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FASHION FEB 14,2022

男女の垣根も超える!?
ゴールデンミルズのいい塩梅なミリタリー別注

ミリタリーは男の大好物である。ただ、今はより街へと溶け込ませるべく率先して“品種改良”が行われ、風味のみのアイテムもチラホラと。その現状に異議を唱えたのがゴールデンミルズだ。彼らの心意気にアーバンリサーチ ドアーズ(以下、ドアーズ)も共感。はれて別注コレクションをリリースする運びとなった。サープラスの古着のようなリアル感を湛えながら街との親和性も図れる実に気の利いた佇まいは、周囲から待ってましたの声が聞こえてくるような絶妙なさじ加減。今回は、そのキーパーソンたちにブランドのこだわりや今回の別注コレクションについて語ってもらった。


ゴールデンミルズにNEXTモダンミリタリーを見る

2022年春夏シーズンよりスタートした、世界各国のミリタリーウェアを独自解釈のもとファッションへと落とし込んだアイテムを展開する新進気鋭。それがゴールデンミルズである。ラインナップは男ゴコロをくすぐるなんてもんじゃない、激しく揺さぶるものばかり。ただその仕掛け人が、これまで数多のブランドやショップのミリタリーウェアを手がけてきたスパイス・オブ・スタイル代表の柴山直裕氏と、数多のサープラスに触れ買い付けも行ってきたソーズカンパニー・バイヤーの小林孝一氏と聞けば大いに納得。まずは、ブランド設立に至る経緯をお二人に伺った。

ODM、OEMで培った経験と、さまざまなクライアントからのリクエストで養われたバランス感。ゴールデンミルズはこのふたつが軸になっているとブランドディレクターの柴山氏。その根底には、人知れず抱えてきたこれまでの製作方式への疑念があった。

「クライアントの要望を素直に聞いていくと、生地はこれを、ボタンはあそこのを、テープはあの会社でと、パズルをくみ上げるような形式で作っていくことが多い。結果、チグハグになってどんどん本物らしさが失われてしまうんですよね。無理して作った感が出てしまう。それが僕の中ではどこか腑に落ちなかったんです。だから、ある程度の生地や副資材を自分たちでコントロールしながら、いろんな別注対応ができるというファクトリーブランド的なことをやりたかった。フォーマットをひとつ作っておくとクライアントもイメージしやすいですよね。バブアーへ行けばいつでもオイルドクロスが置いてあるように、ベースができていればあとは多少アレンジを加えるだけでいい。これまでと同じような価格帯でも仕組みさえ整えればちゃんとしたものを作れるのではないかと思っていたんです」。

そして、デッドストックを手に入れたい人が必然的にぶつかる壁を解消するうえでも、ゴールデンミルズは意味をなすと話すのは小林氏だ。

「やっぱり軍モノのデッドストックは多い。いわゆるミリタリーサープラス。とはいえ、サイズがSしかないなどはざらにあります。そこで、サイズがない、色を選べないといった悩みの解消にもひと役買うのかなと。とにかく、本気のミリタリーウェアをファッションマーケットのステージまで引き上げたいという想いはありましたよね」。

その口ぶりから相当な想いを秘め、以前から温めていた企画なのかと思いきや、「そうでもないんですよね、実は」とふたりとも苦笑する。

「どちらかというと思いつきに近い(笑)」と小林氏。

柴山氏も同様の感覚で、「さまざまなクライアントの要望に合わせてアイテムを作ってきましたけど、今の気分を大切にしながらオリジナルに近いスペックで作ってみたい」とふと思い立ったという。そして、一旦過去に作ったサンプルを整理しておもむろに並べてみた。

「そこから、僕の中で見えてくるものがあって、これは一度小林さんに見てもらおうと思いました(笑)。小林さんも興味を持ってくれたので、価格帯もこれぐらいでいけそうだからなんとかうまくできませんかねと相談し、スタートを切った感じですね」。

小林氏は言葉を繋ぐ。

「いろんな方に見てもらい、どんな感想を抱くかは興味がありました。陳内さんから好意的な意見を聞けたときは安心しましたね」。

「絶妙だなって思いましたね」と回想するのはドアーズ バイヤーの陳内。

「ソーズカンパニーさんの展示会では、買い付けてきたデッドストックを陳列しているゾーンがあるんです。そこでゴールデンミルズのアイテムも展示されていました。すごい雰囲気よく作られていたので、「これって“デッド”じゃないんですか?」って思わず聞いちゃいましたよ。価格帯的にも申し分なかったですし、インラインのアイテムをベースにウチらしいサイズ感や仕様にアレンジして販売したいなと純粋に思いましたね。まあ、アレンジする際はわがままを聞いていただいてすごく感謝しています(笑)」。

本物の風情を湛えつつファッションとして成立するミリタリーウェア

実用性を追求した無駄のない機能美によるところか、はたまた暗に漂う男らしさに透けて見えるロマンか。メンズカジュアルにおいて、ミリタリーは欠かせないカテゴリーであることは間違いない。それは、これまでの歴史も雄弁に物語っている。ただ、陳内が思うゴールデンミルズのよさは、リアルではあるもののあくまでもファッションとして成立させているところにあるという。

「ミリタリーは、確かに時代の流れに翻弄されるケースの少ない確立されたジャンルですよね。僕も若い頃から古着のM-65のパンツを皮切りにいろいろと着てきましたから。ただ自分自身、雰囲気だったりしっかり作られているという部分は好きなんですけどマニアではない。もちろん服として稚拙なものを着たくはないですが、ファッションとしてもしっかり成立しているものはやはり目を引きますよね。そのあたりをゴールデンミルズさんはよく心得ている。ちょっとおこがましいかもしれないですけど、僕の感覚と似ているなと、僕の好きなバランスだなって思います。だからこそ、スッと入ってきましたし、一緒にモノを作りたいなって思いました」。

「僕もどちらかというと好きではあるんですけどギークではない」と柴山さんも同調する。

「ミリタリーの中の“リミックス”をやっていきたいとは思いますね。例えば、ECWCSのシェルをN.C.(ナイロンとコットン混でしっかりと織られた平織りの生地)を使って作るとか。ECWCSとしての機能は果たさないんですけど、デザインとして面白いからそれをチョイスするみたいな考え方でいいかなと思っています。そうすると、今までになかったようなアイテムが出来上がりますよね。今回も、インラインの中で黒を取り入れましたけど、通常ミリタリーでは採用しない色。でも、それをやることによってモード感が香ります。偽物くさいものは作りたくないので、素材はきちんと作る、色はちゃんと出す、付属品まで手は抜かない。だけど、デザインに関しては、今まで既存にあったいろんな国のいろんなモデルのものを頭の中に入れ込みながら新しいアイテムを作る。それが“リミックス”の意味合いとしては一番分かりやすいかなって思いますね」。

実際、昨今のデッドストックシーンでも変化が見られると小林氏。

「ラスベガスで、アーミーネイビーショーという軍モノの展示会があるんですよ。そこから掘り出し物が結構見つかりますけど、最近だと軽くて暖かいだとか、水を弾くとか、燃えませんだとか、そういった誰もがよく知るアウトドアブランドが作るミリタリーウェアが主流。だから、ゴールデンミルズの初コレクションは、1960年代〜70年代のミリタリーウェアを背景にしていますけど、今後はデザイン要素として取り入れていってもいいかなと思いますよね。既存の枠にとらわれることなく」。

ウィメンズにとってのミリタリーウェアとは?

メンズファッションにおいては欠かせないミリタリーウェアだが、今ではウィメンズでも存在感を増していると語るのはドアーズ ウィメンズバイヤーの小石だ。

「私も中学の頃に古着屋さんでミリタリーのジャケットを購入し、ネック部分が擦り切れては直しながら着続けていました。個人的にミリタリーは、絶対にウィメンズファッションのどこかには食い込んでくるようなイメージはありますね。ちょっと前まではマニッシュでクールな女性が好きなテイストっていうイメージはありましたけど、最近は、フワッとした可愛い子がミリタリー要素を取り入れていたりもしています。さすがに歴史などは分からないですけど、もうスタンダードにひとつのカテゴリーとして誰もが認識しているのではないでしょうか」。

それには小林氏もうなづく。

「女性はまあファッションとして上手に取り入れていますよね。そもそも、ゴールデンミルズをやる際にも、本物感は出しつつマニアックになり過ぎないようにとは考えていました。結構、これまではミリタリーというと凝りに凝って糸から作っています、みたいなアイテムも多かった。それって、見ようによってはコスプレ的要素が強くなってしまいますよね。で、柴山さんとはいわゆる“洋服屋さん”で売れるミリタリー服をしっかり作ろうと話していたんです」。

柴山氏も後に続く。

「そうですね。だから女性から見たミリタリーというのがちょうどいいような気がします。ヒラヒラとしたスタイリングの中にひとつ入るだけでオシャレに見えたり、可愛く見えたりする。ウィメンズの中でモッズコートがあったりMA-1があったり、いまだとM-65のライナーが売れていたりみたいなことが続いているというのはそこかなと思うんですよ。エッジの効いたものがあるとやはりコーディネートに奥行きができますからね」。

そして、今回の別注コレクションに関しては小石も興味津々の様子。

「男らしい、ゴツい感じはするな~とは思いますけど、女性も着れそうだなという印象はあります。大きめなシルエットをラフに着るという流れも後押ししていますよね。おそらく、古着屋さんで探したりするときに、女性が女性用を探すことはあまりない。みんなメンズで探そうとなりますし」。

陳内もうなづきながら話す。

「それはあると思いますよね。10年前だとあまり考えられなかったですけど、最近は、それこそ例えば旦那さんが着ていたM-65を奥様が借りて着たりとか、実際に社内でもそういうシーンは見たりするので。逆のパターンもしかりで、垣根はなくなっているなというのは感じますよね」。

サイジングに気を利かせたドアーズ流のアレンジ

全4型で展開する今回の別注コレクション。そのどれもが番手と打ち込みに関してはデッドストックをイメージしなるべく近い雰囲気に仕上げられ、陳内もその出来栄えに舌をまく。

「今回選んだバックツイルもリップストップも実はどちらもオリジナルを忠実に再現した生地ではないですが、洗った後のサンプルを見て、未洗いの方がデッドストックっぽさが出そうだなと思い、時間が無い中急遽お願いしました。セカンドサンプルを実際手に取ると、あたかもデットストックのような雰囲気に持っていけ、その出来映えに無理してお願いして良かったと思いましたね。そのこだわりやクオリティにはブランドとしての矜持が感じられました」。

それらをベースに、今回はドアーズらしいアレンジが加えられた。

「ファティーグジャケットは、インラインでいうところのレギュラー丈をロング丈に別注しました。昨今、合わせるインナーが大きくなり、着丈も長くなってきているのである程度カバーしたいなと。インラインの方ですとわりとブルゾンっぽい感じですけど、今回はカバーオールに近いような着丈にしてもらいました。実はミルスペック表記やサイズ表記のラベルも特別に手を加えてもらっているんですよね。例えば、MEDIUM-REGULAR表記もMEDIUM-LONGに変更していて実際のミリタリーウェアでもあるように細部まで拘って作成させていただきました」。

そこもまたこだわりと柴山氏。

「オリジンからインスピレーションを受け書体を変えています。当時の書体がフォーマット化されていないので結局イチから作りました。まあ、グラフィックデザイナーは大変だったと思います。「フォントから作るんですか!?」って念押しされましたから(笑)」。

そして、こちらのモッズコートは、インラインでも使用しているバックツイル素材はそのままに、シルエットを再構築。ここまで手間をかけながらも、U-2万円というプライスに驚きである。ここでも、オリジンへのオマージュが見て取れる。柴山氏は続ける。

「やっぱり古着を見ていると大体ツイルの裏使いをしているんです。スラブ感も出てきますしね」。そこに陳内も興味をそそられた様子。

「表面だとわりと綾織りっぽいですけど、裏面だとほんのり横線が入っているように見えます。見え方が表と裏で違って面白いですよね。そのよさを活かしつつ、例えばMザイズであれば、男性もゆったり着れて、女性も着用できるサイズ感を模索して今回の絶妙なシルエットに変更させてもらいました」。

小石もモッズコートにトキめいた様子で実際に試着。思わず本音が漏れる。

「すごいかっこいいですし、合わせやすそうですよね。インスタでもモッズコートを可愛く着こなしている方が多いんですよ。見ていると、ワンピースに合わせる人が多いですね。あとはロングスカートとか。これなんだろうっていうディテールは結構ありますけど(笑)」。

「でも、なんだろうって思っていても流すでしょ(笑)?」と小林氏。でもそれでいいと笑う。

「俺らみたいにいちいちひっかかってたら、よいものも存分に楽しめない。軽く受け流して可愛く着てくれた方がいいですね(笑)」。

GOLDENMILLS 別注 J/F SHORT ¥8,580 (税込) ※5月発売予定

ボトムスは、アメリカ軍のジャングルファティーグパンツを背景に作られ、実際には存在しないショーツも製作。そこにも独自のこだわりが散見される。小林氏曰く「古着をカットオフして穿くイメージ」とか。

「しかも、オリジンにならい、ポケットはジャングルや森の中を前進する際、草木などに引っかかりにくいような仕様になっています。まあ、後退したらひっかかっちゃいますけどね(笑)」。

その丈感を、ドアーズ流にアレンジした。陳内は語る。

「わりと、インラインよりも太くゆったりさせて丈感を短くしたことで今の気分に合うようなシルエットに調整させてもらっていますね。サイズ表記もMEDIUM-SHORTに変更。ショーツもサイズ感を調整し、シルエットをゆったり目に作ってもらい、インラインにはドローコードがあったんですけど、それを外しすっきりとしてもらいました。結果、どれもがオーセンティックなようで、その実古くさくもない。絶妙なアイテムが出来上がったと思います」。

今後は、アメリカ製デットストックのTシャツ「TEE Swing」ボディにオリジナルプリントを施したアイテムも思案中とか。その隠し種も気になるところだが、まずは今回のコレクションを、メンズ、ウィメンズ問わず存分に味わい尽くしたい。

GOLDENMILLS 別注 Tee Swing ※5月発売予定

GOLDENMILLS(ゴールデンミルズ)
2022春夏よりスタートの日本人企画制作チームによる日本人の為のミリタリーウエア。
糸から生地を作ったり、細かな仕様も忠実に復刻するオリジナル至上主義とは違い、必要な機能は足し、不必要な機能は引く。パターンや仕様を日本人の体形に合わせてアレンジ。
http://www.spiceofstyle.com/

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Photo/Takuro Shizen
Edit & Text/Ryo Kikuchi

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