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CULTURE TRIP MAR 12,2021

<東北の今④>「ISHINOMAKI SHIRT」を、海とともに生きる人へ。
UR×FJ×Tieasy 座談会

2021年は、東日本大震災から丸10年。株式会社アーバンリサーチでは、震災直後から、様々な形で東北の方々と関わってきました。
この節目となる年を迎えるにあたり、被災地として復興に向き合ってきた東北の「今」を全4回に分けてお届けしたいと思います。


株式会社アーバンリサーチ(以下、UR社)が日本各地のローカルコミュニティとともに、その土地の魅力を再考・発信していく「JAPAN MADE PROJECT」。東北エリアでは、2015年より宮城県石巻市を拠点に構える若手漁師集団「FISHERMAN JAPAN」とともに、漁師さんたちのワークウェアを開発してきました。

2021年の3.11に発売された「JAPAN MADE PROJECT TOHOKU」第6弾は、「ISHINOMAKI SHIRT」。

左から、ISHINOMAKI SHIRT(無地)「雲丹YELLOW」「鯖BLUE」 ¥12,980ISHINOMAKI SHIRT(ボーダー)「鮭PINK」「牡蠣WHITE」 ¥11,880 (各税込)

これまでのプロジェクトでは、漁師を中心に、水産関係の方々へ向けたファッションを提案してまいりましたが、今回誕生したのは、海とともに生きる(=石巻で生きる)人へ捧げるバスクシャツです。

バスクシャツは、漁師や船乗りをルーツとするファッションアイテムですが、街で着ても一枚でサマになるのが特徴。海とともに生きている石巻の方々をイメージし、仙台発祥のバスクシャツブランド「Tieasy Authentic Classic(以下、Tieasy)」の力を借りて東日本メイドを実現しました。

“東北の今を伝える”をテーマにしてきた本企画、最終回となる第4回は、FISHERMAN JAPANの長谷川琢也さん、Tieasyの大西芳紀さんをお迎えし、「JAPAN MADE PROJECT TOHOKU」のこれまでと、新商品「ISHINOMAKI SHIRT」についてお話ししました。ファシリテーターは、URBAN RESEARCHの宮啓明でお届けします!

左からFISHERMAN JAPAN長谷川さん、Tieasy大西さん、URBAN RESEARCH 宮。
石巻、仙台、東京を繋いでのリモート鼎談となりました

「JAPAN MADE PROJECT TOHOKU」のこれまで

宮啓明(以下、宮) 「JAPAN MADE PROJECT」は2014年に長崎からスタートし、翌年から石巻に拠点を構える「FISHERMAN JAPAN」のみなさんと連携させていただいています。長谷川さんはこの取り組みがはじまったとき、どのような印象でしたか?

長谷川琢也さん(以下、長谷川) 震災後、いろんな企業の方が「東北の支援になることを何かできないだろうか」と足を運んでくださり、我々はコーディネーターとして、東北をまわるためのアテンドをしていたんです。

URBAN RESEARCHさんが石巻に来てくれたのは2015年なので、震災から4年経っていました。震災直後はたくさん訪れてくれた企業のプロジェクトも撤退していくなかで、「今から何ができるのかを考えたい」と言ってくれて。多分アテンド期間が一番長かったと思うんですが、2〜3泊つきっきりで、宮城の北から南、福島までまわったんです。そのときに、そもそもの視点が他の会社と違っていると感じていました。

他の企業なら「いいじゃん」と言ってくれそうなところには目もくれずに(笑)、「もう“東北支援”とか、“お涙頂戴”みたいな感じは嫌だから、会社としても持続性を高めるために、きちんとビジネスに繋がるもので、自分たちが得意なことをしたい」と言ってくれていたのが印象的でしたね。

 僕自身、少し遅れて東北のみなさんとは関わりを持ったんですが、別地域のコミュニティと付き合うなかでも、同じ目線で物事を考えています。
“ボランティアや支援”みたいなことは、もちろんひとつの切り口ではあると思うんですが、自分たちのスタンスとしては同じ目線で一緒になって面白い取り組みをしていくなかで、その地域が盛り上がるといいな、という思いがベースにあります。

長谷川 漁師のワークウェアを作ると決めたのも、「毎日着ている仕事着がおじいさんやお父さんと同じだから、かっこいい服を着たいんですよ」って漁師がぽろっと言ったのを拾ってくれて。「それ俺たち得意!」と。

 今までの企画で、長谷川さんが個人的に思い入れのある製品はありますか?

長谷川 第1弾の「SEA PARKA」は、本当に漁師の思いを拾ってくれるのが嬉しかったですね。漁師だけじゃなく俺らも欲しいし、めちゃくちゃいいなって思いました。

現在はさらにアップデートしたSEA PARKA 2 ¥26,400(税込)を販売している

長谷川 第2弾の“カッパ”もよかったですね。漁師が「おじいちゃんやお父さんと一緒で嫌だ」と言っていたのがまさにこれで、「カッパ作るの?」って驚きました。しかもメイドインジャパンでやるって言うから、「URBAN RESEARCHさん正気!?」って。めちゃくちゃ面白かったです。

左から、UR×FJ サロペットパンツ ¥8,800、UR×FJ マリンブルゾン¥9,900 (税込)

 我々としてもこの商品には思い入れがあって、社内を見渡してみても、唯一無二なんですよね。お客様もそうですけど、メディアの方、アパレル同業者の方からも「あれ何?」と聞かれることが多くて、いい企画だなと思っています。継続して販売しているし、これからもアップデートしていきたいです。

長谷川 特に宣伝しなくても、全国の漁師が着てくれているんですよね。作るときにも、URBAN RESEARCHさんはめっちゃヒアリングしてくれました。カッパに関しては既存の型だけど、カラーとかはこだわってくれたし、ストラップの長さはどれくらいがいいか、とか。

ほかの製品も、デザイン性の高さだけじゃなく、機能性についてもいろいろ考えてくれて。入札のときに値段を書く札があるんですが、それをしまう内ポケットとか、ペンを挿すための小さなポケットも設けてくれて、かっこいいし本当に使えるじゃん!って。

「JAPAN MADE PROJECT TOHOKU」第5弾、2019年に発売されたFISHERMAN BLOUSON ¥24,200(税込)

 「JAPAN MADE PROJECT」は、その地域の方たちと深くコミュニケーションをとることを大事にしています。そこから生まれるものが、コミュニティにとっても、僕らにとってもいいものになると信じているんですよね。

長谷川 我々は漁師を「新3K=カッコよくて、稼げて、革新的」にしようと目標に定めているんですが、その「カッコいい」「革新的」をワークウェアで表現できているのが嬉しいです。

 この春に、新しい漁業の担い手さんたちにワークウェアをプレゼントしましたが、評判はいかがですか?

長谷川 めちゃくちゃ評判いいですよ。どれもかっこいいので、みんなに羨ましがられるんです。それによる広がりや、持続性ってあるなと思っていて。地域の人たちが、自分の仕事を誇りに思えるきっかけになるといいですよね。

Tieasyが東日本メイドにこだわる理由

 次に、Tieasyさんとのコラボがどのようにして実現したのか、お話しできればと思います。とあるイベントでTieasyさんのバスクシャツを着ていた方がいらして、「そのシャツめちゃくちゃいいですね」と声をかけたら、大西さんを紹介していただいたのがはじまりだったと思います。

それまでURBAN RESEARCHとの取引はなかったと思うんですが、大西さんから見た印象はいかがでしたか?

大西芳紀さん(以下、大西) 仙台で「OntheEarth」や「Naval」というセレクトショップを営んでいるのですが、20年以上インポートブランドを扱っているなかで、URBAN RESEARCHさんとは扱っている商品自体も共通点が多いんです。

今回のプロジェクトでは、FISHERMAN JAPANさん、URBAN RESEARCHさんと一緒に組めるということで、二つ返事でOKしました(笑)。同じ感性を持っている人たちとの取り組みを、どうしても成功させたかったので。

 もともと大西さんはセレクトショップを営まれていたなか、カットソーブランドの「Tieasy」を立ち上げられました。その経緯を伺ったときに、とても素敵だと思ったので、あらためてお話しいただいてもよろしいですか。

大西 セレクトショップの出身なので、小売店が無理しない仕組みをつくりたかったんです。例えば、大量ロットで仕入れた商品を余らせてしまってセールで売らざるを得ないとか、メーカーの生産の都合で大きなミニマムを設けられるなど、アパレルならではの歪みを感じていました。

そこで、トレンドも関係なく、定番として末長く売れるものを作って、本当に必要な分を洋服屋さんが仕入れられるような仕組みにできたらと。工場のみなさんも同じメンツで、みんなが必要な利益をとれるようなカットソーを作れたらいいなというのが、Tieasyを立ち上げるきっかけになった考えでした。

 それで、定番となるカットソーづくりをはじめられたんですね。

大西 はい。普遍的なボートネックのカットソーをメイドインジャパンで、しかも東日本で作りたかったんです。質の高いオーガニックコットンを紡績工場で糸にし、編み立て、染色し、縫製にいたるまで、すべての工程を東日本で行う体制を整えることができました。

戦後間もない時代から使われている旧式の織り機を使用していて、熟練の職人さんたちの手によって高密度コットンが生み出されます。ふっくらとした柔らかな心地良い肌触りが特徴です。

 そんななかで、東日本大震災が起きますよね。存続の危機もあったと聞きました。

大西 ブランド発足から順調に伸びていったのが2008年頃で、セレクトショップや専門店からお声がけいただける機会も増えてきたなか、2011年の3.11で、東日本が激変しました。

縫製工場、編み立て屋さん、染色屋さんも打撃を受けたんです。アパレル自体も景気が良くない時期だったので、廃業を宣告されることもあって。

 廃業すると宣告されたとき、どのように危機を回避されたんですか?

大西 スキームを変える必要があったので、僕らの会社である程度ストックさせてもらうことにしたんです。ブラック、ネイビー、ナチュラルなど、アパレルでよく売れるカラーをストックできるよう資金投資して、先にみなさんの仕事をつくらせてもらいました。

こうして、生地屋さんが定番の生地をストックしてくれて、染色屋さんは少ないロットで染めをしてくれて。できるだけみんなでリスクを分散して、一個の生地、一個の製品を守っていこうと、2011年に再スタートしたんです。

 2016年度にはカットソーで日本初のグッドデザイン賞を受賞されています。分業化でリスクヘッジを分散し、持続性を高めた生産背景も受賞理由となりましたよね。
今回の「ISHINOMAKI SHIRT」は、それぞれどこの地域の工場が担当されているんでしょうか?

大西 “東日本メイド”をルールにしていて、基本的に福島県内で作っていますが、染色はシルク染めなども有名な群馬県桐生市、編み立ては埼玉県久喜市の工場にお願いしています。同じ人たちにお仕事をお願いし続けることで、「縫製工賃を下げてほしい」と交渉しなくて済むし、まっとうなお仕事を共有できるんです。

 言い方を変えるとトレーサビリティですね。工場も無理のない対応ができて透明性のある生産ができているのは素晴らしいと思います。

「ISHINOMAKI SHIRT」は“海産物系”カラー!?

 これまで長谷川さん、大西さんとそれぞれお話ししてきましたが、今回の「ISHINOMAKI SHIRT」について、3人でお話しできればと思います。長谷川さんはバスクシャツの提案を受けたとき、どのように思われましたか?

長谷川 これまでのシリーズでは、漁師や水産業に関わる人のためのワークウェアでしたが、今回は「海とともに生きる人へ」というコンセプトが面白いと思いました。

バスクシャツの成り立ちも、バスクっていう漁村で生まれたワークウェアで、丈夫だし袖が短くて作業しやすいと。今まで漁師のカッパをつくってもらったり、漁協の人たちが市場で着れるブルゾンを作ってもらったりしているなかで、FISHERMAN JAPANの事務局メンバーも羨ましがっていたんですよね。今回、自分たちも着られるバスクシャツができたのはすごく嬉しいです。

 生産背景が東日本で、手にするのも東北に生きる方々です。石巻の人たちに愛してもらうために、名産をイメージしたカラーリングはどうだろうかと、「牡蠣」「鯖」「雲丹」「鮭」の4つのカラーリングを再現しました。大西さんとはかなり細かくお話しをさせていただきましたね。一番のおすすめはどれですか?

大西 僕のいち推しは「雲丹」です。昨日現物を見させてもらったけど、めちゃめちゃかっこよかったですよ。時間的にはタイトだったけど、かなり上出来かなと。

長谷川 そうなんだ!

 「鯖BLUE」じゃなく、「雲丹YELLOW」なんですね!

大西 「鯖BLUE」もいいんですけどね。「雲丹YELLOW」はマスタードイエローに非常に近いんですが、そこにブラックのボーダーっていう型抜きがどうなるか、最もイメージがつかなかったモデルでした。

かっこよくなるのかな……って不安があったんですが、できあがってみたら一番かっこよくて、宮さんにやられたなって(笑)。

長谷川 「鯖BLUE」「雲丹YELLOW」「牡蠣WHITE」「鮭PINK」って、戦隊モノみたいでめちゃくちゃ面白いですよね。鮭もピンクかオレンジかって話をさんざんして、サンプルを見ましたけどめちゃくちゃ鮭っぽい色になりましたね。

 大西さんには、3社での打ち合わせ時にその場でデザインをしたり、ネームを作ってくださったりと、クイックな対応をありがとうございました。
色合わせもすごく上手にしてくださいましたし、トリプルのネームも嬉しかったですね。言うは易しですが今回の企画のためにオリジナルで作ってくださったのは大変だったと思うんです。大西さんのアツい思いがそこに溢れているなと。

大西 やりたい企画だったので、やるだけやらせてもらおう!と。特に苦労したのはFISHERMAN JAPANさんとのタグですね。アルファベットが潰れてしまうので、タイトな時間のなかで何度も作り直しました。でも、オーセンティックなタグを作れたので、ぜひ注目していただきたいです。

 カラーリング含めて、石巻で愛してもらい、スタンダードになっていくといいなと思っています。長谷川さん、「海とともに生きる人々へ」という商品コンセプトがあるなかで、どういう人に着てほしいですか?

長谷川 この取り組みで嬉しいのは、自分や周りが本当に着られるワークウェアであること。普段の服よりも多く着るので、おしゃれで機能性もあるのがめちゃくちゃいいなと思ってて。

今回は、石巻の街の人がデイリーウェアとしておそろいの制服のようにして、着てくれたらいいなと思いますね。

 「第6弾では陸のカルチャーを生み出したい」という話があったなかで、大西さんのお力添えもあって形になりました。愛して着てもらえるものになったら嬉しいですね。

ここでお二人にご相談があって。「ISHINOMAKI SHIRT」の代名詞がほしいなと思っているんですが、これを「海産物系バスクシャツ」って切り口にして、みなさんに親しんでもらえたらいいなと。みなさんいいですか?

長谷川 いいんじゃないですか?急に生臭くなるけど(笑)、キャッチーだし。

大西 普通にURBAN RESEARCHに並んでいるだけでかっこいいのに、そこに“海産物”ってついていたらめっちゃ面白いと思います。

 ありがとうございます、賛同を得られたのでそうします(笑)。海産物系バスクシャツが、みなさんのスタンダードになることを祈っています。

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