ROSSO WOMAN 2019AW VOL.5
小林 文
ファッションエディター
会いたい人がいたら、初対面だとしても労を惜しまず会いに行く。
トライ＆エラーでとにかく実践してみる。
そんな文さんのファッションに対する姿勢が私たちを魅力あふれる世界へと導いてくれる。
彼女とファッションアイテムとの仲の良い関係について、伺いました。
着たときの洋服の表情を、理解する
コートの、折り返しされた裏地が真っ先に目に入る。今回文さんが選んだのは、リバーシブルになったフード付きコート。「このフードが良い具合に寝てくれるし、ボタンがないので、正面から見たときにコートの裏の生地がすっきりと品良く覗いてくれるんです。」チェック柄を表に着ているが、折り返しで見える裏側のヘリンボーン柄が、アクセントになっている。「フード付きのコートってどうしてもカジュアルになってしまうけど、これはエレガントに着ることができます。ストールを肩掛けしているようで素敵。」
アイテムひとつひとつの個性を理解し、最もそれが生きる着方を提案する。着たときの洋服の表情までを理解した、アイテムとの仲の良さを伺える。
ブラックコーデを、素材違いで楽しむ
「チェック柄を主役にしたかったので、コートの中は全て黒でまとめました。でもここで黒のデニムだとボーイッシュに見えてしまう気がして。フェイクレザーのスカートで大人っぽくしたかったんです。」ふくらはぎ丈のコートから、チラッとのぞくロングスカートの裾が、歩くたびに揺れる。女性らしい立ち居振る舞いを身につけた、大人が楽しめるスタイリングだ。「ちょっとした食事の約束に着ていきたいかな。」ハイゲージニット、フェイクレザー、カゴなど、あらゆる素材が見事にまとまっている。ブラックコーデを、こんな素材違いで楽しんでみるのも良い。小柄な彼女から、大人の艶を感じる。
インスタグラムで出合った、カゴバッグ
手に持っているのは、コンパクトなまん丸のカゴバッグ。よく見ると、持ち手はレザーで編まれていて、ゴールドの留め具が控えめに輝く。「カゴバッグは季節を問わず使っています。カゴと言うとほっこりしたものも多いですが、私は硬質なカゴが好きです。ほっこりしたものは似合わない気がしていて。いつもどこかに辛口感を意識するようにしています。
バッグとの出合いについて聞いてみた。「数年前に『manimaris』というブランドをインスタグラムで知りました。ある女性がハンドメイドで作っていて、コーディネートも含めてバッグを提案しているんです。私がフォローしていたら、フォローバックしてくれました。その後コメントをし合ったりして約２年。ネット販売だけなのでなかなかお会いできなかったのですが、去年青山でポップアップショップをやるということで、会いに行きました！」ようやく叶ったご対面で、文さんは質問があふれたのだそう。「オリジナリティに富んだ素敵な商品ばかりで、どうやって作るのかを聞いてみたかった。デザインを描いて、協力してくれそうな素材店を探し、電話やメールで交渉して…作りたいものがいっぱいあって、毎日山のようなバッグに埋もれながら、手作業で作っているそうです。」そんな想いに感動し一目惚れしたカゴバッグなのだから、仲の良さはまた特別なのだろう。
「情報はSNSなど、いろいろなところからキャッチしています。実は私がいる雑誌業界は、個人のSNSで発信をしていない方も多いんです。見る専門の方が多いようで。でも私を含め消費者は、SNSなどを駆使しながらスピーディに情報をキャッチする時代。素敵だと思う人がいたら自分から積極的に会いに行くし、合う企画があったらインスタグラムからだってオファーします。自分が感動したモノや人の情報を皆さんに伝えたいんです。」会いたい人がいたら、労を惜しまず会いに行くのが彼女の姿勢だ。「情報があふれている中、本当に？そうなの？って。だからトライ&エラーの精神で、失敗を恐れずどんどん買って体験するようにしています。」これが仕事への姿勢にも繋がっている。「ファッションエディターとして月並みな言葉になってしまわないよう、人とは違う、体験に基づいた自分の言葉で書くことを意識しています。」彼女のファッションへの愛と、正直な姿勢が、これからも私たちを魅力あふれる世界へと導いてくれるはずだ。
PICK UP ITEM
ワイドな身幅と絶妙なドロップショルダー、膝まであるロング丈が全体的にゆったりとしたオーバーサイズのコート。カシミヤ混の素材が軽くて柔らかく、抜群の着心地を叶えました。チェック柄とヘリンボーン柄のリバーシブルで、ボタンもベルトもないシンプルなデザインながら、襟元で裏地が見える計算されたシルエット。立体的な表情を見せてくれる。カジュアルからエレガントまで、冬に大活躍のコートです。
