【墨田区に、すもう】04 墨田区ワンダーウォール <墨田区に、相撲>
<墨田区に、すもう>つまりは<墨田区には、相撲やその他いろいろ文化がある>。街中にお相撲さんたちが普通に歩いている墨田区ならではの光景と、銭湯や酎ハイなどの地元カルチャーまとめ。
<墨田区ワンダーウォール>
墨田区の細部をひょっこり覗く<墨田区ワンダーウォール>も今回が最終回。
まずは動画で“動く墨田区”をお楽しみください。美しきスカイツリーからものまねプロ野球まで様々な墨田区をぎゅっと濃縮しています!
「ものづくり」が盛んな墨田区には、ずっと受け継がれてきた伝統的ものから、新しいものまでありとあらゆるカルチャーが存在します。
うすはりガラスの工場や友禅工房、炭酸工場etc.面白いものはたくさんあるのですが、今回はその中でも<墨田区に遊びにきたらすぐ体験できる>3つのカルチャーをご紹介。
その1、墨田区に、相撲
「墨田区といえば」まず思い浮かぶのは<相撲>という人は多い。
両国国技館のある両国駅には、大相撲の起源となった勧進相撲を行った回向院、そしてもちろん相撲部屋など、直接相撲に関わるものがたくさんある。(今回の取材予定日と本場所時期が重なったっために部屋取材は断念。また別の機会にぜひ取材に行きたい)
“スモジョ”なんて呼び名の相撲好きの女性も増え、本場所中の両国駅付近は老若男女が街に溢れかえる。また外国人専用のユースホステルもあり、人気の浅草にも近くて都内どこに出るにも便利な場所柄から外国人観光客も多く、今や両国は「世界的観光地」としても有名になった。
もちろん国技館で迫力のある試合を見るのもいいのだけど、両国駅周りにある相撲にまつわるものを探すのも楽しい。
駅近くには複数の力士像や、力士たちの手形をかたどったモニュメントがあったり、隅田川には相撲をモチーフにした欄干があったり。
国技館付近のお店にはオリジナルの相撲モチーフお菓子や手ぬぐいなどのグッズを売るお店も多い。
もちろん生の力士に出逢える確率だって高い!
筆者が最初に住んだ墨田区はこの両国だった。
引っ越し初日からお相撲さんとすれ違い、コンビニに行けば共に行列に並び、テレビで見ていたお相撲さんたちの生の迫力にドキドキ(あまりにも毎日見かけるので、いつの間にかそれが当たり前になったけれど)。
両国駅付近にはちゃんこを始め美味しいご飯屋さんもたくさんあるので、力士にまつわるのんびり散歩、オススメです。
その2、墨田区の銭湯で“いい湯だな”
墨田区は銭湯が多い。
と言っても23区中、数の多さで言えば上位というわけではないので、どちらかと言えば<銭湯好きが多い>というべきか。
墨田区の友人たちと遊ぶ時、「その前に風呂入ってく?」と誘われることがある。温泉に比べればぐっと気軽とはいえ、普通なら「よし、今日は疲れを取るために銭湯にでも行くか」とその日の最終目的になることが多い。
でも墨田区に長く住む友人たちは、時間を問わず暮らしの中でふらりと入る。
“別に毎回髪の毛まで洗う必要もなく、体を洗ってさっと10分20分ほどつかるだけなら面倒なこともないし。しかもそのあとの遊ぶパワーがチャージできるんだよ!”というのも教えてもらった。
最初はちょっとしたカルチャーショックだったけれど一度その“ふらり入浴”の魅力を知ると、確かに“銭湯”のふた文字を見かけるとうずうずして入りたくなってしまうようになる。
ほとんどの銭湯ではタオルレンタルもあるし、入りたくなった時に手ぶらでいけるのもいい。
銭湯好きの友人曰く、銭湯の良さは
「足を伸ばしたその先にもお湯があるのがいい」。
ああ、確かに家のお風呂でもリラックスはできるけれど、足を投げ出してその先にお湯があるっていうのはさらに上をゆく贅沢だ。(ちなみに家の風呂よりも湯量の分水圧があるので、実際にむくみなども取れやすくなるそう)
ちなみに都内の銭湯の入浴料金は一律。年に一度改定されるのだが2018年度は大人(12歳以上)460円。ワンコインの癒しというのも嬉しい限り。
オリジナルのタオルなどを販売している湯もあるので、銭湯好きならつい集めたくなる。
各湯の浴場にも個性があり、渋〜いのもあればスーパー銭湯並みの施設もあったり、デザイン性の高い湯もある。墨田区に遊びに来たらぜひ“ふらり途中入浴の旅”なんかも楽しんでいただきたい。
何より素敵なのが、貸切の福祉型家族風呂があること。介助が必要な人も広い浴室を貸し切れるのだ。しかも香り高いヒノキ風呂!
祖父を家族で自宅介護していたことがあるが、自宅のお風呂ではやはり介助も大変だった。介助される側もする側も、ここならお互いにリラックスできるのがとても良い。
さらにトイレもバリアフリーだし、一般浴場の方も段差が少ないのでお年寄りも安心して入ることができるのだ。
さらにさらに、ここはタトゥの人もOK。
まだまだファッションタトゥの認知度が低い日本ではご存知のようにタトゥNGの温泉は多い。ゆえに若い世代や外国人など温泉に入ることを諦めてしまう人が多かった。もちろんNGの場所があっても良いと思うが、若者が笑顔で浸かれる湯があってもいい。だからこれはなんとも嬉しい。
ほらね、子供からお年寄り、若者にまで優しい銭湯なのである。
と、昔も今も癒しの場として存在してくれる銭湯だが、実は全国的に減少しつつある。その理由の一つが「後継者不足」なんだそう。
ただ高齢化で運営が難しくなったオーナーの代わりに運営をする若い世代の人もあわられるなど、なんとか次世代につなげる光は灯り続けている。それはとても頼もしい光だ。
さて、御谷湯は嬉しいことに若い3代目がいる。
バンド<片想い>のボーカルであり、御谷湯の若旦那でもある片岡シンさんに銭湯内を案内してもらった。
数々の銭湯を手がける建築家・今井健太郎さんが設計した浴場は、4階は洞窟をイメージした黒が基調のシックな作り、5階は天井が高く光も美しく差し込む作りになっていて、全体に漂う和モダンの雰囲気が心地よい。
「御谷湯は天然の黒湯が湧いているんです。ですのでもちろん温泉掛け流しです!
塩素で消毒してお湯を入れ替えない銭湯もあるのですが、うちでは(天然温泉を使わない部分の)お湯も毎日入れ替えているんです。確かに水道代はかかるけれど塩素で消毒すると匂いも気になりますし」
知らない人同士が裸の付き合いをする場だからこそ、清潔な場であることは嬉しい。入る方は「わーいひろーい! きれいで気持ちいい!」とつぶやくだけだが、そういえば広い銭湯を隅々まで清掃するのはどんなに大変なんだろう。(ちなみに片岡さんは、ライブがある日も朝清掃をしてから会場に向かうそうだ)。
清潔で気持ちよい風呂に出会えたら心の中で「ありがとう」のつぶやきも追加したい、と思った。
5階には、銭湯と言えばおなじみのペンキ絵があった。
「つい先日、5階の絵を変えたばかりなんですよ! 毎回葛飾北斎の富嶽三十六景をモチーフにしているんですが、今回は甲州犬目峠を描いていただきました」
ペンキ絵はおおよそ3年周期で描き換えてもらうんだとか。
富士山をはじめとした壁一面のペンキ絵は銭湯にあって当たり前、と思っていたけれど実は専門の絵師さんはもう日本にほとんどいないんだそう。ここを描いた丸山清人さんもその貴重な一人。
”ダイナミックに描かれた富士山を眺めながら湯に浸かる”のは、だんだんと贅沢な時間になっていくのかもしれない。
ちなみに墨田区には東京スカイツリーを見ながら入れる銭湯が何箇所かあるのだが、ここもそのうちの一つ。
半露天風呂からスカイツリーをぼんやり見ていたら、今日初めてここにきたというお客さんが「あら! スカイツリーが見られるのね。なんだかラッキーだわ」と言っていた。そう言われると、すっきりした青空にくっきり浮かぶスカイツリーはなんだか幸運の印のように思える。
御谷湯には、高音、中音、低音の3つの温度に分かれた温泉風呂のほか、半露天風呂、5階には薬湯、4階には不感温温泉という湯がある。
中でもこの不感温温泉が人気だそう。人間の体温に近い約35〜36度に設定されているそうだ。
「江戸の湯といえば熱い、というイメージが強いので、最初は反対されたんです。でも実際に作ってみたらすごく人気が出ました。体温と同じ温度なので長く入れますし、お湯と体の境目がなくなるような不思議な感覚になるので“精神と時の湯”なんて呼ぶ人も」
この不感温温泉に入ったスタッフに後で感想を聞くと、「本当に気持ち良すぎて動けなくなった」そうだ。この日は女性は5階だったので私は薬湯に浸かったが、ここもやや低温でハーブの香りがとてもよく(ハーブ他アロエなど内容は日替わり)これまた気持ち良すぎて動けなくなった。
そういえば今回撮影自体は営業時間前にさせていただいたので、その後“一番風呂”に入りに行こう、とワクワクしながらオープン20分前に再び御谷湯さんを再訪。
だがすでに行列ができていて、残念ながら一番風呂ならず!
「30分以上前から待っている人もいますよ。最高1日に750人来たこともあります。普段は500人くらいですかね。ゆっくり入っていってほしいから1回にロッカーの数以上の人は入れないんです。
ご近所の方ももちろん多いですが、最近は外国人の方もすごく増えて、こちらの英語が上達しました(笑)ただロッカー類がすべて漢数字で書いてあるので、読めない人が多くて」と、人気湯だからこその誤算もあったそうだ。
後継者や資源問題などで、“銭湯なんて当たり前にある”が、もしかしたら近い将来当たり前にならなくなるかもしれない。でも片岡さんや他の経営者たちの努力もあって、今はまだ“日本の文化”として身近に存在してくれている。
そのことに感謝をしつつ、とりあえず銭湯を見かけたら、後先考えずに飛び込んでみるのも墨田区のお楽しみの一つ。その後のビールや酎ハイもググッと美味しくなりますよ!
というわけで、この後は風呂上がりに飲みたい墨田区の酎ハイについて。
ぐびっとな!
その3、墨田区で元祖酎ハイ飲もう!
「酎ハイ」つまり焼酎ハイボールはコンビニなどでも売られているほどメジャーなアルコール飲料になっているが、その発祥は墨田区と言われている。
それも、<受け継ぐもの>で紹介した酒場”はりや”のある鐘ヶ淵、だそうだ。
コンビニやチェーンの居酒屋などで売っているものは焼酎+炭酸+甘味料か香料のものが多いが、元祖酎ハイは「ハイボール(ウイスキー+炭酸)が高くて飲めない人のために、安価な焼酎を代用して、ウィスキーを飲んでる気分が味わえるようにちょっと色をつけた」ものだそうだ。
作り方も酒場がそれぞれ酒屋さんに頼んで“その店オリジナルの酎ハイの素(アルコール入り)”を作ってもらい、それを炭酸で割ったもの。
だからお店によって少し甘みがあったり、香りもそれぞれ異なる。
<はりや>のお客さんに鐘ヶ淵の「酎ハイ街道」なるものを教えてもらった。
発祥の地ということもあり、東武線の鐘ヶ淵駅から京成線の八広駅までの間にある酒場では、大抵どこもオリジナルの“酎ハイ”を扱う。
仕事柄国内外のレストランやパブなど様々なお店に行ったが、「酒のうまい店は飯もうまい」のは世界共通のように思う。だからもれなく酎ハイ街道にも名店と呼ばれる酒場が多い。
飲んべえたちはその日の自分の気分ぴったりの一杯を求めて、その道すがらの店々に立ち寄るそうだ。なるほどそれはまさしく“街道”の名にふさわしい。しかもこの辺りの酎ハイは300〜400円程度の価格が多い。はしご酒にもぴったりだ。
墨田区特集で何度か触れたけれど、おしゃれな居酒屋とは段違いのアルコールの濃さも特徴だったりするので飲み過ぎにはご注意を。
ただすっきりとした飲み口と、美味しいおつまみの組み合わせはやっぱり飲み過ぎてしまうのは仕方なし。
そんな言い訳をしながら、今日も飲んべえたちは「酎ハイ街道」を目指すのだった。
と、駆け足的な紹介になってしまいましたが、とりあえず墨田区に来たらぜひ体験してほしいことばかり。
ちなみに連載タイトルにしていた<ワンダーウォール>とは、超・意訳すると<未体験ゾーン>。
“ハイテクで最先端な東京”とはちょっと違う雰囲気を楽しめるし、下町人情的な優しさに触れることもできる。こんな東京もあるんだよ、というのを体験していただければこれ幸い。
もちろん今回紹介したのは墨田区のほんの一部でまだまだ楽しいことや面白いこともありますが今月の“墨田区のアーバンチック”はここまで!
いつか「墨田区第2弾!」や「墨田区リターンズ」なんてタイトルでもう一度掘り下げたいと思います。
<次号予告>
さて、次号はちょっと趣向を変えてテーマは「大人の夏休み計画」です。
大人だって遊びたい!はしゃぎたい!走り回りたい!そしてゆっくり休みたい!をテーマにあちこち駆けずり回ります!