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LIFE STYLE&BEAUTY APR 10,2023

『お米の器』で、はじめませんか? 楽しく続ける、サステナブルな新生活。

DOORS LIVING PRODUCTS から、今春デビューした食器ライン“tsùgi”シリーズは、もうチェックしていただけたでしょうか? 『お米の器』と言われても、すぐにはピンとこないかもしれませんが、実はこの器たち、「ライスレジン®️」という、お米由来の国産バイオプラスチックでできているんです。今回は、“tsùgi”誕生の物語とその魅力を、メーカー担当としてご尽力くださった野田さんをお迎えして、アーバンリサーチ ドアーズ(以下ドアーズ)リビングMD 高見との対談形式で、じっくり深掘りしていきます。


世代も業種も異なる二人が、出会ったその日に意気投合!? MD 高見、『お米の器』にひとめぼれ。

左から
清水商事株式会社 テーブルウェア事業部 野田一成さん
新潟県に本社を構える家庭用品総合卸商社「清水商事株式会社」にて、企画から営業までフレキシブルに活躍するテーブルウェア事業のスペシャリスト。3人のお孫さんと過ごす時間が心の癒やし。

アーバンリサーチ ドアーズ リビングMD 高見綾乃
2009年に入社。店舗勤務を経て、リビングMD担当。 休日の週末には、惹かれるお店を探して美味しいものを食べに行ったり、落ち着ける空間に出向くようにしている静かな行動派。コスメも好き。

— さっそくですが、新しいエコ食器ラインとしてリリースされた“tsùgi”シリーズについて、詳しく教えていただけますか?

高見 はい。“tsùgi”シリーズ、最大の特徴は『お米の器』であること。材料には、食用に適さない古米や破砕米といった廃棄されてしまうお米や、休耕田・耕作放棄地を活用して生産した資源米などが原料のバイオマスプラスチック「ライスレジン®」を使用しています。「ライスレジン®」は、お米を最大70%まで混ぜることが可能であることから、石油系プラスチックの含有量を大きく削減できるので、地上の二酸化炭素の増減に影響を与えないカーボンニュートラルな性質を持った特殊素材としても注目されています。野田さんの会社で企画されている食器のブランドに、「ライスレジン®」で作られた、「ほわり」というシリーズがあるのですが、今回はそのプロダクトのドアーズ別注カラーということで、全5型のラインナップを、オリジナルのベージュとグレーの2色で仕上げていただきました。

— お二人は、どこで出会ったのですか?

高見 東京で開催されていた生活雑貨の見本市です。たしか去年の秋ですよね?

野田 弊社がはじめて出展した、「ギフト・ショー」ですね。

高見 2023年はドアーズ20周年という節目の年ということもあり、今後はますますサステナブルな商品企画に力を入れていきたいと思っていて、ブランドの取り組みやお店のコンセプト、お客様のニーズに応えられるような商材を探していたんですね。環境にもやさしい素材で、オリジナルの食器を作りたいという構想はずっとあったんですけど、お米という発想も知識もなくて、最初はバンブーとか、他の素材に目を向けていたんです。

野田 国産のお米を素材として食器を作り、製品として販売しているのは、おそらく弊社が国内初なんじゃないですかね。環境への負担が少ないと言われる「バイオマスプラスチック」の原料としては、トウモロコシや竹もありますが、やはり日本の主食でもあるお米には、強い魅力を感じますよ。うちは本社が米どころ新潟にありますから、そういった意味でも『お米の器』には、並々ならぬ思い入れがありました。お米由来のバイオマスプラスチックという素材自体は、10年前からあるんですよ。最初は玩具、赤ちゃん用のおもちゃなどが製品として作られています。でもね、この「ライスレジン®」を使って食器を作るとなると、食品衛生法など、クリアしなければならない問題が数々あって、本当に難しい・・・。おそらく、これまでもたくさんのメーカーさんが挑戦しているはずなんだけどね。さらに、私のテーブルウェアに関してのこだわりが尋常でないもので(笑)、完成するまでに大変な時間がかかってしまいました。本当は春の「ギフト・ショー」に出展する予定だったんですけど、間に合わなくて秋になったんです。でも、そのおかげで高見さんに見つけていただくことができました!

— 運命の出会いですね!

高見 いや本当に(笑)。日常使いしやすそうなカタチがパッと目に入って、それが『お米の器』だと知ったときの、驚きと感動。この日いちばんテンション上がったんじゃないかな。日本の食文化や暮らしに欠かせない、お米。しかも廃棄されるお米が食器に生まれ変わるなんて、すごく画期的だと思いました。すぐに野田さんのお話を伺い、その取り組みに共感して、お取り扱いをさせていただくことに。そしてこのときから、オリジナルカラーでの展開も可能だと聞いていたので、“tsùgi”につながるイメージがぐぐっと広がりましたね。

ベージュとグレー。「ドアーズ別注カラー」は、この道45年のプロ泣かせ?

— エコな素材で、実用的。それでいてスタイリッシュで、デザイン性にも富んでいる。まさにドアーズにぴったりの器だと思います。別注カラーを展開するにあたって、ブランドとしてこだわったのはどんなポイントですか?

高見 毎日の食卓になじみやすい色合い。というところで、ベージュは絶対! グレーもドアーズリビングプロダクツを作るイメージカラーなので、外せないなと。幅広く使っていただきたいので、メンズっぽくなりすぎないトーンの、かなり絶妙なグレーをオーダーしました。2色ともフツーっぽく見えるんですけど、実はものすごく細かいところにこだわって出していただいた「別注カラー」で、私自身もすごく気に入っています。

野田 テーブルウェアへのアプローチがユニークで、さすがアパレル会社の方だなぁと感心しました。普通は、食器に使うグレーって、上に浮き上がるトーンで仕上げることが多いんですけど、この場合は下に沈む感じのグレーなんですね。本当に、羨ましくなるほど良いグレーで、うちの商品にもグレーはありますけど、いつかこっそり差し替えたいくらい(笑)。それから、泣かされたのはベージュですよ! ベージュはね、弊社の商品を企画するときに私がいちばん実現したかったカラーなんです。でもね、お米を使った食器で白やベージュ系の色を再現するのは一筋縄ではいかないんですね。どれだけ試作を重ねても、表面にお米の線が出てしまう・・・。そんなこんなで、私が一度断念したベージュを、高見さんは「絶対!」と、おっしゃるもんだから、「どうしよう、どうしよう・・・」って、悩みに悩んで、なんとか作った色なんです。

高見 「難しいかも〜」とは、聞いてましたけど(笑)。でも、1回目のサンプルをあげていただいた時点で、かなり理想に近いトーンで仕上げてくださっていたので、「野田さん、さすが!」って、思いましたよ。

野田 いやいや、私はもうすぐ64歳。テーブルウェア業界は45年になりますけど、高見さんと一緒に仕事をして、まだまだ学ぶことは多いと実感していますよ。

高見 私にとっても、野田さんは、いろいろなことを教えてくださる先生のようで、大先輩なのにとても親しみやすい・・・。

野田 親しみやすい、おじさんでしょ!

— あきらめかけていたことが、新たな出会いによって実現する。素敵なお話です!

野田 だから、すっごくうれしいですよ。

はじめての工場見学。MADE IN JAPANの誇りと底力に魅了される!

— ところで、高見さんは、工場見学に行かれたそうですね?

高見 そうなんです。

野田 バイオマスプラスチック「ライスレジン®」を製造している新潟の工場、そしてそれを器に射出(しゃしゅつ)成形してくださっている工場が石川にあります。

高見 そのときの様子を動画にまとめたので、ぜひご覧ください。

— 実際に工場を見学してみて、いかがでしたか?

高見 はじめて目にすることだらけで、とにかく驚いたり、感心することばかりでした。

野田 私も同行していましたが、「えっ、そんなところまで見せちゃって大丈夫?」「えっ、いいの? いいの?」って、ひやひやしながら見守っていました(笑)。普通は、なかなかここまで見せてくれないし、ましてや撮影なんてさせてもらえないですよ。アーバンリサーチさんに対しての信頼もあるでしょうけど、たとえ工程や製造方法がわかったとしても簡単に真似できることではないので、どちらの工場も自分たちの技術にそれだけ自信があるということの裏づけとも言えますよね。

— それぞれどのような工場なのか、もう少し掘り下げて話を聞かせてもらえますか?

野田 では、新潟から。先述したとおり、ここでは「ライスレジン®」という、お米由来のプラスチックを製造しています。独自の技法で、お米とプラスチックを一度液状化させ、チップ状にしたものが、次の工場で器に成形されるというわけです。原料として使用されているお米も主に新潟で作られたもので、ある意味「地産地消」と言えるかもしれません。

野田 もうひとつの工場では、射出(しゃしゅつ)と言って、材料を金型に送り込んで、カタチを作る工程を担っています。この地域には漆器を射出できるメーカーが約40社ほどありますが、『お米の器』の成形をお願いしたとき、「無理です」「機械が壊れます」という理由でほとんど断られてしまいました。若くてチャレンジ精神旺盛なご兄弟が経営されているこちらの工場だけが、最後の最後に「やりましょう!」と引き受けてくださった。

野田 大阪にも大手のプラスチックメーカーはたくさんありますけど、工場の規模が大きいからとか、設備が整っているから「できる」プロジェクトでは、決してないんですよね。

高見 動画の最後の方にもチラッと映っていますが、製品としては不合格、いわゆるB品の器も廃棄せず、粉砕して液状にして、もう一度、型に流して作り直している工程が印象的でした。

野田 作ったものをムダにはしない。失敗しても何度でも作り直せるし、たとえば家庭での役割を終えた器たちを回収してリサイクルすることも、将来的な展望としては可能かもしれません。はじまりと終わりが連結している。これからの時代、本当の意味でのSDGsって、そういうことなのかなと考えています。

“tsùgi”のこだわり、その先に目指すこと。

— “tsùgi”というシリーズ名は、“継ぐ”という日本語からイメージしたと聞きました。

野田 しみじみ、良い名前だと思います。

高見 日本と関わりの深いお米を原料に、日本の技術の粋をギュッと凝縮させたような素晴らしい器なので、漢字の“継ぐ”からイメージしました。軽くて使いやすく、割れにくいという特性もあるので、お子様との食事も気兼ねなく楽しんでいただけます。お皿は大中小と三枚フラットに重ねて収納しやすいですし、持ち運びもらくちん。キャンプやピクニック、水辺のレジャーなど、家族やお友達で集うアウトドアシーンでも重宝します。“tsùgi”という名前には、暮らしの中で、人と人とをつなぐツールになればいいなという願いも込めています。

— セットで揃えやすい価格帯であることも魅力のひとつですよね。

高見 そうですね。私も最初は驚いたんですけど(笑)。

野田 できるだけ選んでいただきやすい価格にしたいという、私のわがままで、お安くなっております。

高見 ドアーズが陶磁器以外の食器でオリジナルを作るのは、はじめてなんですよ。こういった樹脂系の食器って、海外生産がほとんどで、生産ロットも大きく、あまり現実的ではなかったんですけど、今回は、「日本製・小ロット・低価格」の三拍子がそろっているんですよね! 日本製だから良いと言いたいわけではないですが、やっぱり「MADE IN JAPAN」の安心感ってあるし、工場を見学して、その気持ちはいっそう強くなりました。何よりも、サステナブルを基本にしながら、大量に作りすぎてしまっては意味がないですし、長く続けていける取り組みを考えていたので、そういった面でもぴったりのシリーズが誕生したと思います。

野田 まだまだお伝えしたい「こだわり」が、たくさんあるんですよ! ちょっと器を触ってみてもらえませんか?

— すべすべしていますね。アップサイクルの食器って、もっとザラっとしているイメージだったので意外です。

野田 そうなんです。ザラつきをなくして、なめらかに仕上げるには、原料として「米」「耐熱プラスチック」のほかに、もうひとつあるものを混ぜるのが一般的な作り方なんですけど、私はどうしても3つめの余分なものを排除したかった。このこだわりを実現するために、どれだけ試作を繰り返したかわかりません。それから、この陶器のようなフォルムね!

— 曲線が美しく、とても上品ですね。

野田 プラスチック食器は金型を作って射出するとき、全体の厚みを均等にするのが最もポピュラーなやり方なんですね。だけど、それだと私が望むようなフォルムにはならない。この絶妙な丸みを出しつつ、座りの良い器に仕上げるには、底に向かって厚みを出す必要があるんですけど、そうすると今度は成形するときに引っかかる。その問題を解消するために、金型で調整して・・・って、とにかく嫌というほどこだわって、こだわって、こだわりすぎてしまっているので、そりゃ完成は遅れますよ。

— それだけこだわっているのに、低価格にもこだわっているんですね。

野田 欲がなくて、すみません(笑)。

— 使用するうえでの注意点などはありますか?

高見 電子レンジはNGですが、スープなど、温かいお料理にも安心して使っていただけます。

野田 食洗機も大丈夫。家庭用はもちろん、業務用の食洗機でもテスト済みです。

— “tsùgi”シリーズとして、これから作ってみたいものは?

高見 やっぱりカトラリーは欲しいですよね。

野田 最初に高見さんがそう言っていたのを、覚えていますよ。実は、近いうちに金型が完成する予定です。それからこれは、「ライスレジン®️」を使った弊社の企画案ではありますが、マグとかタンブラーのようなカップ類。観葉植物など、室内に飾ったり育てたりするグリーンの鉢カバーなんかも、暮らしに寄り添うアイテムとして実現したいと構想中です。

高見 そういえば、新潟で工場見学をしたときに、「今度は田植えと稲刈りにも参加してみてください!」と、お声がけいただきました。「ライスレジン®️」の材料になる資源米を、休耕田を活用して自社でも生産されているようなんですね。

— それ、すごく楽しそうですね。いつか、「ドアーズ米」で作る、“tsùgi”シリーズが誕生したりして。

野田 いいじゃないですか〜。いつもおしゃれをしているみなさんが、野良着で土にまみれる姿も、趣深いですよ。

— ドアーズ発の農作業ウエアとかにも、個人的には期待してしまいます。夢はどんどん広がりますね。

サステナブルは、考えるより感じたい。『お米の器』がある、暮らしのすすめ。

食品ロスや、脱プラ問題。なんとなく理解しているようで、実はわからなかったり、なんとかしたいけど、何をすればいいのかわからないことって、たくさんありますよね。難しい問題は、難しく考えるより、一人一人が暮らしの中で今できることをやってみる。っていうくらい、軽やかな気持ちで取り組む方が、解決の近道になるのかもしれません。本格的な春を迎え、新生活をはじめた人、暮らしの器を新調してリフレッシュしたい人も多いことでしょう。そんなとき、選択のひとつに、『お米の器』があることを思い出してもらえたら嬉しいです。

Text/Shiho Fujiwara

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