【ニュートラソウル!】Vol.1 Illustrator シン・モレ【恋しちゃったんだソウル】

めまぐるしく移り変わる町で、確固たる自分を持つことは、決して簡単じゃない。だけどソウルの人たちは、みんな芯があり、あまりにも情熱的で、やさしくて、クール。たちまち彼らに恋しちゃった。Vol.1は独特なイラストタッチが人気のあの子!
今、ソウルがアツい。
いや、きっとずっと前からそうなんだけど、周りがあまりにも韓国にハマっているもんだから、ほかに好きすぎる人がいると逆に冷めてしまうというような心理状態で、気になってはいるものの、深く知ろうとすることなく、現在に至ってしまっていた。そういう人、多いんじゃないかしら?
それが、今回の取材で一変する。
話を聞くことができた韓国のクリエイターたちはみんな、一見クールに見えながら、内にふつふつと燃え滾る情熱を抱えていた。自分なりの表現方法をストイックに探る姿勢にも、グッとくるものがある。
やっぱり、ソウルはアツかったのだ。
そのアツさを生み出す人たちに、思わず恋しちゃったかもしれない。
まずは、ソウルを代表するイラストレーター、シン・モレさんに会いにいってきた。

イラストレーターとして、世界中のファンを魅了するシン・モレさん。
彼女が注目されるきっかけとなったのは、4年前にSNS(インスタグラムとツイッター)にアップした一枚の絵だったという。
「大学ではグラフィックデザインを学んでいました。同級生は卒業してから、デザイン会社などへ就職する人が多かったのですが、わたしは子供たちに絵を教える塾の先生をしながら、幼い頃からずっと好きだったイラストを趣味として続けていました。その作品をSNSに投稿したことをきっかけに、まずは韓国人が反応してくれて。そこから徐々に広がっていきました」
それから韓国で一躍彼女の名が知られるようになったのは、人気ブランド〈Adererror〉から声がかかり、コラボレーションしたこと。反響も大きく、その後2回目のコラボレーションもすることになる。また、国内の大手芸能事務所所属のアーティストグッズを手がけたことなども、大きな契機となった。

いまでは韓国のみならず、日本にもたくさんのファンを獲得している。
「日本では、マガジンハウスの雑誌『POPEYE』や『GINZA』が取り上げてくれました。『GINZA』では、アイシングクッキーなどを製作する日本人アーティストで友人のまつのあやかさんとの対談が組まれたり。徐々に日本とのつながりもできてきて、昨年は『ロマンス』というテーマで、原宿〈Rocket〉での展示を行いました」
〈アーバンリサーチ〉でも、今年の初めに彼女とのコラボレーションアイテムを販売。好評を博して、第二弾も近日発売する予定。
彼女の絵は、まずポップなカラーリングに目を奪われる。ピンクやパープル、ネオンカラー……アイコニックでキュートな色合いが好きなのかと尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「表現するイラストは、ディープで内省的な世界観が多いんです。日常生活の何気ないことからインスピレーションを得て、それをストーリーのようにつなげて、膨らませていく。本当は、ピンクやパープルは好きな色ではないんですが、相反するカラーリングでその世界を彩ることで、ただセンチメンタルなだけではない、中和されたオリジナリティが生まれると思っています。深層的な世界を照らす〝光〟も、わたしのイラストのキーになっていると思います」

ちょうどアトリエにお邪魔したのは、夕方すぎ。高層ビルの一室からはインチョンの町と海が望め、夕陽が眩しいほどに射し込んでくる。
首都ソウルから電車で一時間ほどの静かな町で暮らす彼女から見た〝今のソウル〟を聞いてみた。

「騒がしい町だなと思います(笑)。生まれも育ちもインチョンなので、自然と静かな町が落ち着くんだと思います。友だちはたくさん住んでいるのでもちろんソウルに遊びにいくこともありますが、ソウルの町で感じることがいろいろあるというよりは、向かうバスの中や電車の中で景色を見ながらイラストのストーリーを考えることが多いかもしれません」
最後に、彼女のように、SNSを通して自分の作品が世界へ広がっていくという可能性について思うことを語ってもらった。
「きっかけとしては、とてもいいツールだと思います。でも、これからは、ひとつひとつの作品をきちんと表現する場として、WEBを活用していかなくちゃとも思っています。そのために、まずは自分のHPをきちんと作成しようと思っています。そのうち(笑)」
少し緊張気味だったのか、「これで取材はおしまいで〜す」と伝えると、ホッとしたように思わず笑みをこぼしたシン・モレさん。雑談でそのあと続けた好きな日本の漫画『新世紀エヴァンゲリオン』について熱く語る姿は、とてもキュートでキュンとしたのだった。
シン・モレ(ShinMorae)/ イラストレーター
1988年生まれ。韓国出身。 2013年から活動を開始し、注目を集める。


熊谷 直子 Photographer

