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CULTURE TRIP APR 17,2019

【雲のまにまに神を見る 出雲】DAY3 はじめまして神様、夏目です。出雲大社〜須佐神社

最終日、出雲の真髄に迫る!?出雲大社から須佐神社まで、出雲の神様と出会い、いよいよこの旅のハイライトを迎える。


3日目。
今日も朝から土砂降りの雨。

「出雲には一般的に知られる〝古墳〟と呼ばれるものではなくて〝四隅突出型墳丘墓(よすみとっしゅつがたふんきゅうぼ)〟っていう巨大なお墓があるらしい」
そう聞いて、出雲弥生の森博物館へ向かうことにした。

出雲の森博物館は、邪馬台国の卑弥呼が生きた弥生時代の巨大な王墓である四隅突出型墳丘墓(方形墳丘墓の四隅が飛び出した特異な形の大型墳丘墓。その突出部に葺石や小石を施すという墳墓形態のこと)を残す国指定史跡〝西谷墳墓群〟に隣接した施設。
まずは西谷墳墓群がある西谷の丘を歩いてみる。

01.墳丘墓が残されている丘から眺める出雲の町並み。
02.「やっぱりお墓は見晴らしのいいところにつくられるのかな」
03.出雲を感じています。

西谷2号墓の内部では、出雲王の埋葬状態の復元模型が浮き上がってくる展示が見られる。
「こわ〜〜」

施設では、古代出雲の歴史をたどりながら、ガラスの勾玉、腕輪などの副葬品をはじめ、馬具や土器、出雲の王の模型や葬儀の様子を復元した巨大ジオラマを見ることができる。

01.大きな出雲の地図
02. 03. 施設の方が丁寧に説明してくれる
04.かわいいジオラマ
05.ガチャガチャで手に入れた土偶
06.ガラスの勾玉。「こんなにきれいな状態で発掘されるなんてすごい」

「古事記や日本書紀に物語として描かれていて、実際にはどうだったのか不確かだったものが、土器や装飾品が発掘されることによって現実とのつじつまがあっていく。その過程がすごくおもしろいなと思った」

出雲弥生の森博物館で購入した勾玉型&四隅墳丘墓型クッキー。

次の目的地へ向かう途中、昨晩おでん屋で出会った女性にすすめてもらった蕎麦屋〝平和そば〟に寄った。

昭和25年から続くお店なのだそう。

夏目くんが「かなり気に入った!」と言っていたのが〝釜揚げ蕎麦〟。
茹でたてのそばを、水洗いせずに蕎麦湯ごと鍋から直接器に入れるのが特徴。
だからあたたかくてビタミンも豊富。
風味を存分に味わうことができるそばだ。
そのまま食べるもよし、つゆを足して好みの味にするもよし。

「うめ〜〜。ふわふわしてて雲みたい。好きな蕎麦湯にそばが浸かってるっていう、夢みたいな食べものだなって思う。不思議」

いざ神話の舞台へ。稲佐の浜から出雲大社へと向かう

午後からは、古くから出雲神話の舞台として伝わる稲佐の浜へ。
古事記にも〝伊那佐之小浜〟という名で登場し、ここで国譲りの話し合いが行われたと書かれている。
旧暦の10月=神無月を出雲では神在月(かみありづき)というが、八百万の神々を最初にお迎えするのがこの場所なのだそう。

稲佐の浜に着くころには、今朝の雨がうそみたいにきれいに晴れて、この3日間で一番のお天気に。

「ほんとに神様が降りてきそう〜」

稲佐の浜にある弁天島には、豊玉毘古命(とよたまひこのみこと)が祀られている。

このあと向かう予定の出雲大社には、本殿奥に素鵞社(そがやしろ)が建っていて、その軒下にはご利益がたくさんある砂があるそうだ。
それをいただくためには、この稲佐の浜の砂を持っていかなければいけない、というルールがあるらしい。

弁天島の神様に挨拶をして、砂をいただく。

「指についた砂がきらきらしてる」

そしていよいよ、出雲大社(いづもおおやしろ)へ。

出雲大社は、出雲縁結び空港から車で30分ほどの場所にある。

出雲大社の参道入口・勢溜(せいだまり)の鳥居。

祀られているのは、国譲りのときに大国主大神と天照大御神の間で交わされた約束によって、目に見えない世界の〝むすび〟の御霊力を司られることになった大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)。
大国主大神が縁結びの神様と言われる所以だ。
出雲大社は、出雲が神話の国として知られている大きな理由のひとつで、古事記にも記されるほど創建は古い。

お社への参道は、樹齢400年を越える松並木が続いている。
「御本殿へと続く道は下り坂で、神様に会いにいくんだな〜って、その世界に入り込んでいく感覚があった」

勢溜の大鳥居をくぐってすぐ、参道の右手にある祓井神(はらいどのかみ)に参拝したあと、手水舎で手と口を清め、拝殿へとお参りする。

出雲大社の拝殿では、お賽銭を奉納して、2礼4拍手1礼が基本。

御本殿での参拝を済ませたあとは、本殿奥にある素鵞社へ。

ここで、先ほど稲佐の浜でいただいてきた砂を軒下にある木箱に入れ、素鵞社の御砂をいただく。

社の奥の大きな岩場にそっと触れる。「パワーもらえた感じがした」

初めておとずれた出雲大社は「まず最初のアプローチで下っていくっていうのは衝撃的だった。タイミング的におもしろかったのは、本殿のほうに向かっていくのに、真後ろが太陽で自分の影を追って歩いていく感じだったこと。しかも下っていくから、別の世界に入っていくんだなっていう実感があって、あらためて興味深いなって思った」と夏目くん。

出雲の歴史や伝統文化を学びに民泊・一縁荘へ

境内をぐるりと一周参拝させてもらったあとは、最後の目的地である一縁荘へ。

出雲大社から一縁荘がある出雲市の佐田町までは車で40分ほど。
緑深い閑静な山間にひっそりと現れる一縁荘は、築100年の古民家を今に残す民泊施設だ。

01. 02. 建物は築100年の古民家。
03.窓一面が庭に面している広い縁側。
04.薪でお湯を沸かす五右衛門風呂。実際には薪わりも自分たちで行う。今回はエアー入浴。
05.今ではとても珍しいタイル張りの台所。
06.食卓の中心にある囲炉裏。

2階の和室からは、かわいい椿の花や須佐の町が望める。
ここはもともと〝蚕さん〟を育てていた部屋だそう。

この一縁荘を営む横山さんは、実は出雲初心者ばかりのわたしたちに今回いろいろとアドバイスをくれたりとても親切にしてくれた方。
一縁荘を拠点として、歴史や伝統文化を伝えている。
長期の休みには地元の小学生が、田舎暮らしの体験にくるらしい。
横山さん曰く、ここではまるで星が降るように見えるそうだ。

「めちゃくちゃゆったりできる。今度は泊まりにきたい」

横山さんに案内してもらい、一縁荘のちかくにある須佐神社へ。
須佐神社は、須佐川のほとりにある出雲国風土記にも登場する古社だ。
日本神話の中で、ヤマタノオロチを退治した英雄とされる須佐之男命(すさのおのみこと)が祀られている。

全国には須佐之男命ゆかりの神社が数多くあるが、須佐之男命の御魂が祀られている唯一の神社がここ。
ほかに妻の稲田比売命(いなたひめのみこと)、その両親・足摩槌命(あしなずちのみこと)、手摩槌命(てなづちのみこと)が祀られている。

本殿は1861年建築の大社造り。県の文化財に指定されている。

出雲国風土記には、須佐之男命がこのあたりで最後の開拓をし「この国は小さいが、国としてはよいところだ」と言って〝須佐〟をこの土地の名前としてつけ、自分の御魂を鎮めたと記されている。

ここでもきちんとお清めしてから参拝。

社殿の後ろには、樹齢1300年と言われる大きな杉がそびえている。
〝大杉さん〟と呼ばれ親しまれているそう。

伺ったのは2月だったのであいにく参列はできなかったけれど、毎年4月18日には、本殿に祀られている須佐之男命が摂社天照社に祭られている天照大神のもとまで渡御する朝覲祭(ちょうきんさい)という神事が行われるそうだ。

須佐神社周辺には、伝説のように語り継がれる七不思議あるそうで、いくつか教えてもらった。

神楽殿の横にある塩の井は、須佐之男命がこの水を汲んでこの地を清めたと言われる井戸。
稲佐の浜とつながっているそう。

「すこ〜ししょっぱい気がする」

天照社の東側にある小さな桜の木。
昔、隠岐の国に不作が続いた原因として、出雲の須佐大宮の桜の木の影が原因だとして切られたのだそう。

今でも桜の木はあるけれど、大きくなることなく影が残っているのだとか。

「正直、出雲大社は緊張するっていうか、やっぱり強いなって思った。スサノオのほうが物語ではもっと破天荒な描かれ方をしてるし、かなりやさしくて間口が広くて、自然な雰囲気を須佐神社では感じられた。父ちゃんぽいっていうか、懐が深い感じがあったな」

そのあと、横山さんに教えてもらった立久恵峡(たちくえきょう)に寄り、橋を渡ってみた。

あっという間に帰りの飛行機の時間が近づいて、夏目くんの友だちおすすめの羽根屋で最後の出雲蕎麦を食べ、せわしなく空港へと向かった。

帰りに、夏目くんにこの3日間を振り返ってもらった。
「常々考えてたことがいろいろつながった3日間だった。3か月分くらいの濃さがあったな。俺はひとが作ったものが好きなのね。神話とか神様とかも、ひとが作ったものだと思って見てる。ノンフィクションをうまく混ぜ込んだフィクションというか。出雲で暮らすひとたちが、そういう神話として描かれたストーリーを自分たちの現実の物語にしていくっていうこと、そうすることがちゃんと生活になっているっていうのも、地元のひとと話すことでわかってよかった。音楽もきっとそうだと思う。ストーリーを紡いでいくことの大切さ、大きい力を持ってるっていうのを感じられた」

出雲はとっても不思議な場所で、わたしはこの3日間ずっと、どんな場所なんだろうって思いながら過ごした。
ながく曇り空が続いて、ときどき雲の切れ間からすごくきれいに光が射して、その景色にうれしくなって、すこし高揚するみたいな感情の動きに、なんとな〜く出雲を感じたりした。
でもやっぱりまだ全然わからないから、またいつか、できれば神在月のころに旅したいなと思う。
そのときには、もっとたくさん地元のひとの話が聞きたい。

余談ですが、出雲から帰ってきてから、相変わらず晴れた日が好きだけど、雨の日も悪くないなって思うようになりました。

次回、出雲最終話!
夏目くん本人によるエッセイです。お楽しみに。

▼着用アイテム

TWO NEO MAX BLACK WIDE CARDIGAN (COL:BLK)
商品番号:TN1901-BSM94
¥26,000 (税8% ¥28,080)

Champion×Sonny Label 別注ラウンドテール刺繍スウェットシャツ (COL:RED)
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¥5,900 (税8% ¥6,372)

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商品番号:TN1902-BSM94
¥24,000 (税8% ¥25,920)

夏目知幸

Instagram

natsumetomoyuki
s_catsarehere

ロックバンド・シャムキャッツのボーカル&ギター。
アルバム『Virgin Graffiti』発売中。

Tour“Virgin Graffiti”

名古屋公演
日程:4月18日(木)
会場:CLUB QUATTRO
OPEN/START:18:30/19:30

東京公演
日程:4月21日(日)
会場:渋谷 TSUTAYA O-EAST
OPEN/START:17:00/18:00

沖縄公演
日程:5月24日(金)
会場:output
OPEN/START:19:00/19:30

ASIA Tour“Virgin Graffiti”

5月17日(金) 香港 MOM livehouse
5月18日(土) クアラルンプール Live Fact
5月19日(日) バンコク De Commune
5月26日(日) 台北 THE WALL

出雲大社

〒699-0701 島根県出雲市大社町杵築東195

TEL : 0853-53-3100 (8:30~16:30)

FAX : 0853-53-2515

E-mail : joho@izumooyashiro.or.jp

一縁荘

〒693-0503 島根県出雲市佐田町須佐574-1

TEL : 0853-84-0919

PROFILE

松本 昇子エディター / ライター

愛知県出身。雑誌やカタログ、書籍、WEBサイトなどの編集、執筆、ときどきコピーライティングも手がける。

木村 巧Photographer

1993年茨城県生まれ。在学中より、写真家青山裕企氏に師事。春からURT編集部へ。

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