜか安心する。

さて、今回の旅についてだが、チューリッヒと聞いて「〇〇」と容易に想像できる方はあまりいないだろうと思う。
なので、URBAN TUBEではもはや恒例となった「歴史紐解き」を簡単にさせていただこうと思う。

チューリッヒは成田から直行便で約12時間(今回は13時間かかりました)スイスの中央部に位置する都市である。

チューリッヒ国際空港やチューリッヒ中央駅(Zürich Hauptbahnhof * Zürich HBと略す)は、スイスの玄関口とも言える大規模なターミナルであり、中央駅は1日に2900本あまりの国内電車が行き来し、隣接するドイツ、オーストリア、イタリア、フランスなどの国際列車も多数発着する。

チューリッヒ中央駅は常に多くの人で賑わっている、国籍も実に多様

チューリッヒは実は有名なグローバル都市であり、政治・経済・環境問題・文化的水準はヨーロッパでもトップクラスである。

チューリッヒ市街を望む

スイスはEUに加盟しておらず、非常に強い独自の文化要素を隣国に囲まれた中で、とりわけカルチャーに関して抜きんでた国だ。
その中でも最も有名なのが、皆さんが普段何気なくみる交通サイン(特に空港のサイン)などで使われるフォント(文字の種類)だろう。

Helvetica(ヘルベチカ)というものであり、1957年、スイスにて生まれたフォントである。
究極のシンプルさと汎用性を兼ね備えた、まさに「世界最高の普通」を表現したフォントとも言えるかもしれない。

“普通”としたのは、企業ロゴはもちろん、世界中の空港で使用される「どの国の人が見ても識別しやすく、整列された文字」として現在も世界中のあらゆる場所で目にすることができるからだ。

Helveticaはアルファベットはもちろん、数字も実にシンプルで美しい

Noëとも10年ぶりの再会。スイスのデザイン教育の今を聞く。

今回スイスのデザインにおける考え方などを紐解いていく中で、会いに行くべき人は誰だろうと考えた時に、真っ先に頭に浮かんだのはFREITAGをはじめ、ヨーロッパの様々なクライアントを持つフォトグラファーのNoë Flum氏(以下敬称略)だった。

NoëのZurich Binzにあるオフィスにて

Noëとこうやって会うのは実に10年ぶり。以前はURBAN RESEARCHのコンセプトブックの撮影などもお願いしたことがあるので、どこか懐かしくもあり、少し照れくさいと感じる私を大きい声で快く迎えてくれた。

Noëのオフィスはチューリッヒビンツという少し中心街から離れたエリアにある。東京で例えるならば、天王洲アイルのようなひらけた場所に大きなビルが点在する気持ちの良いエリアだった。

エリアの真ん中には幼稚園があった。おそらくだが、この付近で働く人たちのための幼稚園だろう。

Noëのオフィスがあるビルもわりかし大きめで、いくつかの企業が入っていた(そのビル自体のデザインも、なかなかグッとくるデザインだった)。

シンプルだけれどサメの頭(実はこの小道具をURの撮影で昔使ったのだ)インテリアなどユニークなものが目立つNoëのオフィス。フロアをシェアしている別の企業との間が、壁ではなくガラスなのにまず驚いた。
フロア全体が広々と見えるオープンな環境であり、このガラス越しでプライベートも確保できる。

“いいオフィス”である証拠に、メインテーブルに座ればさっきまでの緊張は何処へやら、すっかりリラックスした気持ちになった。

さて、本題。
スイスでクリエイティブの第一線にいるNoëには聞きたいことがたくさんある。

Noëの作品はシンプルだけど計算された光の使い方とシニカルな表現が込められており、「他とは違う何か」をいつも感じさせてくれる。
そんなNoëにスイスデザインにおける特徴や、「個性」について話を聞いた。

「スイスにはそもそもデザインを学べる学校が多くて、さらにその教育方法にも特徴がある」とNoëは強調する。

「学校ではデザインしたものに点数をつけて誰かと競争させたりはしない。自分でアイデアを考えて、自分が好きなことは何か、表現したいことは何か、デザインで仕事をするにはどうしたらいいか。

スタートラインとしてスイスにおけるデザイン・エデュケーションでは、“自分にしかできない表現”が求められるんだ。一見普通のことをやっているのだけれど、何か自分の個性をうまくその中にスパイスとして表す。それは作品のデザインはもちろんだけど、その(課題)におけるフォーマットそのものに手を加えるとか、与えられたお題に対して正面から見るのではなく、裏側から見て表現をするとか…」

なるほど。
課題やテーマを「それを忠実にこなす」に重きをおくことの多い日本教育とは違い、テーマはあくまでもテーマ。どれを“自分は”どうしたいか、どう受け取るか、どう表現するか。その“過程”がもっとも大切ということか。

NoëがかつてURBAN RESEARCHのコンセプトブックで表現した一枚の写真を見ながらこうも話してくれた。

「“ただ美しく撮るだけ”もとても大切だけど、そこにユーモアがなくてはいけないし、そのユーモアがショックとして見る人の心を掴むんだよね。
美しい整然とした素材にこそ、「パンク」な考え方をうまく忍ばせられるととてもクリエイティブとしては強い表現になる」

写真やアートだけでなく、FREITAGのようにユーモラスな表現でブランドをプロモーションすることもスイスの“究極の普通の中に込められたデザイン・エッジ”だと語る。

ー普通だけど普通じゃないー
これこそがスイスにおけるデザイン学であり、
“Individual”なのである。

そしてNoëが広告に携わってきたスイスを代表する“Individual”なプロダクト「FREITAG(フライターグ)」は20年前からリサイクルという概念に対して「クリエイティブかつ個性的」と位置付けた、オリジナルのバッグブランドをここチューリッヒから展開している。

今では完全にチューリッヒの町の景色の一部に溶け込んで、人々の生活に浸透しているFREITAG。それを手がける人々が働くオフィスへ、まずは行ってみよう。

チューリッヒ市内中心部のHardbrucke (ハードブリュッケ)駅近くにあるFREITAGのフラッグシップショップ・もはや観光名所としても有名

スイスのIndividualを担う、FREITAGへ

今年20周年を迎えるFREITAGは、今となっては世界中にファンがおり、ショップにも様々な国籍の方が「FREITAGの総本山」詣でに訪れていた。

われわれURBAN TUBE 取材班一行は現在FREITAGのヘッドクオーターとファクトリーがあるNOERD(ナード)を目指す。

ここNOERDはFREITAGを筆頭に6つのクリエイティブなマインドを持つ企業と、さらにはそういった流れを組む洗練された小さなスタートアップ企業が集まっている。いわば低層のコミュニティ・オフィスとなっており、朝の出勤時間などは企業の枠を飛び越えカフェテリアでコミュニケーションをしている姿が印象的だった。
(ちなみにNOERDは市内中心部よりバスで15分程度で行ける閑静な住宅エリア)

日本で見るWeWorkのカフェテリアを少し本格的にした感じ
朝の情報交換も大切な時間。みんなでコーヒーを飲む時間をとても大切にしているそう
テラスではFREITAGの創設者、マーカスとダニエルが朝のミーティングをしていました。テラスの屋根にはカラフルなターポリン (幌)

FREITAGのオフィスエリアには、ブランドのアイデンティティとも言える「縦横のグリッド(罫線)」を意識したレイアウトとCIカラーでもあるインダストリアルグリーンでしっかりと統一されている。デザイン好きの端くれとしてはそれだけでもう感嘆の声を上げざるを得ない。

バッグを入れているものと同様の什器を使用し各スタッフのポストボックスとしており、この辺りだけでももうFREITAGの遊びにゴコロに満ちたセンスが感じられる。

オフィスエリアではアーバンリサーチが20周年を迎えた際に特別モデルとして作られた FREITAGのケーキバックの記事も
インダストリアルグリーンと自転車、FREITAGのアイデンティティはスタッフ一人一人に行き渡っている
ミーティング用のディスカッション・パネルは一定間隔に打たれたボルトに綺麗にはめ込めるよう工夫されている。シンプルですがとてもスマートなアイデア
スタッフはバッグを自由に“おためし”的に一定期間借りて使うことができるのもFREITAGらしいフレキシブルなアイデア
有料で、一般の消費者も工場見学ツアーができ、帰りにはオフィス隣接のショップでも購入して帰る見学者も多いとか

ただ単に“かっこいい”や“シンプル”なのではなく、働く人たちのスマートなコミュニケーション、利便性、そう行ったものに特化した結果、無駄なものを削ぎ落とし、かつ遊びココロを取り入れる余裕のあるスペースが生まれているのがわかる。

つまりはこれも究極に普通じゃない、普通。

ううむ。編集長としてはぜひこのアイデアのかけらでもいいから東京に持ち帰りたい。

次回はお待ちかねの工場見学!

こういったユーモラスでウィットに富んだFREITAGのバックはどうやって作られるのか?ファンなら絶対に見ておきたい“生産現場”であるファクトリーに潜入し、細部を余すことなくご紹介いたします!

<INFORMATION>

日本で初めてとなるFREITAGのオンラインショップでの取り扱いがアーバンリサーチの公式オンラインストアで8月9日(金)より開始となります!
ぜひお楽しみに!

https://www.urban-research.jp/FREITAG/

FREITAG Office / Factory NOERD

Binzmühlestrasse 170b, 8050 Zürich, スイス

FREITAG Flagship Store Zurich

Geroldstrasse 17, 8005 Zürich, スイス

PROFILE

齊藤 悟URBAN TUBE編集部 編集長

アーバンリサーチ販売促進部シニアマネージャーとしてアーバンリサーチに勤務。勤続20年目突入。その傍らURBAN TUBE編集部の編集長を務める。
飽き性。とにかく飽き性。
好きなものはタバコとタラコ。

木村 巧Photographer

1993年茨城県生まれ。在学中より、写真家青山裕企氏に師事。春からURT編集部へ。

page top