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CULTURE TRIP APR 18,2018

【踊れ!台湾】02 城市捜索青年 ローウェンと台北の下町

台湾の下町、北投は温泉が有名。街全体がのんびりしていて散策にも良いエリア。朝は公園でおじいさんたちが太極拳を楽しみ、観光客は温泉や美味しい麺屋さんを目指す。温泉がうみだすモクモクの煙とともにゆっくりとした時間を過ごしたい。


いい湯があるところは、
いい街なんである

物腰柔らかく日本語が堪能で、よく日本人と間違えられるというローウェン(羅文)は台湾アーバンリサーチアウトレット店の店長だ。彼の住む町は、温泉が有名な北投(ベイトー)エリア。台北市内中心部からMRTで40分ほどなので日帰り温泉地としても人気の街。

台湾は日本にも負けないほどの温泉天国なのである。

ただ、日本と違う点は、大浴場は水着着用ということ。温泉に行く際は水着をお忘れなく(個室風呂などは裸で入る)。ちなみに北投には“熱海”という名のホテルもある。

煙の間から、温泉宿がちらり。

たくさんの温泉がある北投には、温泉が噴き出す蒸気が見られる公園がある。この日は雨も降り、霧と湯気で辺り一面真っ白になっていた。
もくもくと上がる煙の隙間から、時々近くの温泉宿の伝統的なデザインの屋根が見える。それがまるで天空の城ラピュタの台湾版のようで、ひたすらその光景を眺めていた。

そことは別の小さな公園で、太極拳をしているおじいさんに出会った。 駅前近くにある公園では、朝おじいさんやおばあさんたちが集まって太極拳をする光景が見られる。ただこの日は雨だったのでおじいさんお一人が黙々とやってらっしゃった。

しばらくその美しい動作を眺めていたが、せっかくなので地元民のローウェンを臨時弟子にしていただいた。が、彼の動きはどうやってもぎこちない。

「太極拳なんてやるの初めてなんですよ〜」。聞けば台湾で若者に人気のスポーツはバスケットボールなんだそうだ。プロリーグの試合もよくテレビで放送されている。そういえば台北市内の至る所にバスケットボールのコートがあり、そこで夜遅く少年達が遊んでいたのを見かけた。

01.1時間以上、黙々と太極拳を行うおじいさん。
02.ローウェン初めての太極拳。ちょっぴり腰が引けています。
03.朝からしっかりと運動をしているからか、とても若々しいおじいさんだった。

ローウェン:Jacket ¥6,900/SENSE OF PLACE by URBAN RESEARCH、Tops ¥5,800/Various Timeless Arts×URBAN RESEARCH iD(URBAN RESEARCH iD)、Pants ¥23,000/ZUBON、Belt ¥1,800/US Military×URBAN RESEARCH(URBAN RESEARCH)

日本のラジオ体操もそうだが健康に良い体操などは、思春期あたりに差し掛かると“面倒だしなんかかっこ悪いし”とだんだんとやらなくなる。だがある程度歳をとり、“無理のない運動”を、と思った時にまたラジオ体操に戻ってくる人が多い。ローウェンも今はバスケットボールの方がかっこいいと思っていても、きっと40年、50年後にここでのんびり太極拳を楽しんでいる、そんな姿を勝手に妄想した。

先述のように市内からは電車で約40分の北投。日帰り観光には丁度いい距離だけど、市内への通勤にはちょっと不便な場所ではないの?と聞いたが、ローウエンは、家族と一緒にここに住むのをとても気にいっているそうだ。だからお店まで毎日1時間かけて通勤している。
ローウエン曰く、この辺りはいわゆる「下町」エリアなんだそう。家賃も他のエリアに比べて安いんだとか。確かに温泉宿以外に高い建物も少なく、のんびりとした雰囲気だ。安くて美味しい食堂はもちろん、スーパーもあるので確かに家族で生活するにはベストな場所なのかもしれない。

もともと家族全員一緒に住むことが多い台湾だが、この辺りは特に2世帯、3世帯で住むことも珍しくないとか。なので家の中での権力者、となるとおじいちゃん、おばあちゃん。(ちなみに台湾は地方によっておばあちゃんが強い女系家族系と、おじいちゃんが強い系とあるそうだ)
まあ日本でもお年寄りがしゃっきりしている家は威厳もあるけれど、結束力も強い。とっても優しくておとなしいローウェンを見ていると、家の中での立ち位置がなんとなく…わかる気もする。
ちなみに“台湾では女性の方が強い”と聞いたことあるよ、とローウエンに聞くと「はい。台湾は…女の子強いですね…」と力なく笑っていた。

北投公園露天溫泉

112台北市北投區中山路6號

PROFILE

Naoko Kumagai
Photographer

幼少期より写真を撮り始める。20歳で渡仏し、パリにて本格的に写真・芸術を学ぶ。2003年よりフリーランスフォトグラファーとして雑誌・広告などでポートレートや風景など多ジャンルにおいて活動し、個展での作品発表も精力的に行う。主な著書/二階堂ふみ写真集「月刊二階堂ふみ」、杉咲花1st写真集「ユートピア」、熊谷直子作品集「赤い河」 

松尾 彩Columnist

フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。小学館kufuraにて旅エッセイ「ドアを開けたら、旅が始まる」連載中

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