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FASHION OCT 20,2023

あらゆるフィールドの垣根を飛び越える
NEATの新定番にスポットを当てた別注作が調子イイ

NEATの根底にあるのはトラディショナルへの敬意である。その矜持に倣った素材使いの妙やディテールは、ファンならずとも多くの服好きを唸らせてきた。そんな中、2021年秋冬コレクションにて発表したモデルに多くの目が集中。POLARTEC®️ POWER GRIDをお馴染みのスタンダードフィットスラックスへ落とし込んだ一本は、まさにクラシカルでありながらイノベーティブ。釣り人でもあるURBAN RESEARCH BUYERS SELECT(URBS)バイヤー、阿部も反応し別注で取り上げることとなった。今回は、その経緯やきっかけ、魅力に、各々が考える着こなし方まで、思いの丈をNEATデザイナーの西野さんと余すことなく語り合う。


フィーチャーしたのは、“便利なNEAT”

写真左から、URBS バイヤー 阿部浩、NEAT デザイナー 西野大士氏

昨年、久々の邂逅を遂げたNEATとアーバンリサーチ。スペシャルなファブリックで作られたコレクションは大きな反響を呼び、瞬く間に完売。次なる一手に注目が集まる中、バイヤー阿部が着目したのは、“らしい”方ではなく“あたらしい”方。

「ブランド初期に個人オーダーしたものもそうですし、以前、『かぐれ』で仕入れていたときのモデルも印象深い。やはり思い入れのあるものは惹かれますよね。ただ、ここ数年急激に知名度を高め、昔からNEATを知るファンをも納得させた一本が、心のどこかに引っかかっていました。ブランド名から分かるように、NEATに関してはずっと綺麗なイメージがあった。普段から僕も街でよく穿きますけど、さすがにアウトドアでは難しいだろうと思っていたらこんなものを出してきた。自分はどちらかというとアウトドア派だし、周りにも多かったりするのでこういった一本はすごくありがたいなと」。

昨今ではNEATの秋冬の定番になりつつある、POLARTEC®️ POWER GRIDを使った一本。生み出すきっかけについて西野さんはこう説明する。

「もともと、お客さんの中には“ラクパン”への要望も少なくはなかった。他のショップさんやブランドさんからも「作りませんか?」というオファーはありました。西野が考えるスウェットパンツ、的な・・・。そんな折、POLARTEC®️ POWER GRIDを使った某老舗アウトドアブランドの古着を着ていて、同じ生地でパンツもあったらいいのにな、と思うことがあって。そこから徐々にアウトラインは見えてきましたね。だから、便利なパンツを作りたいという着眼点ではなかったんです」。

その後の反響はご覧の通り。NEATの新機軸となった一本は翌年も話題をさらい、早くもブランドの秋冬の定番としてその名があがるようになる。ただ、製作までの道のりは平坦ではなかったと西野さん。

「この素材を使って3シーズン目を数えますが、これまでスタンダードいうストレートシルエットでしか展開していません。これ、要はニットなんです。ニットをスラックス工場で縫うことなんて、基本的にはまず考えられません。スラックスはある程度生地をピンと張った状態で縫っていくので、伸縮性がありすぎる生地はまっすぐ縫えなかったりなどいろいろとハードルはある。それを、職人さんたちに無理を言ってやってもらっているんです。なので、おいそれと「型を増やしたい」なんて言えないんですよ」。

それだけに、余計今回の別注が意味をなす。“太パン”好きな阿部らしい、絶妙なワイドシルエットに仕上げられているのだ。

「西野さんがおっしゃるようにそう簡単には作れない。それだけにありがたさも感じていますし、ついに、という高揚感もあります。やっぱりワイド好きとしてはね(笑)」。

それを聞いて西野さんも「(阿部)ヒロシくんは釣りをやるからそのときにめちゃくちゃ便利だと思うよ」と応える。さらに阿部は続ける。

「間違い無いですね(笑)。普段、釣りで着ているものは蒸れるけれど、これは蒸れない。めちゃくちゃ助かりますよね。しかも室内でもめっちゃ気持ちいいっていうのを西野さんからお聞きしたんです。秋冬は防寒にばかり目が行きがちですけど、思いのほか屋内で過ごすことも多い。それを考えると室内でも気持ちいい、というのはアドバンテージだと思いますね」。

ワイドだけど野暮ったくない、そのココロは・・・。

「ぶっちゃけ、これ穿いて寝られちゃいますからね。それほどラク。だからキャンプでも、出張時でも、旅先でも、活躍の場は広い」と西野さん。ディテール部分においても別注ならではなポイントが見てとれるという。

「厳密にいうとオリジンとなっているモデルは、通常のNEATのスタンダードより若干サイズ感が異なるように映るかも分かりません。もちろんパターンは同じですけど、ニットでも縫えるように仕様を変えたりしているので体感は程よいゆとりのあるジャスト。だから、別注も普通のワイドシルエットと比べると思っている以上にもたつきは感じないかもしれません」。

ほかにも、別注ならではの意匠がそこかしこに。西野さんは続ける。

「ニートの普通のワイドパンツでしたら、ヒップポケットのボタンは付いていないんです。だけど、ニットの場合は穿いていくうちにモノなどを入れる都合で徐々に垂れていき、お尻が低く見えてしまう。それもあり、ボタンを付けています。あとは、マーベルトもないですし、フロントの持ち出しもない。チノパンのようにボタンホールが開いている訳でもありません」。

さらに、「もっとも大きい」と西野さんが力を込める部分がある。

「やっぱり一番のポイントはピンタックですね。やはり皆さん、普段穿かれるものなら洗濯機でガンガン洗いたいじゃないですか。ですが、通常のスラックスのセンタークリースは、折っているだけなのでどうしてもすぐにとれてしまう。スラックスの要素が一番出るところだと思うので、ここはもう絶対にとれないようにしたい。だからつまみました。後ろもつまんでいるので、スラックス感がいつでも出るよう設計していますね」。

洗濯機でガシガシ洗えて、なんなら乾燥機をあててもOK。さらにラフに扱ったとしてもクリースは元のまま。これほど、頼もしい一本はない。実は、西野さんも最近の休日はもっぱらこれで過ごしているという。さらに、阿部はとある部分において凄みを感じるという。

「ブランドがスタートして10年が経とうとしていますよね。固定客はもちろん、ファンと言って憚らないマニアもいる。中にはNEAT狂ともとれる熱中度の方も。となれば、その中にはこのブランドはこうあるべき、こうでないとといった偏見や固定観念に縛られるケースも少なくありません。でも、そんな方すらもPOLARTEC®️ POWER GRIDのスラックスを気に入っている。そこがNEAT、しいては西野さんのすごいところだと思います」。

それについて西野さんは笑顔を浮かべつつ、今回の別注の意義についても触れる。

「NEATが好きと言ってくださるお客さんの中には、ずっとワイドを穿いていますという方がわりと多くいらっしゃいます。スタンダードが好き、テーパードが好きという方ももちろんいらっしゃいますけど、ワイドが好きという方はワイド以外穿かないケースが多い。だから、この別注は待望の一本かもしれませんね」。

多様性を湛えた別注の素敵な着こなしとは?

素材やシルエットの妙は今回の別注のキモである。ただ、これらを見て「おっ!」と思われた方は正真正銘のNEATニスタ。西野さんは語る。

「過去2シーズンは、POLARTEC®️ POWER GRIDのスラックスはブラックしか展開していなかったんです。それを今回は、初めてグレーを採用しました。そのカラーパレットは、スラックスと共に製作したキャップにも取り入れています。前回同様、僕がよく被っているアイテムがベースになっていて、別注スラックスと同じ生地でこの色味ですから、便利ですし合わせやすいと思いますよ」。

そんな帽子も含め、おふたりにはこの一本をどのように自分なら着こなすか考えていただいた。披露してもらったコーディネートは、各々のライフスタイルや価値観、嗜好性が随所に垣間見えて実に面白い。西野さんの着こなしがこちらである。

「僕が最初に別注のオリジンとなるスラックスを作ったときは、トップスに着想の原点となった某世界的アウトドアブランドの古着を着て、ウールの洒落たコートを羽織り、シャワーサンダルをつっかけながら出掛けて欲しいなっていう願望があったんです。今回は、もちろんそれでもいいんですけど、このアイテムって見た目はスラックスですけど、アウトドアウェア的にも穿けるのがウリ。要は幅があるんです。なので、キレイ目にもカジュアルにもスポーティーにも足並みを揃えられることを表現したかった」。

合わせたのはフィールドジャケットにスウェットシャツ。西野さんの好きな部類でもある直球的なアメカジアイテムだが、それすらも別注スラックスは受け止める。そこへさらに西野さんはとある仕掛けを施した。

「ガチな軍モノやグレースウェットと、まんまでももちろんイイですけど、より親密度を高めるべくアウターは現代モノで品すら感じさせる色味を選びました。さらに、スウェットはシックなブラウンで。正統派アイテムを選んではいますが、ステレオタイプ的なアプローチではないのでコスプレ感は出にくいと思います」。

しかも、随所にらしさをのぞかせたのもポイントだ。

「ハイネックのインナーで、シャツほどかしこまらず、Tシャツほど抜きすぎないいい塩梅を狙いました。足元はリアルアザラシの毛を使ったヴィンテージブーツ。結局はアメカジやアメトラの王道を採用していますから、足元で存分に遊べます」。

そのさじ加減はさすがとしか言いようがないが、片や阿部は「街スタイルは西野さんにお任せして」と自身の趣味やライフスタイルに寄り添った着こなしを提案する。

「僕はよく釣りをするので、その現場へ向かう際に原宿で友人と待ち合わせをするイメージ。これからの時期、フィッシングは寒さとの闘い。なので、POLARTEC®️ POWER GRIDを使用したボトムスとキャップはとても重宝しそうですよね」。

フィッシング時は、専業メーカーのアイテムももちろんあり。ただ、そこには阿部独自のこだわりがのぞく。

「自分はフィッシング時でも形の良いパンツを穿きたい。街でもフィッシングでも線引きなく考えた方が結果楽だってことに気づきました。となると、双方を行き来できるアイテムが理想型になります。なので、NEATの型で機能素材というのはまさに待望。今回はDAIWA PIER 39のアウターに古着のパーカを合わせました。秋冬のフィッシングともなると、僕の中ではとにかくパーカがマスト。湖上では必ず被ります」。

日本が誇るパンツ専業が近年垣間見せてきた新たな一面。そこに着目しながらブランドのファンたちの意図も汲んだ絶妙なアプローチ。均整のとれたトライアングルを形成する別注の先にあるのは、もうあらゆる喜びでしかない。その高揚感は、寒さで外出に二の足を踏んでしまいそうなこれからの時期に頼もしい後ろ盾となってくれるに違いない。

【発売日】
2023年10月27日(金) 12:00
URBAN RESEARCH ONLINE STOREにて発売

※ システムの都合上、商品の販売開始時間が前後する場合がございます。

editor / writer 菊地 亮

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