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LIFE STYLE&BEAUTY DEC 24,2020

<SDR通信Plus③>ファッションがつなぐ、優しいツール“commpost”

不定期連載<SRD通信Plus>第3回目のテーマは廃棄衣料問題と、それに関わるアーバンリサーチの取り組みをご紹介します。


株式会社アーバンリサーチ(以下、UR社)は、現在SDGs(持続可能な開発目標)に関連する取り組みを積極的に推進しております。その取り組み内容の紹介の場として始まった社内報<SDR通信>。
本来ならお見せすることのない社内報ですが、その中から皆様に広く知っていただきたい内容を、メディアサイト独自目線を加えた記事<SDR通信Plus>として不定期連載しています。

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※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで取材を行っております。

テーマ3「廃棄衣料とcommpost(コンポスト)」

限りある地球の資源のために何ができるのだろう。

現在、持続可能な世界を目指すSDGsを含め、全世界あげてのエコロジー的取り組みが始まっています。個人でも使い捨てのものを減らしたり、環境に優しい洗剤や素材を選んだり。その人それぞれの「できること」を始める人は多いのではないでしょうか。

そしてより大きい存在である「企業」にも課せられた使命があります。地球に優しい素材を採用したり、リサイクルを試みたり。また様々な人が働き、生活できる世界であるべく、身体障害者のインクルージョンも求められています。

※インクルージョン:従業員一人ひとりの違いや価値を認め、それぞれの経験や能力、考え方を生かすことのできる環境を提供する意。

UR社では、それに加えてアパレル会社全体に関わる「廃棄衣料問題」にも取り組んでいます。今回はこの「廃棄衣料」に関わるプロジェクトをご紹介したいと思います。

<廃棄衣料>、つまり捨てられてしまう日本の衣料品は年間100万トンにもなると言われています。UR社の廃棄衣料は汚損や不良等により販売できない商品のみですが、せっかく誕生したお洋服たちが処分されてしまうことも悲しいですし、それらを焼却するのにもコストがかかったり、また地球環境への影響が懸念されています。

UR社がこの問題の解決策として選んだのは「廃棄衣料をアップサイクルして新しいものを生み出す」ことです。色で分別した洋服を新たな素材に加工し、それを使って新たなものを生み出すサステイナブルマテリアル・プロダクトブランドが「commpost」です。

異なる素材や品質が混合していて、なかなか素材分別が簡単ではない衣料品のアップサイクル。そこで廃棄繊維を“色”で分け、付加価値のある素材にリサイクルする研究を行う「Colour Recycle Network」との協業により、新素材と新製品を研究開発しました。

こちらがその「commpost」。

第7回環境省グッドライフアワード(2019年12月)で、実行委員会特別賞「環境と福祉賞」をいただきました。

最初に登場したのは、様々な大きさや色数がある多目的に使えるバッグです。
アーバンリサーチ ドアーズ 南船場店でcommpost担当のスタッフに聞くと、「室内植物のカバー、ヒバなどのウッドチップ入れなどインテリアにする方、常備薬や体温計などを入れたり、ペンやハサミのステーショナリー立て、おもちゃ箱、脱衣所の脱衣かごなど収納ボックスとして使う方などがいらっしゃいました。基本的にしまい込むのではなく、見える場所で使う収納ボックスとして使用される方が多いですね(南船場店 岡宏樹)。
つまり色々な使い方ができるアイテムとして愛されています。
ちなみにバッグだけでなく、現在はティッシュボックスやiPhoneケースも登場しています。

どのようにしてこのcommpostが生まれたのか。
まずはcommpost誕生に関わったUR社萩原執行役員にその過程を聞きに行きました。

企業としての課題

「2017年ごろ、UR社でもアパレルの廃棄衣料を出しているという問題意識がありました。それと同時に、障害者雇用率制度(2020年12月現在民間企業の法定雇用率は2.2%)への対応を考える時期でもありました。社内でも色々な部署に障害者を採用していましたが、新規出店の加速に伴う障害者の採用義務数の増加に採用数が追いつけない状況となりかけていたのです。この廃棄衣料と障害者雇用を同時に解決できないか。そこで生まれたのが「commpost」です」

縁が繋いだ「commpost」

「この問題についてグリーンダウンプロジェクトの理事に相談したことがあったんです。その時に“みんなで解決しよう”となり、様々な方々と定期的にワーキンググループを行うようになりました」

そのグループの中には大学教授、福祉系コンサルタント、障害者に関わる仕事の方、学生さんなど色々な方が参加し、現在一緒にコンポストを作っていただいている「Colour Recycle Network」やNPO「暮らしづくりネットワーク北芝」との出会いがあったそう。

「commpostで苦心したのは生地の厚さをどうするのか、縫製するときにどうやったら障害者の方などの作業がし易くなるのか、などでした。commpostの生地は厚さがあるので実際にミシンで試して縫ってみて、本当に縫製できるかどうか何度も試しました。何回かミシンの針が折れたこともあります。それをColour Recycle Networkさんと厚さの調整をしながら行いました。
他にもマチの作り方、折り返しの仕方、ちゃんと自立できるのか、強度は十分あるか。ある程度底の厚みも必要だし…そしてどこまでデザイン的に許容できるか。
そうやって北芝さんとColour Recycle Networkさん、UR社が一緒になって、形にしていきました。

デザインに関しても、最初はもっとマチが細いものだったのですが、北芝さんから、“もっと太くしたほうが安定するのでは”とご提案いただいたんです。そういった貴重なご意見を取り入れながら今の形になりました。振り返ってみると大変なこともありましたが、本当に楽しい時間でした。生産に関わる方々もアイデアが形になり、それを誇りに思っていただいたと思います。販売を始めた後も、北芝さんで作業に参加している方たちがアーバンリサーチ ドアーズのお店に並ぶ商品を見に来てくれて、それを見て嬉しかったと報告してくれました。

もちろん企業ですので、ヒットしたり売れ続けないとプロジェクトが終わってしまうこともあります。ですから売り続けないといけない、という気持ちはあります。でも、関わっていただいた方がそれぞれ喜んで、商品に込められたストーリーに共感していただけるお客様がいらして、その気持ちがどんどん外に広がっていくから売っていける。そして作り手はまたそれを誇りに思う。その循環がいいな、嬉しいなと思うんです」

パーパス的な役割を担う、commpost

「今、パーパス(Purpose)という言葉をよく聞きますが、これは企業の社会における存在意義のこと。企業の価値だけでなく、働いている人一人ひとりの存在価値のことでもあります。
“なんのために働くのか”、コンポストに関しては、みんなが納得できる役割があり、働きたいときに働ける仕組み、それで商売が成り立つ。パーパスが色々とちりばめられているんです。これからもっと世の中全体がそうなっていくし、企業も少しずつやっていくことが大切だと思っています。現在弊社だけの廃棄衣料を使用していますが、今後は他社さんの廃棄衣料も取り扱って行きたい。
もしくは海外に向けて「commpost」の仕組み自体を広めていきたいんです。
この取り組みを継続して続けていくためにも、“生活の中に取り入れるとおしゃれになる”そんな製品を作っていきたいと思います」

“commpost”ものづくり担当、NPO法人「暮らしづくりネットワーク北芝」

commpostを実際に作っているのは、大阪箕面市にあるNPO法人「暮らしづくりネットワーク北芝」。北芝さんでは高齢者や障がいを持つ人、妊娠中や子育て中の方が担い手となり、様々なものづくりに取り組んでいらっしゃいます。今回は事務局長野池谷啓介さんとコーディネーターの尼野千絵さんに「ものづくり担当から見たcommpost」について伺いました。

全くの新しいプロダクトとあって、UR社にとっても北芝さんにとっても、ある意味手探りでスタートしたcommpost。
「コンセプトは面白かったけど、一番初めは本当にできるんかな〜と思いました」と当時の正直な気持ちをお話ししてくれた池谷さん。

尼野さんも、「最初の試作の生地は今より0.2mm分厚くて、針も折れるし4人がかりで生地を抑えないと縫えなかったんです(笑)。普通のミシンで縫えるものじゃないとうちでは難しいし…」と当初の苦労点を教えてくださいました。

「でも次の生地は薄くなっていて、形も4回まっすぐ縫うだけになって。これだったらできるかな、と(尼野さん)」

commpostだけでなく様々なものづくりをしている北芝さんでは、いろいろな人が就労体験に参加しています。そのため作業は細分化され、分業制がとられているとか。

「もともと北芝では、近隣企業から受けた仕事として、例えば検品するにしても、ネクタイから紐を抜く人、ビニールに詰める人、シールを貼る人など作業を工程ごとにわけグループ作業をしていたんです。その経験があったのでcommpostも同じように様々な人が作業に参加できるだろう、と確信しました(池谷さん)」。

現在ではお金が発生する作業だけでなく、社会体験や就労体験として、サイズシールを貼ったり、数を数えるなどのボランティア活動に参加する若者や子どももいるんだとか。そうやってその人の得意なこと、できること別にいろいろな種類の仕事が生まれたそうです。

「いろんな人がいろんなタイミングで仕事ができる。これは最終的にプロがちゃんとお店で売ってくれるから、というのもあると思います。売れるなら作る必要性がある、作るんだったらみんなでやろうと。
以前東京のcommpostを扱うお店に行ったことがあるんですが、すごくちゃんと製品について説明してくれて。こそっと“実は作ってるんです”と言ったらすごく喜んでくれました。それにこのプロジェクトは廃棄衣料を分別するところからUR社の社員が関わっているのも良いこと。最初の頃は段ボールの廃棄衣料を必死に仕分けしていたのに、今は足りないくらいになったっていうのもいいよね(池谷さん)」

その後、実際にどんな作業をしているか北芝さんの作業場を拝見させていただきました。当日作業されていたのはcommpostを担当する伴裕子さん。伴さんはcommpostの他、コーヒー豆の焙煎の作業も担当しているそうです。

「前はミシン作業をしていましたが、最近は折り返し作業を担当しています。
ここはいろんな人に出会えるし、作業していると時間が経つのが早くて楽しいんです。おしゃべりしながらだと2時間くらいずっと作業していることも」

折り返しの作業を見せてもらいましたが、ある程度の厚みと硬さのある袋状に縫われたcommpostを、手作業で折り返し!

「手のシワが増えちゃいました(笑)、でも前よりずっと早く折れるようになったので、稼ぐ気で集中すれば結構早く仕上げられます。前にcommpostが置いてある店に行ったこともあるんですが、綺麗に並べてあって、それをみんなが買ってくれたら嬉しいです」。

最後に、commpostを始め、“社会にいいもの”をセレクトしているショップB-MARTさんにもお邪魔させていただきました。

B-MARTでは様々な洋服や雑貨販売のほか、カフェも併設されています。
お店を運営されている、尼野三絵さんと出水利依子さんにもお話を伺いました。

「来店した方はみなさんcommpostを手に取ると“どうやって使うの?”など興味を持ってもらえます。ここ(北芝)で作ってるんですよと言うと“いいですね!”と喜んでもらえます。実際に購入されたお客様に聞くと、グリーン(植物)に使う人が多いですね。ドライフラワーを入れて飾っている人や、他にはカバンとして使っている方や、カバンの中のサブバッグとして使ってる人もいました(尼野さん)」

B-MARTのコンセプトは“社会にいいお買い物”。商品を通してその生産背景を伝えているお店です。
「ここでは生活に馴染むような商品が増えてきています。ここでの取り組みに興味を持っていただいた他地域からの視察の方もよくお見えになっています(出水さん)」

店内を眺めればTシャツやサコッシュなどのファッションアイテムからカトラリーやステーショナリーなど、幅広いラインナップで並んでいました。

「ここでは“こうじゃなきゃいけない”みたいなものはないんです。B-MARTのBは、Back(背景)とBeの意味を込めています。自分らしくありのまま(Be)いられて、そしてその買ったものの背景(Back)がお買い物を通して、社会にいいことにリンクする。そんな気持ちが込められています。だから扱う商品は、ものづくりの背景に関わっている人が見えて、いろんな人の“ちょうどいい”働き方が見えるものが中心。結果、障がいのある方が働く現場の商品も多いんです(尼野さん)」

ちなみにB-MARTでは箕面市のふるさと納税返礼品である特別なカラーのcommpostが販売されています。この箕面限定カラーはドアーズ店舗やアーバンリサーチのオンラインストアでは販売されていないので、気になる方はぜひお店へ。

地域での活動に参加する人たちのアイデアが形になることもあるそうで、コーヒー豆で染めたサコッシュはその一つだそう。他にも常にやりたいこと・アイデアがあるそうで、今後は通販も始める計画だとか。

「commpostみたいにいろんな繋がりと温めたアイデアをつなげて、北芝で色々とできたらいいなと思っています。そしてものづくりで地域貢献ができればいいな(尼野さん)」。

このcommpostはこうやってたくさんの人が関わって出来上がっています。一つ一つは小さなものではありますが、ファッション(衣料)から始まり、たくさんの優しい気持ちをつなぐ商品でもあります。また様々な使い方のできるアイテムでもありますので、ぜひ暮らしの中に取り入れてみてください。

commpostに触れてみたい方はアーバンリサーチ ドアーズ 南船場店へ!

大阪にあるアーバンリサーチ ドアーズ 南船場店では、commpostの生産背景の見学が可能なオープンスペースがあります。興味のある方はぜひお越しください。(詳しくはこちら

また同店ではサコッシュ作りのワークショップ(有料)を随時受付しています。
この機会にcommpostに実際に触れて、このプロダクトをより深く知っていただければと思います。

なお、2020年12月現在、commpostは上記店舗以外にも全国のUR社の店舗(75店舗)で販売されています。

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