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FASHION JUN 10,2022

糸から開発できるmocTのヒミツ。

スウェットやTシャツのカラー名でよく耳にする “杢グレー”。別名で“霜降り”や“ヘザーグレー”とも呼ばれる独特な表情が特徴ですが、その“杢グレー”の生地を構成する杢糸を日本で初めて開発したのがテキスタイルメーカーの新内外綿株式会社。この度、そこの自社ブランドである<mocT(モクティ)>とURBAN RESEARCHによるエクスクルーシヴなTシャツが発売。高品質な生地を作り続ける老舗のテキスタイルメーカーとのものづくりについて深掘りしてみました。


綿花から糸が生まれるまで。

杢糸のパイオニアとして知られる新内外綿株式会社が国内の製造拠点として岐阜県梅津市に構える紡績工場のナイガイテキスタイル。6万5000平方メートルにも及ぶ広大な敷地に存在し、養老鉄道の駒野駅に隣接する工場はどこか懐かしさが漂うノスタルジックな佇まいも素敵です。綿を中心とした天然繊維にポリエステルやナイロンといった化合繊の組み合わせ、そして、杢糸のような色状変化糸も得意とします。今回、綿花から糸が生まれるまでの工程を追い、ナイガイテキスタイルの強みを探っていきます。

工場に隣接する養老鉄道。昔は列車で原綿が輸送されていたが、現在はトラックが付けられるようになっている

紡績工程を説明すると、まずは圧縮梱包して輸送されてきた原綿を開放して一昼夜放置します。そうすることで圧縮された原綿を解放するのと工場内の温湿度に慣らすという意味合いがあります。そして、最初に行うのが混打綿工程。混打綿機を使って混ぜて解きほぐすと同時に原綿に付着している葉かすや種子片、砂塵などのゴミを除去します。そして最後にシート状のラップにします。

混打綿で形成されたシート状のラップ。分厚いフェルトが巻かれているイメージ

次に行われるのが、混打綿で形成されたシート状のラップを解き、染色された綿とスケールコンベア(計量器)に載せて混率通りの重量をコンベアに載せる調合工程。あらゆる素材のMIXとあらゆる混率の糸の対応が可能で、この配合により杢グレーの杢糸も作られます。その後、一旦ストックビンと呼ばれる部屋に綿を送って貯留し、再び混打綿を通してラップを形成します。

混打綿工程を経て出来上がったシート状のラップを、カード(梳綿)機を用いてくしけずって繊維を1本1本に分離し平行に引き揃え、小さいゴミや短い繊維を取り除くカーディング工程へと移ります。残った長い繊維をある程度平行に揃え、収束して紐状のカード・スライバーにします。

カーディング工程で収束した紐状のカード・スライバー。うどんのように巻き取られる

次のカード・スライバーをくしけずるコーミング工程では混打綿工程やカード工程では十分に除去できなかった短い繊維やゴミを取り除き、繊維を平行に引き揃えることによって、均斉なコーマ・スライバーを作ります。この工程は均斉な高級糸を製造する場合に必要となります。

コーミング工程で平行に引き揃えられたコーマ・スライバー。しっとり滑らかである

次は練条工程。カーディング工程、またはコーミング工程を経て出来上がったスライバーはまだムラがあるので練条機を用いて6本または8本を合わせ、6倍〜8倍に引き伸ばしながら繊維を真っ直ぐにしてムラをなくします。均整な練条スライバーにします。この工程での混紡方法で杢調表現を変化させることも可能です。

練条スライバーから直接糸を作るには太すぎるため、粗紡機を用いて練条スライバーをさらに引き伸ばす粗紡工程へ。ここで初めて“撚り”をかけてボビンに粗糸を巻き取ります。

粗紡工程でボビンに巻き取られた粗糸。だんだん糸っぽく仕上がってきてるのがわかる

紡績の主要工程の最後となるのが精紡工程です。粗紡工程で出来上がった粗糸をさらに引き伸ばし、所定の太さに細くし、撚りをかけて最終製品である糸をボビンに巻き取ります。

精紡工程で出来上がったボビンの糸をさらに何本か合わせて大きなパッケージに巻き返す巻糸工程。その際、糸の欠点であるネップや小さいゴミの混入、糸むらなどを除去し、一定量の最終形態であるコーン(円錐状に巻いたもの)やチーズ(円筒状に巻いたもの)に巻き取ります。

原綿の塊から糸になるまでこれほど多くの工程がありますが、巨大な工場内にある一定のリズムを刻む数々の機械と設備によってスピーディーかつ効率よく生産しているナイガイテキスタイル。ただ、ここの強みはこれらをシステム化した生産管理にあります。生産管理システム『はやいや〜ん』により多品種・小ロットを実現し、営業やお客様の状況に応じて日々の生産取り組みや生産変更にも対応してくれる。多様化する国内のファッション市場に順応した工場でもあります。

mocTってどんなブランド?

新内外綿株式会社が発信するブランド<mocT>。その魅力についてデザイナーの馬場さんに話を伺いました。

デザイナーの馬場賢吾さん

「<mocT>は約50年前に国内初となる杢糸を産み出し、染め綿や異素材の混紡など、困難とされるテキスタイルに挑戦・開発してきた杢グレーを世に広めた新内外綿株式会社が2017年の130周年を機にスタートさせたブランドです。ブランド名は、mix、original、comfortable、technicalの頭文字をとったものです。商品に使われているグレーの生地は、すべて『GR7』という糸で編み上げられたもので、日本のあらゆるグレーのアイテムの中で最も流通している糸でもあります。『GR7』はアメリカの製品で使われていた杢調の糸を目指して作られた糸で、その魅力は染める工程が世の中の一般的な生地の手順とは違うため、生地のタッチが非常に柔らかいのが特徴です。さらに、綿の柔らかさを最大限に引き出すため、綿(ワタ)の段階で染めを施しています。染料自体の使用量も他の生地の染め工程と比べると圧倒的に少なく、環境にも優しいところもポイントです。また、杢グレーは日焼けや劣化からくる黄変も少なく長い間着用することができ、着用と洗濯を繰り返すことで風合いはさらにソフトに変化していきます」

そんな万能な杢グレーで統一されたラインナップは、スウェットの上下にTシャツ、ポロシャツ、タンクトップ、さらに帽子から靴下までが揃い日本で最も流通しているグレーを作ったという大きな武器をブランドのアイデンティティーとして落とし込まれています。

「自社工場があることが何よりも強みで、原料違いの綿(ワタ)を1%から混ぜた糸を作れる混状変化。色の違う綿(ワタ)を1%から混ぜた糸を作れる色状変化。スラブ、逆スラブ、ネップなど糸をあらゆる形に作れる形状変化。以上の技術で他の紡績工場よりも圧倒的に蓄積したノウハウを持っていて、まだまだ見たことの無いテキスタイルを作っていけるというポテンシャルも秘めています。生産背景も国内生産を貫いています。カットソー(丸編み素材)においては海外製に比べて、丸編機は緻密な設計と職人技術によりハイスペックで唯一無二の素材が生まれます。そのため、糸から編機に至るまでの工程を国内でしかできない希少な素材で作るプロダクトが実現できるということ。<mocT>では、古くから付き合いのある和歌山にあるニッターに生産を依頼しています」

志茂合繊メリヤス

『GR7』という糸がスタンダードとなる過程でさまざまな糸やテキスタイルが誕生し、その組み合わせは無限の可能性を秘めている。

「<mocT>は自由自在に素材を使い分け、全く新しいスタンダードを生み出すことが可能です。130年にも及ぶ歴史の中で培われた技術と経験を新たな“心地いい”に昇華させるのがユーティリティーアイテムを提案する<mocT>の役目でもあり、上質をあたりまえに着る人のこころの真ん中へ届くブランドとしてありたい。そう願うブランドです」

mocTとURBAN RESEARCHのコラボT。

第一弾としてTシャツをリリースします。「<mocT>の持つ紡績やテキスタイル技術に着目いただき、元々インラインで使用していない高級な超長綿を使用するというプロダクト制作がスタートしました」とデザイナーの馬場さんが言うようにハイクオリティなラインとしてシーアイランドコットンを肌と接する裏地に使用したことで着心地が向上。肉感のある生地感もインラインと比べても高級感があり、程よいしっとりとした風合いが楽しめます。身幅のあるゆったりとしたボックスシルエットなので、今着たい気分のサイズ感で仕上がっているのも嬉しいポイントです。

mocT × URBAN RESEARCH
別注アメリカンプレミアムコットンTEE
¥12,100 (税込)

『GR7』を使用した杢グレーと、オートミールカラーからブリーチを施したホワイトの2色展開。専用のブランドタグもデザインされているので特別な一着になるはず。
「<mocT>というブランドのバックグラウンドの広さを発揮できるプロジェクトでもあり、ブランドとしても新たな試みとなります。スウェットも計画中なのでご期待ください」

新内外綿株式会社
明治20年9月に創立した『内外綿株式会社』を経て、昭和23年12月に岐阜県・駒野にて高度な技術と人材を引き継ぎ新たに設立。綿を中心としたあらゆる素材の複合技術を確立し、特殊糸のトップメーカーへとなり、杢糸のパイオニア的存在。
HP : https://www.shinnaigai-tex.co.jp/

mocT
HP : https://www.moct-gr7.com/
Instagram @ moct_gr7

URBAN RESEARCH
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Text/Nao Takamatsu

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