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CULTURE TRIP APR 11,2018

【踊れ!台湾】01 城市捜索少女 カイと食堂とおばちゃんと

「お気に入りのごはん屋さん」は体だけでなく心も元気にしてくれる。それはきっと食べ物の栄養だけでなく、働く人の笑顔が心にもじんわりパワーを届けてくれるから。みんなそうやって毎日を楽しく過ごすための「大切な場所」を見つけているのだ。


人気食堂の秘密は、味だけではない。

アーバンリサーチ台湾に入社したばかりだというカイ(張愷)。笑顔が素敵な彼女の行きつけの朝ごはん屋さんは、地元で人気の鹹豆漿(シェントウジャン)屋さんだそうだ。週3日はここで朝ごはんを食べる。

カイ:Tops ¥6,500/KBF+(KBF+)、Pants ¥15,000/Ungrid×Sonny Label(URBAN RESEARCH Sonny Label) おばちゃん:Onepiece ¥37,500/CELIA DRAGOUNI(URBAN RESEARCH ROSSO)

カイも大ファンだというおばちゃん。おばちゃんを含めどのスタッフも忙しい中笑顔を絶やさない。おばちゃんの顔を見てつられて笑顔になる客のなんと多かったことか。

路面に面した店内には、鹹豆漿のほか、大根餅や薄焼き卵をくるりと巻いた蛋餅(ダンピン)、手作り餃子、菓子パンなどがズラリ並べられている。使い込まれた鉄板や蒸篭で仕上げられる食べ物は何もかもが美味しくて、取材はそこそこに気になるものを片っ端から食べた。

本当に美味しい。しかし他の店と何が違うのだろう。手作りの皮に餡のつまった餃子や小籠包のそのものの美味しさもさることながら、なぜか“このお店”が醸し出す美味しさが感じられた。それは初見の私たちだけが感じているのではなく、例えばお客さんがお店に入るや否やピカーっとした輝くような笑顔になるのを見ると気のせいではないように思う。

まず、お店の人たちのニコニコと働く姿がいい。そして職人技と言っても差し支えのない素早く無駄のない手作業、そして美味しい香りを店内いっぱいに伝える蒸篭や鉄板の蒸気。そういうものと、ご飯の美味しさがものすごいバランスで調和している。

美味しさとは味だけではない。作り手の愛情が何よりも良いスパイス、というのはよく知られた話。この世の中は、きちんと科学で説明できることだけが全てではない、と最後の餃子を口に放り込みながら哲学的な気持ちになった。

ちなみに台湾の女の子はよく食べる。例えばカイはこのお店で「鹹豆漿と、大根餅と、蛋餅」をペロリと食べるとか。台湾のごはん屋さんは総じて美味しくて安いが、「ここは特に安いし美味しいし、おばちゃんが親切で大好き」と嬉しそうに語るカイ。
夕方5時から朝11時までやっているこのお店には、ひっきりなしにお客さんが来る。テイクアウトする人も多い。
おばさんに「1日何人くらいお客さんが来るの?」と聞いたが、笑顔で「数えたことないよ〜(笑)。でもだいたい朝8時くらいと夜10時くらいが忙しいね」と答えてくれた。その間も、手作り餃子を包む手は止まらない。目測だが1個4秒くらいでちゃっちゃっちゃと包んでいた。あまりにもリズミカルでずっと見て入られそうな動作である。

01.スタッフ総出で餃子をつつむが、作ったそばから売れて行くので常に作り続けていた。 
02. 包む前の餃子。この状態ですら美味しそうであった。皮の柔らかさが写真越しでもわかる。
03.座席数はそこまで多くないのでテイクアウトのお客さんも多い
04.台湾菓子パン。テイクアウトする人にも人気  
05.なにやらおばちゃんが巻き寿司のようなものを作っていた
06.おばちゃんがつくっていたのがこれ。台湾式のおにぎりというか細巻きというか。もち米の中に肉そぼろなどをいれてぎゅっと形付けたもの。かなりボリュームがありそうだったがカイはぺろりと平らげていた。

現地の若者に外食事情を聞くと、「朝と昼は外食、夜は家族と家で食べる」という人が多いそうだ。実は台湾では自炊をするよりも外食の方が安く上がることが多い。また夫婦共働きの家庭が多いので、3食外食も珍しくないとか。

若者の外食予算を聞いてみたが、朝は60台湾ドル(約240円)、昼は100〜150台湾ドル(約4〜500円)くらいだそう。もちろんそういった安いお店はほとんどが台湾料理。なのであまり海外的な食事(パスタなど)はしないというのも興味深かった。

ちなみに台湾では料理は「できる人がする」方式なので、男の人が料理担当なのは珍しくない。カイさんの家もパパが料理担当だそう。この辺り、日本などよりよほど男女平等で羨ましい限り。そしてどんな家庭にとっても毎日の食事を支えてくれる安くて美味しいお店がたくさんあるのは素直に羨ましいと思う。

永和四海豆漿大王

105台北市松山區民生東路四段112巷5弄25號

営業時間 : 17:00-11:00

開催日時 : 定休日:なし

PROFILE

Naoko Kumagai
Photographer

幼少期より写真を撮り始める。20歳で渡仏し、パリにて本格的に写真・芸術を学ぶ。2003年よりフリーランスフォトグラファーとして雑誌・広告などでポートレートや風景など多ジャンルにおいて活動し、個展での作品発表も精力的に行う。主な著書/二階堂ふみ写真集「月刊二階堂ふみ」、杉咲花1st写真集「ユートピア」、熊谷直子作品集「赤い河」 

松尾 彩Columnist

フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。小学館kufuraにて旅エッセイ「ドアを開けたら、旅が始まる」連載中

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