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FASHION NOV 28,2021

今の時代だからこそ改めて考える
ファッションとサステナビリティとフライターグ

16年。捉え方によっては長くもあり短くもある時間だが、ただ、流行り廃りに敏感ないちセレクトショップが、ひとつのブランドを取り扱う年数としてはやはり長い部類に入るだろう。アーバンリサーチとフライターグとの強いつながりは、その年数を聞けば概ね想像がつく。サステナブルな社会を世界が目指している今、改めて考えたフライターグの魅力と地球に優しいモノ作り。男性も女性も、ブランドと長い付き合いの人も初めましてな人も、あらゆる垣根を取り払い、双方の代表者4名が大いに語り合った。


※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行っております。

互いの内に秘めるのはとことん純粋な好奇心

移り変わりの激しいファッション業界において、常に変化と不変のバランスをとりながらブランドを継続、成長させていくことは想像以上に難しい。ただ、今の社会はその持続性、継続性が問われている。そこで、消費社会がまだまだ幅を利かせていた時代からアップサイクル的アプローチでバッグを作り続けてきたフライターグはいい指針となるかもしれない。まずは、両者の関係が始まった2000年代前半に時を戻そう。フライターグ セールスマネージャーの脇野友輔さんは語る。

「フライターグを扱いたいとお声掛けいただのは、アーバンリサーチ 渋谷店がオープンした時ぐらいなので2003年頃でしょうか。もうあれから16年。ひとつのセレクトショップで16年も置いているブランドってそうはないですよね」。

「確かにそうですよね」と話すのは、オン、オフ問わず日頃からフライターグのバッグを愛用しているアーバンリサーチ ルミネ新宿店スタッフの小島敦。

「当時は長く使えるもの、大定番になり得るものを店に入れたいとのディレクター、バイヤー陣の想いがあったようです。僕は、10年ほど前にアルバイトからアーバンリサーチへ入っていますが、その時から、フライターグを買うならアーバンリサーチ、といった認識のお客さんも多かったように思います」。

今ではサステナブル、エコロジーを視野に商品作りを行っているところも珍しくはないが、当時はやはりフライターグのようなブランドはマイノリティ。しかも、国内は消費経済全盛な中、セレクトに踏み切ったアーバンリサーチの先見の明には恐れ入る。ただ、実のところ理由は非常に単純明快だったと小島。

「どちらかというと面白そうだから、というニュアンスのほうが近いと思います(笑)」。

それを受け、脇野さんも「正しい考え方ですね(笑)」と笑顔で頷く。

「そもそも、リサイクルやアップサイクルをフライターグ兄弟は最初から謳っていないんですよ。自分たちの欲しいクールなバッグが売っていなかったから、というのが最初の動機。ヨーロッパを見渡してもスイスは小さい国なので資源もゴミを捨てる場所も限られる。観光資源が貴重な外貨収入にもなるので自然を汚したくないという考えが根付いているんですね。だから70年代ぐらいには、すでにリサイクルの概念を幼稚園ぐらいの頃から教えてもらう。そのため兄弟も、ゴミの日の朝に早く起き、自転車で使えそうなゴミを集めていった。それは彼らの中では普通のことなんです」。

ただただ自分たちの気持ちや感覚に従って行動したフライターグ。彼らのアプローチを見るにつけ「面白そうだから」という理由でセレクトしたアーバンリサーチ。そこにあるのは、ただただピュアな好奇心だ。両者の長い関係性を生んだひとつの要因といえるだろう。

ブレずに進化を続けるフライターグ

フライターグの主な素材は使い古されたトラックのタープやシートベルト、自転車のチューブなどである。そのアイデアは、デザイナーたちがシェアしていたアパートのすぐ脇を通っていた幹線道路を走るカラフルなトラックが発端というのは有名な話だ。そして、「現在のフライターグはさまざまなチャレンジを試み、それをカタチにしている」と脇野さん。

「ヨーロッパは陸続きなのでトラック物流が大半。そのトラックの後ろに取り付けられているタープは10年前後で外されゴミとなります。タープは基本的に塩化ビニール製。平たく言えば石油由来の素材です。基本的には土に還らないもの。だったらその源流のタープを作るところからやりたいねということで、生物学的に分解可能なタープの開発に取り組んでいます。最近では、B級品のエアバッグを使ってバッグを作ったりもしていますね」。

「完全に土に還る生地も作られましたよね」とはフライターグ歴10年の小島。

「そうですね。現状のフライターグのプロダクトはアップサイクルです。あくまで、捨てられるものからさらに良いものを生み出し長く使おうという考え方。しかし、それでも最終的にはゴミになってしまいますよね。不完全なサイクル(循環)です。ただ、小島さんの言ったF-ABRIC(ファブリック)を開発して、初めて完全な循環の環を作り出すことができました。発端はとても些細なことでフライターグのスタッフが着るワークウエアを新調しようとの会議から生まれました。その中で既製品ではなくて、自分達で作ってみては?そして環境に負荷のかからない、循環のできる生地で作れたら最高だよね!とのシンプルなディスカッションがきっかけでした。凝り性のFREITAG兄弟は最終的に7年もの歳月をかけてF-ABRICを完成させたのです」。

ホームページにはその経年変化の模様が詳しく掲載され、堆肥となる可能性も秘めていることを伝えている。他にも、パートナー企業が開発した紡糸口金技術(紡糸の際に染色する工程で、従来の染色メソッドよりもはるかに少ない量の水、化学薬品、エネルギーで製造可能)により製造されたまだまだマイナーな100%PETボトル再生繊維の生地をトラックタープと組み合わせたTOP(TARP ON PET)も展開する。

「ただモノを売って終わりではないということですね。その先にある喜びや地球全体の幸せが彼らの作りたいもの。モノを買った先に、これを持って遊びに出かけると楽しいよね、毎日使っていたら気持ちいいよねという感情が芽生える、そういうプロダクトであってほしいと彼らは願っています」。

昨今活発化する、社会的意義を伴ったアーバンリサーチの活動

アーバンリサーチもまた、古い服の生地を特殊な方法で別の素材に変え新たなアイテムを生み出すなど、サステナブルな取り組みを積極的に行っている。ただ、それでもまだまだ始まったばかりと小島。

「アーバンリサーチでも、ダウンの回収など少しずつ取り組みは行っていたんです。ただ、全社で力を入れてSDGsに取り組みだしたのはほんとここ最近。それでも、さまざまな取り組みをこれまでに行っていますし、今後もより力を入れて進めていくことにはなると思います」。

アーバンリサーチ ルミネ大宮店スタッフで、入社2年目を迎えた間中詩織も入社前にはその活動を知っていたとか。

「アーバンリサーチがサステナブルな活動に力を入れていることは知っていました。そもそも、私が入社するときには、会社案内にも書かれていましたから(笑)」。

「SDGsで謳われている“作る責任”が僕らにはある」と小島は続ける。

「仕入れたものや生み出したものは焼却するしかありませんでした。それをどうにかしたいということで、最近では染め直したり、リメイクしたりしながら違う形で提案させてもらっています。形を変えながら、再び命を吹き込むことは素敵なことだと思いますね」。

女性から見たフライターグ

片や世界へと目を向けてみると、サステナブルな取り組みは頻繁に見られ、意識は日本より高いという。そう語るのは、フライターグ ストア トーキョー ギンザのスタッフ、イザベルさんだ。

「ヨーロッパでは、環境への配慮や物を大切に扱う意識は日本よりも高いように思います。私はベルリンに住んでいたのですが、あちらでは痛んだ食材をスーパーからもらえることを教えるアプリがあるんです。今日はどこのスーパーで何をもらえるかがそのアプリで分かり誰もが利用している。結果、食材の無駄をなくす手段となっています。不用となった本を他者とシェアする電話ボックスもありますね。ひとつのものを長く使うことを海外では重要視します。トレンドに乗るのではなく、自分に合うものを選びそれをボロボロになるまで使うのです」。

だからこそ、フライターグも受け入れられやすく、女性も頻繁に活用しているという。

「意外かもしれませんが、海外ではワンピースやスカートを穿く女性は限定的。大半はラフなスタイルが多いんです。小ぶりなハンドバッグを持ったおすましさんはいません。そんなスタイルをしている人は観光客ぐらいじゃないでしょうか(笑)。やっぱり、両手を使いたい時はメッセンジャーバッグやバックパックがいい。だからこそ、フライターグは広く受け入れられているんだと思います」。

一方間中は、フライターグの存在を最近知ったひとり。ただヨーロッパ同様、国内でも広く女性に受け入れられるのは時間の問題なのでは、と予想する。

「大宮の店舗でフライターグを扱うことになり、そこでブランドの成り立ちなどを教えてもらいました。トラックのタープがビニール製であることも知らなかったですから…。実際に見るのは初めてでしたが、もう「えっ!」となるお話ばかりで(笑)。カラフルなデザインもすごい可愛いですし、丈夫でガシガシ使えるのもいい。最近では、パンデミックの影響もあってかウィメンズでもカジュアル意識やラクさを求める傾向にあります。その意味でもフライターグは最適なのではないでしょうか」。

イザベルさんもまた、パンデミックの影響は少なからず感じるとか。

「私はフライターグに勤めて2年目ですが、自転車通勤へシフトするに従い、バックパックやメッセンジャーバッグを求めるほうが多くなってきたと感じました。長くフライターグを使っている人でも、最近はパソコンを持ち歩くことが増えたため、ビジネスでも使えるバックパックを追加したいという方もいますね。新しいライフスタイルに合わせて新しいバッグを探している人は多いです。フライターグのバッグは人に考えさせるんです。自分の幸せって何?、何を楽しみたい?とか。それに合わせたバッグを選ぶのは大事だと思いますね」。

今季のオススメアイテムとは?

F52 MIAMI VICE(マイアミバイス) ¥17,160 (税込)

では、今から手に入れるならどんなモデルがいいか、どんな着こなしに合うのか。間中は「日常使いとしては最適」とF52 MIAMI VICE(マイアミバイス)を推す。

「デザインソースがスーパーの紙袋ということもあり開閉がしやすいですし、軽いので中身を入れても負担になりません。自立もするのでカジュアルなシーンでも使いやすいのかなと思います。色もさまざまありますから、コーディネートの挿し色としてもうってつけ。服の色の一部とリンクさせてもいいかもしれませんね。秋冬は、わりと重めな色のお洋服が多くなると思いますので、明るめの色、例えば青や赤を暗めのコートと合わせるのもいいですね」。

「古株ですからエントリーモデルとしてはいいかも」と脇野さん。

「これはもう96年から形は変わっていません。まあ、そもそもトレンドを追っているブランドではないので、そんなに新型を発表することはないんですよね」。

「トレンドよりはカスタマーベースなんです」と言葉を繋ぐのはイザベルさんだ。

F155 CLAPTON(クラプトン) ¥41,800 (税込)

「例えば、大都会に住む自転車通勤の人々にとって何が必要かまず考え、それに見合った形、大きさ、ディテールを考えていく。だからこそ、各々使いやすさを感じてもらえるのではないでしょうか。先ほど申し上げた人でしたらF155 CLAPTON(クラプトン)が開け方も簡単なので便利だと思います」。

「ロールトップの開口部は容量を自由に調節でき、ベルクロレスですのでニットがくっつくこともありません。バッグ各所にリフレクターが付いているので夜間の走行も安心。また、自転車に乗らない人でも小さなアウトポケットが付いているのでICカードなどの出し入れもスムーズです。PCも教科書も入るのであらゆる層にオススメですね」。

自身の経験則をベースに「利便性を追求したい人は迷わずこれ」と小島がプッシュするのはF560 STERLING (スターリン)だ。

F560 STERLING(スターリン) ¥33,000 (税込)

「高さのあるバッグは、最下部から物を取り出すのに億劫なので中にポケットがあると便利です。F560 STERLINGはそんなところもよく心得ていますよね」。

「名刺、スマホなどそれぞれの大きさに見合った3種類のポケットが内蔵されています。アウトポケットは頻繁に出し入れするモノの収納場所として最適ですし、着脱可能なストラップを付ければ肩掛け&ワンハンドの2WAYで持てる。そのストラップもシートベルトから作られ調整もスムーズ。細かいところにまで行き届いた配慮は、さすがフライターグといったところでしょうか」。

最後に、昨今のバッグの流れからすると、バイシクルメッセンジャーの方が使っているウエストポーチから着想を得たF153 JAMIE(ジェイミー)はちょうどいいと声を弾ませるイザベルさん。

F153 JAMIE(ジェイミー) ¥20,240 (税込)

「ちょっとしたお出かけには、このサイズ感がちょうどいいですよね。U字ロックを引っ掛ける場所もありますからサイクリングにも最適です」。

「ボリュームのある服にウエストマークをつける形で巻けばスタイルをよく見せることができます。斜めがけの方が女性らしいかなと思いますね。Aラインのワンピースに斜め掛けで身につけてもらえればすごく素敵です。最近だと、女性の方はミニハンドバッグとして使っている方も結構いらっしゃいますね」。

脇野さんは「アーバンリサーチさんは洋服を通して提案してくださるのが最大の強み」と話し、小島についても「フライターグのストーリーを、面白おかしくお客様とコミュニケーションを取りながらサステナブルなスタイルを提案することができる」とパートナーとしての信頼感を語りました。両者が手を取り合った時に生まれる化学反応。その無限の広がりに、思わず期待せずにはいられない。

撮影場所

アーバン・ファミマ!! 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー店
〒105-6402 東京都港区虎ノ門1丁目17番1号 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー 2F
TEL:050-2017-9195
営業時間:アーバンリサーチエリア 11:00~20:00 / ファミマ!!エリア 7:00~23:00
定休日:不定休
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ONLINE STORE(アーバンリサーチ オンラインストア内 FREITAGショップ)
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