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FASHION MAY 03,2023

KEENとURBAN RESEARCH DOORS。
20周年を迎えた両者がコラボに込めたこだわりを聞く

つま先をガードしてくれるサンダルの発明が創業のきっかけであり、かの有名なアップルの創業者のひとり、スティーブ・ジョブスもニューポートを愛用していたという。それを考えると、キーンにシューズのイメージを抱きがちなのも納得。アーバンリサーチ ドアーズでも取り扱ってきた人気銘柄だが、実は、“シューズ以外”も優秀なものが多いことをご存知だろうか。この度、“20”という数字の巡り合わせも相まってアニバーサリーコレクションを製作。キーンのソフトグッズマーチャンダイザー秋元直樹さん、プレスの種田聖子さん、そしてアーバンリサーチ ドアーズバイヤーの宇都宮、プレスの小沼野の対話を通し、プロジェクトの深部に触れる。


モノづくりにおける“本気”はサンダル以外でも

シューレースがつま先まであしらわれた姿が独特なジャスパーに、代名詞ともいえるつま先を守るサンダルのニューポート、足を曲げたときに負担を軽減する蛇腹構造が斬新なブーツのリッジフレックス・・・。キーンが発表してきたシューズの名作を挙げると枚挙に暇がない。その辺りはバイヤーの宇都宮もプレスの小沼野も重々承知。プライベートでもお世話になっているという宇都宮は語る。

「多くのサンダルを試しましたが、結局シャンティに落ち着きました。グリップ力とフィット感が抜群ですよね。かかとがないものは、わりと滑ったりすることもあってストレスを感じる場合がありますが、シャンティには頼もしさしか感じません」

小沼野がキーンの魅力を実感したのはとあるフェス時のこと。

「蓼科にあるタイニーガーデンで行われたイベントで、運営側として参加したときにキーンが活躍してくれました。黒の防水機能がついたモデルでとにかく重宝しましたね。ただ、今は宇都宮が言っていたシャンティも気になっているんです。去年、アーバンリサーチ ドアーズ(以下、ドアーズ)各店で大変好評だったと聞いていますし、今年の夏は購入しようと思っています」

キーンシューズの世界的な評価は非常に高い。それもあってか、やはりイメージとしてはアウトドアシューズブランド。しかし、ウェアや小物も豊富にラインナップされ、しかも、そのひとつひとつが手抜きなしのハイクオリティときている。そんなモノづくりに対するこだわりと新鮮さに感銘を受けたのが宇都宮だ。

「シューズはやはり有名ですが、実はウェア類も負けず劣らずのこだわりがあることを知ってがぜん興味が湧きました。ドアーズでもウェアやバッグを扱い始め、去年はTシャツで別注もさせていただきましたからね。独自に開発した素材を使っていたり、プリントデザインのソースとなりうるネタも豊富。サンダルのイメージを強く持たれている方は、きっと驚かれるのではないでしょうか」

創業者のローリー・ファーストが、友人とセーリングへ出かけた際、友人がつま先に怪我を負ったことからうまれた「サンダルはつま先を守ることができるだろうか?」という疑問からブランドの歩みが始まったキーン。モノづくりの根底にある開発力と創造力、クラフトマンシップは、Tシャツ一枚にも脈々と流れている。「そこはKEENにとってとても大切なところ」と語るのはPRを担当する種田さんだ。

「快適性を保ちながらつま先を守るサンダルはつくれないだろうか、という疑問からキーンのモノづくりは始まっています。そして”発明”されたのが、今私たちが履いているニューポート H2(エイチツー)。オリジナルはレザー素材ですが、これは水陸両用のポリエステル素材です。つま先を守るサンダル、しかもサンダルの快適性にスニーカーの履き心地をミックスしたフットウェアというのはそれまで存在しませんでした。オリジナルなものを製作すること、これを私たちは開発ではなく“発明”と呼んでいるのですが、その発明がキーンの根本を支えています」

たかがTシャツ、されどTシャツ

そして今年、ブランドが誕生してから20年という節目を迎える。ドアーズもまた展開をスタートさせてから今年で20年目。奇しくも両者は、立場は違えど同じ歩調で同じ時を刻んできた。そのアニバーサリーイヤーに製作したのがこのTシャツとバッグである。もちろんそこには、キーンならではのこだわりがギュッと凝縮されているとソフトグッズMDの秋元さん。

「Tシャツでは、地球に与える影響を考慮し、生地にはオーガニックコットンとリサイクルポリエステルをミックスさせたものを使用しています。コットン100%の厚手のTシャツよりベタつきは感じさせないので、フェスやアウトドアシーンにピッタリですよね」

そのスタンスは、ドアーズとしても共感したうちのひとつと話すのは宇都宮。

「サステナブルや環境問題に対しての取り組みは、ドアーズも重要視している部分。そのマインドの共感もまた今回のプロジェクトを後押ししたと思います」

「同じ方向を向いていることが大事だった」と秋元さん。さらに話を続ける。

「プロジェクトをスタートした際、ドアーズさんから“20”の入ったグラフィックを使用できませんか、とのオーダーをいただきました。そこで、本国へも掛け合いこちらのキャンペーンやWEBで使用していたグラフィックを使用することになったんです。これは、うちで今回のためだけに作ったもの。しかも、インラインで使っていませんし、アメリカの方でも使ってない特別なロゴなんですけど、それを使用したことで特別感は増しているのではないでしょうか」
秋元:商品としてはドアーズさん以外には使用していないのですが、ドアーズさんのためにデザインしたのではなく、キャンペーンやWEBでは使用していたものになります!

とはいえ、単純にボディへプリントしただけもどうか、という不安が秋元さんにはあったよう。

「ただプリントしただけだったら、スタッフTみたいになってしまいかねません。そこで、ドアーズさんと話し合うなかで、バイヤーの陳内さんから刺繍の案が出たんです。刺繍にしたら、高級感や特別感も出ますし、胸元へコンパクトなサイズ感で入れたら若い方にも楽しんでもらえるのではないかと」

ただ、そのサイズ感にはかなり神経を使ったとか。

「本当はもう少し小さくしようとも考えたのですが、そうするとキーンのロゴが読めなかったり、ニューポートの字が潰れたりとなかなか着地点を探すのに苦労しました。そして、試行錯誤の結果、このサイズ感に。陳内さんはさらに刺繍の盛り上がり方にもこだわられ、異なる3種類の刺繍を見たいと。その熱意はさすがだなと思いましたね(笑)」

一般的なTシャツ製作よりも多くの時間を費やした一枚。一時は納期に間に合うかどうかの瀬戸際だったが無事に完成へ漕ぎ着けた。その出来栄えを宇都宮も秋元さんも納得の様子。

「結局このバランスが一枚で着たときにちょうどいい。インナーに着たときの見え方も素敵だなって思います。僕らドアーズとしても納得ですし、ウチのアイテムとも相性が良さそう。それは、イメージビジュアルを撮影しているときにも思いました。あと、背面のネック付近にも同色の刺繍でブランドロゴを入れているんですよね。その辺りも注目してほしい部分。実際、刺繍の場所も結構悩みましたよね」。

「最初、バックプリントの案も出てましたよね(笑)。でも、このサイズ感と場所で正解だったと思います。プリントじゃなく刺繍ですから、遠目から見たらとても綺麗なプリントのように見えるんですよ。で、近くで見たら刺繍なんだ、みたいなね」

節々に嬉しいを潜ませたちょうどいいサコッシュ

そして、Tシャツと並ぶ目玉のひとつがバッグである。ベースにしたのは、キーンがこれまでインラインでリリースしていたコレクションの新型。宇都宮もそれを目にしていて、今回はこれまでにないカラーで製作した。

「ありそうでない大きさですよね。どちらもすごく今の大人たちのライフスタイルにハマっていると思います。サコッシュなんかは小さいものから大きいものまでいろいろありますけど、この大きさでポケットもいろいろあって、デザインまで可愛いモデルはそうはなかった。さらに前述したTシャツとカラーリングを揃えていますので、Tシャツ一枚にこのバッグを合わせてもコーディネートが完結しやすいですよね」

しかも、そこに込められたこだわりがハンパなく、話の節々から両者の想いの強さも窺える。キーンの現在のスタンスを端的に表している、と指摘するのは秋元さん。

「ポーチもサコッシュもそうですが、素材は全てうちの工場の残反を採用しています。黄色い部分はリップストップナイロン、黒い部分はまた異なるナイロンですね。残反なので、全てが全て、同じ素材というわけにはいきませんが、見方を変えれば個性とも受け取れますよね」

種田さんは、そのアプローチを他のコレクションを例に説明する。

「リユースのようなニュアンスに近いかもしれませんが、Tシャツでも触れましたが、キーンには“ハーベストコレクション”といって、素材を廃棄する前にハーベストする、要は収穫をして第二の人生を与える、そして新たな目的(リパーパス)を持つものにするっていうコンセプトのもと制作したラインがあるんです。今回コラボしていただいたサコッシュも、ハーベストコレクションです。そんな背景も知っていると、アイテム選びがより楽しくなると思います」

「たしかに」と小沼野も共感を示す。

「こういう風に直接話を聞かないと、どういう由来でこうなったか、そこに込められた想い、背景は伝わらないですし、自分達も商品を販売するにあたってリリースを作ったりもするんですけど、見えない部分を込めたらよりお客さんに伝わるのかなって。自分自身も今回を機に初めて知ったことも多かったので、こういう機会はありがたいですね」

実はこのポーチのサイジング、日本だけでなく本国でも人気なんですと秋元さん。さらに、細部への抜け目ない配慮も気に入ってもらえるポイントだという。

「デイジーチェーンを付帯しているので、カラビナなどをつけながら自分用にカスタマイズも可能。アウトドアシーンだったらライトなどを持ち運ぶのにも便利ですよね。しかも、カード入れの上部にあるタグは、カードが外へ飛び出ないようストッパー的役割も担っている。通常、縫いつける縫製は一度で十分なのですが、さらに繋ぎ目へ糸を落とすことでタブが起き上がらないように工夫が施されているんです」

抜け目ない作りにさすがと宇都宮。

「ライトだったり小銭入れだったりを加えていくオリジナリティの出し方は楽しいですよね。お客様にも提案しやすいですし、バッグひとつで活用の幅もイメージしやすいと思います」

さらに、秋元さんが絶賛するのはサコッシュだ。

「サコッシュは5、6年前ほど前にトレンドの波がきましたけど、一度落ち着きましたよね。それは、ボトルやペットボトルが入らないサイズ感だからというのもあったようなんです。ただ、こちらはフラップ部分を伸ばしストラップで固定させれば容量をアップできるのでペットボトルも入れられます」

「内部もメッシュポケットがふたつに分かれていて、エアポッズだったりリップといった細かいものを仕分けして収納できる。だから、使用時にゴソゴソ探し回らなくても済むと思います」

さらに種田さんは続ける。

「アップデートされた部分としては、ストラップの調整ができるようになったのが個人的には嬉しいポイント。男性、女性によっては、長過ぎたり、または短すぎたりすることで身に付けづらいと感じる場合もある。その部分が改善されていますね。さらに、パーツにはニューポートで使っているパンジーコードを採用し、キーンらしさも出しています」

今回のプロジェクトを経て垣間見える両者の未来

そんなキーンは今年、Togetherness、Originality、Doing good という3つをモットーとする“LIFE IS KEEN”というキャンペーンを行っている。種田さんは語る。

「キーンでは独創性を大切にしていることは先にも述べましたが、災害支援をサポートしていたり、楽しみの部分ではキャンプや音楽フェスまでみんなと一緒に楽しむことを大切にしています。また、製品作りでいえば透明性のあるサプライチェーンやリサイクル素材を積極的に起用するなど、“地球環境の改善や持続可能な社会の実現にとってポジティブな効果を生み出すことも大切にしています。。自分のため、みんなのため、そして、私たちが踏みしめるこの地球のために。一歩ずつでいいから、だれもが生きやすい明日に向かってポジティブなことを一緒にしませんか、というコミュニティをつくりたいと考えていて、、その想いがLIFE IS KEENには込められています。やはりひとりひとりの想いが重なれば、いい方向へと向かう力になると思うので」

それに関して宇都宮も同調する。

「たしかにそうですよね。僕もコンビニなどでコーヒーを購入する際にフタを使用しないなど、日常から小さいことかもしれませんが意識するようにしています」

小沼野も同様だ。

「僕も、ビニール袋は基本的にもらわなかったり、大きいバッグに変えたりなど常々意識していることは多いです。周りでも小さいエコバッグを持っている人は増えてきたように感じますよね。それが、やがては大きなうねりになるのかなと思います」

ドアーズとの取り組みもその一環。その根底にあるのは、地球への配慮と、後世へ遺そうという意志である。「格好いいもいいけど、、」と種田さんは続けます。。

「手に取るもの、身に着けるものが格好いいプラス環境にいいものというのを前提にしたいですよね。ドアーズさんも同じような考えをお持ちのようですし、今回の20周年もそうですけど、今後も一緒にそういう活動もなにかできたらいいですよね」

キーンに足を通すと逃れられなくなる。それはおそらく誰もがよく知るところ。ただ、ブランドの根底を垣間見るのであれば、そのほかのアイテムを見ることでより信憑性が増す。改めて、今年の春夏はこちらのアイテムを身につけ多くの仲間や家族たちとレジャーを楽しんではどうだろう。それが、間接的に明るい未来を形成する一助になり得ることを今回の対談で実感した次第。

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Edit & Text/Ryo Kikuchi

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