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FASHION JUN 29,2022

iI+iI People #6
写真家・池野詩織さんの“アイ”

iIディレクター兼URBAN RESEARCH BUYERS SELECT(URBS)レディースバイヤー森口愛が“いま気になる人”をお招きし、ゲストのパーソナル(i)や仕事・趣味などの(愛)を通して世界観に迫ります。


第6回のゲストは写真家の池野詩織さん。音楽からアート、ファッションまでさまざまなカルチャーのシーンをリアルに行き来しながら、ライブやステージといった貴重な瞬間だけでなく何気ない日々までフィルムに焼き付ける彼女の作品は、人々の心を強く惹きつけてきました。森口も、そのうちの一人。今回は池野さんにiIを使ったフォトシューティングを依頼し、対談では彼女の写真”愛”についてもお伺いしました。

※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行っております。

左)池野詩織さん / 写真家
1991年生まれ。2012年より写真家として活動を開始。2018年commune pressより写真集『オーヴ』をリリース。2020年にはadidasのシューズ「FORUM」のワールドキャンペーンに写真家として起用された。ファッション、コマーシャル、ミュージック、アートなどあらゆるシーンを縦横無尽に駆け回り、自由奔放な個性に起因した熱のある作品を生み出している。
Instagram @ ikenoshiori

右)森口愛 / iI ディレクター・URBS レディースバイヤー
バイヤー歴約3年、iIを立ち上げ1年半。最近漫画に加えて、ポケモンとラジオとアイドルに夢中で、いろいろと忙しい日々を過ごしています。
Instagram @ aiboooon0622

池野詩織さんの“アイ”(i=PERSONA(ペルソナ))

森口 池野さんの存在を知ったのは、ここ幡ヶ谷・gallery communeで写真がプリントされたハンカチを購入したのがきっかけなんです。直感的に「かわいい!」と思って手にとり、その写真が収められている写真集『オーヴ』を見てすっかり虜になってしまって・・・。

池野 ありがとうございます。2018年のNY Art Book Fairでcommune Pressから出した初めてのハードカバーの写真集なんです。

森口 写真を撮り始めたのはいつ頃なんですか?

池野 日常的にカメラを持ち始めたのは大学に入ってすぐ、19歳くらいです。大学で出会った友達とフィルムのカメラを買いに行って、お互いの写真を撮ってzineを作ったりするようになりました。自分が「好きだな」と思うのがドキュメンタリーの写真で、Flickr(写真の共有を目的としたコミュニティーサイト)に恋人との日々を赤裸々に撮影した作品を上げている海外の作家に影響されて、当時は恋人の写真などもよく撮っていました。「嘘がない」ところが素敵だと思ったんです。そのときの活動が今にも繋がっていますね。

森口 私は池野さんの写真の色合いもすごく好きなんですよね。フィルムに納めるときの、世界の切り取り方や色の組み合わせが池野さんらしいなと思っているところがあって・・・。何か意識している部分はあるのですか。

池野 モノクロの写真を撮ることもあるんですけれど、カラー写真が好きみたいですね。例えば夜に、オレンジ色の外灯の明かりや看板のネオン色なんかを無意識に探して撮影している気がします。iIのお洋服も色が綺麗ですよね。森口さんはどうやって色の組み合わせを決めているんですか?

森口 すごく感覚的ですね。池野さんの写真集のように、色が素敵だなと思うものからも影響を受けていると思います。

池野詩織さんの写真“アイ(愛)”

池野 写真家として名乗り始めたのは、2012年の頃。「何をやってるの?」と聞かれたときに、どう名乗ればいいのかわからないのが苦痛だったんです。Art Book Fairに遊びに行ったときに、「今日から写真家って名乗ってみようかな」と思ってそう言ってみたら、その日に出会った人が後に写真の師匠となる人を紹介してくれて・・・。そこから仕事になっていきました。

森口 そんな出会いがあったんですね! いろいろな表現方法があるなかで、写真を選択したのはどうしてなのでしょうか。

池野 食べるのも音楽を聴くのもファッションも、好きなことはたくさんあるけれど、写真はそのどれとも繋がれる表現ツールだと感じています。写真を媒介にいろいろな世界と関わることができるのが自分に合っているのかなと思っています。

森口 池野さんにとって、写真を撮る行為はどういうものなのでしょうか。

池野 “視点の共有”でしょうか。特別な瞬間に居合わせたときに「共有したい」と思うんですよね。ただiPhoneで撮るだけじゃなくて、わざわざフィルムに収めるようになったのは「宝物集め」に近いのかもしれません。綺麗なものだけじゃなくて、変なものを集めるのも得意なのだと思います(笑)。

森口 そんな能力が鍛えられたのですね(笑)。

池野 常にカメラを持って歩いていたからかも知れませんね。みんながInstagramにアップする感覚とあまり変わらないのかも知れないけれど・・・。自分が好きな写真はフィルムの作品が多かったので、私もフィルムで撮影するようになりました。何もわからない中で中古カメラ屋さんのおじいさんに相談して機材を買ったりして。ただフィルムの値段が高騰しているし、仕事の内容や撮りたいものによって、最近はデジタルでの撮影もするようになりました。

森口 フィルムが面白いと思うのはどういったところですか。

池野 修正できないところでしょうか。ハプニング的に思いも寄らないいい写真が撮れていたりして、そういう偶発性があるのも好きですね。

森口 zineにまとめるようになったのはどうしてなんですか。

池野 自分が何者かうまく言葉にできなかった頃から、zineに自分の好きなものや文章や写真をまとめて、人に渡すことでコミュニケーションを取ったりしていました。ちょうどTOKYO ART BOOK FAIRが始まった頃、小さなzineカルチャーが盛り上がり始めた頃です。今でも自分でコピーしてホッチキスで止めたような、誰でもできるハードルが低いzineが好きですね。デモテープのような、自分の思考が完成しきる前の途中の段階で見せられるのがいいなと思っています。

森口 池野さんが撮る写真にはアーティストなどさまざまな人が登場して、そのコミュニティーとの関わり方も興味深いなと思って拝見していました。どういった繋がりなんでしょうか。

池野 もともと音楽がすごく好きで、昔から小さいライブハウスにまで足を運んできました。そのときの関係性が今でも続いている感じですかね。私が写真を選んだ理由とも繋がっているけれど、自分の好きな世界と繋がれるツールになるので自分の好きなバンドのレコードに写真を使ってもらえたり、そういう関わり方ができるのは写真をやっていてよかったなと思う理由の一つですね。

池野詩織さんが撮るiI

森口 今回は、iI 5th collectionのアイテムを使ったフォトシューティングをお願いしました。池野さんに撮ってもらえるなんて思ってもみなかったので、お引き受けいただけて嬉しかったです。モデル選びもスタイリングも全て池野さんにお任せしているので、どう仕上がっているのかすごく楽しみだったんですよ。

池野 お洋服を見せてもらって、今回モデルをお願いした彼女のことがすぐに頭に浮かびました。その日初めて会うモデルを撮影する面白さもあるけれど、関係性が深い人を撮るのを長く続けてきたので・・・。10年来の友人で、彼女が中学生のときに私の展示に来てくれたのが出会いのきっかけなんです。スタイリングも楽しんでくれる人と撮影したいなと思っていたのですが、iIのお洋服のカラフルなところも気に入ったみたいで、楽しそうにスタイリングしてくれました。

STYLE 1

tie dye gather Long sleeve ¥20,900 (税込)

STYLE 2

tie dye gather onepiece ¥28,600 (税込)

STYLE03

cross onepiece ¥41,800 (税込)

森口愛から池野詩織さんへの“アイ”

大好きな池野さんに、iIのアイテムの撮影をしていただけるなんて!
gallery communeでハンカチを購入してから(今でも大切に使っています)、一緒にお仕事させていただけるときが来るとは思ってもみませんでした。池野さんの作品も大好きですが、実際にお会いしてお話すると、お人柄もとっても素敵で。こうやって連載にご出演していただけるなんて夢のようでした(夢じゃなかった!)。実際に撮っていただいた写真を拝見したときに、やっぱり池野さんの色の使い方がとても好きだなぁと。それぞれのシーンのソファのブルー、ピンクの箱やイエローのキャップ、グリーンも。偶然おじいちゃんが写りこんでいたり、見逃しがちな何気ない日常をiIと共に切り取っていただいたように感じましたし、スタイリングもとっても素敵でした。
お話の中で、iIのお洋服のことを“余白のある服”、“こうやって着てくださいを決めつけない服”とおっしゃってくださいました。
この言葉を、実際に撮影をしていただいた池野さんに言っていただいたことがとっても嬉しくて。これからもブランドを続けていくうえで大切にしていきたい、素敵な言葉もいただくことができました。

フォトグラファー(スタイリング)/池野詩織
フォトグラファー(対談)/紫前拓郎
編集・取材・文/平井莉生

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