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CULTURE TRIP APR 03,2019

【雲のまにまに神を見る 出雲】DAY1 お酒の神様に会ってきたよ 出雲日本酒ツアー

神話の国のイメージが強い出雲。同じ日本なのに、近いようでなんだか遠い。「実際はどんなところなの?」「いっそのこと行ってみようよ!」。シャムキャッツ・夏目くんと出雲に向かうことにした。


昨年の冬、ある媒体でロックバンド・シャムキャッツのボーカル夏目知幸くんに、趣味についての取材をさせてもらう機会があった。
趣味は〝手ぬぐい収集〟。
一枚一枚どこで買ったものなのか、当時のエピソードを含めて説明してくれる中で「高千穂に行った時に、天岩戸神社に寄って…」とか「伊勢にある古くからの習わしで…」とか、言葉の端々からなんとなく、神仏や神話にも興味があるんだな〜って感じていた。

どうしてそれらが気になるのか聞いてみたら、夏目くんが育ったのは千葉県浦安市の埋め立て地にある団地で、埋め立て地には、神社やお寺がないから。
彼のおばあちゃんちがある埼玉や長野にはそれらがもちろんあって、わたしが育った愛知県の片田舎にも普通にあるものが、夏目くんの育った町にはない。
祭りになると神輿が担がれて、終わると神社に戻されたりするけれど、団地で行われる祭りは地域の行事としてあるだけで、神社仏閣がそこにはないらしいのだ。

なんとなくそれが、幼いころからず〜っと気になっていた夏目くんは、高校3年生のときに社会史の担当の先生の影響で、古事記についても興味を持つようになる。
世界の始まりから神様の出現、皇位継承など日本の成り立ちが描かれている古事記は、記されているうちの三分の一が出雲に関わる神話で占められている。
もともと神社仏閣には興味があったけど、壮大なストーリーとして描かれてい出雲の地は、実際にはどんなところなのか。
「いつか行きたいなとは思っていたけど、なかなか機会がなくて。でも今がタイミングだと思う」と、映画の聖地巡礼と同じような気分で「行ってみよう」ということになった。

羽田空港から飛行機で約1時間30分、出雲縁結び空港へ。
着いたら、あいにくのくもり空。
広い景色が一面グレーに染まっていて、出雲と言えば神聖な場所で、なんとなく神々しい感じとか空気が澄んでいるとか勝手に想像していたので、少し違う印象を抱いたのが最初。

ちょうど昼くらいに出雲に着いたので、とりあえずはらごしらえを、ということでうどん・出雲そばが食べられる店へ。

出雲そばは出雲地方で広く食べられる郷土料理で、わんこそば、戸隠そばと並ぶ三大蕎麦のひとつ。
朱塗りの丸い器に入ったそばが3つ、つゆを直接かけていただく割子(わりご)という食べ方が特徴。

旅の同行者のカメラマンともうひとりの編集、わたしは出雲そばを、夏目くんは「なんとなく気になる〜」と言って文吉うどん(江戸から明治にかけて浸透した出雲そばに並ぶ名物)を注文。
文吉うどんは、麺に卵黄が練り込まれていて、のどごしつるんつるんだった。

酒好きは行かないと。松尾(佐香)神社参拝へ

スサノオが酒で酔わせてヤマタノオロチを退治したという有名なエピソードがある出雲。
なんでも酒の神様を祭ってある神社もあるんだとか。

酒好きならご挨拶に行かねば、ということでまずは松尾(佐香)神社へ。ここは酒造り発祥の伝説もある場所なんだそう。

01.ひろ〜い畑のなかに突然現れる鳥居。
02.かなり長い階段。
03.酒樽がいっぱい。

ここにたくさんの神様が集まって酒を作り、180日間(!?)も宴を続けたという話も。
「神様の話なんだけど、酒飲んで騒いで全然帰らないとか、人間ぽくておもしろいな〜って思う」

日本酒ゲットだぜ! 酒持田本店で酒造見学

酒の神様にご挨拶したあとは、やっぱり現物(お酒)をいただきたくなる。

この神社のお膝元で、140年に渡り出雲杜氏の技を継承してきた酒持田本店で、酒蔵を見学させてもらえることになった。
酒持田本店では、島根県産の酒米を自家精米し出雲杜氏の腕で名酒〈ヤマサン正宗〉を造っている。

01.酒持田本店の建物は2017年に登録文化財に指定された。
02.瓦の全面に入っているのは屋号〈ヤマサン〉。雨樋にも入っている。
03.毎年、12月頃になると軒先にたてるという、新酒ができたという合図の竹。

持田社長に木綿街道や建物、歴史の話を伺ったあと、いよいよ作業場に。
靴を脱いで、手は消毒して中に入る。

案内してもらうと、全行程の作業場それぞれに松尾神社のお札があった。
酒造りはとても繊細で、衛生上の管理も徹底しなければならず最後の最後、完成するまで心配は尽きない。
〝美味しい酒になれ〟という願いと、無事に酒になりますようにという祈り。
仕事と神様の距離が近くて、それはとても神話の国らしいなと思う。

麹もすべて手作り。
この日も蔵人の方々が黙々と作業に専念されていた。

持田社長に「やっぱり働いてる方たちは、みんな日本酒が好きなんですか?」と質問をしたら「昔から働いてる人たちは、仕事として働いていて、好きとか嫌いで選んでいなかったんです。だから、仕事として働いてる人は長く勤めているし、日本酒が好きだと言って働き始めた人は、嫌いになってしまうと辞めてしまうんですよね」と答えてくれた。
これはどの職業においてもきっと同じ。
好きなことを仕事にすることの難しさを感じたし、伝統を守りながら小さな蔵を長く繁栄させていくことを同時に適えることの尊さも感じた。
「インディーズで自分たちだけでやっている僕らの状況とも重ね合わせて聞いてました」とちょっぴり神妙顔の夏目くん。

工程を見学させてもらったあとは、試飲タイム。

3種類飲み比べて悩んだ挙句、社長おすすめで日本酒初心者にも飲みやすいという島根県のブランド酒米・佐香錦を使った〈ヤマサン正宗〉の純米吟醸原酒を全員がゲット。
アーバンチューブのスタッフのひとりは、日本酒仕込みの梅酒をお買い上げ。
「甘くなくてスッキリ!」と絶賛していた。

酒持田本店のある通りは、木綿の集散地として栄えた木綿街道と呼ばれる古い町並みを今に残しているところ。

長短各2本が組み合わされた出雲格子や、塗壁造りの建物が今でも数多く残っている。

さらに木綿街道を歩いていると、至る所で目にしたのが平田一式飾。
身近な生活用具である陶器や金物、茶器、自転車の部品などを合わせ組み立てて、神話や歴史上の人物をつくったものだ。
平田地域の民俗芸術なのだそう。
「どれも個性的でかわいかった。4体そろうとバンドみたいだな〜って思った」

01.酒持田本店の平田一式飾。
02.宇美神社に飾られていたもの。

次に、醤油の香ばしいにおいに誘われて入った持田醤油店。ここは、さきほど見学させてもらった酒持田酒店の分家だ。

羽衣さしみ醤油で味つけた団子は「あっつい! けどめちゃくちゃウマい」。
甘露仕立てで砂糖醤油のような甘くて旨味のある醤油は、団子のほかにおにぎりや餅につけてもいい。
煮卵の液としても使えそう!とさんざん盛り上がり、ここでもまた全員醤油を購入。
しぼりたて3年生醤油もおすすめとのことで、こちらも追加で購入。
実家や親戚の家に来たかのような、懐かしい雰囲気のお店で、店のお母さんもほんわかしていて癒された。

試食できます!の文字に惹かれて入った岡茂一郎商店。

〝醤油の味の邪魔をしない〟ということで、なんとパンにつけて試食。
120年近く昔と変わらない製法で作り上げる醤油は、食べ比べてみるとまったく違う味わい。
今までずっと、さしみ醤油の〝さしみ〟は〝刺身〟だと思っていたけれど、実際は〝再仕込〟。
麹と食塩水の代わりに生の醤油で仕込んだものをこう呼ぶらしい。
甘党のカメラマンは醤油アイス(塩キャラメルみたいな香ばしさとコクのある甘さ)を購入。
みんなは「ポン酢がうまい!!」と言って購入した。
「5本セットもあるし、ホワイトデーのお返しに飴なんかよりよっぽど気が利いてるわよ!」と商売上手なお母さんのトークに乗せられた夏目くん。
やはりここでも醤油を購入。
(買い過ぎ…)

木綿街道にはぽつりと空き家もあったけれど、近く文吉うどんの店が作られる計画があるらしい。
ここでまた新しい店に会えるのが楽しみになった。

地元の美味しいもの(とお酒)、くださーい

夜は美味しい地のものがいただけるツバメヤへ。

地元の新鮮な魚介類を毎日仕入れている。
店主自慢の一皿『お刺身5種盛り合わせ』。
醤油は甘めのさしみ醤油と、普通の醤油の2種類が置いてあった。

神西湖で獲れた『しじみの酒蒸し/バター』
車で移動する最中、大きな湖に〝しじみ〟の看板をたくさん見かけて、「出雲はしじみも有名なのか!」と知った後に頼んだ一品。

見学させてもらった〈ヤマサン〉を始めとした、島根の地酒が豊富にラインナップ。

次は何を飲みたいか「いっせーの」で指差して、みんなバラバラ。

いい感じに酔っぱらってきた勢いで、夏目くんに飲んだ日本酒の味を曲に例えてもらった。
出雲誉の熱燗 は「華やかなのあんまり得意じゃなかったけどこれは上品でうまい。バラ科の果実感を感じる。そうだなあ〜レイハラカミの『Red Curb』ぽい」

そんな感じで、以下、飲んだものと曲リスト。

酒持田本店 / エンジェルオルセン『Bum Your For No Witness』

出雲富士 / ベル・アンド・セバスチャン『Write About Love』

十旭日 / スピッツ『フェイクファー』

石見銀山 / プライマルスクリーム『ソニック・フラワー・グルーヴ』

機会があったらぜひ聴きながら飲んでみて。
より楽しめるはず!

おなかはいっぱいになったはずなのにまだイケる気がして最後に寄ったのが地元のサラリーマンなどで深夜まで賑わっていたギョーザ屋。
表向きなだけではない、裏の、というか普通の出雲の雰囲気を感じられてよかった。
みんな、夜中まで飲みたいとき、あるよね。
餃子の皮がまるでワンタンみたいにとぅるとぅるで、しっかりと紫蘇が効いてるここのシソ餃子、革命的だった。
一度食べてみてほしい。

「近くにあったら毎日通いたい〜」

出雲に来たら美人(美男子)になれるって知ってた?

途中、日帰り温泉にも立ち寄り。
昔、因幡の国の八上姫が旅の疲れをこの温泉で癒し歌にしたことから美人の湯と言われるようになったそう。

ここはなんと全国三大美人の湯のうちのひとつ。
それを聞いたら美人(美男子)になるべく〝念のため〟入っとかないとね。

風呂上がりの一杯の木次牛乳も島根で作られている。
「うめ〜〜」

そんなこんなで無事(!?)一日目が終了。

神話にまつわる出雲を紐解くつもりで来たのに、だんだんと普通の生活を楽しみ始めてしまった取材陣、すみません。

この日は物欲の神様(っているのかしら)に後押しされて日本酒、醤油、醤油、ポン酢etc.(瓶ものばっかり…)。
買い物も満喫しました。

こんな感じで2日目も続きます。

▼着用アイテム

WORK NOT WORK デニムボイラースーツ (COL:IND)
商品番号:UW94-14U028
¥36,500 (税8% ¥39,420)

Sonny Label ツイルアノラックパーカー (COL:CML)
商品番号:LA86-13S004
¥5,500 (税8% ¥5,940)

夏目知幸

Instagram

natsumetomoyuki
s_catsarehere

ロックバンド・シャムキャッツのボーカル&ギター。
アルバム『Virgin Graffiti』発売中。

Tour“Virgin Graffiti”


新潟公演
日程:2019年4月6日(土)
会場:CLUB RIVERST
OPEN/START : 18:00/18:30

金沢公演
日程:2019年4月7日(日)
会場:GOLD CREECK
OPEN/START : 18:00/18:30

名古屋公演
日程:2019年4月18日(木)
会場:CLUB QUATTRO
OPEN/START : 18:30/19:30

東京公演
日程:2019年4月21日(日)
会場:渋谷 TSUTAYA O-EAST
OPEN/START : 17:00/18:00

沖縄公演
日程:2019年5月24日(金)
会場:output
OPEN/START : 19:00/19:30

5月17日からはアジアツアーを慣行予定。

株式会社 酒持田本店

〒691-0001 島根県出雲市平田町785

TEL : 0853-62-2023

URL:http://www.sakemochida.jp/

ツバメヤ

島根県出雲市今市町651

営業時間 : 15:00~22:30 (L.O.21:45)
定休日:不定休(基本的に無休です)

TEL : 0853-20-1230

PROFILE

松本 昇子エディター / ライター

愛知県出身。雑誌やカタログ、書籍、WEBサイトなどの編集、執筆、ときどきコピーライティングも手がける。

木村 巧Photographer

1993年茨城県生まれ。在学中より、写真家青山裕企氏に師事。春からURT編集部へ。

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